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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z05
管理番号 1340321 
審判番号 取消2016-300494 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-07-15 
確定日 2018-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4825570号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4825570号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示したとおりの構成からなる「グランズ レメディ」の片仮名と「GRAN’S REMEDY」の欧文字を2段に横書きしてなり、平成13年2月22日に登録出願、第5類「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。),殺菌剤,抗菌剤(工業用のもの及び洗濯用のものを除く。)」を指定商品として、同16年12月17日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成28年8月3日であり、本件審判の請求の登録前3年以内である、同25年8月3日ないし同28年8月2日を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番法を含む。)を提出している。 1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用されていないものであるから、商標法第50条第1項の規定に基づき、取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)乙第1号証の商品について
ア 我が国独占販売契約及び被請求人の取り扱う乙第1号証の写真の商品(以下「本件商品」という。)の製造元、輸出元について
(ア)請求人は、子会社として、本国ニュージーランドから、本件商品その他の請求人の商品を世界に輸出販売するために、2006年、Grans International Limited(以下「Grans社」という。)を同国に設立し、同法人に、本件商品も含む、請求人の製造する商品の国際的販売権を付与した。
(イ)同法人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州在住のDennis Edward Petras氏及びホノルル在住のHiroko Otsuka Miller氏(Trans Pacific Trading Co.社と称する。以下「Trans社」という場合がある。)と代理店契約を締結し、両氏に、本件商品の日本及びその領海における独占的販売権を付与した(甲1) 。
さらに、その代理店契約書条項16に記載のとおり、Grans社は、Trans社が、本件商品の日本での販売について、被請求人に、その販売権(サブライセンス)を与えることを許可した。
このように、上記契約に基づき、被請求人は、本件商品を得て、我が国で、それを販売するものであり、請求人が、直接に、被請求人に対して、本件商品の我が国販売について代理権を付与したものではない。
しかしながら、答弁書において、被請求人が認めるように、被請求人の販売する本件商品は、すべて、請求人が製造し、上記請求人の子会社、Grans社が日本へ輸出した商品である。
イ 本件商品の性質について
(ア)本件商標の指定商品は、第5類「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。),殺菌剤,抗菌剤(工業用のもの及び洗濯用のものを除く。)」である。
第5類は、「薬剤」、「医療用試験紙」、「医療用油紙ほかいわゆる医療補助品」、「歯科用材料」、「おむつ,おむつカバー」、「はえ取り紙」、「防虫紙」、「乳幼児用粉乳」、「サプリメント」、「食餌療法用飲料,食餌療法用食品」、「乳幼児用飲料,乳幼児用食品」、「栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)」、「人工受精用精液」のカテゴリーに区分されている(特許庁「類似商品・役務審査基準」第5類)。
すなわち、「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」といった特別の概念(カテゴリー)は設けられておらず、よって、同商品は、上記カテゴリー中、その文言から、「薬剤」に含まれると理解されて、商標登録されたものと理解でき、本件商標の特許庁公報によれば、本件商標の指定商品には、01B01、01B02の上記「薬剤」の概念の類似群が付されており、これら指定商品は、「薬剤」との理解の下で、商標登録されている。
(イ)さらに、商標登録上の第5類の「薬剤」とは、「旧薬事法(昭和35年法律145号)の「医薬品」の大部分及び同法の「医薬部外品」の一部とされる(甲8)。
(ウ)これに対して、被請求人の輸入・販売する本件商品、すなわち、請求人の製造する商品は、旧薬事法の規制を受ける「薬剤」ではなく、いわゆる雑貨品である。
(エ)請求人の子会社であるGrans社は、そのホームページにおいて、本件商品を広告宣伝しているが、そこでは、「Gran’s Remedy Original,Cooling&Scented Foot Powders」(訳:Gran’s Remedyオリジナルの冷却及びよい香りのする足用パウダー)と説明されている(甲2の1)。
すなわち、本件商品は、旧薬事法等の規制を受ける薬剤ではなく、あくまで、雑貨品であり、商標登録上は、第3類の「靴用消臭芳香剤」(甲6)及びそれに類する商品と解されるべきものである。
よって、被請求人の使用する乙第1号証の商標(以下「使用商標1」という。)、乙第20号証及び乙第21号証の商標(以下「使用商標2」という。)及び乙第22号証の商標(以下「使用商標3」という。)が、仮に本件商標と社会通念上の同一商標と解するとしても、その使用に係る本件商品は、第3類の「靴用消臭芳香剤」及びそれに類する商品であって、本件商標の指定商品である「薬剤」の概念に属する第5類「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。),殺菌剤,抗菌剤(工業用のもの及び洗濯用のものを除く。)」ではない。
したがって、本件商標は、その指定商品に使用されているものではない。
(2)本件商標について
ア 本件商品及びその容器には、「GRAN’S REMEDY」の文字商標(以下「請求人の商標」という。)及びメガネをかけたキャラクターの絵が書かれたラベル(以下「請求人ラベル」という場合がある。)が、元々、請求人によって、貼付されている(甲2)。
イ 被請求人は、その請求人の商標について、片仮名で表記した使用商標1が付されたラベル(以下「本件シール」という。)を制作して、それを本件商品に重ねて貼付して、我が国市場で、販売代理店として、単に、転売しているにすぎない。
ウ Trans社は、代理店契約(甲1)の授権を受けて、被請求人とさらに代理店契約を締結しており、そこでは、請求人の商標が使用された、請求人ラベルが付された本件商品のみを販売することとされており、本件商品と類似する商品の製造及び販売は禁止されている。また、Trans社の是認の下で、すべての本件商品の容器に、その正しい日本語の訳文を付することも義務づけられている。
エ このように、使用商標1及びこれを左上部に記載した本件シールは、この義務を履行すべく、被請求人によって作成され、本件商品の容器に、請求人の商標に加えて、貼付されているものであって、被請求人の出所を示す商標ではない。
オ この点、学説(通説)においても、並行輸入業者らが、その製造元の商標が付された商品を転売しても、当該商標は、製造元の出所を示す商標であって、製造元の商標として正しく機能しており、商標権侵害とはならないと解されている。さらに、並行輸入業者らが、その真正商品を販売するにあたり、ちらし等販売促進物等に製造元の商標を使用しても、それは、あくまで製造元の商標と認識させるものであって、その商標権侵害には該当するものではない、と解している(甲7)。
かかる理論に照らせば、被請求人の使用商標1は、請求人の商標を単に片仮名表示したものであって、被請求人自らの商標ではない。また、使用商標2及び使用商標3も請求人の商品の販売にあたり、使用しているものであって、被請求人の商標とは認められないことは明らかである。
(3)以上のとおり、被請求人は、本件商標を、自ら、その商標として使用している事実はなく、よって、本件商標の商標登録は取り消されるべきである。
3 上申書(平成28年11月30日付け)
(1)本件拒絶理由通知について。
本件商標に係る商標登録出願について、特許庁では、平成14年4月24日付の拒絶理由通知書を発している(甲10)。
同通知書は、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示する周知商標「グランズレメディ/GRAN’S REMEDY」商標と同一又は類似するものと認定しているが、1989年からの世界的使用の事実に照らしても、係る認定は正当なものである。
(2)被請求人提出の意見書(乙3)
ア 被請求人は、請求人の商標の周知性を否定し、また、仮に周知であるとしても、周知ならしめたのは、総輸入発売元たる被請求人の行為である、さらに、今後本件商標を第三者に登録されてしまうような事態が発生したら、さらなる救いようのない損害が生じてしまう、などと同意見書において、主張して、本件商標登録を取得したものである。
しかしながら、わが国の輸入代理店が、輸入代理店と称して、本件商品をいかに販売しようとも、元々、本件商品に使用されている請求人の商標が、被請求人を指称する商標となるわけではないことは、周知の事実であり、加えて、請求人は、このような本件商標の被請求人による商標登録について、何らの許諾を与えておらず、いわゆる代理人の不当登録に該当するというべきものである。
