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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W21
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W21
管理番号 1349781 
審判番号 不服2017-9710 
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-02 
確定日 2019-02-21 
事件の表示 商願2015-101475拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第21類「蓋付きバケツ」を指定商品として,平成27年10月21日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
(1)本願商標は,胴体部分が側面及び上面の板に凹凸のある円柱であり,円弧状の取っ手の両端をそれぞれ円柱側面の対角線上の位置に接続した立体的形状からなるものであって,当該取っ手の片側の付け根付近にホースを通せる程の丸い穴が配されている。
そして,本願商標は,表面に溝が入っており,取っ手に穴があるとしても,それは商品の機能及び美感を発揮させるにすぎないから,本願商標の立体的形状は,「蓋付きバケツ」の機能又は美観を発揮させるための商品の一形態にすぎず,同種商品が一般的に採用し得る範囲内にとどまるものというのが相当である。
そのため,本願商標をその指定商品に使用しても,取引者・需要者は,単に商品の一形態を表示するにすぎないものと理解するにとどまり,自他商品の識別標識として認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人提出の証拠からは,本願商標の立体的形状を有する蓋付きバケツが,ある程度知られていることがうかがえるとしても,本願商標と同様の特徴を有する商品が広く取引されており,請求人による使用も「オムニウッティ」,「omnioutil」等の文字が表示されているもので,その形状を強調したものではない。
そのため,本願商標に接する取引者,需要者が,何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至っているとはいい難い。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。

3 当審においてした証拠調べ
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,バケツやゴミ箱,容器などの外周側面に,連続した凹凸形状を有している事例(別掲2)や,持ち手や突起などがない平板の蓋を有するバケツの事例(別掲3)を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項に基づき,請求人に対して,その結果を通知し(平成29年12月4日付け証拠調べ通知書),意見を求めた。

