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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X25
管理番号 1342084 
審判番号 取消2017-300413 
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-06-15 
確定日 2018-06-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5448645号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5448645号商標(以下「本件商標」という。)は,「DECO」の欧文字及び「デコ」の片仮名を上下二段に表してなり,平成21年10月9日に登録出願,同23年9月13日に登録審決され,第25類「被服」を指定商品として,同年11月4日に設定登録されたものである。
本件審判の請求の登録日は,平成29年6月29日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,本件商標の商標権者,専用使用権者又は通常使用権のいずれも使用した事実がないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証「2017 SPRING & SUMMER SPORTS WEAR」カタログ(以下「本件カタログ」という。)は,アシックスジャパン株式会社(以下「アシックスジャパン社」という。)が発行したものであり,本件商標権者が発行したものではない。
また,被請求人は,本件カタログが本件商標権者のウェブサイトから閲覧可能である旨を主張するが,当該ウェブサイトを見ると(甲1?5),明らかにアシックスジャパン社がそのウェブサイトを管理運営している。
したがって,本件商標権者は,本件カタログにおいて,本件商標を使用していない。
(2)乙第2号証の注文ページや注文書の写しは,いつから使用されていたのか示されていないため,その印刷日である2017年8月9日から使用が開始されたと判断すべきで,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)の使用ではない。
(3)本件商標と使用商標について
ア 本件商標は,「DECO」の文字を上段部に,「デコ」の文字を下段部にバランスよく配置した,全体としてまとまりよく一体的に看取,把握される商標である。
イ 被請求人が使用を主張する商標(及び使用商品)は以下のとおりである(乙1,2)。
(ア)「デコトレーニングジャケット」(General Athletic)
(イ)「デコトレーニングパンツ」(General Athletic)
(ウ)「デコトレーニングハーフパンツ」(General Athletic)
(エ)「デコトレ」(General Athletic)
(オ)「DECO TRAINING」(General Athletic)
(カ)「デコボタンダウンシャツ」(General Athletic)
(キ)「デコポロ」(General Athletic)
(ク)「DECO POLO」(General Athletic)
(ケ)「デコシャツ」(サッカー,バレーボール)
(コ)「DECO SHIRT」(サッカー,バレーボール)
(サ)「デコシャツHS」(サッカー)
(シ)「デコピステLS」(サッカー)
(ス)「デコピステパンツ」(サッカー)
(セ)「デコピステ」(サッカー,バレーボール)
(ソ)「DECO PISTE」(サッカー,バレーボール)
(タ)「デコシャツLS」(バレーボール)
(チ)「デコピステHS」(バレーボール)
(ツ)「デコシャツ」
(テ)「デコシャツ」
ウ 本件商標権者は,上記のとおり,本件商標そのものを使用していない。
本件商標の上段部「DECO」は,「アールデコ,アールデコ(風)の,Decompression(減圧)の略」という観念を有し(甲7,10),その下段部「デコ」は,「デコレーションの略,突き出ていること,突き出ているひたい,おでこ,木彫りの人形,デコンペイセンションの略語で,代償不全(心不全)の事」(甲8,9,11?13,乙3)などの観念を有するもので,両者の観念は全く異なるため,本件商標の上段部及び下段部のいずれか一方の使用は,社会通念上同一の商標の使用に該当しない。
そもそも,本件商標権者の使用商標は,「DECO」又は「デコ」を含む商標であって,それら文字そのものではない。上記イ(ア)ないし(テ)に掲げる使用商標は,いずれも全体としてまとまりよく一体的に看取,把握される商標であり,「デコ」又は「DECO」とは明らかに異なる。
したがって,本件商標権者の使用商標は,全体で1つの商標であり,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(4)指定商品についての使用
