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審決分類 |
審判 査定不服 商6条一商標一出願 登録しない W35 |
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管理番号 | 1343201 |
審判番号 | 不服2017-12353 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-21 |
確定日 | 2018-08-09 |
事件の表示 | 商願2016- 97809拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「じぶん電力」の文字を標準文字により表してなり、第35類「電力の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成27年12月4日に登録出願された商願2015-119482に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同28年9月7日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由(要点) 原査定は、「本願の指定役務『電力の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』は、その内容及び範囲を明確に指定したものとは認められない。また、前記指定役務が不明確でその内容及び範囲が把握できないことから、政令で定める商品及び役務の区分に従って第35類の役務を指定したものと認めることもできない。したがって、本願は、商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)商標法第6条第1項及び第2項について ア 「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について 指定商品及び指定役務は、商標とともに、商標権の権利範囲を定めるものであるから、その内容及び範囲は明確でなければならないところ、商標登録出願をする際に、第35類において「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「小売等役務」という。)を指定するにあたっては、その小売等役務がどのような商品の小売又は卸売の業務において行われる便益の提供であるのかを明確に把握できるものとするために、小売等役務の対象となる「商品」を、その取扱商品として記載し、指定することが必要である。 商標法においては、「商品」とは、「商取引の目的たり得るべき物、特に動産をいう。」(「特許庁編 産業財産権法逐条解説[第20版]」)とされているところ、この「動産」とは、「土地およびその定着物(建物・立ち木など)以外の一切の有体物。」を意味し、「商品」とは、主に「有体物」(「物理的に空間の一部を占め有形的存在を有する物。」)を意味するものである。 また、「無体物」は、「音響・香気・電気・光・熱・権利・発明・創作などのように有形的存在を有しないもの。」(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を意味するものであって、無体物に係る「電子情報財」については、「インターネット等の発達によりそれ自体が独立して商取引の対象となり得るようになったことを重視して商標法上の商品と扱うこととした。(略)無体物であっても商取引の対象になる場合は商品と扱う」(「平成14年改正 産業財産権法の解説」特許庁総務部総務課制度改正審議室編)とされている。 さらに、商標法における「商品」とは、商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引される有体物であると解されるものである(東京高等裁判所 平成元年11月7日判決 平成1(行ケ)第139号参照)。 イ 本願の指定役務について 本願の指定役務「電力の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「電力の小売等役務」という。)において、取扱商品に該当するものは「電力」であるところ、この「電力」が小売等役務における取扱商品となり得る商品であることが必要である。 そして、「電力」とは「電気によるエネルギー。」であり、「電気」は、「摩擦電気や放電・電流など、広く電気現象を起こさせる原因となるもの。電荷や電気エネルギーを指すことが多い。」(いずれも「広辞苑第六版」)を意味するものであって、その意味からして、「電力」と「電気」は、ほぼ同義にとらえられるものであり、両者は、無体物である。 そうすると、これらが商標法上の商品といえるためには、一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引され、独立した商取引の対象となりえているかを検討する必要がある。 ところで、「電力(電気)」に係る事業については、電気事業法がその規制を行っているところ、平成28年4月1日以降は、同法において「電力の小売」が全面自由化された。ここで、電力の小売については、「小売供給 一般の需要に応じ電気を供給することをいう。」(同法第2条第1項第1号)、「小売電気事業 小売供給を行う事業(一般送配電事業、特定送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く。)をいう。」(同第2号)と定められており、小売電気事業者(同第3号)が、その事業を行うものである。 そして、小売電気事業者は、電力の小売部門を担うところ、「小売部門とは/消費者(各ご家庭を含む)と直接やり取りをし、料金メニューの設定や、契約手続などのサービスを行います。