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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W35
管理番号 1346091 
審判番号 不服2018-3951 
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-20 
確定日 2018-10-29 
事件の表示 商願2016-12862拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成28年2月5日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『腰部からお辞儀状に前にかがんだ下半身のマネキン』に『ボトムス』を着用した形状からなる立体商標であるところ、本願の指定役務においては、小売等役務の取扱商品である『被服』が『マネキン』を用いて展示されることは広く行われており、また、『マネキン』については、全身のものだけに限らず、『頭部のみ』、『上半身のみ』あるいは、『下半身のみ』など体の一部分により構成されるものも広く用いられている。さらに、マネキンは、ポーズについても魅力的に見せるためのポーズをとらせた状態で使用されるといえる。そうすると、本願商標は、本願の指定役務の取扱商品を魅力的に展示し購買意欲を起こさせるための展示方法の一形態として認識されるに止まるというのが相当であって、需要者が、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、かがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する下半身のマネキンに、ズボンを着用させた立体的形状からなるものである。
また、本願の指定役務は、「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であるところ、該役務との関係において、通常、小売店においては、販売されている被服を着用した状態で、下半身のマネキンを含む等身大のマネキンがその売場において展示用のディスプレーとして普通に使用されているものである。
そして、例えば、靴下の小売を行う店舗においては、爪先立ちの足部分のみのマネキンに靴下を着用させて展示したり、手袋の小売を行う店舗においては、手及び手首部分のみのマネキンに手袋を着用させて展示したりと、被服の小売における業界においては、商品のシルエットや特徴が需要者に理解されやすいように、各種の部分的なマネキンに、個々の取扱商品を着用させて展示することは一般に行われていることである。
ところで、本願商標に係る立体的形状は、かがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する下半身のマネキンに、ズボンを着用させたものであるところ、拒絶理由において示したウェブサイトの情報に加え、例えば、別掲2のウェブサイトの情報においては、ズボン等の被服を着用させて展示するための下半身のマネキンを含む様々なポーズのマネキン又はポーズを自在に変えられるマネキンが製造、販売されており、また、実際に、被服の小売等を行う店舗においても、様々なポーズのマネキンにズボン等の商品を着用させて展示することが行われている。
そして、そのウェブサイトの情報(1)ないし(4)によれば、下半身のみの形状からなるマネキンの商品の説明として、例えば、「長めに設計されたウエストは股上の浅いパンツを強調し、女性らしいスタイリッシュな演出が可能です」、「浮いたかかとはヒールなどのディスプレイがより自然に」、「美しく強調されたヒップラインでパンツファッションをセクシーにディスプレイ」等の記載が認められることから、それぞれの下半身のマネキンの立体的形状は、ズボンを着用させて店舗等で展示した際に、そのズボンのシルエット等の特徴を強調し、ズボンの機能や美感を際立たせ、魅力的に見せるために選択されているものと認められる。
また、そのウェブサイトの情報(4)ないし(9)によれば、実際に、被服の小売等を行う各店舗においても、例えば、子供服を取り扱う店舗においては、子供服に適した形状の下半身のマネキンに、男性向けの被服を取り扱う店舗においては、男性向けの被服に適した形状の下半身のマネキンに、それぞれのズボンを着用させて、客の目を引くような位置に設置して展示することが普通に行われている。
そうしたことからすれば、下半身のマネキンにズボンを着用させた立体的形状は、それに着用させたズボンのシルエット等の特徴を強調し、ズボンの機能や美感を際立たせ、魅力的に展示するためのものとして理解されるものであって、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