ア 本件カタログは,サッカーやバレーボール等のスポーツウェアのカタログであり,その中で「チームに合わせたカスタマイズも可能」,「ゲームシャツ対応」などの説明もあることから,そのカタログの掲載商品は,「被服」というよりもむしろ「運動用特殊衣服」に相当すると考えられる。
したがって,本件商標権者は,本件商標を指定商品「被服」について使用していない。
イ 乙第2号証のウェブサイトには,「世界にただ一つのチームのために。TEAM CUSTOM ORDER」と記載されており,サッカーやバスケットボール等のスポーツチームのための注文ページであることがうかがえる。そして,当該注文ページにおいて,「チームに合わせたカスタマイズも可能」,「ゲームシャツ対応」などと説明するとともに,サッカー用のユニフォームを着たキャラクターが描かれている。このようなことから,当該注文ページの商品は,各種スポーツ競技用のユニフォーム,すなわち「運動用特殊衣服」に相当すると考えられる。
したがって,本件商標権者は,本件商標を指定商品「被服」について使用していない。
3 被請求人の再答弁に対する弁駁
(1)乙第3号証は,他社の「デコメール/decomail」というサービスを紹介しているウェブサイトのページであるところ,被請求人が主張するような「デコ」及び「DECO」が「装飾」の意味をもつ「DECORATION(デコレーション)」の略語として使用されている記載はない。そもそも,当該ウェブサイトでは,当該他社の登録商標である「デコメール」及び「Deco-mail」と類似する「decomail」が使用されているのであり,「デコ」及び「DECO」が使用されているのではない。
(2)乙第4号証には,「DECO」が「装飾」の意味をもつ「DECORATION(デコレーション)」の略語として使用されている記載はなく,「DECO」は「DECORATION(デコレーション)」の観念を有さない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。),並びに平成30年2月13日付けの上申書に添付の「有価証券報告書(一部抜粋)」及び「商標使用許諾契約書(一部抜粋)」(以下,それぞれを「乙第6号証」及び「乙第7号証」という。)を提出した。
1 本件商標の指定商品についての使用の証明
2016年(平成28年)12月アシックスジャパン社の発行に係る本件カタログに,商品名として本件商標を使用している(乙1)。なお,本件カタログは本件商標権者の公式ウェブサイト上の「デジタルカタログ」ページ(http://www.asics.com/jp/ja-jp/e-catalog)から閲覧することが可能である。
さらに,本件商標は本件商標権者の公式ウェブサイト上の「オーダーコンポ」ページの「TEAM CUSTOM ORDER」システムにおいて,注文ページや注文書等に使用されている(乙2)。
2 請求人の弁駁に対する答弁
(1)本件カタログを発行するアシックスジャパン社は,本件商標権者の完全子会社であり(乙6),本件商標権者は,同社に対する商標使用許諾契約(乙7)により,本件商標の通常使用権を供与しているから,本件商標権者が本件商標を使用していることに疑いの余地はない。
(2)近年,「デコ」及び「DECO」の文字は,「装飾」の意味を持つ「DECORATION(デコレーション)の略語として使用されている。例えば,他社による「デコメール/decomail」,「デコ装飾DECO!」などの使用がある(乙3,4)。また,インターネット上の辞書によると「デコる」の意味として「英語の『decoration』(デコレーション)を略した『デコ』の動詞化。装飾を盛るオシャレ」との既述があることから(乙5),「デコ」及び「DECO」の文字はいずれも「DECORATION(デコレーション)」の観念を有する。
よって,上下二段併記の構成からなる本件商標「デコ」及び「DECO」の観念は互いに社会通念上同一であるから,いずれか一方の使用であっても,本件商標を使用しているといえる。
(3)本件商標権者による本件商標の使用において,「トレーニングジャケット」,「トレーニングパンツ」,「ボタンダウンシャツ」,「シャツ」などの文字は,被服の種類を指称する語であるため,自他商品識別機能を果たさず,「デコ」及び「DECO」の文字部分が自他商品識別標識として機能する部分である。このように,本件商標に対して何らかの語を付加したものであっても,付加部分が自他商品識別機能を果たさないと判断される場合には,当該部分を除いた残りの部分が自他商品識別標識として機能する部分であるとして,残りの部分に基づき,本件商標の使用が判断されるべきで,本件商標権者が本件商標を使用しているといえる。
(4)被請求人提出の証拠の中には,「ポロシャツ」,「シャツ」の使用証拠もあることから,被請求人は指定商品「被服」にも使用しているといえる。

第4 当審の判断
