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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W39
管理番号 1349846 
異議申立番号 異議2017-900167 
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-22 
確定日 2019-02-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第5922701号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5922701号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5922701号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成28年8月5日に登録出願,第39類「運送,輸送,メッセージ・物品・小荷物の配達,貨物及び荷物の集荷・こん包,物品の包装及び保管,輸送中のメッセージ・物品・小荷物のコンピュータによる追跡,信書の送達,輸送情報の提供,郵便切手の販売代行,輸送の媒介又は取次ぎ,宅配便の媒介又は取次ぎ」を指定役務として,同年12月13日に登録査定され,同29年2月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである。
1 「EPACKET」(甲2の1,甲2の10,甲2の12,甲2の17:以下「引用商標1」という。)
2 「USPS EPACKET」(甲2の2?甲2の9,甲2の11,甲2の13:以下「引用商標2」という。)
3 「COMMERCIAL EPACKET」(甲2の14?甲2の16,甲2の18,甲2の19:以下「引用商標3」という。)
なお,引用商標1ないし引用商標3を,以下,まとめて「引用商標」という場合がある。
これらの引用商標の役務は,甲第2号証の1,甲第2号証の2,甲第2号証の4ないし甲第2号証の9,甲第2号証の11,甲第2号証の13ないし甲第2号証の16,甲第2号証の18,甲第2号証の19が,第35類「小包及び手紙の受取り事務及び仕分け事務の代行」及び第39類「様々な輸送形式による小包及び文書の回収・輸送及び配達」であり,甲第2号証の3,甲第2号証の10,甲第2号証の12,甲第2号証の17が,第39類「様々な輸送形式による小包及び文書の回収・輸送及び配達」である。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む。)を提出した。
(理由の要点)
申立人は,引用商標のいずれか又は全部を米国,香港,台湾,シンガポール,WIPO,EU,中国,オーストラリア及び韓国において保有している(甲2の1?甲2の19)。一番早く出願されたものは米国の「EPACKET」で,その出願日は平成23年1月6日である(甲2の1)。
本件商標を構成する語には「International」,「Light」,「国際」及び「ライト」という識別力を欠いたものが含まれるため,本件商標からは「イーパケット」という称呼も生じる。
他方,「EPACKET」(引用商標1)は,その構成文字からは,「イーパケット」の称呼を生じることは明らかである。
また,「USPS EPACKET」(引用商標2)は,その構成文字からは,二語の間にスペースがあることに加え,「USPS」の文字部分が申立人である「ユナイテッド ステイツ ポスタル サービス(United States Postal Service)」の略語であることから,「イーパケット」の称呼を生じる可能性がある。
さらに,「COMMERCIAL EPACKET」(引用商標3)は,その構成文字からは,やはり二語の間にスペースがあり,「COMMERCIAL」の文字が識別力を欠く語であることから,これも「イーパケット」と読まれる可能性がある。
よって,本件商標と引用商標は,同じ「イーパケット」という称呼が生じる類似の商標ということができる。
申立人は小包や文書を国際的に輸送・配達する事業者であり,引用商標を付した小包・文書が日本において配送されていることは容易に想像できる。
このような状況下で,本件商標がやはり小包・文書に付されて国際的に輸送・配達された場合,本件商標を付した役務が申立人の役務であると需要者・取引者が混同する可能性は非常に大きいと考えられる。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)引用商標の周知著名性について
申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のことがいえる。
申立人は,米国,香港,台湾,シンガポール,WIPO,EU,中国,オーストラリア及び韓国において,「EPACKET」,「USPS EPACKET」及び「COMMERCIAL EPACKET」の引用商標(甲2の1ないし19)を所有していることは認められる。
しかしながら,申立人の提出した証拠は,各国の商標公報の写し及び本件商標権についての本件商標権者と交渉経過中に送付した書面やその翻訳文であり,引用商標の使用開始時期,使用期間,売上高,市場シェア,宣伝広告の時期,期間,回数及び宣伝広告費等,引用商標が本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものであることを証明する証拠が提出されていない。
したがって,申立人の引用商標が本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標
(ア)本件商標は,別掲のとおり,緑色の角の丸い平行四辺形内に白抜きで「L」の欧文字を表した図形を配し,その左側上部の角部分に同色の小さい地球儀のような経線及び緯線を有する円内に白抜きで小さく「e」の欧文字を表した図形を配し(以下,これらの図形をまとめて「本件図形部分」という。),その右側上部には緑色の直線2本の間に挟まれるように,同様の緑色で「International ePacket Light」の文字をやや小さく書し,その右側から上下の線と並行に同様の緑色の直線を右に延ばした文字部分(以下「本件上段文字部分」という。)を配し,その下には,本件上段文字部分と同じ幅で黒色の「国際eパケットライト(「パケット」の文字は,他の文字よりやや小さく表示されている。)」の文字を書した文字部分(以下「本件下段文字部分」という。なお,これらの本件上段文字部分と本件下段文字部分を合わせて,以下「本件文字部分」という場合がある。)からなるものである。