イ また、我が国周知商標か否かの認定について、特許庁審査基準に示された基準によれば、周知商標か否かの認定は、外国での周知の事実も考慮され、日本での商品の販売事実はないものであっても、周知商標と認定され得るものである。
すでに、請求人の商標が付された本件商品は、本件商標の出願時点(平成13年2月22日)において、世界的に輸出されており、本件商標が、請求人の周知商標と同一又は類似するとの拒絶理由通知書の認定は妥当なものであり、上記被請求人の意見書の主張は、本件商標登録を取得し得る合理的理由と認められるものではない。
(3)使用商標1について。
ア 使用商標1の意味については、被請求人と、請求人の我が国における本件商品の独占販売代理店であるTrans社とのサブライセンス契約によって、被請求人は、本件商品の日本における販売については、本件商品の容器について記載されたすべての英文情報について、正しい日本語訳文を付けて販売する事が義務づけられている。
イ 使用商標1が使用された本件シール(乙1、乙8)をみれば、本件商品の商品説明が詳しく日本語で表記され、そのシールの左上に、使用商標1が付されている。同使用商標1は、本件商品の容器に付された、「GRAN’S REMEDY」の片仮名表記の「グランズレメディ」の文字と、その下に、小さく「GRAN’S REMEDY」の英文が表記されて組み合わせられたもので、この片仮名は、「GRAN’S REMEDY」を日本語表記したものと容易に認識できるものである。これは、上記サブライセンス契約上の被請求人の義務として付されているものであり、また、本件商品の取引者、需要者からみて、この使用商標1だけを、被請求人の商標と別途認識するようなことはあり得ない。
ウ 本件シールには、「1986年特許取得PAT.NZ.NO225231」の文言(説明)もあるが、同PAT.NZ.の文字から、本件商品の製造者、つまり請求人のニュージーランド特許製品であることも一見容易に認識でき、他方、被請求人は、「?総輸入発売元? 株式会社シャッフル」と記載されているように、この商品の日本販売者、転売者と容易に認識でき、このような記載を総合的に見ても、使用商標1は、請求人の商標と実質同じもの又はその片仮名日本語訳と容易に認識できるものである。
エ 以上のとおり、被請求人が本件商標の使用と主張する、使用商標1及び使用商標2並びに使用商標3は、被請求人商標と認識されるものではなく、請求人の商標の片仮名語訳として、請求人商標をより読みやすく等するため、請求人の商標とともに使用されているものであって、取引者・需要者に、被請求人の商標と認識されるものではなく、よって、係る商標の使用は、被請求人の所有する本件商標の使用に該当するものではない。
4 上申書(平成28年12月21日付け)
(1)請求人は、Trans社と、被請求人との間のサブライセンス契約(代理店契約書)について、義務規定(同第9条)のみを開示したものを提出する(甲11)。
同条項から、請求人によって、予め本件商品の容器に添付された請求人ラベル(請求人の商標及び商品説明が記載)の正しい日本語訳が作成され、それが本件商品の販売に使用されなければならないことが、被請求人に義務付けられていることは明らかである。
このように、被請求人が本件商標を使用したと主張する使用商標1が添付された本件シールは、請求人によって、予め本件商品の容器に添付されている請求人ラベルの単なる日本語訳文である。
(2)請求人は、本件商品(乙1)のその容器全部についての写真を提出する(甲12)。かかる写真が示すとおり、被請求人によって、我が国で販売される本件商品には、請求人によって、請求人の商標及び商品説明(請求人ラベル)が予め添付されており、本件商品の取引者、需要者はこれらの表示から、本件商品をニュージーランドからの輸入品であると容易に認識でき、よって、この商標をその製造元の商標と容易に認識するものである。
したがって、被請求人によって、さらに、本件商品に添付される本件シールは、本件商品を日本で販売するための請求人の上記請求人ラベルの単なる補強説明、日本語訳と認識できる程度のものであって、被請求人(本件商標権者)が、本件商標を使用したものと認めることができるものではないことは明らかというべきである。
5 口頭審理陳述要領書
(1)被請求人は、陳述要領書において、「甲第11号証の書面は何ら効力を有しない」と述べるが、同契約書の当事者の一方は、「SHUFFLE CO.LTD.,a Japan corporation with its office at c/o Mr.Kanaya, VIC Building 2F.1-8-6 Nakazato, Kita-ku,Tokyo 114-0015,Japan」であり、その「President」として、「KIMIHITO KANAYA」が署名している。上記住所は、被請求人が述べるとおり、被請求人の前所在地であり、なぜ、「何ら効力を有しない」と主張するのかその明確な根拠が示されるべきである。
(2)本件商品の本件シールには、「総輸入発売元/株式会社シャッフル」と記載されており、これらの記載から、被請求人が、本件商品を単に我が国に輸入販売する者であるにすぎないことが明らかに認識できる。他方、本件商品には、「Made in New Zealand」の表示及び「GRAN’S REMEDY」の文字が本件商品の平面(ふたの上部)及び側面に大きく描かれた請求人ラベルが、請求人によって、すでに添付されている。本件商品の取引者及び需要者の目からみても、これらの記載及びラベルの添付の状況から、この「GRAN’S REMEDY」を本件商品の商標と認識するとともに、同商標は、本件商品の製造者の商標であると容易に認識し得るものであり、決して、本件商品のいわゆる流通業者である被請求人の商標と認識されるものではないことは明らかである。
よって、このような請求人ラベルの添付された商品に、同商標と実質的に同一の「GRAN’S REMEDY」及びその音訳である「グランズ レメディ」の片仮名からなる商標を含む被請求人の本件シール(乙11、乙34)が、本件商品に重ねて添付されたとしても、それは、単に、本件商品の製造者の商標を、日本語に翻訳し、取引者及び需要者にわかりやすく表記した程度のものと認識できるものである。
加えて、この商標の記載部分以外の被請求人の本件シール(乙11、乙34)に記載された日本文は、すべて、すでに本件商品に予め、請求人によって添付されている請求人ラベルに記載された英文脱明と実質的に同一のものである。よって、かかる商標部分以外の記載からも、被請求人によって添付されている被請求人の本件シールは、請求人によって予め添付されている本件商品の請求人ラベルの単なる日本語訳文と容易に理解できるものである。
(3)近時の登録商標の使用を問題とする不使用取消審判事件において、裁判所は、「商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、(中略)商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むと解するのが相当である」と判断している(例えば、知財高裁平成25年3月25日平成24年(行ケ)第10310号)。すなわち、同判決は、商品の製造者によって、その商標が付された商品が、その流通業者を介して販売されている場合において、商標法上は、当該使用商標は、流通業者の使用する商標とも、形式的には解することもできるが、それは、商品の製造者の意思にしたがって流通しているものであり、よって、その使用商標は、流通業者の使用する商標としてではなく、商品の製造者の使用する商標と評価、認定できるとするものである。
翻って、本件において、本件商品には、予め、請求人の商標及び商品の説明(英文)を記載した請求人ラベルが添付されており、かつ、そのラベルには、この商品は、請求人らの所有するニュージーランドの特許製品(甲5)である旨の記載もあり、さらには、「Made in New Zealand」の記載もあるところから(甲2の2及び3、甲12)、たとえ、本件商品の流通業者である被請求人が、その商標と実質的同一と解される本件商標を使用した被請求人の本件シール(乙11、乙34)を添付し、本件商品を我が国で販売しているとしても、この本件シールは、請求人の英文ラベルの日本語訳であると、取引者及び需要者に容易に認識されるものである。さらに述べれば、被請求人の本件シールには、被請求人を「総輸入発売元」として記載しており、被請求人は、本件商品の流通業者であることが明らかである。
上記裁判例での判断手法・考え方に照らしても、本件商品に使用されている商標は、被請求人の本件シールに添付の商標も含め、その流通業者である被請求人の商標と認識されるものではなく、本件商品の製造者であるニュージーランド国の請求人の商標と認識され、評価されるべきものである。
(4)被請求人が事業者向けと称するパンフレット(乙22)、新たに提出されたオリジナル版と称するパンフレット(乙39)、購入者向けパンフレット(乙20)及びカード(乙21)、その当時のオリジナル版と称する新たに提出されたパンフレット(乙40)、カード(乙41)について、被請求人は、そこに記載された住所の表示からその当時に作成されたものと主張する。
しかしながら、商標法第2条3項第8号が規定するいわゆる商標の広告的使用に該当するためには、商標が付された商品の広告が、展示、頒布等されてはじめて当該商標の使用に該当するものとされる。よって、本件において、本件商標のパンフレットなどへの広告的使用を認めるためには、要証期間の間に、これらパンフレット、カードが展示、頒布等されていなければならないが、そのような具体的事実は、何ら、被請求人によって立証されていない。