また、かがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する下半身のマネキンは、上記したとおり、様々なポーズをとったマネキンや、手や足のみのマネキンという風に種々の形状、形態のマネキンが存在することからすれば、本願商標における下半身のマネキンが有する腰部やかかと部分の形状がそれ程特異なものとは認められないものであって、マネキンとしての形状を超えた特異なものということができない。
そうすると、かがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する下半身のマネキンに、ズボンを着用させた立体的形状からなる本願商標は、その下半身のマネキンの立体的形状と全く同一の形状のものが他に存在しないとしても、これをその指定役務に使用したときは、取引者、需要者は、本願商標の指定役務の取扱商品である被服のうちズボンのシルエット等の特徴を強調し、ズボンの機能や美感を際立たせるための展示用のディスプレーとして理解するものであるから、これを展示方法の一類型と認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識し得ないものである。
してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 使用による識別力の獲得について
請求人は、本願商標が仮に商標法第3条第1項第6号に該当するものであるとしても、長年使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であると認識することができる旨を主張し、証拠方法として、原審において、第1号証ないし第16号証を、当審において第1号証ないし第29号証を提出しているので、以下、検討する。
なお、原審で提出された証拠は、当審で提出された証拠と同様の内容のものがあるため、以下で示す証拠番号は、当審で提出された証拠である(括弧内における証拠番号は、以下「1号」のように省略する。)。
(1)請求人の主張及び請求人が提出した証拠によれば、以下のことが認められる。
ア 請求人は、1999年4月にストレッチ素材を用いたストレッチパンツの販売を開始し、本願商標に係る立体的形状は、2000年3月にストレッチパンツ専門店「ビースリー」第1号店をオープンして以来、当該「ビースリー」店の広告塔として継続して使用されている旨を主張しているところ、本願商標が、2000年3月からその使用を開始されていることを証明する客観的な証拠の提出はされていない。
イ 2016年11月4日現在、ストレッチパンツ専門店「ビースリー」は、北海道から沖縄県まで全国254店舗(その後、若干減少)、海外では4店舗を展開している(12号)。
ウ 請求人は、「ビースリー」各店舗においては、本願に係る立体的形状が客の目を最も引く形で展示され、また、その使用方法は全国的な統一が図られているとして、ズボンを着用させた下半身のマネキンが展示された各店舗内の写真(13号、14号)を提出しているところ、該写真によれば、各店舗においては、複数のマネキンが設置されており、各マネキンに着用させたそれぞれのズボンは、色彩、模様、形状が様々に異なるものであって、その設置方法についても、マネキンの設置台数、設置場所、マネキンの設置方向等が各店舗で異なっている。
エ 請求人は、2014年に、創業20周年記念事業の中心に本願商標を据えてキャンペーンを大々的に行い、その際、パンツを購入した客にヒップボディマスコットを計14万個配布するなどして販促に努めたとして、資料(17号)を提出しているところ、本願に係る立体的形状と同一性を有する画像が掲載されているのは資料の2葉目と3葉目であって、2葉目は、本願商標と同一性を有する立体的形状5つが、それぞれに異なる様々な色彩のズボンを着用させた態様で、横一列に並べられており、それらを背景にして、「ストレッチパンツ専門店ビースリー」の文字が記載されているものであり、3葉目は、本願商標と同一性を有する立体的形状が、白色のズボンを着用させた態様で掲載されており、その画像の上に重ねるようにして、大きく「魔法のパンツ/さらっと爽やか/パンツのひみつ/春夏の『はく化粧品』/クールジョーゼット/B3 B-Three」の文字が記載されている。
また、客に14万個配布したとされるヒップボディマスコットは、様々な色彩のズボンを着用させた下半身のマネキンの立体的形状からなるところ、本願商標に係る立体的形状とは、マネキンのかがめた腰の角度、ふくらはぎより下の部分の有無、着用させたズボンの色彩及び形状において、明らかに異なるものである。
オ 請求人は、2016年3月からは公式LINEスタンプ「ビースリーちゃん♪」を販売しているとして、資料(19号)を提出しているところ、当該LINEスタンプの見出しとして一番上に表示されている画像は、黄、ピンク、黄緑の各色のズボンをそれぞれに着用させた、片足を大きく振り上げたポーズの3体の下半身のマネキンの図からなるものであり、その他のスタンプの画像も、様々な色彩のズボンを着用させて、石を蹴飛ばす、足を組んで椅子に座る等の様々なポーズの下半身のマネキンの図からなるものであって、本願商標に係る立体的形状とは、その構成及び態様が明らかに異なる図からなるものが多数ある。
