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審決分類 審判 査定不服 外観類似 登録しない W35
審判 査定不服 称呼類似 登録しない W35
審判 査定不服 観念類似 登録しない W35
管理番号 1342149 
審判番号 不服2017-9209 
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-23 
確定日 2018-07-09 
事件の表示 商願2016- 75858拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「ありがとう」の文字を標準文字で表してなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成27年6月24日に登録出願された商願2015-060099に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同28年7月14日に登録出願されたものである。
そして、その指定役務については、原審における同年8月18日付け及び当審における同29年6月23日付け手続補正書をもって、最終的に、第35類「トレーディングスタンプの発行,財務書類の作成,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,新聞記事情報の提供,自動販売機の貸与,衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服(アイマスク・エプロン・えり巻き・靴下・ゲートル・毛皮製ストール・ショール・スカーフ・足袋・足袋カバー・手袋・ネクタイ・ネッカチーフ・バンダナ・保温用サポーター・マフラー・耳覆いを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品(菓子・パン・サンドイッチ・中華まんじゅう・ハンバーガー・ピザ・ホットドッグ・ミートパイ・酒かす・茶・コーヒー・ココア・角砂糖・果糖・氷砂糖・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・粉末あめ・水あめ・香辛料・コーヒー豆・即席菓子の素・人工甘味料・泡盛・合成清酒・焼酎・白酒・清酒・直し・みりん・ビール・洋酒・果実酒・酎ハイ・中国酒・薬味酒を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品(酒かす・即席菓子のもとを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,畳類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花及び木の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,燃料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,たばこ及び喫煙用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,愛玩動物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正されたものである。

2 拒絶の理由に引用した登録商標
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願商標の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下のとおりである。
(1)登録第2371501号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成1年3月27日に登録出願、第29類「コ?ヒ?,ココア,清涼飲料,果実飲料,氷」を指定商品として、同4年1月31日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の更新登録がされ、また、同16年6月30日に、指定商品を第30類「コ?ヒ?,ココア,氷」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(2)登録第4233990号-2商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成1年3月27日に登録出願、同11年1月29日に設定登録された登録第4233990号商標の商標権の分割に係るものであって、第32類「加工食料品」を指定商品として、同12年2月2日に商標権の分割移転の登録がされたものであり、その後、同21年1月20日に商標権の更新登録がされ、また、同22年3月24日に、指定商品を第29類「動物性エキスおよび植物性エキスを主原料とする粒状・顆粒状・粉末状・カプセル状・液状・棒状の加工食品,肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(3)登録第4775874号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成15年10月31日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定商品として、同16年6月4日に設定登録され、その後、同26年6月24日に商標権の更新登録がされたものである。
(4)登録第5158466号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成19年4月12日に登録出願、第35類「広告,会社の一般事務及び会計事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,職業のあっせん,商品の展示会・見本市・展覧会の企画・運営又は開催,販売促進のための商品の展示会・見本市・博覧会の企画又は運営,人材の派遣に関する事業の管理又は運営,出版物の販売に関する情報の提供,教育事業の管理,学校経営の診断及び指導,学校経営の診断又は経営に関する助言,学習塾の経営に関する情報の提供,学習塾の経営の診断及び指導,企業の経営に関する診断・指導・助言及び管理,自動販売機の貸与,求人情報の提供,介護に関する施設運営又は組織運営の管理に関するコンサルティング,介護施設事業の管理」、第42類「電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,コンピュータソフトウェアの開発,コンピュータシステムの設計・開発及びコンサルティング」並びに第39類ないし第41類の商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同20年8月8日に設定登録されたものである。
(5)登録第5389577号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成22年8月13日に登録出願、第30類「菓子及びパン,茶,コーヒー及びココア,コーヒー豆,砂糖,香辛料,即席菓子のもと」を指定商品として、同23年2月10日に設定登録されたものである。
(6)登録第5615010号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成25年2月15日に登録出願、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同年9月13日に設定登録されたものである。
(7)登録第5653382号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、平成25年12月10日に登録出願、第9類「携帯電話機用ストラップ及びネックピース,タブレット型コンピュータ専用ケース,ノートブック型コンピュータ専用ケース」、第14類「キーホルダー,貴金属製キーリング,宝石箱,記念カップ,記念たて,貴金属製靴飾り,時計,記念コイン」、第18類「かばん類,袋物,定期券入れ,名刺ケース」、第30類「味付けごま,コーヒー豆」並びに第8類、第16類、第20類、第21類、第24類、第25類、第28類、第39類及び第43類の商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成26年2月28日に設定登録されたものである。
(8)登録第5807038号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲5のとおりの構成からなり、平成27年3月3日に登録出願、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,酒かす」、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年11月20日に設定登録されたものである。
以下、引用商標4及び引用商標6をまとめていうときは「引用商標A」といい、引用商標A及び引用商標7をまとめていうときは、「引用商標」という。