(5)被請求人は、請求人の本国の本件商品の商標と実質同一の商標を我が国において自己の商標としてその商標権を取得するものであるが、その商標が使用されている商品は、まさしく、請求人の商品であって、いくらこれら商品を我が国に流通させるとも、本件商標は、請求人の商標と、我が国取引者及び需要者に認識されるものであり、何ら被請求人の商標として、取引者及び需要者に認識されているものでないことは明らかというべきである。
6 上申書(平成29年6月15日付け)
(1)本件口頭審理の場において、被請求人の代理人は、請求人が提出した、Trans社と、被請求人の代表者のKIMIHITO KANAYA氏との間のサブライセンス契約(甲11)(以下、「本件契約書」という場合がある。)について、同氏は「この契約書に署名した覚えはない」と述べていると主張し、同契約の成立を否定した。
しかしながら、被請求人が本件商標の使用証拠と主張する本件シール(乙1、乙8)は、まさしく、本件商品の容器に、予め請求人によって添付されている請求人ラベル(甲12)の翻訳文そのものであり、本件契約書第9条「サブライセンシー(被請求人)は、本件商品のすべての包装の情報について正しい外国語翻訳を行う義務を負い、それについてライセンシーの承諾を得なければならず、その費用は、サブライセンシーの合理的な費用において負担するものとする」との義務の履行と解されるものである。
本件契約書に署名しなければ、このような本件シールを被請求人が作成して添付するというようなことはあり得ないというべきである。
また、被請求人は、請求人の製造する本件商品についての我が国での唯一の独占代理店である旨主張し、請求人の製造に係る本件商品を日本に継続的に輸入して販売していると主張するが、このような海外商取引において、請求人ないしその正当なライセンシーと契約書を交わさずに、このような本件商品の我が国への継続的輸入ができるはずもなく、本件契約書に被請求人代表者が署名していることは紛れもない事実である。
なお、請求人は、上記被請求人の主張を受けて、本件契約書の原本の提出を検討しており、また、本件契約書の署名がなされた経緯について、他方当事者の宣誓供述書などの文書を提出することについて検討中である。
他方、被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「なお、被請求人は米国の訴外外国法人との間の独占販売契約は、平成10年(1998年)頃に取り交わされた契約が現在に至るまで内容を変えることなく継続しているもの」と主張するが、請求人の本件商品の我が国独占販売権を、請求人及びそのライセンシー以外の他者が付与し得る権限を有しているとは考え難く、同契約書が提出されるべきである。
(2)本件商品の容器の包装には、請求人の製造に係る本件商品の請求人ラベルが予め添付され、その容器の頭部、側面には、大きく、著しく、請求人の所有する本件商標と実質的に同一の商標「GRAN’S REMEDY」が付され、また、そのラベルには、英文が表示されている(甲12)。
該記載は、被請求人が本件商標の使用と主張する本件シール(乙1、乙8)の日本語の表記と実質的に同一のものであることは明らかというべきであり、同シールは、この予め本件商品に添付された請求人ラベルの日本語による補助的説明と容易に認識されるものである。
よって、被請求人が所有する本件商標について、被請求人自らが、その商標を「使用」していると評価できるものではないことは明らかである。
なお、甲第12号証の本件商品の容器写真は、上記の記載について必ずしも明瞭でないおそれもあり、請求人は同ラベル自体及びその訳文を追って提出する予定である。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第43号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)はじめに
ア 当事者について
請求人は、ニュージーランドを本国とする外国法人であり、靴の消臭剤の製造、販売等を行っており、他方、被請求人は、日本国の会社法(旧有限会社法)に基づき設立された株式会社(旧有限会社)であり、靴の消臭剤の輸入卸販売等を目的としている。
イ 靴用除菌消臭剤「グランズレメディ」について
「グランズレメディ」(乙1:本件商品)は、ニュージーランドで生まれた靴用除菌消臭剤である。
本件商品は、本件商標の指定商品中の「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」に該当する。つまり、本件商品には、本件シールが貼付されており、本件シールには、「靴除菌消臭剤」と記載がある。また、被請求人が管理運営する本件商品の日本公式ウェブサイトのトップページ(乙2)では、「グランズレメディとは」と題された欄において、「グランズレメディは・・・靴・足の消臭剤で足元のくさい臭いを消す天然成分の純白パウダー」等と記載されている。本件商品、及び被請求人が現在も運営している本件商品の日本公式ウェブサイトのトップページ(乙2)のこれらの記載から、本件商品が靴用の除菌消臭剤であることは明らかである。
被請求人は、アメリカ合衆国を本国とする訴外外国法人を介して、本件商品を知り、同外国法人を通じて自ら請求人にアプローチして、1998年に、本件商品の日本国における独占販売権を取得する契約を得たのである。その結果、同時期から現在まで、被請求人のみが日本国において本件商品を独占的に販売する権限を有している。このため、第三者はもとより、請求人も日本国内において本件商品を販売することは、直接・間接を問わず許されない。
このような強力な独占的販売権を得たからこそ、被請求人は、多大な時間と費用をかけて、日本国内で流通していなかった全く無名の本件商品を人気商品になるまで育て上げたのである。
このように、本件商品については、専ら被請求人が、1998年から現在まで何も変わることなく、本件商品を日本国内において独占的に販売し続けてきているのである。
被請求人が現在も運営している本件商品の日本公式ウェブサイトのトップページ(乙2)では、「日本では株式会社シャツフルがグランズレメディの唯一の正規輸入発売元です。」と記載されている。また、乙第2号証の本件商品の日本公式ウェブサイトでは、インターネット上での本件商品の販売も容易に確認できる。
ウ 本件商標の登録に至る経緯
本件商品は、平成13年頃になると、被請求人の経営努力により日本国内において徐々に人気が高まって来た。そこで、被請求人は、本件商品のブランドを守るために、同年2月22日に、本件商標の出願を行った。この出願については被請求人が販売する本件商品自体の周知性を理由とした拒絶理由通知を受けた。そのため、被請求人は、意見書(乙3)を提出して、拒絶理由を解消させて本件商標の登録査定を受け、その後、現在まで本件商標の登録は存続している。
前述した意見書(乙3)では、本件商品が本件商標の出願時に取引者、需要者間に広く認識される状況に至っている場合、そのような状況は、専ら本件商品の日本における独占販売権を有する被請求人の経営努力によるものであることなどが詳述されている。そして、この意見書の提出後に拒絶理由が解消して、本件商標の登録に至っているのであるから、特許庁においても、被請求人が主張している意見書の記載のとおりに事実が認定されている。
エ 本件審判請求について
ところで、本件商標の登録による恩恵を最も強く受けてきたのは被請求人ではなく請求人である。なぜならば、請求人は、何の苦労もせず、リスクも取らずに、被請求人に本件商品の知名度やブランド価値の向上を丸投げして、その果実だけを楽に回収できているためである。現に、被請求人は、1998年頃から現在まで請求人から納品された膨大な数の本件商品の購入代金の全額を遅滞なく請求人に支払っている。他方、本件商品の膨大な販促費用や本件商標の登録の申請費用及び権利維持費用等を請求人は全く負担していない。それどころか、請求人は、長年にわたり、日本国内において本件商標について商標登録の維持に全く無関心な態度を取り続け、本件商標の登録維持のための費用等についても見て見ぬふりをしてきた。
ところが、近年、本件商品について、違法な並行輸入業者が増加し、後を絶たない。そして、本件商品がヒット商品となってきた後、数年ほど前から請求人は、急に本件商標の日本国内における商標登録に強い関心を示しはじめてきた。そして、今般請求人は、身勝手にも本件取消審判を請求してきたのである。
そして、1998年頃から本件取消審判の請求を受けるまで、つまり、要証期間内において、本件商標の商標権者である被請求人は本件商標を使用し続けている。
(2)使用商標の使用について
ア 本件商品の包装(ボトル)への貼付行為(商標法第2条第3項第1号)
(ア)使用商標の貼付の態様
日本で販売されている本件商品の包装(ボトル)には、「グランズレメディ」を太文字の片仮名で上段に、「GRAN‘S REMEDY」の欧文字を下段に横書きした構成からなり(乙1)、その文字部分の後に、横長楕円形状の背景図形が配されている商標(使用商標1)を左上部に記載した本件シールが貼付されている。本件シールは、本件商品の仕入れ後に、被請求人自らで本件商品の包装(ボトル)に貼付している。
被請求人が現在も運営している本件商品の日本公式ウェブサイトにおける「偽モノにご注意」と題したページ(乙4)では、「正規品には、株式会社シャッフルの社名が入った日本語シールが貼られています。」と記載されたうえ、本件シールの画像が掲載されている。このことからすれば、本件取消審判が請求された時点で、使用商標1記載の本件シールが本件商品の包装(ボトル)に貼付されていることは明らかである。
(イ)使用商標の貼付時期
被請求人は、本件商品の日本における独占販売権を取得し本件商品の販売等を開始した1998年頃から、本件取消審判が請求された2016年7月15日時点まで、その全期間において、本件シールを本件商品の包装(ボトル)に貼付し続けてきている。
このことは、(a)2015年2月11日時点での本件商品の公式ウェブサイトの記述(乙5)、(b)2016年3月1日発行雑誌における本件商品の掲載(乙6)、(c)インターネット上のオークションサイトに出品された本件商品(乙7)、(d)被請求人による本件シールの印刷の発注(乙8?乙11)の各証拠から明らかである。