カ 請求人は、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の主要各紙に年5?6回ほどの一面広告を掲載し、雑誌にも定期的に年5?6回ほどの広告を掲載し続けてきたとして、新聞広告7件(20号、22号)及び雑誌広告7件(21号)を提出しているところ、これらのうち、新聞広告においては、本願商標と同一性を有する立体的形状が比較的目立つ態様で独立して使用されていると認められるものは1件のみであり(22号の2葉目)、その他の広告のうち5件(20号の1?4葉目、22号の1葉目)は、本願商標と同一性を有する立体的形状は、それぞれ、大きく記載された「魔法のパンツで美しく」、「あったか魔法のパンツ」、「魔法のパンツの秋祭り」、「誕生L.B.W/LENGTH BIJIN WIDE PANTS」等の文字及び紙面の半分以上の大きさで掲載された人間にズボンを着用させた写真とともに、それぞれに異なる色彩のズボンを着用させた態様で、小さく掲載されているものであり、残りの広告(20号の5葉目)についても、本願商標と同一性を有する立体的形状6つが、大きく記載された「『魔法のパンツ』の春祭り」の文字及び紙面の約半分の大きさで掲載された人間にズボンを着用させた写真とともに、それぞれに異なる様々な色彩のズボンを着用させた態様で、横一列に並べられて掲載されているものである。
また、雑誌広告においては、本願商標と同一性を有する立体的形状が、赤又はベージュのズボンを着用させた態様で、中央に掲載されているものが5件あるものの(21号の2、4、8、10、12葉目)、残りの2件には、「ビースリーの『魔法のパンツ』」、「きちんとした『お出かけスタイル』で本領発揮!」の文字の記載及び人間にズボンを着用させた写真の掲載があるのみで、本願商標に係る立体的形状は全く掲載されていない。
キ 請求人は、請求人の業務に係る商品に関するカタログを年2回発行しているとして、該カタログの写し13件(23号)を提出しているところ、該各カタログの発行部数や発行時期は不明である。
そして、いずれのカタログにおいても、本願商標と同一性を有する立体的形状は、それぞれに異なる色彩のズボンを着用させた態様で掲載されているものであって、そのうちの5件(23号の1、3、4、6、10葉目)は、本願商標と同一性を有する立体的形状が、「B3 B-Three」、「一度はいたらやめられない/魔法のパンツ」、「あったか魔法のパンツ」等の文字及び大きく掲載された人間にズボンを着用させた写真とともに、小さく掲載されているものであり、また、そのうちの他の2件(23号の5、7葉目)は、複数の本願商標と同一性を有する立体的形状が、大きく記載された「一度はいたらやめられない/魔法のパンツ」の文字とともに、それぞれに異なる様々な色彩及び形状のズボンを着用させた態様で、横一列に並べられて掲載されているものである。
ク 請求人は、請求人の業務に係る商品に関するテレビコマーシャルとして2013年から全6種類(第1回?第6回)のものが全国的かつ頻繁に放映されてきたとして、そのスケジュールを示す資料(24号)を提出し、該コマーシャル6件の内容を示す動画サイトのURLを請求書に記載しているところ、該資料によれば、テレビコマーシャルが放映された地域は、大阪、北海道、仙台、関東、静岡、名古屋、関西、広島、福岡であり、その放送期間はいずれの地域においても、2013年4月5日から4月18日であって、全6種類のコマーシャルのうち、いずれのものがどの地域、期間に放映されたのかについては、不明である。
そして、上記の動画サイトによれば、6種類のコマーシャルは、いずれも14秒ないし15秒間放映されるものであるところ、第3回のコマーシャルの内容は、白いズボンを着用した人間等及び「魔法のパンツ」、「B3 B-Three」等の文字の映像が流れるのみであって、本願商標と同一性を有する立体的形状の映像は一切見当たらない。
また、その他の5種類のコマーシャルについては、いずれも、本願商標と同一性を有する立体的形状が、それぞれに異なる色彩のズボンを着用させた態様で使用されているものの、そのうち3件のコマーシャル(第1回、第2回及び第6回)の内容については、本願商標と同一性を有する立体的形状の映像が流れるのは最後の1秒間又は2秒間のみであり、いずれも、「B3 B-Three」、「美脚ストレッチパンツ専門店」等の文字とともに、それぞれに異なる色彩のズボンを着用させた3つのマネキンの映像が、同時に流れるものである。
(2)判断