また,本件商標の構成中,本件上段文字部分はやや小さく緑色で同書同大に一体不可分に書され,3本の直線より構成されており,また,本件下段文字部分は黒色で一体不可分に書されており,両者は,両端がそろえられ,全体としてまとまりよく表されているものである。
そして,本件上段文字部分の「International」の文字は,「国際の,国際的な」等を意味する英語であるから,本件下段文字部分の「国際」の文字を英訳したものと理解され,次に,本件上段文字部分の「ePacket」の文字部分の構成中「Packet」の文字は,本件下段文字部分の「パケット」の文字を英語表記したもの理解される。さらに,本件上段文字部分の「Light」の文字は,本件下段文字部分の「ライト」の文字を英語表記したものと理解されるものである。
そうすると,本件上段文字部分が本件下段文字部分を英語表記したものとみるのが自然であるから,本件文字部分は,全体として,一体的に看取されるというのが相当である。
そして,本件商標は,本件図形部分と本件文字部分から構成されたもので,結合商標と理解される。
(イ)本件商標の構成中,本件図形部分は,直ちに特定の事物を想起させるものではないから,特定の称呼及び観念を生じないものとみるのが相当である。
(ウ)本件商標の構成中,本件文字部分は,本件上段文字部分が本件下段文字部分を英語表記したものであるから,本件上段文字部分に相応して「インターナショナルイーパケットライト」及び本件下段文字部分に相応して,「コクサイイーパケットライト」の称呼を生じる。
そして,本件上段文字部分は,その構成中の「International」の文字は「国際の,国際的な」等を意味する英語であり,「Light」の文字は「光,光線,軽い,手軽な」等を意味する英語であるとしても,両語は本件商標の指定役務との関係において,出所識別標識としての称呼及び観念が生じないとまで認めるに足りる事情は見いだせないし,「ePacket」の文字は辞書等に掲載のない特定の意味合いを有しない一種の造語であるから,全体として,特定の観念を生じない。
また,本件下段文字部分は,その構成中の「パケット」の文字は「小包」の意味を有する語であり,「ライト」の文字は「光,軽い,右,書く」等様々な意味を有する語であるから,両語は本件商標の指定役務との関係において,出所識別標識としての称呼及び観念が生じないとまで認めるに足りる事情は見いだせないし,「eパケット」の文字は辞書等に掲載のない特定の意味合いを有しない一種の造語であるから,全体として,特定の観念を生じない。
そうすると,本件文字部分は,「インターナショナルイーパケットライト」及び「コクサイイーパケットライト」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。
(エ)以上からすると,本件図形部分と本件文字部分とは,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認めることはできないから,本件商標の本件図形部分と本件文字部分とが,それぞれが独立して出所識別機能を有する要部であるということができる。
したがって,本件商標は,その要部の一である本件文字部分より「インターナショナルイーパケットライト」及び「コクサイイーパケットライト」の称呼を生じ,特定の観念を生じないといえる。
イ 引用商標
引用商標は,「EPACKET」(引用商標1)の欧文字,「USPS EPACKET」(引用商標2)の欧文字,「COMMERCIAL EPACKET」(引用商標3)の欧文字を書してなり,それぞれの構成文字はまとまりよく書されたものであり,これらの構成文字に相応して,それぞれ「イーパケット」,「ユーエスピイエスイーパケット」及び「コマーシャルイーパケット」の称呼を生じる。
そして,引用商標の構成中の「EPACKET」の文字は,辞書等に掲載されている成語ではなく,特定の意味合いを有しない一種の造語とみるのが相当であるから,該文字より特定の観念を生じない。
そうすれば,引用商標は,引用商標2及び引用商標3おいては「USPS」又は「COMMERCIAL」の文字を伴うとしても,それぞれ全体として,特定の観念を生じない。
また,「USPS」又は「COMMERCIAL」の文字が,引用商標の指定役務との関係において,出所識別標識としての称呼及び観念が生じないと認めるに足りる事情は見いだせないから,引用商標は,それぞれの文字構成に相応して,「イーパケット」,「ユーエスピイエスイーパケット」及び「コマーシャルイーパケット」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
(ア)本件商標の要部である本件文字部分と引用商標との類否
本件商標の要部である本件文字部分と引用商標を比較すると,上記ア及びイのとおり,外観においては,両者は,色彩,直線の有無及び文字種の差異があるから,外観上,相紛れるおそれはない。
次に,称呼においては,本件商標の要部である本件文字部分から生じる「インターナショナルイーパケットライト」及び「コクサイイーパケットライト」の称呼と,引用商標から生じる「イーパケット」,「ユーエスピイエスイーパケット」及び「コマーシャルイーパケット」の称呼とは,「インターナショナル」,「ライト」及び「コクサイ」の称呼の有無の差異があるから,その構成音数,構成音の差異により,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。
さらに,観念においては,本件商標の要部である本件文字部分及び引用商標は,それぞれ特定の観念を生じないから,観念上,比較することができない。
したがって,本件商標の要部である本件文字部分と引用商標とは,観念において比較することができず,外観及び称呼においても,相紛れるおそれはないから,これらを総合的に勘案すれば,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(イ)小括