1 証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,アシックスジャパン社が2016年(平成28年)12月に発行した「2017 SPRING & SUMMER SPORTS WEAR」の名称の商品カタログ(本件カタログ)の抜粋であり,その6葉目には,「デコシャツ」の片仮名及び「DECO SHIRT」の欧文字からなる見出し(「デコシャツ」の片仮名は,「DECO」の欧文字の上部にルビのように表記されている。)の下,「ラクラクセミオーダー。チームに合わせたカスタマイズも可能。」,「こだわりのシャツが本体価格¥3,400+税?作れます。」,「チーム名,背番号などを別途追加することで,ゲームシャツとしても使用可能。」,「オーダーは3stepで完成」の記載があり,その「step3 完成」の項には,「Tシャツ本体」を使用した「ゲームシャツ(例)」等の見積もり例が,商品「Tシャツ」のイメージ図とともに掲載されている。
(2)本件カタログは,ウェブサイト(http://www.asics.com/jp/ja-jp/e-catalog)に掲載されており(被請求人の主張),ドメイン(http://www.asics.com/jp/ja-jp)の一致するウェブサイトにおける製品について問い合わせ先として,アシックスジャパン社が掲載されている(甲4)。
(3)乙第6号証は,平成28年における本件商標権者の「有価証券報告書」の抜粋であり,「関係会社の状況」の見出しの下,「アシックスジャパン(株)」の項において,「議決権の所有又は被所有割合(%)」の欄に「100」,「関係内容」の欄に「日本において,当社とのライセンス契約に基づき,当社ブランドのスポーツ用品等を販売し,当社に対して当社ブランドの使用等によるロイヤルティを支払っております。」の記載がある。
2 上記1認定の事実によれば,以下のとおり判断することができる。
(1)使用時期及び使用者について
アシックスジャパン社は,2017年(平成29年)の春夏商品カタログである本件カタログを,平成28年(2016年)12月に発行し,同社の管理するウェブサイト(http://www.asics.com/jp/ja-jp/e-catalog)に掲載しているところ,本件カタログは平成29年春夏シーズン向けの商品カタログで,その発行が平成28年12月とされることを鑑みれば,遅くとも,その発行月の時点において(本件要証期間内),同ウェブサイトには掲載されていたと理解するのが自然である。
そして,アシックスジャパン社は,本件商標権者の関係会社(100%子会社)の1つで,日本における本件商標権者に係るスポーツ用品等の販売を,本件商標権者とのライセンス契約に基づき行う地位にあるため,同社による商標の使用は,特段の事情がない限り,本件商標権者との間における明示又は黙示の使用許諾に基づくものと理解するのが自然であるから,同社は本件商標権の通常使用権者と推認できる。
(2)使用商標及び使用商品について
本件カタログの6葉目の見出しに表示されている「デコシャツ」及び「DECO SHIRT」(以下「本件使用商標」という。)の文字は,カスタマイズしたオーダーが可能なシャツの注文方法の記事と関連して表示されており,その記事中には,具体的な商品例として,商品「Tシャツ」を元にしたイメージ図も表示されていることからすれば,本件使用商標は,商品「Tシャツ」(以下「本件使用商品」という。)の出所識別標識としても機能しているものというべきである。
そして,本件使用商品は,本件商標の指定商品である「被服」に含まれるものである。
(3)本件商標と本件使用商標の同一性について
ア 本件商標について
本件商標は,「DECO」の欧文字と「デコ」の片仮名を上下二段に表してなるところ,「デコ」の片仮名は,その構成上併記された「DECO」の構成文字から生じる「デコ」の称呼を表記したものと認識,理解するのが自然であるから,それぞれの構成文字から「デコ」の称呼が生じる。
そして,「DECO」の語の意味として,一部の英和辞典には「ART DECO,アールデコ,1920?30年代の装飾様式」(「リーダーズ英和辞典」研究社,甲7)の語が掲載されているとしても,当該語がそのような意味を有する外来語として,我が国で親しまれて用いられていることを示す具体的な証拠はない。
そうすると,本件商標の構成中,「DECO」及びその表音である「デコ」の文字は,いずれも直ちに特定の意味合いを想起させるものではなく,特定の観念は生じないというべきである。
イ 本件使用商標について
本件使用商標は,「DECO SHIRT」の欧文字と,その「DECO」の欧文字の上部にルビのように「デコシャツ」の片仮名を付した構成からなるところ,「デコシャツ」の片仮名は,その構成上併記された「DECO SHIRT」の構成文字から生じる「デコシャツ」の称呼を表記したものと認識,理解するのが自然である。