3 当審の判断
(1)本願商標と引用商標4、引用商標6及び引用商標7における商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は、「ありがとう」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「感謝の意をあらわす挨拶語」の意味を有するものであって、これよりは、「アリガトウ」の称呼を生じ、「感謝の意をあらわす挨拶語」程の観念を生じるものである。
イ 引用商標A(引用商標4及び引用商標6)について
引用商標Aは、別掲2のとおり、上部が丸みを帯びた赤色の背景に、招き猫の上半身と、赤色で縁取りされた扇形で構成された図形からなり、該扇形の内側に「ありがとう」の文字を横書きしてなるものである。
そして、上記したような図形と文字からなる商標に接する取引者、需要者は、その構成中、称呼しやすい文字部分に着目し、これより生ずる称呼及び観念をもって商取引にあたる場合も決して少なくないものというのが相当である。
そうすると、引用商標Aにあっては、その構成中「ありがとう」の文字部分が着目され、印象に残るものであって、商取引においては、独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす要部として看取されるというべきである。
してみれば、引用商標Aは、該「ありがとう」の文字部分に相応して、「アリガトウ」の称呼を生じ、「感謝の意をあらわす挨拶語」程の観念を生じるものである。
ウ 引用商標7について
引用商標7は、別掲4のとおり、上部に、青色で手書き風の書体で「ありがとう!」の文字を横書きし、その下部には、青色の楕円型を背景図形として、上から、薄茶色の「50th」と「Anniversary」の欧文字を、その下に、2つの新幹線の図形と「東海道新幹線」及び「開業50周年」を二段に横書きした文字(以下、下部の図形と文字とが組み合わさった部分を「図形結合標章」という。)から構成されるものである。
そして、上部の「ありがとう!」の文字部分と、下部の「図形結合標章」とは、離されてそれぞれ独自に表されており、構成上の一体性が認められないものであって、また、両部分を常に一体不可分のものとして看取、把握されなければならない特段の事情も認めることはできないから、引用商標7の構成中、上部の文字部分と、下部の図形部分は、それぞれが独立して自他商品役務の識別標識として機能する要部といえるものである。
加えて、本願商標の構成中、その最上段に大きく表された「ありがとう!」の文字部分中「ありがとう」の文字は、一般に親しまれた感謝の意をあらわす挨拶語として、これに接する取引者、需要者に、強く印象に残り、記憶されやすい部分といえるものであるから、該文字部分より生じる称呼、観念をもって、取引にあたる場合も少なくないものというのが相当である。
してみれば、引用商標7は、該「ありがとう」の文字部分に相応して、「アリガトウ」の称呼を生じ、「感謝の意をあらわす挨拶語」程の観念を生じるものである。
エ 本願商標と引用商標の類否について
本願商標と引用商標Aとの類比について検討すると、外観においては、両商標は、その構成を異にするものであるが、上記ア及びイに記載したとおり、本願商標と引用商標Aの要部である「ありがとう」の文字は、ともに同じ平仮名からなるものであるから、本願商標と引用商標Aの要部においては、外観上、近似した印象を与えるものである。
そして、称呼においては、本願商標と引用商標Aの要部である「ありがとう」の文字は、ともに「アリガトウ」の称呼を生じるものであるから、称呼上、両者は同一である。
また、観念においては、本願商標と引用商標Aの要部である「ありがとう」の文字は、ともに「感謝の意をあらわす挨拶語」の観念を生じるものであるから、観念上、両者は同一である。
次に、本願商標と引用商標7との類比について検討すると、外観においては、両商標は、その構成を異にするものであるが、上記ア及びウに記載したとおり、本願商標と引用商標7の要部における「ありがとう」の文字は、ともに同じ平仮名からなるものであるから、本願商標と引用商標7の要部においては、外観上、近似した印象を与えるものである。
そして、称呼においては、本願商標と引用商標7は、「ありがとう」の文字に相応して、ともに「アリガトウ」の称呼を生じるものであるから、称呼上、両者は同一である。
また、観念においては、本願商標と引用商標7の要部における「ありがとう」の文字は、ともに「感謝の意をあらわす挨拶語」の観念を生じるものであるから、観念上、両者は同一である。
以上のとおり、本願商標と引用商標は、その引用商標の要部において、外観上近似した印象を与えるものであって、称呼及び観念を同一にするものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
オ 本願商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務の類否について
(ア)本願商標と引用商標4の抵触について
本願商標の指定役務中、第35類「財務書類の作成, 輸出入に関する事務の代理又は代行,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,求人情報の提供,自動販売機の貸与」は、引用商標4の指定役務中の第35類「会社の一般事務及び会計事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,自動販売機の貸与,求人情報の提供」及び第42類「コンピュータソフトウェアの開発,コンピュータシステムの設計・開発及びコンサルティング」と、同一又は類似の役務である。
