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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W2425
管理番号 1348965 
異議申立番号 異議2017-900343 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-15 
確定日 2019-02-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5974265号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5974265号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5974265号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成29年2月28日に登録出願,同年7月14日に登録査定,第24類「ハンドタオル,フェイスタオル,バスタオル,その他のタオル,タオルケット,タオルシーツ」及び第25類「被服(「和服」を除く。),靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),サンダルげた,その他のげた,草履類,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として,同年8月25日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第218号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 「甲子園」の語について
「甲子園」の語は,造語であることによる生来的な自他識別力とともに,「高校野球の春と夏の全国大会」及び「プロ野球の阪神タイガースの試合」における長年の使用によって,その自他識別力が維持・強化されていることにより,本件商標の登録出願以前に,「野球場」の固有の名称として著名となっている。また,「KOSHIEN」の語は,「甲子園」の語をローマ字表記したものと直感され,実際に申立人や申立人から許諾を受けた者等が使用している。
さらに,申立人又は申立人から許諾を受けた者が,各種のグッズに,本件商標と同一又は類似の「I」の文字とハートの図形及び「Koshien」の文字を組み合わせた商標を使用している。
2 本件商標は申立人の著名商標「甲子園」又は「KOSHIEN」と類似するものであること
本件商標は,申立人の著名商標「甲子園」とそのローマ字表記である「KOSHIEN」と類似する。
3 本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであること
かかる事情の下で,申立人と何ら関係のない者である本件商標権者に,「KOSHIEN」の語を含む本件商標の使用を,その指定商品について独占させることは,一般公衆の認識に反し,商道徳上問題があるばかりでなく,公衆を混乱させ,公正な商取引秩序を乱すおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであること
本件商標は,その指定商品に使用された場合には,需要者をして,当該商品は申立人の業務に係るもの,あるいは申立人から許諾を受けた者等の申立人と何らかの関係にある者の業務に係るものであるかの如く誤認・混同を生じさせるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものであること
本件商標権者が,申立人の著名商標「甲子園」又は「KOSHIEN」と類似する本件商標を使用すれば,申立人の著名商標「甲子園」又は「KOSHIEN」に化体した信用,名声,顧客吸引力等を毀損させるおそれがあり,更には,本件商標権者が,申立人の著名商標「甲子園」又は「KOSHIEN」に便乗して不正な利益を得ようとしていることも明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号にも該当する。
6 まとめ
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当する。

第3 当審における取消理由
当審において,本件商標権者に対して平成30年3月29日付けで通知した取消理由の内容は,要旨以下のとおりである。
本件商標は,その構成中に,申立人が運営する「阪神甲子園球場」の略称として著名な「甲子園」のローマ字表記である「KOSHIEN」の文字を含むから,これを本件商標権者がその指定商品について使用した場合,これに接する需要者をして,申立人又はその業務に係る野球場の名称「阪神甲子園球場」との関連性を連想,想起させ,その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 本件商標権者の意見
審判長は,上記第3の取消理由を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,本件商標権者は,何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
証拠,申立人の主張及び職権調査によれば,次の事実が認められる。
(1)「甲子園」の周知,著名性について