(ウ)小括
以上のとおり、被請求人は、要証期間内の全期間において、使用商標1が印刷されている本件シールを本件商品の包装(ボトル)に貼付し続けている。
したがって、被請求人は、要証期間内に「商品・・・の包装に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)をしており、使用商標1を使用していることは明らかである。
イ 本件商品の販売等(商標法第2条第3項第2号)
(ア)店舗への卸売販売
被請求人は、1998年から本件取消審判の請求日(2016年7月15日)まで、つまり、要証期間の全期間において、多数の店舗に対して、使用商標1記載の本件シールが貼付された本件商品を卸売りし続けている(乙12)。
(イ)インターネット上のショッピングサイトでの販売等
被請求人は、1998年以降本件取消審判が請求された2016年7月15日時点まで、要証期間内も、インターネット上のショッピングサイトにおいて、使用商標1記載の本件シールが付された本件商品を以下のように、販売又は卸売りし続けている。
a 被請求人運営の本件商品のオンラインショップにおける販売
アーカイブに記録保存されていた、2015年2月27日時点での被請求人運営の本件商品の公式オンラインショップのウェブページ(乙13)では、本件シール(乙5)が本件商品の包装(ボトル)に貼付されている写真が掲載されていることが確認できることからすれば、要証期間内である2015年2月27日、被請求人が、被請求人運営の本件商品の公式オンラインショップにおいて、使用商標1記載の本件シールが付された本件商品を販売していたことは明らかである。
b 多数のインターネット上のショッピングサイトに対する卸売
(a)使用商標1記載の本件シールを貼付した本件商品が、インターネット上のショッピングサイトである「Amazon」(以下、「Amazon」という。)において販売されている
Amazonにおける本件商品の販売情報が記載されたページ(乙14)に掲載されている写真において、本件商品に使用商標1記載の本件シールが貼付されていることが確認できる。また、同ページによると本件商品の販売開始日は、2006年5月24日であることも確認できるから、使用商標1記載の本件シールを貼付した本件商品が、同日から本件取消審判が請求された2016年7月15日時点まで、要証期間内においても、Amazonにおいて販売されていることは明らかである。
なお、同ページの「登録情報」欄の「ASIN」に続いて記載されている番号は、Amazonが取り扱う、書籍以外の商品を識別する番号である(乙15)。そして、Amazonにおける本件商品の販売情報が記載されたページ(乙14)では、本件商品のASINとして、「B000FQ6I8C」が記載されている。
(b)乙第14号証のページで販売されている本件商品は被請求人がAmazonに卸売したものである
Amazonから被請求人宛ての商品販売分析レポート(乙16)では、「ASIN」欄に、本件商品の画像と共に、Amazonにおける本件商品販売ページ(乙14)記載のASINと同様の「B000FQ6I8C」が記載されているから、当該商品販売分析レポート(乙16)は、Amazonにおける本件商品販売ページ(乙14)において販売された本件商品に関するレポートであることは明らかである。また、Amazonから被請求人宛ての商品販売分析レポート(乙16)では、「メーカー」欄に「シャッフルコーポレーション」と被請求人の名称が記載されている。
したがって、Amazonにおける本件商品販売ページ(乙14)において販売されている本件商品が、被請求人から卸売されたものであることも明らかである。
(c)本件商品の卸売時期
Amazonから被請求人宛ての注文履歴(乙17)では、「ASIN」欄に、Amazonにおける本件商品販売ページ(乙14)におけるASINと同一の「B000FQ6I8C」が記載されており、「商品名」欄には「【国内正規品】グランズレメディ 50g」と記載されている。これらの記載から、Amazonが本件商品販売ページ(乙14)で販売されている本件商品を、被請求人に対し注文したことが確認でき、その注文番号(PO)として、「746KMRRX」が記載されている。
そして、同注文履歴では、「発注日」欄に「2016/2/16」と記載されており、前述の本件商品の発注が、要証期間内の2016年2月16日に行われたことが確認できる。
他方、被請求人からAmazonに対する出荷履歴(乙18)は、「PO番号」欄に「746KMRRX」と記載されており、Amazonから被請求人宛ての注文履歴(乙17)を受けた出荷履歴であることが確認でき、同出荷履歴では、「出荷日」欄に「2016/2/16」と記載されており、被請求人がAmasonに対して、要証期間内の2016年2月16日に本件商品を出荷したことが確認できる。
このように、被請求人は、要証期間内の2016年2月16日に、Amazonから本件商品の注文を受けて、同日、Amazonに対して本件商品を出荷し卸売したことは明らかである。
以上のとおり、被請求人は、1998年以降本件取消審判が請求された2016年7月15日時点まで、要証期間内も、Amazonに対して、使用商標1記載の本件シールが付された本件商品を卸売りしていた。
(ウ)インターネット上のウェブサイトの記事への掲載
第三者のウェブサイト「GiGAZINE」の2015年7月12日の記事において、本件商品が紹介されている(乙19)。
(エ)本件シールが貼付された本件商品の雑誌掲載
本件商品は、要証期間内に、各種雑誌に多数掲載されている(乙6)。
(オ)インターネット上のオークションサイトに出品された本件商品
本件商品は、要証期間内に、インターネット上のオークションサイトにも出品されている(乙7)。
(カ)小括
以上のとおり、被請求人は、1998年以来、本件取消審判が請求された時点まで、要証期間内も、使用商標1記載の本件シールが付された本件商品を販売又は卸売りし続けている。
したがって、被請求人は、1998年以来本件取消審判が請求された時点まで、要証期間内においても、「商品・・・包装に標章を付したものを譲渡」等していたといえ(商標法第2条第3項第2号)、使用商標1を使用していたことは明らかである。
ウ 本件商品の広告の展示、頒布等(商標法第2条第3項第8号)
(ア)本件商品の購入者向けパンフレットの頒布
被請求人は、本件商品を販売又は卸売する際、本件商品購入者向けのパンフレット(乙20)及びカード(乙21)を同封している。これらには、「GRAN‘S REMEDY」の欧文字を上段に、「グランズレメディ」の片仮名を下段に横書きした構成からなる使用商標2が記載されており、これらが、要証期間内に販売又は卸売された本件商品に同封されていることは、ウェブサイトの記事(乙19)に掲載された写真から確認できる。
(イ)本件商品の事業者向けパンフレットの頒布
被請求人は、本件商品の販売業者等に対して、本件商品の事業者向けA4サイズパンフレット(乙22)を頒布している。この事業者向けA4サイズパンフレットには、「グランズレメディ」の片仮名を上段に、「GRAN‘S REMEDY」の欧文字を下段に横書きした構成からなる使用商標3が記載されており、これを、要証期間内に頒布していたことは、平成26年12月2日付け注文書(乙23)、同日付納品書(乙24)、同年4月10日付け宅配便の伝票(乙26)及び同日付け「請求書兼領収書」(乙27)から明らかである。
(ウ)店頭用つるし広告の頒布等
被請求人は、本件商品の店舗販売業者に対して、店頭用つるし広告(乙28)を頒布等している。店頭用つるし広告(乙28)には、使用商標1が記載されていることが確認でき、要証期間内にこれを納品していたことは、宅配便伝票(乙29)及び2016年3月16日付の納品書(乙30)から確認できる。
この店頭用つるし広告(乙28)は、小売店において、本件商品の店頭用つるし広告として展示されたことから、被請求人が要証期間内に使用商標1を付した店頭用つるし広告(乙28)を頒布等していたことは明らかである。
(エ)小括
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に「本件商品に関する広告に・・・標章を付して・・・頒布」等しており(商標法第2条第3項第8号)、使用商標が要証期間内に被請求人によって使用されていたことは明らかである。
(3)使用商標1、2及び3は本件商標と社会通念上同一である
ア 使用商標1は本件商標と社会通念上同一である
本件商標は、上下二段で、片仮名「グランズレメディ」を上段に、欧文字「GRAN‘S REMEDY」を下段に横書きしてなり、上段と下段が同じ横幅でその左右両端が上下で一致する構成となっている。
他方、使用商標1は、上下二段で、片仮名「グランズレメディ」を上段に、欧文字「GRAN‘S REMEDY」を下段に横書きした構成からなり、下段の横幅が上段よりも少々短く構成されて、上段と下段の左右中央が合致するように構成されている。また、使用商標1は、その文字部分の後に、横長楕円形状の背景図形が配されてなる。
本件商標と使用商標1とでは、上段と下段の各々の書体をも共通にするほとんど同一の商標であり、その差異は、子細に観察しても、以下の点に限られる。
(ア)下段部分が上段部分と同幅でその左右両端が一致するか(本件商標)、下段部分の左右両端部が上段部分より少々短いか(使用商標1)
(イ)横長楕円図形状の背景図形を備えるか(使用商標1)備えていないか(本件商標)
しかしながら、(ア)の差異である使用商標1の下段部分が上段部分より少々短い構成は、全く取引者、需要者の記憶に残るような差異ではなく、両者を直接対比して初めて認識可能な程度の差異であり、自他商品識別標識としての機能に何ら影響を与えるものではないことが明白であり、この点が本件商標と使用商標1との同一性の判断に影響を与えるものではない。
