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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W1825
審判 一部申立て  登録を維持 W1825
管理番号 1346178 
異議申立番号 異議2018-900017 
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-15 
確定日 2018-10-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第5990450号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5990450号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5990450号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年4月27日に登録出願,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,かばん金具,がま口口金,蹄鉄,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,愛玩動物用被服類,皮革」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」,並びに,第14類,第24類,第35類,第36類,第37類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同年9月22日に登録査定,同年10月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当するとして登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第1117130号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,2012年(平成24年)3月27日に国際商標登録出願,第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成25年3月15日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標の指定商品中,第18類「全指定商品」及び第25類「全指定商品」について,本件商標は商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標と引用商標
本件商標は,正方形の枠内に,極太の線で描かれたアルファベットの「S」を,左方向に45度傾けて表したものである。
引用商標は,極太の線で描かれたアルファベットの「S」からなるものである(甲2)。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標と引用商標の相違点は,本件商標のアルファベットの「S」がすべて直線から成るのに対し,引用商標は,その四隅に当たる部分が若干丸みを帯びていること,また,上述のとおり,本件商標が傾いて表されていることである。これらの相違点はあるものの,本件商標と引用商標の双方から「エス」という共通の称呼,「アルファベットのS」という共通の観念が生じる。また,極太の線で描かれたアルファベットの「S」という特徴を共有しているため,外観上も類似するものといえる。
よって,本件商標と引用商標は,称呼,観念及び外観のいずれの点においても類似するものであり,商標法第4条第1項第11号に該当する。
なお,本件商標と引用商標の相違点のうち「傾き」という相違点については,不服2012?14791の審決において,「本願商標と引用各商標は(中略)全体としては,S字型の図形の角度を違えて回転させたにすぎず,構成上の特徴を共通にするものであるから,構成の軌を一にするものであるといわざるを得ない」としている(甲3,5,6)。本件商標と引用商標も,商標の構成上共通の特徴を有することから,傾きがあることを理由として両商標が類似しないと判断されるべきものではない。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性
引用商標を付した商品が日本で多数販売されており,引用商標は,かばんを中心とした多くの商品に付されている(甲7)。第18類「かばん,キーケース,財布及びカード入れ」(甲8の1?25,9の2,10の1?5)及び第25類「ベルト」(甲9の1?4)の各商品に引用商標が付されて販売されている。
引用商標を付した商品を紹介する文章もインターネット上に掲載されている。セラピアンのサイト上では,「『セラピアン』のバッグがリッチな旅を彩る」(甲11)として,引用商標が付されたボストンバッグが紹介されている。大手百貨店である大丸札幌店の社員による「shop sataffによるファッションブログ/こだわり男の憂鬱」でも,申立人であるセラピアンのかばんが取り上げられており,そのかばんの持ち手がかばん本体に縫い付けられている部分に引用商標が付されている(甲12)。
これらの商品は,百貨店のみならず,通信販売でも購入することができる。TOKYOlife(東京ライフ)のサイトでは,大丸札幌店の社員によるブログで紹介されていたかばんと同じものが掲載されており,日本全国の消費者が購入できるようになっている(甲13)。
ここ5年間における,引用商標の付された申立人の商品の日本における売上高(概数)は,以下のとおり(平成30年8月17日付け上申書)。
平成26年度:約118万円,平成27年度:約1358万円,平成28年度:約1800万円,平成29年度:約2843万円及び平成30年度:約3254万円である。
このように,引用商標を付した申立人の商品が多数販売されて,上記のような売上を達成している中で,引用商標と類似する本件商標を付した商品を目にした需要者及び取引者は,それらの商品が申立人の業務に係る商品と混同するおそれがある。
よって,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知・著名性について
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。
(ア)申立人は,1923年にイタリア・ミラノでステファノ・セラピアンが創業した企業であり,高級レザーバッグ等を製造,販売している(甲11)。
(イ)日本では,百貨店及びインターネットによる通信販売等を介して,そのパーツに極太の線で描かれたアルファベットの「S」からなる引用商標と同一又は類似の商標(以下,これらをまとめて「引用商標等」という。)を付したボストンバッグやトートバッグが販売されている(甲11?13)。