4 証拠調べに対する請求人の意見の要点
(1)別掲2(1)の商品は,請求人がOEM供給している商品であり,本願商標に係る商品である。
(2)別掲2(2)ないし(5)の商品は,ダストボックス又は陶器傘立てであり,本願の指定商品とは,同種商品とはいい難い又は非類似の商品である。仮に同種商品であるとしても,本願商標は,その指定商品の機能又は美感に資する目的のために採用されたものではない。
(3)別掲2(6)の商品にある凹凸形状は中身をアート感覚で魅せるもので,滑りにくくするためのものだが,本願商標は,他のバケツと識別するためのものであり,把手を持つため,滑りにくいという機能とは無関係である。
(4)別掲2(7)のゴミ箱の側面の凹凸は,本願商標の側面とは全く異なる。
(5)別掲3の商品は,持ち手や突起などがない平板の蓋を有する,本願の指定商品と同種商品であることに異存はないが,本願商標は,蓋の上面に,本体の側面と同様曲面からなる断面視波状の凹凸を連続して繰り返した模様があり,このような模様が付されていることに特徴がある。
(6)本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するとしても,使用により自他商品識別力を獲得するに至ったものであり,同条第2項の規定に該当する。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
ア 商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美観をより優れたものとする等の目的で選択されるものであって,直ちに商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識するのであって,商品等の出所を表示し,自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。
そうすると,客観的に見て,商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として,商標法3条1項3号に該当することになる。
また,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは,公益上適当でない。
よって,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,同種の商品等について,機能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,同号に該当するものというべきである(知財高裁平成29年(行ケ)第10155号 同30年1月15日判決参照)。
イ 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
(ア)本願商標の立体的形状
本願商標は,別掲1のとおり,(a)下側に向けてわずかにテーパー状に絞り込まれた円筒状の胴体に,(b)円形の平板状の蓋,(c)胴体上部に接続した半円弧状の細板よりなる持ち手(片方の付け根近辺には円孔がある。)を設けてなる立体的形状であって,(d)その胴体には縦方向に細かく連続した凹凸状の起伏を有し,蓋にも同様の凹凸状の起伏を施してなるものである。
(イ)蓋付きバケツの形状及び特徴について
a バケツは,「金属や合成樹脂などで作った,水などを入れる把手付きの桶状の器。」(広辞苑第6版 岩波書店)であるところ,同様の用途(物を入れる)に利用できる器(バケツ,ゴミ箱,容器など)の胴体を円筒状とし,下側に向けて絞り込まれたような形状とすることは,広く一般に行われている(別掲2(1)?(4))。
b 蓋付きバケツの蓋について,蓋をした状態での積み重ねを容易とするため,上面を持ち手や突起などのない平板な形状とすることは,広く一般に行われている(別掲3)。
c バケツや収納容器の持ち手を,半円弧状の細板とすることは,広く一般に行われており,その持ち手にホースを通して固定するための穴や装飾を施すものもある(別掲2(1),別掲3(4)?(6))。
d 器(バケツ,ゴミ箱,容器など)の胴体に,ストライプ模様とも称されるような,連続した凹凸形の起伏を施すことは,それぞれ起伏の高さや間隔などに相違はありながらも,広く一般に行われている(別掲2)。
e 請求人の製造,販売する蓋付きバケツは,上記(ア)のような特徴を備えているところ,それぞれの特徴は,「ダンボールの波々をモチーフにデザイン」,「耐荷重は150kg」,「蓋をすれば積み重ねができ」,「ハンドルにはホースを通せる穴があり,水圧で外れない工夫」(甲5),「段ボールをモチーフにした波形形状はデザインだけでなく耐久性UPにもひと役かっている」(甲33)などと紹介されている。
(ウ)判断
a 本願商標は,上記(ア)(a)から(d)に掲げる形状及び特徴を有する立体的形状であるところ,その指定商品との関係からも,蓋付きバケツの立体的形状を表してなるものと容易に理解できる。
そして,本願商標の胴体の形状(テーパー状,円筒状)及び蓋の形状(平板状)は,上記(イ)a及びbのとおり,商品形状として広く一般に採択されているもので,特に蓋の平板状の形状は,積み重ねを容易とするような機能面の役割をも果たすものであると理解できる。
また,本願商標の持ち手の形状(半円弧状の細板で,穴がある)は,上記(イ)cのとおり,商品の持ち手の形状としては広く一般に採択されているもので,そこに設けられた穴も,単純な円形のもので装飾としても特段の印象を与えるものではないばかりか,ホースを固定するという機能を果たすものと理解できる。
さらに,本願商標の胴体及び蓋の凹凸形の起伏は,上記(イ)dのとおり,ストライプ模様とも称されるような商品の模様として広く一般に採択されている程度のもので,装飾としても特段の印象を与えるものでもないばかりか,上記(イ)eのとおり,耐荷重性を確保するという機能面の役割も果たすものと理解できる。