以上のとおり,本件商標の要部である本件文字部分と引用商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標であり,他に本件商標と引用商標が類似するとみるべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標と引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)出所の混同について
引用商標は,上記(1)のとおり,申立人又は同人の業務に係る役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。
また,本件商標と引用商標とは,上記(2)ウのとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,全体として別異のものとして認識されるものである。
してみれば,引用商標は本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認められず,また,本件商標と引用商標は別異の商標であるから,本件商標は,その指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者が,引用商標を連想,想起するようなことはないというべきであり,該役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 申立人の主張について
(1)申立人は,「本件商標を構成する語には『International』,『Light』,『国際』及び『ライト』という識別力を欠いたものが含まれるため,本件商標からは『イーパケット』という称呼も生じると考えられる。」旨を主張している。
しかしながら,上記1(2)アのとおり,本件商標の構成中,本件文字部分の「International」,「Light」,「国際」及び「ライト」のそれぞれの語が,本件商標の指定役務との関係において,出所識別標識としての称呼及び観念が生じないとまで認めるに足りる事情は見いだせないし,本件商標の構成中,本件上段文字部分はやや小さく緑色で同書同大に一体不可分に書され,3本の直線より構成されており,また,本件下段文字部分は黒色で一体不可分に書されており,両者は,両端がそろえられ,全体としてまとまりよく表されているものである。
そして,本件文字部分から生じる称呼も格別冗長とはいえないものである。
そうすると,本件商標の構成中「ePacket」又は「eパケット」の文字部分を分離抽出する理由はない。
(2)申立人は,「小包や文書を国際的に輸送・配達する事業者であり,引用商標を付した小包・文書が日本において配送されていることは容易に想像できる。・・・本件商標がやはり小包・文書に付されて国際的に輸送・配達された場合,本件商標を付した役務が申立人の役務であると需要者・取引者が混同する可能性は非常に大きいと考えられる。よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨を主張している。
確かに,本件商標の指定役務は,上記第1のとおりであり,引用商標の役務は,上記第2のとおりであるから,共に「輸送,配達」等の役務であることは認められる。
しかしながら,上記1(1)のとおり,引用商標は本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることもできないし,上記1(2)のとおり,本件商標と引用商標は,別異の商標であるから,本件商標は,その指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者が,引用商標を連想,想起するようなことはないというべきであり,該役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,例え申立人の役務が小包や文書を国際的に輸送・配達するものとしても,そのことが,上記判断を左右するものではない。
(3)したがって,申立人の上記主張は,それぞれ採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当せず,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきでものである。
なお,本件商標権者と申立人は,数回にわたり,交渉が継続しているため審理を猶予して欲しい旨の上申書を提出したが,本件登録異議の申立てから相当の期間が経過した現在においても,両当事者から具体的な進展があったこと等を示す書面の提出はなく,また,本件商標に係る商標権の申立人への移転等の事実も見いだせないことから,これ以上,本件の審理を遅延させるべき合理的な理由はないものと判断し,本件の審理を進めることとした。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 本件商標(色彩は,原本参照。)



異議決定日 2019-02-19 
出願番号 商願2016-90209(T2016-90209) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W39)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安達 輝幸柿本 涼馬 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 平澤 芳行
榎本 政実
登録日 2017-02-17 
登録番号 商標登録第5922701号(T5922701) 
権利者 日本郵便株式会社
商標の称呼 インターナショナルイイパケットライト、コクサイイイパケットライト、インターナショナルイイパケット、インターナショナル、コクサイイイパケット、コクサイ、イイパケットライト、イイパケット、ライト、イイエル 
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 

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