(イ)本願商標と引用商標6の抵触について
本願商標の指定役務中、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,畳類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標6の指定役務中の第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、同一または類似の役務である。
(ウ)本願商標と引用商標7の抵触について
本願商標の指定役務中、第35類「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品(菓子・パン・サンドイッチ・中華まんじゅう・ハンバーガー・ピザ・ホットドッグ・ミートパイ・酒かす・茶・コーヒー・ココア・角砂糖・果糖・氷砂糖・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・粉末あめ・水あめ・香辛料・コーヒー豆・即席菓子の素・人工甘味料・泡盛・合成清酒・焼酎・白酒・清酒・直し・みりん・ビール・洋酒・果実酒・酎ハイ・中国酒・薬味酒を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標7の指定商品中の第9類「携帯電話機用ストラップ及びネックピース,タブレット型コンピュータ専用ケース,ノートブック型コンピュータ専用ケース」、第14類「貴金属製靴飾り,時計」、第18類「かばん類,袋物,定期券入れ,名刺ケース」及び第30類「味付けごま」と、類似の役務である。
カ 小括
本願商標と引用商標は、前記エのとおり、互いに相紛れるおそれのある類似の商標であり、かつ、前記オのとおり、本願商標の指定役務は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似する役務を含んでいるものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 引用商標Aについて
(ア)請求人は、引用商標Aについて、「全体としてデザインとして統一性があり、招き猫が、来客に対して『来て頂いてありがとう』の意を伝えるモチーフを、『ありがとう』の文字を書した物(扇子の扇面形状の表示物)を左手に持った招き猫の図で表現したものであり、わざわざ『ありがとう』の文字と、『ありがとう』の文字を抜いた白色の表示物を左手に持った招き猫の図に分断して観察するのが妥当であるという特段の事情はない。」旨を主張している。
しかしながら、引用商標Aは、別掲2のとおり、上部が丸みを帯びた赤色の背景に、招き猫の上半身と、赤色で縁取りされた扇形で構成された図形(以下、赤色の背景と図形とが組み合わさった部分を「図形部分」という。)からなり、該扇形の内側に「ありがとう」の文字を横書きしてなるものであるところ、このような図形と文字からなる商標に接する取引者、需要者は、その構成中、称呼しやすい「ありがとう」の文字部分に着目し、これより生ずる称呼及び観念をもって商取引にあたる場合も決して少なくないものというのが相当である。
そして、引用商標Aにあっては、その構成中「ありがとう」の文字部分が、「感謝の意をあらわす挨拶語」として、一種のメッセージを表示し、看者の印象に残るものであって、商取引においては、独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす要部として看取されるというべきである。
してみれば、本願商標と引用商標Aとが、全体としては外観において異なった商標であるとしても、「ありがとう」の文字部分を要部として、本願商標と引用商標Aとを比較し、類否判断を行うことも許されるというのが相当である。
(イ)また、請求人は、本願商標と引用商標Aについて、「たとえ、『アリガトウ』の称呼を共通にする場合があるとしても、『ありがとう』の文字部分は識別力が弱い部分であると共に、外観において明確に区別でき、観念において類似するものではないから、両商標の比較において、一の称呼の共通性が他の外観及び観念における差異を凌駕するものとはいい難く、外観、称呼及び観念を総合的に判断すると、両商標は、商品及び役務の出所の誤認、混同を生ずるおそれのないものであり、全体として非類似の商標というのが相当である。」旨を主張している。
しかしながら、商標の類否判断においては、全体観察の他に要部観察も許されるものである。
また、引用商標Aにおいて「ありがとう」の文字部分が、一般に、「感謝の意をあらわす挨拶語。」程の意味合いを有する語として理解されるとしても、その指定役務との関係において、識別力が弱いとする理由が明らかにされておらず、また、その事実を示すことのできる証拠は提出されていない。
加えて、請求人は、該「ありがとう」の文字からなる本願商標を、その指定役務の出所識別標識として登録出願しているのであり、この事は、該文字の識別力が弱いとする請求人の主張と、矛盾するものである。
そして、上記(1)イのとおり、引用商標Aにおいては、「ありがとう」の文字部分が要部となり得るものであるところ、本願商標と引用商標Aとは、その要部である「ありがとう」の文字が共通であることから、両者について、その要部における外観、称呼及び観念を総合的に判断すると、両商標は、役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
イ 引用商標7について