前記アないしウの事実によれば、請求人は、請求人の業務に係る商品を、仮に、2000年3月から、全国のストレッチパンツ専門店である「ビースリー」店において販売していたとしても、各店舗においては、かがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する複数の下半身のマネキンに、様々な色彩、模様、形状からなるズボンをそれぞれに着用させて、店舗内においてズボンのディスプレーとして展示している。
そして、請求人による上記マネキンに係る本願商標の各店舗における使用開始時期、使用数量等に関する客観的証拠は何ら提出されていない。
また、請求人が、全国的な統一が図られていると主張する本願商標の各店舗における使用方法については、その具体的内容に関しては不明であるところ、提出された証拠によれば、各店舗におけるマネキンの設置台数、設置場所、マネキンの設置方向、マネキンに着用させるズボンの色彩や形状等は、それぞれに異なって使用されているものであるから、本願商標が、他人の業務に係る役務と識別できるほどに、統一された特徴的な方法で使用されているものと認めることはできない。
次に、広告宣伝については、前記カないしクの事実によれば、請求人は、本願商標と同一性を有する立体的形状を表示した新聞、雑誌、カタログの配布、テレビコマーシャルによる広告を行っていることが見て取れるものの、提出された証拠は、新聞が7件、雑誌が7件とそれほど多いものとはいえず、カタログについては発行部数や発行時期は不明であり、テレビコマーシャルについても、全国的に放送されているとしても、放送期間については2013年4月5日から4月18日の14日間と限定されており、継続的に放映されてきたものとは認められないうえ、全6種類のコマーシャルのそれぞれの放送スケジュールや、各コマーシャルの視聴率等は不明である。
また、それらの広告における本願商標の使用態様についても、本願商標と同一性を有する立体的形状は、いずれも、それぞれに異なる様々な色彩及び形状のズボンを着用させた態様で使用されており、また、「B3 B-Three」、「魔法のパンツ」等の文字及び人間にズボンを着用させた写真等とともに小さなサイズで使用されているものや、複数の該立体的形状が、それぞれに異なる様々な色彩及び形状のズボンを着用させた態様で、横一列に並べられて掲載されているものも多数ある。
さらに、前記エのとおり、2014年に、パンツを購入した客にヒップボディマスコットを計14万個配布するなどして販促に努めたとしても、それはただ1回だけである。
そうすると、かがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する下半身のマネキンに、ズボンを着用させた立体的形状からなる本願商標は、請求人の業務に係る様々な種類のズボンを上記マネキンに着用させて展示することによって、それらのズボンが有するそれぞれの特徴や機能を強調し、また、需要者が、請求人の業務に係るズボンの範囲内で、他の種類のズボンとその特徴を比較検討しやすくするために使用されており、さらに、広告にもズボンの広告として表示されているものである。
以上のことからすれば、本願商標は、被服の小売又は卸売の業界において、特定の者の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者、取引者の間で広く認識されているものということはできないから、その立体的形状が独立して、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものということができない。
したがって、本願商標は、その指定役務について長年使用をされた結果、需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるものとは認められない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、「拒絶査定の失当性」において、「『商品等の機能又は美感に資する目的』のために採用されたものとは、『専ら』そのように採用されたものと解すべきである。なぜなら、・・・現実の取引において、取引者が立体商標の採用を『商品等の機能又は美感に資する目的』か、『自他商品・役務を識別する目的』かの二者択一で行うことはあり得ないためである。実際のところ、取引者は、『商品等の機能又は美感に資する目的』を重視しつつ、『自他商品・役務を識別する目的』を達成しようとするのである。そもそも請求人の属するファッション業界において、『商品等の機能又は美感に資する目的』を度外視してその立体商標の採用を行うことなど、あり得ない。したがって、立体商標識別力の認定にあたっては、『商品等の機能又は美感に資する目的』か、『自他商品・役務を識別する目的』かを択一的にではなく、その比重と、当該目的の達成度とにおいて見るべきである。」旨を主張している。
