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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W06
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W06
管理番号 1344045 
審判番号 不服2018-3651 
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-14 
確定日 2018-08-29 
事件の表示 商願2016-32420拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第6類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,平成28年3月24日に立体商標として登録出願され,その後,指定商品については,当審における同30年3月14日付けの手続補正書により,第6類「ボルトノブ,ノブ付金属製ボルト」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,立体商標として出願されたものであるところ,たとえば,インターネット情報に,本願の指定商品中の『ボルトノブ,ノブ付金属製ボルト』において,これに近似した立体形状の商品が数多く製造・販売されている。そうすると,本願商標は,本願の指定商品中の『ボルトノブ,ノブ付金属製ボルト』において,同種の商品の形状として採用し得る立体的形状の範囲を超えるものとは認められない。したがって,本願商標は,これを本願の指定商品中の『ボルトノブ,ノブ付金属製ボルト』に使用しても,これに接する取引者・需要者に,当該指定商品の形状を立体的に表示したもの,つまり,単に商品の品質,形状を普通に用いられる方法で表示したものと理解させるにとどまるものであって,自他商品を区別するための識別標識としての機能を果たさないものといわざるを得ない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記形状の商品以外の『金属製境界鋲,金属製ナット,その他の金属製金具』に使用するときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので,同法第4条第1項第16号に該当する。また,出願人は,甲第1号証ないし甲第13号証を提出し,意見書において『本願商標は既に取引者及び一般需要者に周知となっている』旨の主張をしているが,提出された証拠によっては,いまだ,本願商標が取引者・需要者に出願人の業務に係る商品であることを認識させるに至っているものと認めることはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 立体商標における商品等の立体的形状について
商品の形状は,多くの場合,商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,商品の製造者,供給者の観点からすれば,商品の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品の形状を見る需要者の観点からしても,商品の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると,商品の形状は,多くの場合に,商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されたと認められる形状は,特段の事情のない限り,商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
また,商品の具体的形状は,商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として,商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は,商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
さらに,商品に,需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても,当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには,商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば,商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として,商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に,商品の機能の観点からは発明ないし考案として,商品の美感の観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば,その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決,平成19年(行ケ)第10215号判決,平成22年(行ケ)第10253号判決)。
2 商標法第3条第1項第3号について
(1)本願商標の構成
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなるところ,その立体的形状は,請求人の提出した証拠(甲1?甲8)をも合わせ見れば,以下の特徴を有している。
ア 全体の構成(形状)
ノブ部分を略五角形の形状とし,中央に取換可能な円形状のキャップを有し,該キャップ部分に六角ボルトをはめ込み,手で回せるノブの立体的形状である。
イ ノブの形状
ノブの形状は,略五角形の形状であり,各辺毎にくぼみを有する形状で構成されている。
ウ キャップの形状
中央のキャップの形状は,円形状であり,六角ボルトのサイズ,用途により色替えができる形状で構成されている。
(2)一般的なボルトノブ,ノブ付き金属製ボルトの形状について
本願指定商品を取り扱う業界においては,別掲2に見られるとおり,ボルトをノブに差し込み,当該箇所にキャップをはめ込み,手で回せ,かつ,滑りを防止するためにノブの形状をくぼみ(溝)を有する略五角形型,略三角形型,略六角形型,略円形型等様々な形状のノブが販売されている事実が認められる。
また,キャップ部分も,オレンジ色,赤色,黄色,黒色等の色彩を施したキャップが使用されている事実も認められる。
したがって,本願指定商品を取り扱う業界においては,商品の機能性及び美観等の向上の観点から,ボルトノブのノブ部やキャップ部に様々な形状又は装飾(色彩等)を施すことを一般的に採用しているということができる。
(3)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標の上記形状について考察すると,ボルトをはめ込むことによって即座にノブボルトができる構成よりなる立体商標であり,本願商標に係る指定商品「ボルトノブ,ノブ付き金属製ボルト」の立体的形状の一形態を表したものと認められる。
そうすると,本願商標のノブ部の形状は,負担がなく楽に手で回すことが行え,くぼみ(溝)の形状も滑りを防止するというノブの基本的な形状であって,ノブの機能をより効果的に発揮させるものであり,キャップ部の色彩は美観をより優れたものにするためのものであると認められる。
なお,本願商標における立体的形状は,一定の特徴を有するものではあるが,ノブ部の形状は,上記のとおり,略五角形型,略三角形型,略六角形型,略円形形等様々な形状のノブが販売され,また,キャップ部もオレンジ色,赤色,黄色,黒色等ボルトの形状,用途に応じた色彩を施したキャップが使用されており,ノブにおいて通常採用されている形状および色彩の範囲を大きく超えるものとまでは認められない。
してみれば,本願商標の立体的形状は,本願指定商品である「ボルトノブ,ノブ付き金属製ボルト」の,機能又は美観に資することを目的として採用されたものと認められ,また,その形状として,需要者において,機能又は美観に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから,それを超えて,上記形状の特徴をもって,当然に,商品の出所を識別する標識として認識させるものとまではいえない。
(4)小括
以上の状況を踏まえると,本願商標に係る立体的形状は,その指定商品「ボルトノブ,ノブ付き金属製ボルト」との関係においては,これに接する需要者,取引者に対して,機能性,美観又はその両方を向上させた,ノブ部がくぼみ(溝)を有し,かつ,キャップ部が色彩を有する略五角形の形状を有するノブを認識させるにとどまるものというのが自然である。
してみれば,本願商標は,これをその指定商品「ボルトノブ,ノブ付き金属製ボルト」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,商品の形状の一類型を表したと認識するにとどまり,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
したがって,本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 商標法第3条第2項について
請求人は,本願商標は,商標法第3条第2項でいう「使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる」商標に該当し,識別力を有する商標になっている旨主張し,甲第1号証ないし甲第18号証を提出している。
(1)商標法第3条第2項の趣旨
「商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみから成る商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができることを規定している。
そして,立体的形状から成る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,(1)(判決文本文は,丸付き数字)当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否,(2)(判決文本文は,丸付き数字)当該商標が使用された期間,商品の販売数量,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮して判断すべきである。
なお,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要するが,機能を維持するため又は新商品の販売のため,商品等の形状を変更することもあり得ることに照らすと,使用に係る商品等の立体的形状が,出願に係る商標の形状と僅かな相違が存在しても,なお,立体的形状が需要者の目につきやすく,強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。」(知的財産高等裁判所 平成29年(行ケ)第10155号判決)
以上の点を踏まえて,本願商標が,商標法第3条第2項に該当するに至ったものであるかについて,請求人の提出した上記証拠及び主張を検討する。
(2)使用の実情
請求人から提出された使用の証拠(甲1?甲18)をみるに,請求人の提出した商品カタログに本願商標と同一形状の商品が「ノブスター」という商品名で掲載されていることは伺えるが,その頒布された部数,頒布地域,頒布の方法等が不明であり,新聞記事も昭和54年5月14日及び同59年3月11日付けの2回程度の業界新聞のみであって,展示会も本願商標が付されたポスターは伺えるが,広告,宣伝の費用,期間,地域及び規模も明らかにされていないから,どの程度の範囲の需要者の目にふれたのかが不明である。
(3)本願商標に係る商品の形状に類似した他の商品の存在
本願商標は,指定商品「ボルトノブ,ノブ付き金属製ボルト」の立体的形状に係るものであるところ,上記2(2)のとおり,請求人以外の者によって,くぼみ(溝)を有する略五角形型,略三角形型,略六角形型,略円形型等様々な形状のノブが販売されている。また,そのキャップ部分も,オレンジ色,赤色,黄色,黒色等の色彩が施されたものであり,その中には,別掲2(1),(3)及び(4)のように,くぼみ(溝)を有する略五角形型で,キャップ部だけ色彩を変えた,本願商標と類似の形状をした商品も存在する。
(4)請求人の主張について
請求人は,甲第10号証,甲第15号証及び甲第16号証を示して,市場占有率が80%を越える商品であることを主張するとともに,甲第12号証を示して,東大阪ブランド推進機構なる組織に,特定の市場でトップシェアを記録する製品と認められ,「No.1」製品に認定されたものであるから,甲第10号証の「ノブスター市場占有率」の数字は信憑性が高いものである旨主張している。
しかしながら,甲第10号証,甲第15号証及び甲第16号証の根拠となる数字の提供者は,請求人の得意先の一つである卸売り業者の一者であって,当該卸売業者を介さずに販売された実績が不明である。
そして,集計対象を「ノブスター」と「フィットノブ」のみとし,市場に存在する商品は,その2つのみであるかのように記載されているが,たとえば別掲2のとおり,「ノブスター」及び「フィットノブ」以外のボルトノブ及びノブ付き金属製ボルトが製造,販売されていることが確認できる。また,「ノブスター」旨の商品には本願商標と異なる形状のものや,キャップに異なる色彩の施されたものが存在していることも確認できるところ,上記の市場占有率は「ノブスタ-」旨の商品の全体の市場占有率であって,本願商標が付されたボルトノブ及びノブ付き金属製ボルトについての市場占有率は不明である。
そうすると,上記の証拠をもって本願商標が付されたボルトノブ及びノブ付き金属製ボルト市場占有率が,80%を越えるということはいえない。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
(5)小活
以上からすると,本願商標は,需要者において広く認識されているとはいい難いものであり,それをその指定商品について使用をした結果,需要者が何人かの商品であることを認識することができる自他商品識別力を獲得するに至ったとはいえない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し,また,同条第2項の要件を具備するものでもないことから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標 色彩は原本参照)
(第1図)