また、(イ)の差異である使用商標の背景図形は、横長楕円形状というように、格別特徴的なものとは認められないことからすると、図形部分は、取引者及び需要者に特に顕著な印象を与えるものとは認められない。むしろ、この横長楕円形状の図形部分は、文字の後に配されていることから、背景図形とみるべきものであり、自他商品識別標識としての機能に何ら影響を与えるものではない。
そうすると、横長楕円形状の図形は、文字の後に配された背景にすぎないものであるから、使用商標1に接する取引者及び需要者は、直ちに上段の片仮名「グランズレメディ」及び下段の欧文字「GRAN‘S REMEDY」よりなるものと認識し得るものであって、この点が本件商標と使用商標1との同一性の判断に影響を与えるものではない。
このように、上記(ア)及び(イ)の差異は極めて微細なものであり、これらを考慮しても、自他商品の識別標識としての機能は、上段の片仮名「グランズレメディ」及び下段の欧文字「GRAN‘S REMEDY」の文字部分にあることは明らかである。
したがって、上記(ア)及び(イ)の差異は、使用商標1と本件商標と社会通念上同一を妨げる事情にはなり得ない。
イ 使用商標2は本件商標と社会通念上同一である
本件商標は、上記アのとおりの構成からなるものである。
他方、使用商標2は、上下二段で、欧文字「GRAN‘S REMEDY」を上段に、片仮名「グランズレメディ」を下段に横書きした構成からなり、下段の横幅が上段よりも短く、かつ、文字も上段よりも小型に構成されて、上段と下段の左右中央が合致するように構成されている。
本件商標と使用商標2とでは、商標を構成する文字を共通にするほとんど同一の商標であり、その差異は、子細に観察すると、以下の点に限られる。
(ア)商標を構成する片仮名及び欧文字の書体が異なる点
(イ)上段と下段の欧文字と片仮名が上下段で入れ替わっており、使用商標2の下段部分が上段よりも短く、かつ、文字も上段よりも小型に構成されている点
しかしながら、(ア)の書体の差異については、自他商品識別標識としての機能に何ら影響を与えるものではないことが明白であり、この点が本件商標と使用商標2との同一性の判断に影響を与えるものではない。
また、(イ)の差異、すなわち、本件商標と使用商標2とでは、上段と下段の欧文字と片仮名が上下段で入れ替わっており、使用商標2の下段部分が上段よりも短く構成されている点についても、何れかが上段なのか下段なのか、何れかが大型に構成されているのか小型に構成されているのかは、片仮名部分は欧文字部分の表音である本件商標と使用商標2において、取引者及び需要者の記憶に残るような差異ではなく、両者を直接対比して初めて認識可能な程度の差異であり、自他商品識別標識としての機能に何ら影響を与えるものではないことが明白である。この点が本件商標と使用商標2との同一性の判断に影響を与えるものではない。
そのため、上記(ア)及び(イ)の差異を考慮した場合であっても、自他商品の識別標識としての機能は、片仮名「グランズレメディ」及び欧文字「GRAN‘S REMEDY」の文字部分にある。
使用商標2に接する取引者及び需要者は、直ちに欧文字「GRAN‘S REMEDY」及び片仮名「グランズレメディ」よりなるものと認識し得るものであって、使用商標2が本件商標と社会通念上同一の範囲に属することは明白である。
したがって、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
ウ 使用商標3は本件商標と社会通念上同一である
本件商標は、上記アのとおりの構成からなるものである。
他方、使用商標3は、「グランズレメディ」を片仮名で上段に、「GRAN‘S REMEDY」の欧文宇を下段に横書きした構成からなる。
本件商標とは、上下段いずれの部分についても、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標である。
したがって、使用商標3は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(4) 結論
以上のとおり、本件商標の商標権者である被請求人は、要証期間内に本件商品に本件商標を付し、本件商標を付した本件商品を譲渡・引渡し、本件商標を付した本件商品の広告を頒布、展示等している。
したがって、要証期間内に本件商標が被請求人によって使用(商標法第2条第3項第1号、同第2号、同第8号)されていたことは明らかである。
2 口頭審理陳述要領書(平成29年4月6日付け)
(1)本件商品(現物)の鮮明な写真の提出等
ア 乙第1号証に写る本件商品の鮮明な写真(以下「乙31写真」という。)を新たに乙第31号証として提出する。
乙31写真では、本件商品の包装(ボトル)に貼付された本件シールの下部において、「-総輸入発売元-」、「株式会社シャッフル」、「東京都北区中里1-8-6 VICビル2F」と記載され、バーコード下にJANコードとして「4520988000015」と記載されている。JANコードとは、「どの事業者の、どの商品か」を表す13桁または8桁の商品識別番号である(乙33)。
イ 乙31写真の商品と乙14の写真の商品は同じものである。
そして、同じく、乙第14号証の写真の商品を拡大表示した写真(乙32)でも、その商品の包装(ボトル)に貼付された本件シールの下部に、「-総輸入発売元-」、「株式会社シャッフル」等と記載され、バーコード下にJANコードとして「4520988000015」と記載されている。
乙第32号証の1の写真ではJANコードとして「4520988」までの番号が確認できる。これに加えて、乙第33号証の2の写真では、この番号の続きである「000015」が確認できる。
つまり、乙第14号証の写真に写る商品の包装(ボトル)に記載された総輸入発売元の名称及びJANコード等と、乙31写真に写る本件商品の包装(ボトル)に記載された総輸入発売元の名称及びJANコード等とが、完全に合致している。
したがって、乙第14号証の写真に写る商品が、乙31写真の本件商品と同一の商品であることは明らかである。
(2)被請求人は本件商品を販売している<商標法第2条第3項第2号
本件商品の包装(ボトル)に貼付された本件シールには「-総輸入発売元-」として被請求人の名称(株式会社シャッフル)が記載されていることからすれば(乙14、乙32)、被請求人が、乙第14号証の写真に写る本件商品を、Amazon.Inc又はその関連会社(以下、「Amazon社」という。)に対して卸売りしたものであることは明らかである。
また、乙第14号証の「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日」欄に「2006/5/24」と記載されていることからすれば、2006年5月24日から現在まで、要証期間を含む期間において、被請求人がAmazon社に本件商品(乙1、乙32)を卸売していることが明らかである(乙14、乙32)。
なお、被請求人と米国の訴外外国法人との間の独占的販売契約は、平成10年頃に取り交わされた契約が現在に至るまで内容を変えることなく継続しているものであり、甲第11号証の書面は何ら効力を有しない。
したがって、被請求人が、要証期間内に、本件商品を販売したことは明らかである。
(3)被請求人は本件商品に本件シールを貼付している<商標法第2条第3項第1号
要証期間内に流通している本件商品(乙1、乙31)の包装(ボトル)に、本件シールを貼付した者は被請求人である。
すなわち、本件シールは、被請求人が要証期間内に製造・印刷を発注したシールである。具体的には、被請求人が、平成27年3月頃、訴外株式会社QAに対して、本件シールの製造・印刷を発注した(乙8)。乙第8号証の電子メールに添付されたシールと本件商品(乙31)の包装の本件シールとが同一のものであることは、それぞれに記載されているJANコードが「4520988000015」で一致することから明らかである。
そして、被請求人は、このように発注した本件シールを、自ら本件商品に貼付して、日本国内の市場に流通させているものである。なお、被請求人が本件シールを本件商品に貼付していることは、請求人も認めている。
また、本件シールには、使用商標1が記載されていることは明らかである(乙1、乙31、乙8、乙34)。
したがって、被請求人が、要証期間内に、使用商標1記載の本件シールを本件商品に貼付したことは明らかである。
(4)被請求人が、要証期間内に、本件商品をAmazon社に納品(引渡し)した具体的な実例<商標法第2条第3項第2号
ア 乙第17号証及び乙第18号証の社会通念上の原本
乙第17号証及び乙第18号証は、その記載内容から、インターネット上のウェブページの印刷物であることは明らかである。そして、当該ウェブページの社会通念上の原本は、ウェブページの電磁的記録である。
そして、乙第17号証及び乙第18号証についてみると、そのウェブページの電磁的記録は、Amazon社が作成し、管理、保管している。
このことは、乙第17号証及び乙第18号証の最下部に「amazon.co.jp」をドメインとするURLが記載されていることから明らかである。
イ 乙第17号証及び乙第18号証の記載内容の補足説明
乙第17号証及び乙第18号証は、以下のとおり、卸売業者(ベンダー)である被請求人と小売業者であるAmazon社との間の個別の取引内容を表示したものである。
(ア)乙第17号証のウェブページの読み方について
まず、乙第17号証のウェブページでは、その表題に「POの管理」と記載されている。ここにおいて、「PO」とは「Purchase Order」、つまり発注書の略称であるから、乙第17号証が「発注書」であり、その発注者はAmazon社である。
また、乙第17号証の右上部には被請求人の名称(「Shuffle Co.,Ltd.様」)が記載されていることから、その「受注者(ベンダー)は被請求人である。
そして、乙第17号証の「商品名」欄には「グランズレメディ」と記載されているうえ、同号証の「POの商品」欄には「ASIN」(商品識別番号)として「B000FQ6I8C」が記載されており、この番号は乙第14号証の3枚目に記載されている「ASIN」の番号と一致するものであるから、乙第17号証で発注された商品が本件商品(乙14、乙31)である。なお、乙第17号証の「モデル番号」欄及び「SKU」欄に記載された番号(「4520988000015」)は本件商品(乙31)のJANコードと一致しており、このことからも、乙第17号証で発注された商品は本件商品であることは明らかである。
また、乙第17号証の「発注日」欄には「2016/2/16」と記載されていることから、乙第17号証は、要証期間内の平成28年2月16日に、小売業者であるAmazon社が、卸売業者(ベンダー)である被請求人に対して、本件商品を発注したものである。
以上より、乙第17号証には、Amazon社が、被請求人に対して、要証期間内の平成28年2月16日に、本件商品を発注したことが記載されている。
(イ)乙第18号証のウェブページの読み方について
乙第18号証は、その表題として「出荷詳細」と記載されていることからすれば、乙第18号証が商品出荷の内容を表示したものであることは明らかであり、乙第18号証の「出荷先」欄に「アマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社内」と記載されていることから、出荷先はAmazon社である。
また、乙第18号証の右上部には被請求人の名称(「Shuffle Co.,Ltd.様」)が記載されていること、乙第18号証の「発送元」欄に被請求人の当時の住所である「1-8-6 VICビル2F 北区中里、東京都」が記載されていることから、発送元は、被請求人である。
さらに、乙第18号証の「PO番号」欄に「746KMRRX」と記載されているところ、これは、乙第17号証に記載された「PO:746KMRRX」の記載と合致することからすれば、乙第18号証は、本件商品について、乙第17号証の発注を受けて、本件商品が出荷されたことを示すものである。
そして、乙第18号証には、「出荷日」として「2016/2/16」と記載されていることから、被請求人は、要証期間内である平成28年2月16日に、Amazon社に対して本件商品を出荷したものである。
したがって、乙第18号証には、被請求人が、Amazon社に対して、要証期間内である、平成28年2月16日に、本件商品を出荷したことが記載されている。
(ウ)乙第17号証及び乙第乙18号証に付されたマスキングについて
乙第17号証及び乙第18号証の一部にマスキングを付した理由は、当該マスキングをした箇所に、被請求人の営業秘密に記載が含まれているためである。
また、乙第17号証及び乙18号証は、マスキングのない原本について証拠として取り調べることを請求し、その写しをマスキングして証拠提出するという趣旨で提出しているものである。
(5)被請求人が要証期間内にAmazon社に対して本件商品を納品した事実に関する新たな証拠について
ア 乙第17号証及び乙第18号証の出荷時の宅配便の伝票(乙36)の提出
乙第17号証及び乙第18号証に記載の出荷を行った時の宅配便の伝票(以下「乙36伝票」という。)を乙第36号証として提出する。
乙36伝票の「お問い合わせ送り状番号」には、「415067094676」が記載されているところ、乙第18号証にも、「配送業者の配送伝票番号」として同一の番号が記載されている。
また、乙36伝票には、「受付日」として「H28年2月16日」、「お届け予定日」として「2月17日」と記載されており、これは乙第18号証の「出荷日」として「2016/2/16」と記載されていること、「着荷予定日」として「2016/2/17」と記載されていることと完全に一致している。
したがって、乙第36号証の宅配便の伝票の存在から、乙第18号証に記載の出荷が、実際に行われたことは明らかである。
イ 被請求人のAmazon社に対する請求書
乙第17号証及び乙第18号証に記載の出荷に対する代金の請求をAmazon社に対して行ったときの請求書を乙第37号証として提出する。
つまり被請求人は、2016年3月2日付請求書(乙37:以下「乙37請求書」という。)により、Amazon社に対して、要証期間内である2016年2月分の本件商品の卸売にかかる代金の支払いを請求した。
ウ 小括
以上より、乙第17号証及び乙第18号証のみならず、乙第36号証及び乙第37号証からしても、被請求人は、Amazon社に対して、要証期間内の平成28年2月16日頃に、本件商品を納品(引渡し)したことは明らかである(商標法第2条第3項第2号)。
(6)被請求人の事業者向けパンフレット(乙22)の頒布について
本件商品の事業者向けパンフレットの作成、納品日時点の住所については、乙第22号証の本件商品の事業者向けパンフレット(以下「乙22パンフレット」という。)は、被請求人が旧所在地(栃木県足利市伊勢町4丁目25-6)にあった時に大量に作成したものである。その当時のパンフレットのオリジナル版を、新たに乙第39号証として提出する。本件商品の事業者向けパンフレットが、被請求人が旧所在地(栃木県足利市伊勢町4丁目25-6)にあった時に大量に作成されたことは、乙第39号証において、乙22パンフレット作成当時の所在地(栃木県足利市伊勢町4丁目25-6)が記載されていることから明らかである(乙39)。
同時期より、被請求人は、乙22パンフレットの頒布を開始した。そして、その後、前所在地(東京都北区中里1-8-6VICビル2F)から現所在地(東京都北区中里2-8-10サニービル3F)へと移転するたびに、被請求人は、新しい住所を記載したシールを乙22パンフレットに貼付して頒布してきた。
また、乙22パンフレットは、被請求人の現所在地(東京都北区中里2-8-10サニービル3F)に移転した後に頒布している事業者向けパンフレットである。そのため、乙22パンフレットには、被請求人の現所在地が記載されたシールが貼付されている。
(7)購入者向けパンフレット(乙20)及びカード(乙21)の頒布について
購入者向けパンフレット(乙20:以下「乙20パンフレット」という。)及びカード(乙21:以下「乙21カード」という。)が作成された時期は、被請求人の住所が東京都北区中里1-8-6にあった時である。その当時のパンフレット、カードのオリジナル版を、新たに乙第40号証、乙第41号証として提出する。乙20パンフレット及び乙21カードが前所在地(東京都北区中里1-8-6)にあったときに作成されたことは、乙第40号証及び乙第41号証において、その作成当時の所在地(東京都北区中里1-8-6)が記載されていることから明らかであり、同時期より、被請求人は、乙20パンフレット、乙21カードの頒布を開始している。
(8)弁駁書及び上申書(平成28年11月30日及び同年12月21日付け)に対する意見
ア 請求人は本件審判請求の不成立を自認しているに等しい
請求人が提出した、弁駁書及び上申書(以下、これら各書面を「請求人書面」と称する。)によれば、請求人は、本件商標と使用商標1ないし3とが社会通念上同一のものであることを争っていない。
そして、請求人書面によれば、要証期間内に、被請求人が次の各行為を行っている事実は争われていない。
(ア)本件商品の包装に使用商標1が記載された本件シールを「付する行為」(貼付)をした事実(商標法第2条第3項第1号)
(イ)使用商標1が貼付された本件商品を「譲渡」、「引き渡し」(販売)し、「輸入」している事実(商標法第2条第3項項第2号)
(ウ)本件商品の「広告」に使用商標1?3を付して「展示」及び「頒布」等している事実(商標法第2条3項第8号)
とするならば、商標法第50条第2項における「使用」とは、商標法第2条第3項各号に該当すれば足りるものであるから、被請求人が、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標を本件商品に使用していることは明らかである。
そして、請求人も本件商品が「靴用の除菌消臭剤」であること自体は争っていないのであるから、本件商品は、明らかに、指定商品「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」、「殺菌剤」及び「抗菌剤(工業用のもの及び洗濯用のものを除く。)」に該当する。
以上より、商標権者である被請求人が、要証期間内に、日本国内において、その指定商品である「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」についての本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていることは明らかである(商標法第50条第2項)。
イ 請求人の主張する法律論は正しくない
請求人書面では、独自の法律論が縷々主張され、指定商品「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」の該当性、商標法第50条第2項の「使用」の該当性等が争われているが、それらはいずれも当を得ないものである。
(ア)指定商品の解釈等に対する請求人の誤り
請求人は、第5類に属する商品の法解釈を誤解しており、本件商品に対する認定も正しくない。第5類に属する商品については、請求人自身が提出した「商品及び役務区分解説(特許庁商標課編)」(甲8)からも明らかなとおり、「薬剤」のみではなく、「殺菌剤」及び「防臭剤(身体用のものを除く。)」等が含まれる。
したがって、第5類に属する商品全てを「薬剤」に限定しようとする請求人の主張は失当である。
また、類似群コードについても、第5類において、「01B01、01B02」が付される商品は、「薬剤」ではない商品の方が多く存在するし(乙42)、そもそも「01B02」は、「薬剤」について付されるコードではない。
したがって、この点からも、請求人の主張は失当である。
さらに、請求人は、本件商品が靴用の除菌消臭剤である事実を争っていないにも関わらず、「本件商品は、・・・雑貨品であり、商標登録上は、第3類の『靴用消臭芳香剤』・・・に類する商品と解されるべきものである。」などと述べているが、その根拠は不明である。そもそも「雑貨品」が何を意味するのかが不明であるし、本件商品が雑貨品であるか否か、本件商品が芳香性を有するか否かは、いずれも本件商品が靴用の除菌消臭剤であることに何ら影響を与えるものではない。