また、請求人は、「すなわち、『ヒップ部分を強調しつつ脚長効果を発揮させるため、腰の上部から両脚のつま先までの部分(美脚シルエット)から構成される特製マネキンの形状に、履き替えさせることが可能な1商品を着用状態で示した構成よりなる』本願立体商標の採用において、『商品等の機能又は美感に資する目的』の考慮が働いたのは先述のとおり当然のことであるが、そのような主観的な態様が問題とされるのであれば、より重要になるのは、請求人が本願商標の採用の際、同時に、『自他小売等役務を識別する目的』も考慮されたかという比較衡量である。その上でさらに重要になるのは、そのようにして採用された本願商標が現に自他小売等役務について識別機能を発揮しているかという客観的な事実の認定である。」旨を主張している。
しかしながら、上記によれば、請求人は、「現実の取引において、取引者が立体商標の採用を『商品等の機能又は美感に資する目的』か、『自他商品・役務を識別する目的』かの二者択一で行うことはあり得ない・・・そもそも請求人の属するファッション業界において、『商品等の機能又は美感に資する目的』を度外視してその立体商標の採用を行うことなど、あり得ない。したがって、立体商標識別力の認定にあたっては、『商品等の機能又は美感に資する目的』か、『自他商品・役務を識別する目的』かを択一的にではなく、その比重と、当該目的の達成度とにおいて見るべきである。」などと述べるところであるが、請求人の採用した本願商標の立体的形状は、提出された証拠によれば、その店舗において、下半身のマネキンに商品であるズボンを着用させて、被服のディスプレーとして展示していることが明らかであって、それとは別にこれを立体商標として、「自他小売等役務を識別する目的」も考慮した展示方法がされているとは見て取れないものである。
そうすると、請求人の主張とは相違する被服のディスプレーとして展示している本願商標の立体的形状の使用によっては、その主張を首肯することができない。
また、請求人は、「本願立体商標の採用において、『商品等の機能又は美感に資する目的』の考慮が働いたのは先述のとおり当然のことである」と述べており、加えて、「主観的な態様が問題とされるのであれば、より重要になるのは、請求人が本願商標の採用の際、同時に、『自他小売等役務を識別する目的』も考慮されたかという比較衡量である。その上でさらに重要になるのは、そのようにして採用された本願商標が現に自他小売等役務について識別機能を発揮しているかという客観的な事実の認定である。」と述べるところであるが、採用された立体的形状が、識別標識として機能し得るか否かについては、これに接する需要者の認識において判断されるべきものであるところ、請求人が本願商標の採用の際、「自他小売等役務を識別する目的」も考慮されたかという比較衡量については、識別力の判断において、考慮されるものではないし、重要なものでもない。そして、採用された本願商標が現に自他小売等役務について識別機能を発揮しているかという客観的な事実の認定は当然のことであり、前記1のとおり、その認定をしているものである。
さらに、請求人は、「『マネキン様のもの』が『いかなる形状をも取り得る』というのは事実誤認である。マネキンの材質は様々だが(現在は強化プラスチックのものが多い)、硬質なものが殆どであり、姿勢(ポーズ)を若干変更できるとしても、その取り得る姿勢の範囲は非常に限られている。審査官は、『マネキンには様々な形状のものがある』または『様々な形状のマネキンを製造し得る』という意味で述べたのかもしれないが、であるなら、それは特にマネキンに限られず、おおよそあらゆるものに当てはまる。また、『マネキンには様々な形状のものがある』とはいえ、上述のとおり、請求人が望む形状のマネキンは存在しなかったため、本願立体商標に係るマネキンは特注されたのであり、その事実にも、本願商標中のマネキンがありふれた立体的形状の範囲を超えていたことが示されている。」旨を主張している。
しかしながら、例えば、別掲2のウェブサイトの情報(10)及び(11)によれば、ヨガ、テニス、サイクリング、格闘技、サーフィンなど、様々なスポーツにおけるポーズを模した、大胆な動きを表した形状のマネキン又は形状を自在に変えられるマネキンが、製造、販売されており、それらのマネキンに、それぞれのスポーツに適した被服を着用させて、その被服のディプレーとして展示されている。
そして、同ウェブサイトの情報によれば、様々なスポーツにおけるポーズを模した形状のマネキン又は形状を自在に変えられるマネキンの商品の説明として、例えば、「各売り場、商業施設のニーズに合わせた、最適なマネキンをローコストにて製造・開発いたします。」、「スポーツマネキンに限らず、ご要望に応じてオリジナルマネキンの開発を低コストで行います。」、「腕の各関節強度が従来品よりも高くなり、バットやラケット等をしっかりと『にぎり』、思い通りの位置に『保持』することが可能になりました。」、「股関節は180°近く回すことができる上、左右に大きく広げることも可能です。」等の記載が認められる。