(ウ)申立人の商品について,平成30年4月16日付けで印刷された「セラピアン」のサイト上で,「・・・バッグは,銀幕のスターや英国王室など世界中のセレブリティから愛されている。」と紹介(甲11),また,平成29年3月8日付けの百貨店である大丸札幌店のファッションブログ上で,「イタリアの職人の高い技術で作られ,高級感溢れるデザインが特徴です。」及び「現在でも多くの著名なスタイリストやセレブに愛され続けています。」と紹介されている(甲12)。
(エ)甲第7号証ないし甲第10号証(枝番含む。)は,引用商標等を付したかばんを中心として,財布,ベルト,キーケース等の商品の写真が示されている。しかしながら,当該写真の撮影日,撮影場所等は明らかでない。
イ 以上によれば,申立人は,1923年にイタリア・ミラノでステファノ・セラピアンが創業した企業であり,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国において引用商標等を付したかばん等を,百貨店及びインターネットによる通信販売等を介して販売を行っていたことが認められる。
しかしながら,申立人は,引用商標が使用されている商品の販売規模や市場全体に占める程度,広告宣伝の規模や範囲,引用商標が使用されている期間などを具体的に示しておらず,引用商標が日本国内においてどの程度知られているのか客観的に把握することができない。なお,申立人は,引用商標等を付した平成26年度から平成20年度の売上高が約118万円ないし約3254万円である旨主張するが,これを裏付ける証拠の提出はない。
したがって,申立人の提出する証拠によっては,引用商標等が付された,商品「かばん」等が我が国で取引されていたとはいえても,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標が,申立人又は申立人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標は,別掲1のとおり,正方形の輪郭の内側に,輪郭の各一辺の中点に接するように四隅を接して,四隅が角張った一定の幅の肉太線で表した「S」文字状の図形を斜めに傾けて表してなるところ,これらを組み合わせた全体は,一体に表された一種の幾何学的図形を表したものと認識され,特定の事物や意味を表したとはいえないものであるから,特定の称呼及び観念は生じない。
(イ)引用商標は,別掲2のとおり,四隅に丸みを持たせた「S」文字状の図形を肉太線で表してなり,当該図形を構成する水平に表された肉太線は,上下の線に比して中央の線がやや幅広に表されている。そして,引用商標は,欧文字「S」を表したものと直ちに認識するというよりは,一種の幾何学的図形表したものと認識され,特定の事物や意味を表したとはいえないものであるから,特定の称呼及び観念は生じない。
(ウ)本件商標と引用商標を比較すると,その外観において,本件商標が輪郭内に「S」文字状の図形を含み,引用商標が「S」文字状の図形から構成されるものであるとしても,両者を全体で見れば正方形の輪郭の有無において明らかに相違し,本件商標の「S」文字状の図形と引用商標を比較しても,図形の傾きの有無,四隅の表現の相違,及び肉太線の構成の点において,明確な差異を有するものであり,全体の印象が異なるものであって,外観上明らかに区別し得るものである。
そして,称呼及び観念については,両商標は,特定の称呼及び観念は生じないことから,比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標は,称呼及び観念においては比較することができず,外観において明瞭に区別できるから,これらを総合的に考察すると,両商標は類似するということはできない。
イ 以上のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,本件商標と引用商標の指定商品の比較をするまでもなく,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 引用商標の周知性について
上記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務又は申立人の業務に係る商品を表示する商標として,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものとはいえないものである。
イ 本件商標と引用商標との類似性について
上記(2)アにおいて検討したとおり,本件商標と引用商標は,称呼及び観念において比較することはできず,外観において明らかに相違し,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ 引用商標の独創性等について
引用商標は,全体として欧文字「S」を肉太にデフォルメした図形を表してなり,「S」の欧文字を想起させる場合があるとしても,特徴的なデザインで顕著に表されていることから,十分に商品の識別標識として認識され得るものであり,その独創性が低いということはできない。
エ 出所の混同のおそれについて
上記アないしウのとおり,引用商標は,独創性が低いということはできないとしても,申立人の取扱いに係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているものとはいえない。
そして,本件商標は,引用商標と非類似の商標であり,本件商標の指定商品・役務と申立人商品の関連性や需要者の共通性について考慮しても,その需要者,取引者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断すれば,本件商標に接する取引者,需要者が,引用商標及び申立人使用標章ないしは申立人を連想又は想起するものということはできない。
したがって,本件商標は,その取引者,需要者をして,当該商品が申立人又は同人と業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとは認められない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標



別掲2 引用商標



異議決定日 2018-10-18 
出願番号 商願2017-60040(T2017-60040) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W1825)
T 1 652・ 261- Y (W1825)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 小出 浩子
瀬戸 俊晶
登録日 2017-10-20 
登録番号 商標登録第5990450号(T5990450) 
権利者 株式会社 Overseas
商標の称呼 エス 
代理人 大石 皓一 
代理人 岸本 高史 
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 

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