また,本件使用商標の構成中,「SHIRT」の欧文字及びその表音である「シャツ」の片仮名部分は,「ワイシャツ,シャツ」の意味を有する英語及びその外来語であるところ,それぞれ本件使用商品との関係では,その商品の普通名称を表示するにすぎない,自他商品の識別標識としての機能を有さない語である。
そうすると,本件使用商標の構成において,上記アのとおり,直ちに特定の観念を生じない「DECO」の欧文字及びその表音である「デコ」の片仮名部分が,商品「Tシャツ」に係る出所識別標識としての機能を果たし得るもので,商標の同一性を基礎づける中核的部分ということができるから,これら文字部分に相応して,「デコ」の称呼が生じるが,特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と本件使用商標の同一性
上記ア及びイを踏まえて検討すると,本件使用商標のうち,商標の同一性を基礎づける中核的部分として把握される「DECO」及び「デコ」の文字部分は,本件商標との比較において,いずれも特定の観念は生じず,称呼において共通し,「DECO」及び「デコ」のそれぞれの文字部分の綴りも共通にすることから,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(4)以上のとおり,本件要証期間内において,本件商標権者の通常使用権者であるアシックスジャパン社は,その発行する本件カタログの中で,本件審判の請求に係る指定商品「被服」に含まれる商品「Tシャツ」に関する広告記事に,本件商標と社会通念上同一とみられる本件使用商標を付し,本件カタログを,電磁的方法により提供していたものと認めることができる。
そして,上記使用行為は,商標法第2条第3項第8号に該当するものである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,本件商標権者は,本件商標そのものを使用しておらず,本件使用商標にしても,全体としてまとまりよく一体的に看取,把握される商標であるから,本件商標と社会通念上同一の商標を使用していない旨を主張する。
しかし,上記2(3)のとおり,本件使用商標のうち,商標の同一性を基礎づける中核的部分として把握される「DECO」及び「デコ」の文字部分は,本件商標とは称呼及び文字の綴りも共通にし,いずれも特定の観念を生じないことから,本件商標とは社会通念上同一の商標というべきである。
(2)請求人は,本件カタログに掲載される商品は,「チームに合わせたカスタマイズも可能」,「ゲームシャツ対応」などの記載があることからすれば,「被服」というより「運動用特殊衣服」に相当するものであり,本件商標の指定商品である「被服」についての使用とはいえない旨を主張する。
しかし,上記1(1)のとおり,「ゲームシャツ対応」との記載は,その説明書きにも「チーム名,背番号などを別途追加することで,ゲームシャツとしても使用可能。」と記載されているように,当該商品がゲームシャツとしても使用できる旨を表しているにすぎず,その他の記載も,当該商品が専らスポーツをする際に限って使用する特殊な衣服であることを表しているものではないから,上記2(2)のとおり,本件カタログによる「DECO SHIRT(デコシャツ)」の下でオーダーできるシャツは,「Tシャツ本体」を元にした商品であって,「ランニングシャツ」や「トレーニングパンツ」等と同様に,スポーツ以外の日常生活でも使用され得るものとみるのが相当であるから,これは専らスポーツをする際に限って使用する特殊な衣服である「運動用特殊衣服」には相当せず,本件商標の指定商品である「被服」に含まれるものとみて差し支えないというべきである。
4 まとめ
以上によれば,被請求人は,本件要証期間内において,日本国内において,通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品「被服」に含まれる商品「Tシャツ」について,本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用商標を使用していたことを証明したといえる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-04-16 
結審通知日 2018-04-18 
審決日 2018-05-02 
出願番号 商願2009-76816(T2009-76816) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 尚人岩本 和雄庄司 美和 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 阿曾 裕樹
田村 正明
登録日 2011-11-04 
登録番号 商標登録第5448645号(T5448645) 
商標の称呼 デコ 
代理人 江部 武史 

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