(ア)請求人は、引用商標7について、「当該文字部分に照合して、『アリガトウトウカイドウシンカンセンカイギョウゴジュウシュウネン』の称呼を生じる。しかしながら、そもそも『商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されない』(最高裁判決)と判示されており、分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標に限って、分離観察すべき対象とすべきである(全体観察が原則で、分離観察が例外である。審査官殿の判断は、原則と例外を曲解されておられる。)。これを引用商標7についてみれば、その商標中の『ありがとう!』と『50th ANNIVERSARY』と『東海道新幹線開業50周年』の各文字と新幹線の図形全体から、『東海道新幹線開業50周年を迎えご利用ありがとう』程の観念が生じるとするのが自然である。」旨を主張している。
確かに、引用商標7の全ての語を見たときには、請求人のいうような「東海道新幹線開業50周年を迎えご利用ありがとう」程の大雑把な意味合いが暗示される場合がまったくないとはいえないものである。
しかしながら、上記の判例においても、商標の類否判断においては、全体観察が原則であるとしても、分離観察が許されないとしているわけではない。
そして、引用商標7は、別掲4のとおり、上部の「ありがとう!」の文字部分と、下部の「図形結合標章」とは、離されてそれぞれ独自に表されており、構成上の一体性が認められないものであって、両部分を一体不可分のものとして、常に看取、把握されなければならない特段の事情を認めることはできないことから、上部の文字部分と、下部の「図形結合標章」は、それぞれが独立して自他商品役務の識別標識として機能する要部といえるものである。
そうすれば、引用商標7からは、常に、請求人のいうような上記の意味合い(観念)が生じるのが自然であるということはできない。
してみれば、引用商標7の構成中、その最上段に大きく表された「ありがとう!」の文字部分中「ありがとう」の文字より生じる称呼、観念をもって、取引にあたる場合も少なくないものというのが相当である。
したがって、引用商標7は、該「ありがとう」の文字部分に相応して、「アリガトウ」の称呼を生じ、「感謝の意をあらわす挨拶語」程の観念を生じるものである。
(イ)また、請求人は、本願商標と引用商標7について、「たとえ、『アリガトウ』の称呼を共通にする場合があるとしても、『ありがとう』の文字部分は識別力が弱い部分であると共に、外観において明確に区別でき、観念において類似するものではないから、両商標の比較において、一の称呼の共通性が他の外観及び観念における差異を凌駕するものとはいい難く、外観、称呼及び観念を総合的に判断すると、全体として非類似の商標である。」旨を主張している。
しかしながら、商標の類否判断においては、全体観察の他に要部観察も許されるものである。
また、引用商標7において「ありがとう」の文字部分が、一般に、「感謝の意をあらわす挨拶語。」程の意味合いを有する語として理解されるとしても、その指定商品及び指定役務との関係において、識別力が弱いとする理由が明らかにされておらず、また、その事実を示すことのできる証拠は提出されていない。
加えて、請求人は、該「ありがとう」の文字からなる本願商標を、その指定役務の出所識別標識として登録出願しているのであり、この事は、該文字の識別力が弱いとする請求人の主張と、矛盾するものである。
そして、上記(1)ウのとおり、引用商標7においては、「ありがとう」の文字部分が要部となり得るものであるところ、本願商標と引用商標7とは、その要部である「ありがとう」の文字が共通であることから、両者について、その要部における外観、称呼及び観念を総合的に判断すると、両商標は、商品及び役務の出所の誤認、混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
よって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
なお、この商標登録出願は、商願2015-060099の分割出願として登録出願されたものであるが、上記原商標登録出願の指定役務についての補正がこの出願と同時になされていないことから、この出願は商標法第10条第1項の規定による商標登録出願とは認められない。
したがって、この商標登録出願は、通常の商標登録出願として、上記のとおり処理した。
別掲 別掲1 登録2371501号、登録4233990号-2、登録4775874号


別掲2 登録5158466号、登録5615010号(色彩については、原本参照。)


別掲3 登録5389577号


別掲4 登録5653382号 (色彩については、原本参照。)


別掲5 登録5807038号


審理終結日 2017-10-24 
結審通知日 2017-10-30 
審決日 2017-11-16 
出願番号 商願2016-75858(T2016-75858) 
審決分類 T 1 8・ 261- Z (W35)
T 1 8・ 263- Z (W35)
T 1 8・ 262- Z (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中山 寛太安達 輝幸 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 中束 としえ
真鍋 恵美
商標の称呼 アリガトウ、アリガトー 
代理人 佐藤 富徳 

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