そうすると、マネキンは、それに着用させる被服のシルエット、機能、実際に着用した際のイメージ等を需要者によりわかりやすく伝え、被服の小売等を行う企業等の個別の要望に応じて商品を魅力的に見せ、購買意欲を起こさせるために、いかなる形状をも取り得るものというのが相当である。
したがって、本願商標におけるかがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する下半身のマネキンの立体的形状は、請求人が特注して製造したものであったとしても、「ありふれた立体的形状の範囲を超えていた」ものであると認めることはできない。
(2)請求人は、「本願立体商標の構成における独自性」において、「本願立体商標がその使用の当初から自他商品・役務識別機能を発揮していたことの根拠は、何より、本願立体商標に備わった特徴を組み合わせてなる形状のマネキンが他に存在していなかったという端的な事実である。・・・このような本願立体商標の使用方法は、単に当該商品を魅力的に見せ購買意欲を起こさせるための単なる展示方法であるに止まらず、通常の被服の展示方法の範囲を超えて、自他の小売等役務について識別機能を有することを前提とし、また、統一的な識別機能を事実としても発揮しているところである。本願立体商標の構成上の識別性は、現在では消費者の間で後述のように高い認知度を獲得し、請求人の広告塔にもなるに至る前提であり、また、識別性と認知度(周知度)は表裏の関係にあるものである。」旨を主張している。
しかしながら、前記(1)のとおり、本願商標に係る立体的形状は、需要者が予測し難いような特異な形態を備えているものとは認められないものであって、その使用方法についても、上述のとおり、各店舗において全国的に統一が図られているとは認められないものである。
そして、例えば、別掲2のウェブサイトの情報(10)及び(11)によれば、テニス用の被服の展示のためにマネキンにテニスラケットを握らせてスイングのポーズを保持させたり、陸上競技用の被服の展示のためにマネキンを空中に浮かせて背面跳びのポーズを保持させたりと、被服の小売等を行う店舗においては、ディスプレーする被服の用途、機能に応じて、その被服の特徴が最も効果的に需要者に伝わるように、様々な形状からなるマネキンが用いられており、客の目を引くように展示されている。
以上のような、被服の小売等の業界におけるマネキンの使用の実情を考慮すれば、本願商標に係る立体的形状の特徴を組み合わせてなる形状のマネキンが他に存在していなかったとしても、被服の小売等役務について本願商標に係る立体的形状を使用することは、「通常の被服の展示方法の範囲を超えている」とは認めることができないものであって、本願商標が、自他役務の識別機能を発揮しているということはできない。
(3)請求人は、「長年の使用により強化された商標の識別性」において、「請求人が1999年4月に上述のストレッチ素材を用いた美脚ストレッチパンツの販売を開始し、2000年3月にストレッチパンツ専門店『ビースリー』第1号店を神戸元町にオープンして以来、本願立体商標は当該ビースリー店の広告塔として継続して使用されている。当該専門店は2006年11月には既に100店舗に達し、2013年には男性用ストレッチパンツ専門店『ビースリーMEN』第1号店をオープンするなど、本願商標はその使用によっても識別力が強化されている。」旨を主張している。
しかしながら、上記したとおり、請求人が、請求人の業務に係る商品を、2000年3月から、全国のストレッチパンツ専門店である「ビースリー」店において販売していたとしても、各店舗においては、かがんだ腰部からかかとを上げた足までの形状を有する複数の下半身のマネキンに、様々な色彩、模様、形状からなるズボンをそれぞれに着用させて、店舗内においてズボンのディスプレーとして展示しているものであって、広告塔としての使用とはいえないものである。
そして、請求人による上記マネキンに係る広告塔としての本願商標の各店舗における使用開始時期、使用数量等に関する客観的証拠は何ら提出されていない。
また、男性用ストレッチパンツ専門店である「ビースリーMEN」における上記マネキンの使用状況ついても、証拠は何ら提出されていない。
そうすると、請求人が提出した証拠からは、広告塔としての本願商標に係る立体的形状が、その使用によってどのように識別力が強化されたのか不明である。
(4)請求人は、「独立調査機関による本願立体商標の認知度調査」において、「請求人による以上のような営業活動および宣伝広告活動により、本願立体商標は関連する需要者・取引者の間で全国的な周知著名性を獲得し、以下の外部調査機関ないしコンサルティング会社によるブランド認知度の調査結果においてもその点が裏付けられている。」旨を主張している。