また、消費者が必要とするだけの電力を発電部門から調達するのも、この部門の役割です。」(甲4)と記載されていることから、小売電気事業者は、自ら発電した電力や発電事業者が発電した電力について、様々な料金設定を行い、法人や個人等の消費者と契約を締結し、その需要に応じた電気を一般送配電事業者に対して送電するよう依頼し、一般送配電事業者の送電線を介して送電することで、需要者の電力使用を可能とする電気の供給を業として行っているものと解することができる。 そうすると、「電力(電気)」は、一般市場においてそれ自体が独立して市場において譲渡、引き渡しされることを目的として生産され又は取引されているものというよりも、消費者の需要に応じた量の電気を、需要者の元に送電する(供給する)という役務において取り扱われているものというべきであって、それ自体が商品として独立した商取引の対象として流通しているものということはできないから、商標法上の商品とはいえないというのが相当である。 ウ 小括 以上のとおり、「電力(電気)」は、商標法上の商品とはいえず、小売等役務における取扱商品とはなり得ないものであるから、これを取扱商品とする「電力の小売等役務」は、不明確な役務といわざるを得ないものである。 してみれば、本願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を適切に指定したものとはいえず、また、その内容及び範囲を把握できないことから、政令で定める商品及び役務の区分に従って第35類の役務を指定したものと認めることもできない。 したがって、本願は、商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しない。 (2)請求人の主張について 請求人は、「商品先物取引法において、無体物である『電力』が『商品』として定義されたこと、また、電気事業法第97条第1項において、卸電力取引所について規定されており、現在、その取引所として一般社団法人日本卸電力取引所が指定されていることを挙げ、『電気』が『商品』として解釈されている。」旨を主張している。 確かに、商品先物取引法は、「電力(一定の期間における一定の電力を単位とする取引の対象となる電力に限る。)」を「商品」として定めており(同法第2条第1項第4号)、また、一般社団法人日本卸電力取引所においては、スポット市場や時間前取引市場が開設されている(甲2)ところではある。 しかしながら、これらは、商品先物取引市場や卸電力取引市場に限られた実情であって、電力(電気)が、これらの市場以外の一般市場において、独立した商取引の対象として、取引者、需要者間に広く流通している実情にあるということはいえないから、上記実情をもって直ちに電力(電気)が、商標法上の「商品」として解釈できるものであるということはできない。 また、請求人は、「今日の取引社会の実情として、電気自動車の電気充電等も実質電力の小売事業に該当すること、又は再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が買い取る制度が存在することをあげて、電気が商品として流通、取引されている。」旨を主張している。 しかしながら、電気自動車の電気充電については、第39類の電気自動車に対する電気の供給に該当する役務と解せられ、また、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が買い取る制度についても、発電した電力を電力会社に対し送電し、電力を供給するという役務を行っているものと解せられるから、これらの事情をもって、電力それ自体が独立した商取引の対象として流通している商品であるということはできない。 加えて、請求人は、「『標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定』(以下『ニース協定』という。)のアルファベット順一覧表に、『電気エネルギー』(electrical energy)が表示として存在しており、諸外国及び機関において『電気の小売』が第35類において採択されている例をあげ、本願の指定役務『電力の小売等役務』も採択されるべきである。」旨を主張している。 しかしながら、我が国においては、上記(1)のとおり、「電力(電気)」が、独立した取引の対象たる商品として流通、取引されている実情にあるとはいい難く、また、そもそも「ニース協定」は、標章の保護の範囲の評価及びサービス・マークの承認について同盟国の取扱いを拘束するものではないし(ニース協定第2条第1項)、各国の取扱いが、ある商品及び役務について商標の登録を認めるか否かについての我が国の商標法上の解釈に、直接影響を及ぼすようなものではない。 よって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願は、商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しないものであるから、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-06-01 |
結審通知日 | 2018-06-05 |
審決日 | 2018-06-26 |
出願番号 | 商願2016-97809(T2016-97809) |
審決分類 |
T
1
8・
91-
Z
(W35)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 松江 |
特許庁審判長 |
井出 英一郎 |
特許庁審判官 |
真鍋 恵美 榎本 政実 |
商標の称呼 | ジブンデンリョク、ジブン |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |