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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) Z30
管理番号 1347928 
判定請求番号 判定2018-600025 
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 判定 
2018-07-24 
確定日 2019-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2288027号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「菓子及びパン」に使用する(イ)号標章は、登録第2288027号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第2288027号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり「日向夏」の文字を縦書きしてなり、昭和63年2月18日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品して、平成2年12月26日に設定登録され,その後、同14年3月13日に指定商品を「菓子・パン」とする指定商品の書換登録がされたものである。

第2 イ号標章
請求人が商品「菓子及びパン」について使用する標章(以下「イ号標章」という。)は、「日向夏ゼリー」の文字を横書きしてなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 判定請求の必要性
「日向夏」は、江戸時代に発見され、宮崎県を代表する柑橘類の一つとして知られており、「日向夏」といういわゆる柑橘植物の名称は、普通名称として用いられ、パンや菓子を問わず、様々な食品の原材料として用いられている。
被請求人は、平成3年頃に、指定商品を「菓子・パン」として商標「日向夏」について商標権を得た。そして、その後、請求人が、「日向夏」のピューレ、果汁、パウダー等を原材料として供給している顧客が、これを原材料として、商品を製造販売した際に、被請求人から、商標権侵害であるとして警告を受けることが発生している。
したがって、請求人の顧客がイ号標章を「菓子及びパン」について安心して使用することができないから、判定請求を申し立てることとした。
2 イ号標章の説明
前記第2のとおり。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属しないとの説明
(1)「日向夏」が普通名称であること
「日向夏」は、柑橘類の普通名称である。
「日向夏」が、宮崎県、静岡県、高知県などで生産される柑橘類であることが記載されている(甲1)。
また、旧行政管理庁が発行した日本標準商品分類(昭和30年3月改定)には、既に「中分類04-食用植物粗製品」の中で、「日向夏なつみかん(”Hyuganatsu”)」の記載がされている(甲2)。周知のとおり、上記日本標準商品分類は、日本における取引の際の一般的名称を示すものであり、この商品分類に記載されていれば、普通名称であることは明らかである。
さらに、「日向夏」の名称が市場でも使われるようになったのが、戦後の昭和40年代に入ってのことである旨が記載されており(甲3)、「日向夏」は、遅くとも昭和40年代において普通名称であると認識されていたといえる。
このようなことから、「日向夏」という名称は、普通名称として認識され、例えば、日向夏を原材料として使用した食品が一般的に流通している(甲4)。
(2)イ号標章が「菓子及びパン」の品質(原材料)を普通に用いられる方法で表示するにすぎないこと
ア 「菓子」について
イ号標章は、「菓子」の品質(原材料)を表示するにすぎないものである。例えば、「日向夏ゼリー」を使用した菓子の販売事例が現に存在する。特に、商標「日向夏ゼリー」が付されたフルーツゼリー(菓子)が現に販売されており(甲5)、当該商標は、当該商品が「日向夏のゼリー」であること、すなわち、その品質を示すにすぎないものである。
イ 「パン」について
イ号標章は、「パン」の品質(原材料)を表示するにすぎないものである。例えば、珈琲ゼリーを使用したパンや黒みつゼリーを使用したパンが販売されており(甲6、甲7)、これら珈琲ゼリーや黒みつ以外にも国内大手製パンメーカーによる「日向夏ゼリー」を使用したパンの販売事例が現に存在し、インターネット検索エンジンにて、「日向夏ゼリー」と「パン」のキーワードの積で検索すると多数ヒットする。
ウ 小括
以上のとおり、イ号標章は、「菓子及びパン」の品質(原材料)を普通に用いられる方法で表示するものであるから、商標法第26条第1項第2号に該当し、本件商標の商標権の効力範囲に属しないことが明らかである。
(4)本件商標の類似範囲について
本件商標は、別掲のとおり「日」、「向」及び「夏」の三文字を縦に並べて構成されているが、その文字間隔が極端に広く設けられており、特異な形態となっている。
そうすると、前述のとおり、「日向夏」は柑橘類の普通名称であり、食品類の原材料であるから、本件商標は、「菓子及びパン」について使用する場合には、その外観のみについて識別力が生じる。
そして、本件商標とイ号標章とを対比すると、文字数及び文字間隔が相違し、その外観において大きく異なる。
すなわち、両者は非類似と判断されるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、上記第3の請求人の主張に対して、何ら答弁するところがない。

第5 当審の判断
1 イ号標章について
イ号標章は、前記第2に記載のとおり、「日向夏ゼリー」の文字を横書きしてなるものであり、その文字の態様も、その書体に特徴を有するものではないので、普通に用いられる方法で表示してなるものである。
そして、イ号標章の構成中、「日向夏」の文字は、柑橘類の普通名称であり(甲1?甲3)、また、「ゼリー」の文字は、「菓子」又は「菓子及びパンの原材料」を表すものである。
そうすると、「菓子及びパン」に使用する「日向夏ゼリー」の文字からなるイ号標章は、これに接する取引者、需要者が、「日向夏を用いたゼリー」又は「日向夏を用いたゼリーを原材料とする商品」を表したものと容易に理解、認識するものといえる。
してみれば、イ号標章は、本件商標の指定商品「菓子・パン」の品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するものであるから、商標法第26条第1項第2号に該当する商標(標章)といわざるを得ないものである。
2 結び
してみれば、商品「菓子及びパン」に使用するイ号標章には、本件商標の商標権の効力は及ばない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲(本件商標)


判定日 2018-12-17 
出願番号 商願昭63-17444 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (Z30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 中束 としえ
大森 健司
登録日 1990-12-26 
登録番号 商標登録第2288027号(T2288027) 
商標の称呼 ヒューガナツ、ヒナタナツ 
代理人 長友 慶徳 
代理人 今中 崇之 

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