したがって、請求人の主張は失当である。
(イ)商標法第50条第2項の「使用」に関する請求人の解釈等の誤り
a 商標法第50条第2項における「使用」については、出所表示機能を発揮するような使用であるかは問わず、商標法第2条第3項各号の文言どおりの使用で足りる(東京高等裁判所平成2年(行ケ)第48号事件平成3年2月28日判決参照)。
そして、本件では、本件商品の包装に使用商標1が記載された本件シールを「付する行為」(貼付)をした事実(商標法第2条第3項第1号)、使用商標1が貼付された本件商品を「譲渡」(販売)し、「輸入」している事実(商標法第2条第3項項第2号)、本件商品の「広告」に使用商標1?3を付して「展示」及び「頒布」等している事実(商標法第2条第3項第8号)は、当事者間に争いがない。
したがって、本件において商標法第50条第2項の「使用」が認められることは明らかである。
b 商標法第50条第2項の「使用」は自他商品識別機能を果たす使用で足りる
(a)使用商標1?3は被請求人の商品として識別機能があり、使用商標1ないし3における「グランズレメディ」又は「GRAN’S REMEDY」の文字が、自他商品識別機能を有していることは明らかである。
(b)請求人の主張は失当である
請求人書面によれば、被請求人とTrans社との契約(甲11)に基づき、「予め本件商品の容器に添付された請求人ラベル(請求人の商標及び商品説明が記載)の正しい日本語訳が作成され、それが本件商品の販売に使用されなければならないことが、被請求人に義務付けられている」などとされたうえ、「本件商品に添付されている本件シールは、本件商品を日本で販売するための上記請求人ラベルの単なる補強説明、日本語訳と認識できる程度のものであって、被請求人(本件商標権者)が、本件商標を使用したものと認めることはできるものではない」などとされている。
しかし、被請求人と米国の訴外外国法人との間の独占的販売契約は平成10年頃に取り交わされた契約が現在に至るまで内容を変えることなく継続しているものであり、甲第11号証の書面は何ら効力を有しないものである。 それゆえ、請求人が甲第11号証に基づいて議論を展開すること自体、前提を欠いており、失当である。
また、仮に使用商標1が本件商品の容器に添付された請求人ラベルの補強説明、日本語訳だとしても、使用された商標が、自他商品識別機能を有していれば、それ以外の意味を表す場合(両者を兼ねる場合もある)であっても、使用の事実が否定されることはないとするのが確立した裁判実務である(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10141号事件同年10月8日判決等参照)。
とするならば、本件では、使用商標1が自他商品識別機能を有することは明らかであるのだから、仮に使用商標1が本件商品の容器に添付された請求人ラベルの補強説明、日本語訳だとしても、本件において商標法第50条第2項の「使用」が存在することは明らかである。
c 使用商標1ないし3は、被請求人の出所を示す商標として使用されている
(a)使用商標1?3は被請求人の出所を表示するものである
日本国内において、本件商品を輸入し販売することができる者は、独占的販売権を有する被請求人のみであり、第三者はもとより請求人やその子会社の代理店等も本件商品を販売することができない。
そして、使用商標1が記載された本件シール内に「総輸入発売元」として「株式会社シャッフル」と明記されている(乙1、乙8、乙9、乙14、乙19、乙31、乙32、乙34等)。同様に、使用商標2及び使用商標3(すなわち本件商標)についても、本件商品購入者向けのパンフレット及びカード、並びに事業者向けパンフレット(乙20?乙22、乙39?乙41)に、「総輸入発売元」として「株式会社シャッフル」と記載されている。
これらの事情を総合すると、日本国内の取引業者、需要者は、使用商標1ないし使用商標3を、「-総輸入発売元-株式会社シャッフル」、すなわち被請求人の出所を示す商標であると認識することは明らかであるから、被請求人の出所を示す商標としての使用がされている。
(b)請求人の主張は失当である
請求人は、並行輸入業者が、製造元の出所のみを示す商標を使用した場合の学説(甲7)を主張の根拠としているが、本件では、被請求人は正規の独占的販売権を有する総輸入発売元であるうえ、販売者としての自身の出所を示す本件商標を使用したものであって、同学説とは全く事案を異にする。
さらに、請求人書面によれば、「本件商標が、請求人の周知商標と同一又は類似するとの拒絶理由通知書の認定は妥当なものであり、到底、上記被請求人の意見書の主張は、本件商標登録を取得しうる合理的理由と認められるものではない。」等とされているが、本件商標は現に被請求人を商標権者として商標登録に至っており、特許庁において意見書の内容が正当なものとして認められ、拒絶理由通知書の内容が解消されていることは既に明らかであるから、拒絶理由通知書や意見書の内容を議論する余地はない。
3 上申書(平成29年7月13日付け)
(1)本件審判請求は成り立たない
請求人は、これまで提出した審判請求書、弁駁書、上申書等のいずれにおいても、被請求人が、要証期間内に、(a)本件商品の包装(ボトル)に、本件商標と社会通念上同一の使用商標1が記載された本件シールを「付する行為」(貼付)をした事実(商標法第2条第3項第1号)、(b)使用商標1が貼付された本件商品を、「譲渡」、「引き渡し」(販売)している事実(同第2号)を争わず、事実上認めている。
また、請求人は、平成29年6月15日付上申書(以下、「請求人の上申書」という。)においても、上記(a)及び(b)の事実を含め、商標法第50条第1項、第2項の要件に該当する新たな主張をせず、従前の主張と実質的に同一な主張を繰り返すのみである。
上記(a)及び(b)の事実は、被請求人のこれまでの主張・立証から明らかであるし、本件商品の製造元である請求人が上記(a)及び(b)の事実を争わず事実上認めていることからしても、その事実は明らかである。
とするならば、商標法第50条第2項における「使用」とは、商標法第2条第3項各号に該当すれば足りるものであるから、被請求人が、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標を本件商品に使用していることは明らかである。
そして、本件商品は、「靴用の除菌消臭剤」であるから、明らかに、本件商標の指定商品「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」、「殺菌剤」又は「抗菌剤(工業用のもの及び洗濯用のものを除く。)」に該当する。
(2)原告の主張に対する反論
ア 甲第11号証のオリジナル書面について
本件審判の口頭審理において主張したとおり、Trans社と、被請求人の代表者との間のサブライセンス契約書なるものの複製物とされる甲第11号証のオリジナル書面(以下「甲11書面」という。)の成立を争う。
これに対し、請求人の主張によれば、「被請求人が本件商標の使用証拠と主張する本件シール(乙1、乙8)は、まさしく本件商品の容器に、予め請求人によって添付されている請求人ラベル(甲12)の翻訳文そのものであり、本件契約書第9条・・・の義務の履行と解されるものである。」とのことである。
しかし、本件シールの記載は、被請求人の販売促進のための企業努力として、日本の商慣習等に合わせて長年にわたり表記されているものであり、被請求人は、本件商品の取引を開始した1998年頃から現在まで、本件シールと同様のシールを本件商品に貼付し続けている。このことは、甲11号証に記載された日付である2011年1月1日の前後で、何も変わっていない。
したがって、本件商品の本件シールと甲11書面とは無関係である。
また、請求人の主張によれば、「海外商取引において、請求人ないしその正当なライセンシーと契約書を交わさずに、このような本件商品の我が国への継続的輸入ができるはずもなく」とのことである。
しかし、請求人の主張のとおり、海外商取引において、請求人ないしその正当なライセンシーと契約書を交わさずに、本件商品の我が国への継続的輸入はできないところ、被請求人は、1998年頃から現在に至るまで、本件商品を、継続的に輸入している。そして、この継続的な輸入は、1998年頃に、被請求人と正当なライセンシーであるTrans社との間で締結された、本件商品の独占販売契約書に基づくものである。この契約は、現在まで内容を変えることなく継続している。
したがって、請求人のいう海外商取引上の経験則は、むしろ、1998年頃に締結された被請求人とTrans社との間の本件商品の独占販売契約書が存在し、その後、その契約が何ら変わっていないことの根拠になるものである。
なお、請求人は、殊更に甲11書面の署名について強調し、「本件代理店契約書の原本の提出を検討しており、また、本件代理店契約書の署名がなされた経緯について・・・宣誓供述書などの文書を提出することについて検討中である。」などと主張していたが、結局何ら経緯の説明はなく、証拠も提出されていない。
イ 本件商品の容器に添付されているという請求人ラベルの記載について
請求人は、「本件商品の容器の包装には、請求人の製造に係る本件商品の請求人ラベルが予め添付され、・・・そのラベルには、以下の英文が表示されている(甲12)。・・・上記記載は、被請求人が本件商標の使用と主張する本件シール(乙1、乙8)の日本語の表記と実質的に同一のものであることは明らかというべきであり、同シールは、この予め本件商品に添付された請求人ラベルの日本語による補助的説明と容易に認識されるものである。」などと主張する。
しかし、商標法第50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用(商標法第2条第3項各号)されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではない(知的財産高等裁判所平成28年(行ケ)第10086号事件・平成28年9月14日判決)。