b 以上のとおり,本願商標は,商品の形状として一般的に採択されている程度の形状及び特徴を組み合わせたものであって,全体としても,比較的すっきりした形状及び模様よりなる蓋付きバケツの立体的形状と認識されるにすぎないから,客観的にみても,商品の機能若しくは美感に資することを目的とした,又はそれらの目的からの形状の選択と予測し得る範囲の形状というべきで,これに接する需要者,取引者をして,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章と認識されるにすぎない。
(エ)請求人の主張
a 請求人は,本願商標のような蓋付きバケツは,本願商標を模倣した商品を除き,請求人の商品以外に例がなく,殊に,本体部と蓋に波状の突条を連続して繰り返した態様のものとすることは,同業者の蓋付きバケツには採用されておらず,他の同種商品に比べて独創的な特徴を有する旨,そして,その連続した波状の突条は美感を発揮させるものではあるが特徴的な形状をしており,自他商品識別機能を発揮する旨を主張する。
しかしながら,本願商標の凹凸状の起伏は,上記(ウ)のとおり,ストライプ模様とも称されるような連続した凹凸状の起伏を備える商品が一般に存在すること,また,上記(イ)eのとおり,請求人による美感及び機能に着目した商品紹介も踏まえると,独創的な形状というほどでもないことからすると,その需要者,取引者をして,商品等の機能(耐荷重性を確保)又は美感に資することを目的として採用されている形状であると十分予測し得る範囲のものである。
b 請求人は,当審が他者による使用例として掲げる事例は,請求人がOEM供給している商品であること,ダストボックスや陶器傘立てなど本願商標の指定商品とは異なる商品の使用例であること,異なる商品の使用例の凹凸状の起伏が本願商標の凹凸状の起伏とは全く異なり明確に識別できること,蓋付きバケツの蓋の上面に凹凸状の起伏を施す事例はないことから,これら事例によって本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当することはない旨を主張する。
しかしながら,請求人がOEM契約に基づき請求人商品を供給しているか否かに関わらず,請求人に係るOEM商品には他者のブランド名が当該商品の持ち手及び(又は)タグ上に明確に表示された上で販売されており,例え底板裏側に請求人の名称が刻印されているとしても,当該刻印は目に付きにくい商品の底板裏側に付されている上に商品の色彩と同色で表示されていることから(甲198?200),一般の需要者は外形から請求人との関係性を把握するのは困難である。そうすると,当該商品はその他者のブランドの下で使用されているものと単純に理解するというのが自然であるから,これを他人による使用例の一と評価することに,特段の支障はない。
また,当審が他者による使用例として掲げる事例が,本願商標の指定商品以外の使用例であり,その形状が多少異なるものであるとしても,一般の需要者は商品の形状や模様を商品分野ごとに関連付けて子細に記憶するとは考えにくいから,請求人商品と近似する商品(バケツ,ゴミ箱,容器など)に採択されているような形状及び特徴を,一般に採択されているものと評価することに,特段の支障はない。
さらに,蓋付きバケツの蓋の凹凸状の起伏による模様は,請求人がOEM供給している商品の蓋(別掲2(1))には採択されているもので(上記のとおり,OEM商品も他人による使用例の一と評価できる。),また,蓋と胴体の模様を揃えることはありふれた手法であり,上記(ウ)aのとおり,凹凸状の起伏が商品の模様として広く一般に採択されている以上,蓋に施された凹凸状の起伏も特段の印象を与えるものではない。
したがって,請求人の主張は採択できない。
(オ)小括
以上のとおり,本願商標は,その指定商品との関係において,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
ア 商標法第3条第2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみから成る商標として同条第1項第3号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができることを規定している。
そして,立体的形状から成る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否,当該商標が使用された期間,商品の販売数量,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮して判断すべきである。
なお,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要するが,機能を維持するため又は新商品の販売のため,商品等の形状を変更することもあり得ることに照らすと,使用に係る商品等の立体的形状が,出願に係る商標の形状と僅かな相違が存在しても,なお,立体的形状が需要者の目につきやすく,強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである(知財高裁平成29年(行ケ)第10155号 同30年1月15日判決参照)。
イ 本願商標の商標法第3条第2項該当性について
(ア)本願商標の使用実績
請求人の提出する証拠及び主張によれば,以下の事実が認められる。
a 請求人は,1993年(平成5年)1月20日に,蓋付きバケツ「オムニウッティ」を発売し,同一形状の商品は「way-be 801」,「way-be 102」,「カラーバケット 801」,「カラーバケット 102」,「フレイチェアーバケット」,「sceltevie」の「Omnioutil(オムニウッティ)」(以下「請求人商品」という。)等の名称でも販売している(甲1?4,8)。