しかしながら、上記のブランド認知度の調査について請求人が提出した証拠(26号?29号)においては、調査の結果をまとめた図表や調査対象人数等が示されているものの、調査に用いられた「ヒップマネキン画像」及び「ヒップボディ」が具体的にどのようなものであったかを含む設問内容の詳細等が示されておらず、それらの調査結果に至った具体的な調査手法が把握できないものであるから、請求人が提出したこれらの証拠は、本願に係る立体的形状そのものが、需要者・取引者の間で全国的な周知著名性を獲得していると認めるに足りるものであるということは出来ない。
よって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本願商標(縮尺については、原本参照。)

別掲2
(1)「YAHOO!ショッピングJAPAN」の「マネキントルソーの店ディスプランの」ウェブサイトにおいて、「パンツトルソー 下半身ボディ レディース レッグマネキン 円形ベース ハイウエストタイプ ストッキング パンツスタイルの展示に最適 FP31-86」の見出しの下、商品の説明として、「ジーンズ、ボトムスなどのパンツディスプレイに最適なパンツトルソーです。長めに設計されたウエストは股上の浅いパンツを強調し、女性らしいスタイリッシュな演出が可能です。・・・流れるように伸びるウエストのラインがとても魅力的で、浮いたかかとはヒールなどのディスプレイがより自然に♪裾の短いパンツも美しくディスプレイ出来る、効果的なパンツディスプレイマネキンです」の記載とともに、ズボンを着用させ、ヒップ部分を斜め後方にやや突き出すポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://store.shopping.yahoo.co.jp/displan/fp31-86.html)

また、同ウェブサイトにおいて、「パンツトルソー 下半身ボディ ウレタン製 アイボリーレイヨン 専用スタンド 可動式 関節が曲がる ポーズが取れる SD121」の見出しの下、商品の説明として、「モデルのような着こなし♪女性らしさをアピールするショートウエストのパンツトルソー☆ジーンズ、ボトムスなどのパンツディスプレイに最適なパンツトルソーです。ノーマルサイズのウエストは幅広いパンツに対応し、女性らしいスタイリッシュな演出が可能です。・・・流れるように伸びるウエストのラインがとても魅力的で、浮いたかかとはヒールなどのディスプレイがより自然に♪裾の短いパンツも美しくディスプレイ出来る、効果的なパンツディスプレイマネキンです♪」の記載とともに、「パンツファッションをカッコよく演出」の見出しの下、ズボンを着用させ、ヒップ部分を斜め後方にやや突き出すポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://store.shopping.yahoo.co.jp/displan/sd121.html)

(2)「楽天市場」の「キットマネキン」のウェブサイトにおいて、「LOW PRICE TORSO/ロープライス パンツ・トルソ/FP10N」の商品の説明として、「美しく強調されたヒップラインでパンツファッションをセクシーにディスプレイ」の記載とともに、ズボンを着用させ、ヒップ部分を斜め後方に突き出したポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://item.rakuten.co.jp/kit-eshop/10000089/)

(3)「スポーツマネキン 販売 レンタル 専門サイト/SPORTS MANNEQUIN.COM」のウェブサイトにおいて、「男性スポーツマネキン/下半身トルソー SPM-UB002」の見出しの下、「男性スポーツ下半身トルソー(ランナータイプ)」の記載とともに、両足のかかとを上げ、膝を曲げて走行中の様なポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(http://www.sports-mannequin.com/product/man/spm-ub002.html)

(4)「SUCCESS SHOP」のウェブサイトにおいて、「キッズ パンツトルソー 子供 つりさげタイプ I-M-M10[I-M-M10]」の見出しの下、商品の説明として、「子供用のパンツトルソーになります。・・・形を自在に変えることも可能です。」の記載とともに、片足のかかとを上げ膝を曲げた子供の下半身のマネキンの画像及びズボンを着用させて展示された様々なポーズの子供の下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(http://www.inter-success.com/product/247)

(5)「株式会社高島屋」の「京都タカシマヤ」のウェブサイトにおいて、「京都レディスファッション通信/夏のお出かけは涼やかなホワイトデニムで!」の見出しの下、「AGのホワイトスキニーパンツ」の紹介として、ズボンを着用させて展示された、つま先を上げて腰を前にかがめたポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://blog-kyoto.takashimaya.co.jp/ladies2/post/27874)