ア 申立人が,大正13年(1924年)に,当時の兵庫県「武庫郡鳴尾村」に建設した野球場の名称は,同年の縁起の良い干支「甲子」にちなみ,「甲子園大運動場」とされ,その後,昭和39年(1964年)2月に,現在の「阪神甲子園球場」に変更された(甲2)。
申立人の事業展開は,「鉄道事業」のほか,「不動産事業」,「スポーツ・レジャー事業」等に及んでおり,「スポーツ・レジャー事業」と関連して,「阪神甲子園球場」の運営を行っている(甲8,職権調査)。
イ 「阪神甲子園球場」では,高校野球,アメリカンフットボール,プロ野球,コンサート・イベントなど多様な興行が催されている(甲2)。
高校野球との関係では,夏の全国大会が大正13年(1924年)から,春の全国大会がその翌年から開催されており,平成28年(2016年)の入場者数は,夏の大会で約84万人(15日間開催),春の大会で約53万人(12日間開催)とされる(甲2?4)。
また,「阪神甲子園球場」では,プロ野球球団「阪神タイガース」のホームグラウンドとしても毎年多数の当該球団が主催するプロ野球の試合が行われており,その入場者数は,平成28年度には年間63試合で,約262万人とされる(甲6)。
ウ 上記の高校野球の全国大会やプロ野球球団「阪神タイガース」の主催する野球の試合が「阪神甲子園球場」で開催されて観衆を集めるとともに,それらの野球の試合は,全国的に,テレビやラジオで放送され,各種の新聞や雑誌,インターネット上で報道されている(顕著な事実)。
エ 上記の高校野球の全国大会との関連において,「甲子園」の文字は,「阪神甲子園球場」の略称として,新聞記事に「甲子園の土を踏む」(甲59,65,71,72),「甲子園に出る」(甲60,63,66,67,69),「高校球児夢の舞台・甲子園」(甲77),「甲子園出場」(甲92,93),「夢にまで見た甲子園」(甲100),「念願の甲子園」(甲103)及び「聖地・甲子園」(甲109)等のように記載されている。
また,プロ野球との関連において,「甲子園」の文字は,「阪神タイガース」のホームグラウンドである「阪神甲子園球場」を指すものとして,多くの新聞記事に「甲子園に巨人を迎え」(甲81),「甲子園に戻って来ます,・・・」(甲82),「甲子園の大観衆」(甲84)及び「甲子園も,歴史と伝統のある球場。」(甲102)等のように記載されている。
オ 上記アないしエによれば,申立人が運営する野球場である「阪神甲子園球場」は,設立以来90年以上の歴史を有し,特に高校野球の全国大会やプロ野球の開催場所として多数の観衆を集め,当該球場で開催される野球の試合等の多様な興行は,日本全国に,長期間にわたり多様なメディアを通じて報道されており,当該野球場の名称は「甲子園」の略称でも広く紹介されている。
そうすると,「甲子園」の文字は,本件商標の登録出願日及び登録査定日はもとより,現在においても,申立人が運営する「阪神甲子園球場」の略称として,我が国において広く認識されているものと認められる。
(2)申立人の業務に係る「甲子園」又は「KOSHIEN」を表記した商品について
ア 申立人に係るウェブサイト「阪神甲子園球場オフィシャルオンラインショップ」においては,「甲子園グッズ販売中!!」と表示して,「小物,タオル,飾りバット・ボールケース,文具,キーホルダー・ストラップ,メガホン,衣料,帽子・ハット」など種々の商品が販売されており,それら商品の中には,「甲子園」の文字又は「HANSHIN KOSHIEN STADIUM」の欧文字を表示するものがある(甲10)。
また,申立人の運営する「阪神甲子園球場」では,申立人の管理の下,「甲子園」の名称を冠した,飲食物(「甲子園カレー」,「甲子園やきそば」,「甲子園黒カレー」,「甲子園塩やきそば」,「甲子園寿司」)や「甲子園グッズ」(「甲子園観戦らくらくバットセット」,「甲子園観戦らくらくベースセット」)などの商品が販売されている(甲13?15)。
イ 申立人とのライセンス契約の下,「甲子園」の名称を冠した,「甲子園カレーラーメン」(エースコック(株)),「甲子園ハイチュウ」(森永製菓(株)),「甲子園うまい棒」(阪神コンテンツリンク(株)),「甲子園に行ってきました!プリントクッキー」(ナガトヤ(株)),「甲子園焼きショコラ」(コロンバン(株)),「baseball junkyめざせ甲子園シリーズ」((株)1009),「甲子園iPhoneケース」,「甲子園バスマット」,「ライン引き修正テープ」(シャープ産業(株)),「WOWGRAM 甲子園キーホルダー」((株)アーティエンス・ラボ)などの商品が販売されている(甲11)。
ウ 申立人が運営する「阪神甲子園球場」が発行した「選抜高校野球大会」及び「全国高校野球選手権大会」の「Goods Catalog(グッズカタログ)」(甲16?26)には,その表紙に「甲子園」及び「Koshien」の文字が表示されるとともに,当該カタログ中には,「甲子園」の文字が表示された「キャップ,ハット,タオルハンカチ,スポーツタオル,マフラータオル,Tシャツ」等を含む各種商品が掲載され,また,「KOSHIEN(Koshien)」の文字が,例えば,「キャップ」(甲16)「携帯クリーナー」(甲17?19,21),「Tシャツ」(甲21?26),「タオルパーカー」(甲22),「トートバッグ」(甲22,23,26),「タオル」(甲23),「ユニホーム型クッション」(甲23,24),「カラーマフラータオル」(甲24,25),「マスキングテープ及びコースターセット」(甲24),「冷感タオル,マグネットセット及びぬいぐるみキーホルダー」(甲26)などに表示されている。
