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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W41 審判 全部申立て 登録を維持 W41 審判 全部申立て 登録を維持 W41 審判 全部申立て 登録を維持 W41 |
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管理番号 | 1345052 |
異議申立番号 | 異議2018-900115 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-05-07 |
確定日 | 2018-09-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6017944号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6017944号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6017944号商標(以下「本件商標」という。)は,「GCEG」の文字を横書きしてなり,平成29年6月8日に登録出願,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,国際会議の企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,通信を用いて行う映像又は画像の提供,映画の上映・制作又は配給,通信を用いて行う音楽又は音声の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定役務として,同30年1月19日に登録査定,同年2月9日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議申立ての理由に引用する標章は,「GCEG」の文字からなるものであり,「国際経済地理学会議(The Global Conference on Economic Geography)」の略称であると申立人が主張するものである(以下「引用商標」という。)。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第15号及び同第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は,世界的に周知著名な「国際経済地理学会議(The Global Conference on Economic Geography)」の略称としても周知著名な「GCEG」の文字からなるものであるところ,当国際会議の中心メンバーに無断で出願・登録したものであって,著しく社会的妥当性を欠く剽窃的な出願であり,公序良俗を害するものであるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。 2 商標法第4条第1項第10号について 本件商標は,周知著名な国際会議の略称を表した引用商標と同一又は類似するものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について 本件商標は,周知著名な国際会議の略称を表した周知著名な引用商標と同一又は類似するものであり,その指定役務に使用された場合,他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるものであるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標法第4条第1項第19号について 本件商標権者は,当国際会議が主題とする「経済地理学」の分野の研究者である上に,本件商標が指称する会議が世界的に周知著名であることや,いかなる会議であるかも熟知している立場にある者であることよりすれば,本件商標は,周知著名な国際会議の略称を表した引用商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標であるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について 申立人の提出に係る証拠(甲2?甲16)及び同人の主張を総合すると,「国際経済地理学会議(The Global Conference on Economic Geography)」(以下「国際会議」という。)は,(1)経済現象を地域・空間という概念を通して説明し,解明しようとする「経済地理学」という学問分野を主題としていること,(2)国際会議は,過去5回の大会が開催されていること,(3)国際会議は,一般に「学会」と呼ばれるものではあるが,特定の運営団体があるわけではなく,また,恒常的な事務局が国内外のいずれかの場所に設置されているわけでもなく,固定した会員がいるわけでもないこと,(4)国際会議は,大会ごとに善意を持った研究者たちのボランティア的な活動で運営され,歴代コアメンバー(中心となるメンバー)が中心となって検討を重ね,次回開催の場所と年次を直近の大会において発表するというスタイルをとってきたこと,(5)「GCEG」の文字は,国際会議の英語表記「The Global Conference on Economic Geography」の欧文字の頭文字からなる国際会議の略称として使用されていたことがうかがえる。 しかしながら,国際会議は,初めて開催された2000年以降から2018年に至るまで合計5回の開催(2000年,2007年,2011年,2015年,2018年の5回)がされているものの,各回の参加者は,第1回大会が30か国,約200名(甲3),第4回大会が50か国,約700名(甲5)及び第5回大会が60か国,約500名(甲6)の参加にとどまり,かつ,経済地理学の関係者に限定されている専門的な分野における会議であるから,これらの事実にのみによって,国際会議の略称である引用商標が,我が国及び外国において,広く知られていたものということはできない。 また,申立人提出の証拠によれば,引用商標について,「4th GCEG」(甲5),「GCEG 2018」(甲6)と表示されていることが認められるが,これらの証拠を検討しても,引用商標が何人の業務に係る役務について使用されたか,引用商標が使用された具体的な役務の範囲,当該役務の取引量,引用商標の使用開始時期及び使用期間,使用地域,宣伝広告の事実等が明らかとはいえず,客観的な使用事実に基づいて引用商標の使用状況を把握することができないから、引用商標の周知著名性の程度を推し量ることができない。 さらに,その他,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国及び外国において,特定の者の業務に係る具体的な役務を表示するものとして,周知著名性を獲得していたと認めるに足りる証拠も見いだすことはできない。 したがって,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く知られていたと認めることはできない。 2 本件商標と引用商標の類似性について (1)本件商標について 本件商標は,前記第1のとおり,「GCEG」の欧文字からなるところ,その構成態様は,同書,同大,同間隔に表されており,外観上,まとまりよく一体的に看取,把握されるというのが相当である。 また,本件商標は,その構成文字に相応して,「ジーシーイージー」の称呼を生じるものである。 