(6)「いばナビ」のウェブサイトにおいて、「Right-on ひたちなかファッションクルーズ店」の見出しの下、「人気のジーンズを多数展開中です。」の記載とともに、ズボンを着用させて店舗内に展示された様々なポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://ibanavi.net/shop/412/)

(7)「日経トレンディネット」のウェブサイトにおいて、「エドウインが日暮里に巨大旗艦店をオープン。ベビー服から高級ジーンズまで、カスタマイズ工房も/2008年4月25日」の見出しの下、ズボンを着用させて店舗内に展示された様々なポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20080425/1009939/?P=2)

(8)「FASHION HEADLINE」のウェブサイトにおいて、「バーニーズ新宿店、メンズフロア改装。エレベーター前コーナーで訴求」の見出しの下、ズボンを着用させて店舗内に展示された、かかとを高く上げて足を広げたポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://www.fashion-headline.com/article/7799/79815)

(9)「コスモスClub」のウェブサイトにおいて、「ジーンズショップ カワグチ」の店内の紹介として、ズボンを着用させて店舗内に展示された下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(http://www.cosmos-club.com/2011/06/post-63.html)

(10)「株式会社エスティファイブ」のウェブサイトにおいて、「各売り場、商業施設のニーズに合わせた、最適なマネキンをローコストにて製造・開発いたします。」の見出しの下、「株式会社エスティファイブでは、主に、スポーツショップを中心に、動きのあるスポーツマネキンの製造・開発、販売を行っており、売り場のイメージを的確にお客様にお伝えするお手伝いをさせて頂いております。」の記載がある。
(https://st-five.co.jp/)
また、同ウェブサイトにおいて、「詳しくはこちら」をクリックすると表示される頁には、「スポーツマネキンに限らず、ご要望に応じてオリジナルマネキンの開発を低コストで行います。こんなマネキンが欲しいのに何故ないのだろうと思ったら、ぜひお気軽にお問い合わせください。」の記載があり、「実績/2014年度販売実績3,000体以上」の見出しの下には、被服を着用させて展示された、様々なスポーツ等の動きを模したポーズの、等身大等のマネキンの画像が多数掲載されている。
さらに、同頁の「stfive.55/@ST5_MANNEQUIN/ランニングの下半身です。#ランニングマネキン #下半身マネキン #マネキン #スポーツマネキン」の下には、ズボン等を着用させた、走行中の様なポーズの下半身のマネキンの画像の掲載がある。
(https://st-five.co.jp/service)

(11)「manekinya.com」のウェブサイトにおいて、「動きを演出するマネキン」である「レディース・スポーツサンドール(9号・アイボリートリコット)」の商品の説明として、「腕の各関節強度が従来品よりも高くなり、バットやラケット等をしっかりと『にぎり』、思い通りの位置に『保持』することが可能になりました。」、「頭部は前後左右に可動します。」、「首も自由な角度に曲げることができ、さらに180°近く『ひねる』ことも可能です。」、「腕は360°回転可能です。」、「股関節は180°近く回すことができる上、左右に大きく広げることも可能です。」等の記載とともに、被服を着用させて展示された、様々なスポーツの動きを模したポーズの等身大のマネキンの画像の掲載がある。
(http://www.manekinya.com/shopdetail/000000000932/ct404/page1/recommend/)

審理終結日 2018-08-30 
結審通知日 2018-08-31 
審決日 2018-09-13 
出願番号 商願2016-12862(T2016-12862) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 秀敏 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 渡邉 あおい
榎本 政実い
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 

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