請求人商品は,サイズや色彩にバリエーションがあるものの,いずれも上記(1)イ(ア)に掲げる本願商標の形状と共通する特徴を備えている(甲4)。
b 請求人商品(OEM供給品を含む)は,1998年(平成10年)から2013年(平成25年)の16年間で,売上額が約2億9千万円,売上数が約46万個で,最近5年間(2013年(平成25年)?2017年(平成29年))では売上額が約11億6千万円,売上数が約71万個である(甲6,196)。
c 請求人商品は,商品外観を示す写真に加え,多くは「Omnioutil(オムニウッティ)」などの名称とともに,2010年(平成22年)以降に発行された雑誌や新聞,例えば「Mart」,「ESSE」,「すてきな奥さん」,「nino’s」,「aene」,「novia novia」,「ELLE DECOR」,「EFiL」,「NHKテレビテキスト 趣味の園芸 やさいの時間」,「きょうの健康」,「ガーデン&ガーデン」,「NEW MINI STYLE MAGAZINE」,「Begin」,「monoマガジン」,「metropolitana」,「GetNavi」,「クロワッサン」,「MonoMax」及び「朝日新聞」などにおいて,商品紹介記事が掲載されている(甲12?36,68,158)。
上記掲載雑誌等の紹介記事の見出しには,「カラフルなバケツ型収納もおすすめ!」(甲12),「ビビッドカラーのアイテムと合わせてにぎやかに」(甲13),「バケツにもイスにもなる」(甲19),「部屋の差し色になる!おしゃれな収納バケツ」(甲20),「入れる,重ねる,座る・・・使い方は無限大!」(甲33),「カラフルバケツ 用途は色々」(甲68)などの記載がある。
d 請求人商品は,カタログ通信販売やインターネット通信販売,例えば「FAMiLY MAiL」,「キャロット」,「Moage」,「AS YOU LIKE」,「東急ハンズ カタログギフト」,「楽天市場」,「Amazon」,「ディノス」,「マイプレシャス」,「ライトアップショッピングクラブ」等のカタログに掲載されている(甲40?43,48?54,56?59の1,60,162,163)。
また,請求人商品は,QVCテレビ通販においても販売されている(甲71)
e 請求人商品は,2008年(平成20年)から2018年(平成30年)にかけて,日本国内の商品展示会,例えば「インテリアライフスタイルTOKYO」,「インテリアライフスタイルリビング」などに出展されている(甲75?88,109,112,117,132,180,186?191,207)。
上記の商品展示会及び見本市などに費やされた広告宣伝費用は,総額約4千3百万円(2009年?2018年)である(甲204)。
f 請求人商品の一つである「ウェイビー102」は,1994年(平成6年)に「グッド・デザイン商品選定証」を授与され,同年度に「グッド・デザイン中小企業庁長官特別賞」を受賞した(甲7,8)。
そして,請求人商品の一つである「オムニウッティ」は,「2010年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞し,その受賞商品の紹介記事には,「概要」として「一見何の変哲もないバケツのように思えますが,実は使い方は無限大。ダンボールの並々をモチーフにデザインし,オシャレでカラフルなカラーリングはインテリアのアクセントにもなります。」の記載が,「デザイナーのコメント」として「カラフルなカラーバリエーションがバケツ以外の用途を想像させ,収納としてインテリアとの調和にもつながり,幼児から大人まで幅広く受け入れられる結果となった。」の記載がある(甲9,10)。
g 請求人商品と共通する外観上の特徴を有する商品は,「通販のベルメゾンネット」においては「スツールバケツ」の名称で,「LACOLE」のウェブサイトにおいては「フタ付きスツールバケツ」の名称で,「familiar」のウェブサイトにおいては「バケツS(フタツキ)」の名称で,「niko and...」のウェブサイトにおいては「オリジナル OLD SMITH フタ付きバスケ」(OLD SMITH HARDWARE Co.,)の名称で,「TAKE YOUR CHOICE」においては「収納バケツ2個セット」及び「収納バケツセット」の名称で,販売されており,これらウェブサイトやカタログ等には請求人との関係性を示す具体的な記述はない(甲46,59の2,105,107,152,160,161)。
(イ)検討判断
a 請求人は,本願商標と実質的に同一の形状よりなる請求人商品を,平成5年の発売以降,長期間(25年)にわたり製造,販売しているところ,平成25年以前の販売実績(年間1千8百万円,約3万個)は決して販売規模が大きいとはいえないが,最近5年間(平成25年?同29年)の販売実績(年間2億2千万円,約14万個)は,ある程度まとまった販売実績があるといえる。
しかしながら,請求人商品の市場シェア等は不明であるから,請求人商品の販売実績を相対的な評価をもとに判断することはできない。
b 請求人商品は,平成22年頃から,商品展示会や見本市に出展され,雑誌や新聞等への掲載など,その周知を図るような活動が継続して行われていることが見て取れるものの,商品展示会や見本市は来場する取引者間における認識向上に寄与した可能性を示唆するとしても,一般の需要者の認識に対して直接的な影響を与えるものとは考えにくい。
また,雑誌や新聞記事等における商品紹介記事の内容にしても,「オムニウッティ」などの商品名を表示しつつ,その記事内容は,商品表面の凹凸状の起伏を含めて,多彩な色彩や機能面(重ねる,座るなど)などの多様な特徴が強調されていることから,これら掲載記事が,請求人商品のデザイン面を含む認知度の向上に寄与したとしても,何に関する認知度の向上に寄与したのか(商品名,請求人商品の形状,多様な色彩,多機能性など)は必ずしも明らかではない。