(第2図)


(第3図)

(第4図)


別掲2 取引の実情(一般的なボルトノブ,ノブ付き金属製ボルトの形状)
(1)通販モノタロウのウェブサイトにおいて,「三星産業貿易 フィットノブ(本体:黒色)」の見出しの下,「市販の六角ボルトや一種のナットをはめ込んで,キャップを付けて廻すだけで,ノブボルト,ノブナットとして使用できます」と記載され,該商品の写真が掲載されている。
https://www.monotaro.com/p/3944/5113/
(2)鍋屋バイテック会社のウェブサイトにおいて,「KGWF-Kプラスティックウィングノブ(めねじ)」の見出しの下,形状図及び該商品の写真が掲載されている。
https://www.nbk1560.com/products/machine_element/knob/KGWF-K/
(3)鍋屋バイテック会社のウェブサイトにおいて,「SKスーパーノブ」の見出しの下,形状図及び該商品の写真が掲載されている。
https://www.nbk1560.com/products/machine_element/knob/SK/
(4)MISUMI-VONAのウェブサイトにおいて,「ノブ・つまみ」の見出しの下,各種のノブ(「厚型ロレットノブ」「つまみノブ」「スーパーノブ」「大径つまみノブ」「ノブボルト」「ファイブロノブ」「スターノブ(STK)」等)と該商品の写真が掲載されている。
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech/M1700000000/M1716000000/

審理終結日 2018-07-03 
結審通知日 2018-07-04 
審決日 2018-07-18 
出願番号 商願2016-32420(T2016-32420) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W06)
T 1 8・ 17- Z (W06)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 須田 亮一
大森 友子
代理人 辻本 一義 

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