さらに,「GCEG」の文字は,辞書等に載録のない語であって,一般に親しまれた意味を有する成語ということもできないから,本件商標は,その構成全体をもって特定の意味合いを有しない造語を表したものと認識されるとみるのが相当であり,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は,「GCEG」の欧文字からなるところ,その構成態様は,同書,同大,同間隔に表されており,外観上,まとまりよく一体的に看取,把握されるというのが相当である。 また,引用商標は,(1)と同様に,「ジーシーイージー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標との類否について検討するに,外観においては,本件商標と引用商標は,同一の綴りからなるものであるから,外観上,同一又は類似するものである。 次に,称呼においては,両商標は,共に「ジーシーイージー」の称呼を生じるから,称呼上,同一のものである。 また,観念においては,両商標は,共に特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較することができない。 以上より,本件商標と引用商標とは,「GCEG」の綴りを共通にするものであるから,観念において比較できないとしても,外観及び称呼において同一又は類似する,同一又は類似の商標というべきである。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について 本件商標と引用商標とは,上記2のとおり,同一又は類似の商標と認められるが,引用商標は,上記1のとおり,申立人の業務に係る役務を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものである。 そうすると,本件商標に係る指定役務と引用商標の使用に係る役務が同一又は類似するものであったとしても,本件商標は,他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標について使用をするものということはできない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は,上記1のとおり,申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものであるから,本件商標と引用商標との類似性の程度が高く,また,本件商標に係る指定役務と引用商標に係る役務に共通性があり,需要者を共通にする場合があったとしても,本件商標の商標権者が本件商標をその指定役務について使用した場合には,取引者,需要者をして他人の業務に係る商標を連想又は想起させることはなく,その役務が,他人の業務と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。 また,その他に,本件商標と引用商標とが取引者,需要者において出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は,上記2のとおり,本件商標と同一又は類似の商標であるとしても,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の取引者,需要者の間で,他人の業務に係る役務を表す語として,広く認識されていたとは認められないものであるから,商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。 そして,不正の目的についても,申立人は,引用商標が周知著名であることを前提に,引用商標を使用して業務を行うことを妨害するという不正の目的で出願された旨を主張しているが,申立人が提出した甲各号証からは,本件商標権者が,本件商標を使用して申立人の業務を妨害しているなどの事実は見いだせないし,他に,本件商標が不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実を見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。(平成14年(行ケ)第616号,東京高等裁判所平成15年5月8日判決) (2)申立人は,「本件商標権者は,本件商標を出願登録するに際して,当国際会議のコアメンバーや主要メンバーの誰にも承認を得ていないで無断で出願登録したものである。しかも,本件商標権者は,その会議の内容を熟知している経済地理学の研究者であるし,本件商標権者が本件商標を出願・登録するに至った経緯には,本件商標権者の言動からしても,著しく社会的相当性を欠く剽窃的な出願であり,将来の当国際会議の日本開催の障害となるのであって,社会公共の利益,社会の一般的道徳観念,国際信義に反するものである。」旨主張している。 しかしながら,本件商標権者が当該会議のメンバーであって,引用商標を知悉している状況にあり,国際会議のコアメンバーや主要メンバーに承認を得ずに本件商標を出願登録したものであったとしても,そのような本件商標権者の行動が,申立人の事業の遂行を妨害や阻止しようとするものであり,著しく社会的相当性を欠くものであることを裏付ける客観的な証拠は見いだせない。 そうすると,本件商標について,その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるということはできないし,公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということもできない。 もとより,「GCEG」の文字からなる本件商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく,その構成自体がそのようなものではなくとも,それを指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。 また,本件商標は,他の法律によって,その商標の使用等が禁止されているものではないし,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反するものでもない。 その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠もない。 してみると,本件商標権者が,本件商標を登録出願し,登録を受ける行為が,「公の秩序又は善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 7 むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第15号及び同第19号に該当するものではなく,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-09-18 |
出願番号 | 商願2017-76872(T2017-76872) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W41)
T 1 651・ 22- Y (W41) T 1 651・ 222- Y (W41) T 1 651・ 25- Y (W41) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 清川 恵子 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 小俣 克巳 |
登録日 | 2018-02-09 |
登録番号 | 商標登録第6017944号(T6017944) |
権利者 | 水岡 不二雄 |
商標の称呼 | ジイシイイイジイ |
代理人 | 都築 健太郎 |
代理人 | 鮫島 武信 |
代理人 | 平野 泰弘 |
代理人 | 秋和 勝志 |
代理人 | 杉本 明子 |