さらに,請求人商品を掲載するカタログや通信販売ウェブサイト等は,請求人商品を多数の取扱商品の中の一つとして掲載しているにすぎないから,その掲載のみをもって,需要者における請求人商品の形状に関する認知度の向上に寄与したものとは評価し難い。
c 本願商標の立体的形状の特徴(円筒状の胴体,平板な蓋,穴のあいた細板の持ち手,連続した凹凸状の起伏)は,蓋付きバケツの形状及び特徴として一般に採択されており,その形状自体が独創的なものとはいえない。
なお,請求人商品は,平成6年及び平成22年にデザイン賞を受賞しているが,段ボールをモチーフとした凹凸形状の模様に加えて,カラフルなカラーバリエーションなども評価されているから,カラーバリエーションなどを要素に含まない本願商標の形状との関係において,独創性がどのように評価されたのかは必ずしも明らかではない。
また,請求人商品と共通する外観上の特徴を有する商品は,「LACOLE」,「familiar」,「OLD SMITH HARDWARE Co.,」等の請求人以外の第三者によるブランド名の下で,請求人との関係性を積極的に示すことなく販売されているため,これに接する需要者,取引者をして,同様の形状が単に商品の一形状として採択されているとの印象を強めるものである。
加えて,請求人商品は,「way-be」や「Omnioutil(オムニウッティ)」の名称を中心としながら,その他にも「カラーバケット」,「フレイチェアーバケット」等の種々の名称で販売されるなど,特定ブランド名の下で統一的に販売されていないから,請求人商品に接する需要者,取引者の中には,上記のような第三者による使用例との間で区別がつかない場合があり得るというべきである。
d 以上を踏まえると,請求人商品は,長期間(25年)の販売期間があり,商品展示会等への出展や,雑誌や新聞等への掲載実績もあるものの,まとまった販売実績があるのは最近5年間(平成25年?同29年)にすぎず,雑誌等の記事内容も,請求人商品の多様な特徴に着目するため,その形状の認知度の向上に寄与した程度は不明であるから,その他の使用実績を踏まえても,我が国の需要者の間において全国的に周知,著名となるに至ったものとはいえない。
また,本願商標の形状自体は独創的なものでもなく,それと同一形状よりなる商品が第三者のブランド名の下で販売されており,請求人商品も統一的なブランド名の下で販売されていないから,このような多様な使用例に接する需要者にとっては,本願商標の形状と請求人又は請求人商品との関連性を直ちに関連付けて認識,把握することは困難な状況にある。
そうすると,本願商標は,使用をされた結果,その指定商品について,その需要者の間で,特定の者の業務に係る商品の出所を表示するものとして我が国において全国的に認識されるに至ったものとはいえず,請求人商品と同一形状よりなる商品が多数のブランド名の下で販売されているような状況を踏まえても,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえない。
(ウ)請求人の主張
a 請求人は,インターネット通信販売の購入者のレビューやブログ記事,インスタグラムの投稿等を提示して,中には請求人商品の凹凸形状について言及するものもあるため,その形状を目印として請求人商品を購入していること明らかである旨を主張する。
しかしながら,購入した商品がレビューやブログ記事,またインスタグラム等で紹介されているとしても,個別の投稿記事はあくまで購入者を中心とした個人の感想を示すにすぎず,一般需要者における認識の程度を客観的に示すものではないこと明らかであるから,これら個別の投稿記事等をもとに,一般需要者層における請求人商品の形状に関する周知,著名性の程度を客観的に評価することはできない。
b 請求人は,外国における展示会やブログ記事等を提示して,請求人は外国にも進出し,世界的にも本願商標の著名性が高まっている旨を主張する。
しかしながら,商標法第3条第2項の規定の適用において考慮すべきは,我が国の需要者における認識の程度であり,外国における使用実績は,我が国の需要者の認識に直接的な影響を及ぼさないこと明らかである。
c 請求人は,請求人商品を他社にOEM供給しており,その底板の裏側には請求人の社名を英文字で表記した「Hachiman kasei co.,ltd.」が刻印されているため,需要者が請求人の業務に係る商品と認識することができるものであり,これらOEM供給商品の販売によって,請求人商品の周知性が拡大し,請求人の業務に係る商品であるとの認識が拡大している旨を主張する。
しかしながら,OEM供給品は製造主体と販売主体が別々であるところ,当該商品が販売主体のブランドの下で販売されている以上,販売標としての出所は通常はその販売主体との関連性をもって理解されるというべきで,製造標としての表示が目に付きにくい商品の底板裏側に付されている上に商品の色彩と同色で表示されている(甲198?200)のであればなおさら,それらを製造主体である請求人による使用例としてではなく,販売主体である第三者による使用例と同等のものと理解することに特段の支障はない。
d 請求人は,請求人商品の市場シェアを示すため,「楽天市場」,「ヤフーショッピング」,「アマゾン」等の通信販売サイトにおけるレビュー数の比較から,請求人商品の市場シェアが高い旨を主張する。
しかしながら,商品のレビュー数から信用に足る市場シェアを推認することは到底できない。
エ 小括
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)まとめ
本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同法第3条第2項の要件を具備するものではないから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標。色彩については原本を参照。)