エ 上段に「I」の文字とその右側にハート型の図形を,その下段に「KOSHIEN」の文字を表したロゴが,「阪神甲子園球場オフィシャルグッズカタログ」において,「ゴーフレット」(甲18?26),「せんべい」(甲18),「ミニクッション」(甲22)のほか,マグカップやコースターなどの「甲子園グッズ」と関連して表示されている(甲24,7葉目)。
オ 上記アないしエからすれば,「甲子園」及びローマ字表記した「KOSHIEN(Koshien)」の文字は,申立人の業務に係る阪神甲子園球場オフィシャルオンラインショップで販売される商品,商品カタログ及び各種商品について広く使用されており,中には,以下に詳述する本件商標と共通した構成要素を有するロゴも用いられていることが認められる。
(3)本件商標と「甲子園」の表示との類似性の程度
ア 本件商標は,別掲のとおり,上段に「I」の文字とその右側に赤色のハートの図形を表し,その下段に「KOSHIEN」の文字を表した構成からなるところ,その構成態様からは,上段と下段とで,視覚上,分離して看取される上,下段の文字部分は,著名な野球場の略称「甲子園」のローマ字表記である「KOSHIEN」と同一の文字構成からなるため,当該文字は,上段の「I」の文字及び赤色のハートの図形に比し,これに接する者に,比較的強い印象を与えるものである。
そうすると,本件商標は,「KOSHIEN」の文字部分から,「コウシエン」の称呼をも生じ,著名な野球場である「阪神甲子園球場」の観念を生じる。
イ 申立人の使用に係る「甲子園」の表示からは,「コウシエン」の称呼を生じ,著名な野球場である「阪神甲子園球場」の観念を生じる。
ウ 本件商標と申立人の使用に係る「甲子園」の表示とを比較すると,その構成において「I」及びハートの図形の有無において相違するものの,本件商標の構成中,比較的強い印象を与える「KOSHIEN」の文字部分と,申立人の使用に係る「甲子園」とは,称呼及び観念を同じくし,外観においても,漢字とそのローマ字表記の差異にすぎないから,本件商標と「甲子園」の表示との類似性の程度は比較的高いというべきである。
(4)申立人の使用に係る「甲子園」の表示の独創性について
申立人の使用に係る「甲子園」の文字は,上記(1)のとおり,申立人が命名し,及び運営する「阪神甲子園球場」の名称に使用され,その略称として広く認識されているから,独創性は高いものである。
(5)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品等との関連性について
本件商標の指定商品は,第24類「ハンドタオル,フェイスタオル,バスタオル,その他のタオル,タオルケット,タオルシーツ」及び第25類「被服(『和服』を除く。),靴類(『靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具』を除く。),サンダルげた,その他のげた,草履類,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴(『乗馬靴』を除く。)」であるところ,これらの商品と,「甲子園」と関連した申立人の業務に係る各種商品とは,共通する商品が多数存在すること,かつ,需要者が共に一般消費者であることから,その関連性の程度は比較的高いものと認められる。
(6)出所の混同のおそれについて
上記のとおり,「甲子園」の文字は申立人が運営する「阪神甲子園球場」の略称として広く認識されていること,「甲子園」の文字又はローマ字表記した「KOSHIEN(Koshien)」の文字が使用される申立人の業務に係る各種商品と本件商標の指定商品との関連性の程度は比較的高いこと,本件商標と「甲子園」の文字との類似性の程度は比較的高いこと及び「甲子園」文字の独創性が高いことを考慮し,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,その構成中に,申立人が運営する「阪神甲子園球場」の略称として著名な「甲子園」のローマ字表記である「KOSHIEN」の文字を含む本件商標は,これを本件商標権者がその指定商品について使用した場合,これに接する需要者をして,申立人又はその業務に係る野球場の名称「阪神甲子園球場」との関連性を連想,想起させ,その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,その他の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく,同法第43条の3第2項により,その登録は取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲(本件商標)色彩については原本参照


異議決定日 2018-12-21 
出願番号 商願2017-32198(T2017-32198) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W2425)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 忠司 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 瀬戸 俊晶
早川 文宏
登録日 2017-08-25 
登録番号 商標登録第5974265号(T5974265) 
権利者 株式会社ライズ
商標の称呼 アイラブコーシエン、アイコーシエン、コーシエン 
代理人 特許業務法人R&C 

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