別掲2 バケツやゴミ箱,容器などの胴体(一部,蓋を含む。)に,連続した凹凸状の起伏を施している事例
(1)「LAKOLE」のウェブサイトにおいて,「フタ付きスツールバケツ(M)」の見出しの下,以下の商品写真が,「フタをして座れば,簡易スツールやサイドテーブルとしてもお使いいただけるバスケット。ハンドルにはホースを通す穴がついているので,水圧で外れないように工夫を施しました。」の記載とともに掲載されている。
http://www.dot-st.com/lakole/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=2749156



(2)「CAINZ ONLINE SHOP」のウェブサイトにおいて,「ダストボックス 26型 WH」の見出しの下,以下の商品写真が掲載されている。
http://www.cainz.com/shop/g/g4936695862479/



(3)「CAINZ ONLINE SHOP」のウェブサイトにおいて,「岩崎 カラードコレクターS アイボリー」の見出しの下,以下の商品写真が掲載されている。
http://www.cainz.com/shop/g/g4901126406027/



(4)「CAINZ ONLINE SHOP」のウェブサイトにおいて,「【trv】ルクレールコレクションS ホワイト」の見出しの下,以下の商品写真が掲載されている。
http://www.cainz.com/shop/g/g4974908621895/



(5)「Loft」のウェブサイトにおいて,「陶器傘立て スリム ストライプ」の見出しの下,以下の商品写真が,「飽きのこないストライプ模様がポイントです。」の記載とともに掲載されている。
https://loft.omni7.jp/detail/4903208079105



(6)「beau-p」のウェブサイトにおいて,「Fonte/フォンテ キッチンキャニスター」の見出しの下,以下の商品写真が,「波のような表面の凹凸はデザイン面では中身をアート感覚で魅せ,機能面では持ちやすく滑りにくくするなどの利点があります。」の記載とともに掲載されている。
http://www.beau-p.com/fs/beaup/ya139



(7)「dinos」のウェブサイトにおいて,「OBAKETSUカラーゴミ箱」の見出しの下,以下の商品写真が掲載されている。
https://www.dinos.co.jp/p/1110413828/?utm_source=google&utm_medium=PLA&utm_term=G28702&utm_campaign=AP1001



別掲3 持ち手や突起などがない平板の蓋を有するバケツの事例
(1)「tidy」のウェブサイトにおいて,「BUCKET[バケット]」の見出しの下,以下の商品写真が,「ふた付きなので積み重ねて置く事ができます。」の記載とともに掲載されている。
http://www.teramoto.co.jp/pages/tidy/seihin/bucket.html

(2)「BELLE MAISON」のウェブサイトにおいて,「スタッキングバケツ」の見出しの下,以下の商品写真が掲載されている。
http://www.bellemaison.jp/ep/srvlt/EPFB00/EPFB0005/dProdDtlShow?BELN_SHOP_KBN=100&KAT_BTGO=977576_441_2013_H



(3)「無印良品ネットストア」のウェブサイトにおいて,「ポリプロピレンバケツ・フタ付(7.5L)」の見出しの下,以下のような商品写真が掲載されている。
https://www.muji.net/store/cmdty/detail/4549337469334



(4)「like-it」のウェブサイトにおいて,「MP-03 マルチポット(L)」の見出しの下,以下の商品写真が掲載されている。
http://likestore.like-it.jp/products/detail.php?product_id=103



(5)「Finks」のウェブサイトにおいて,「CARRIE(キャリー) プラスチック マルチバケツ」の見出しの下,以下のような商品写真が,「定番人気のマルチバスケットに,フタ付きのバケツが仲間入り。積み重ねもできるので,幅広いシーンで活躍するはず。」の記載とともに掲載されている。
https://item.rakuten.co.jp/fink-s/gen-bucket/


(6)「RISU online shop」のウェブサイトにおいて,「FLOWER BUCKET」の見出しの下,以下のような商品写真が掲載されている。
https://item.rakuten.co.jp/risu-onlineshop/10000200/


審理終結日 2018-12-12 
結審通知日 2018-12-18 
審決日 2019-01-07 
出願番号 商願2015-101475(T2015-101475) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (W21)
T 1 8・ 13- Z (W21)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 智晴松田 訓子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 阿曾 裕樹
田村 正明
代理人 松井 勝義 

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