そして、前述のとおり、被請求人が、要証期間内に、(a)本件商品の包装に、本件商標と社会通念上同一の使用商標1が記載された本件シールを「付する行為」(貼付)をしたこと(商標法第2条第3項第1号)、(b)使用商標1が貼付された本件商品を、「譲渡」、「引き渡し」(販売)していること(商標法第3条第3項項第2号)は明らかである。
したがって、本件において、商標法50条所定の「使用」があったことは明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば次のとおりである。
(1)乙第14号証及び乙第15号証について
乙第14号証及び乙第15号証は、インターネットのショッピングサイト「Amazon」のウェブサイトであるところ、乙第14号証の1頁には、その掲載商品に関して、「【国内正規品】グランズレメディ 50g」の表示があり、本件シールが貼られた商品の写真が掲載され、該シールには、その左上部に、使用商標1(別掲2)と思しき商標が表示され、その右側には「靴 除菌消臭剤」の表示がある。
また、その3頁には、「登録情報」として、「ASIN:B000FQ6I8C」及び「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2006/5/24」の記載がある。
乙第15号証は、同ウェブサイトの「ヘルプ&カスタマーサービス」における「ISBN/ASIN」の内容であるところ、「ASIN」の項に「『ASINは、Amazon Standerd Identification Number』の略で、Amazonグループが取り扱う、書籍以外の商品を識別する、10けたの番号です。」の記載がある。
(2)乙第17号証について
乙第17号証は、Amazonから被請求人宛ての注文の履歴とされるものであり、その左上部には「amazon/Vender Central」の記載、右上部には「ようこそ! Shuffle Co.,Ltd.様(info@gransremedy.com)」の記載がある。
また、「POの管理」の見出しの下、「PO:746KMRRX」、「発注日:2016/2/16」、「着荷先住所:NRT1/千葉県市川市塩浜2-13-1/アマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社」の記載があり、さらに、「POの商品(3)」の項には、「ASIN」欄に「B000FQ6I8C」、「商品名欄」には「【国内正規品】グランズレメディ 50g」、「集荷予定日」欄には「2016/2/17」の記載がある。
(3)乙第18号証は、被請求人からAmazon宛ての出荷の履歴されるものであるところ、その左上部には「amazon/Vender Central」の記載、右上部には「ようこそ! Shuffle Co.,Ltd.様(info@gransremedy.com)」の記載がある。
そして、「出荷詳細」として、「出荷日:2016/2/16」、「着荷予定日:2016/2/17」、「配送業者:ヤマト運輸」、「配送業者の配送伝票番号:415067094676」、「1 PO番号:746KMRRX」の記載があり、また、「発送元」として「1-8-6/VICビル2F/北区中里、東京都」、及び「出荷先」として「アマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社内/塩浜2-13-1/市川市、千葉県」の記載がある。
(4)乙第31号証について
乙第31号証は、平成29年4月3日に作成された本件商品の写真の写し3枚であるところ、該商品には、本件シールが貼られており、その1枚目には、使用商標1(別掲2)が表示され、1枚目ないし3枚目の写真をあわせてみれば、「靴 除菌消臭剤」の文字、及びその下部には「約7日間(1日1回)靴中にまくだけで除菌され悪臭が消え」の記載、「-総輸入販売元-/株式会社シャッフル/東京都北区中里1-8-6 VICビル2F」並びにその右側のバーコードの下部には「4 520988 000015」の表示がある。
(5)乙第32号証について
乙第32号証は、乙第14号証のウェブページに掲載された商品の写真を拡大表示した写真2枚である。
乙第32号証の1の商品の、本件シールには、その左上部に使用商標1(別掲2)と思しき商標が表示され、その右側には「靴 除菌消臭剤」の表示がある。また、1枚目及び2枚目をあわせみれば、下部には「-総輸入販売元-/株式会社シャッフル/東京都北区中里1-8-6 VICビル2F」及びその右側のバーコードの下部には「4 520988 000015」の表示がある。
(6)乙第36号証について
乙第36号証は、宅配便の伝票であり、「受付日」欄には、「H28年2月16日」、「お届け予定日」欄には「2月17日」、「お届け先」欄には「千葉県市川市塩浜2-13-1/アマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社様」、「ご依頼主」欄には「東京都北区中里1-8-6 VICビル2F/株式会社シャッフル」、「お問い合わせ送り状番号」欄には「4150?6709?4676」、「品名」欄には「グランズレメディ」の記載がある。
2 判断
(1)使用者について
乙14号証の本件商品と乙第31号証及び乙第32号証の写真の本件商品は、本件シールの記載内容及びその構成態様等からみて、同一の商品といえるものであり、本件シールには、被請求人の名称及び住所が記載されていることから、使用商標1が付された本件シールの使用者は、被請求人であると認められる。
(2)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に白抜きで「グランズ レメディ」の片仮名を、下段に「GRAN‘S REMEDY」の欧文字を2段に横書きしてなるものであり、使用商標1は、別掲2のとおり、青色横長楕円形を背景として上段に「グランズ レメディ」の文字、下段に「GRAN‘S REMEDY」の文字を、いずれも白抜きで表示した構成かなるものであるから、青色横長楕円形図形の有無の点において差異はあるものの、本件商標と使用商標1とは、その構成文字を同じくするものであるから、社会通念上同一の商標といえるものである。
(3)使用商品について
本件商品の本件シールには、「靴 除菌消臭剤」及び「約7日間(1日1回)靴中にまくだけで除菌され悪臭が消え」の表示があることからすれば、該商品は、「除菌効果を有する靴用の消臭剤」と解されるものであり、これは、本件審判の請求に係る商品中、第5類「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」の範ちゅうの商品と認められるものである。
(4)使用時期について
Amazonから被請求人宛ての注文の履歴(乙17)、被請求人からAmazon宛ての出荷の履歴(乙18)及び宅配便の伝票(乙36)によれば、本件商品が、要証期間内である平成28年2月16日に被請求人から発送され、これが、同月17日頃にAmazon社へ納品されたものと認められる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、被請求人は、第5類「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」の範ちゅうの商品「除菌効果を有する靴用の消臭剤」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して、要証期間内に、Amazon社へ譲渡、引き渡しをしたものと認められる。 そして、上記使用行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡す行為」に該当するものと認められる。
(6)請求人の主張について
ア 請求人は、「第5類は、・・・すなわち、『消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)』といった特別の概念(カテゴリー)は設けられておらず、よって、同商品は、上記カテゴリー中、その文言から、『薬剤』に含まれると理解されて、商標登録されたものと理解でき、・・・これら指定商品は、『薬剤』との理解の下で、商標登録されている。さらに、商標登録上の第5類の『薬剤』とは、『旧薬事法(昭和35年法律145号)の『医薬品』の大部分及び同法の『医薬部外品』の一部とされる(甲8)。これに対して、被請求人の輸入・販売する本件商品、すなわち、請求人の製造する商品は、旧薬事法の規制を受ける『薬剤』ではなく、いわゆる雑貨品である。・・・すなわち、本件商品は、旧薬事法等の規制を受ける薬剤ではなく、あくまで、雑貨品であり、商標登録上は、第3類の『靴用消臭芳香剤』及びそれに類する商品と解されるべきものである。・・・本件商標の指定商品である『薬剤』の概念に属する第5類『消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)、殺菌剤、抗菌剤(工業用のもの及び洗濯用のものを除く。)』ではない。」旨を主張している。
しかしながら、本件商品の本件シールには、「靴 除菌消臭剤」の表示があるところ、広辞苑第六版(岩波書店)の「消臭」の項には「不快な臭いを消すこと。消臭剤」の記載があり、また、「防臭剤」の項には「悪臭を消す薬剤。」の記載があることからすれば、「消臭剤」と「防臭剤」は、いずれも臭いを消すことを目的とする類似の商品と理解され得るものであるが、第5類「防臭剤(身体用のものを除く。)」については、次のとおりの判示がされているものである。
「商標法の商品分類は、商品の混同を防止し商標使用者の業務上の信用と需要者の利益を保護するという商標法の目的に即して、取引市場の実情を考慮した商品分類を採用している。これに対して、薬事法は、医薬品や医薬部外品につき、それぞれの特質に応じ、『品質、有効性及び安全性の確保』(薬事法1条)という見地から適切な規制を加えることを目的として、『医薬品』や『医薬部外品』の概念を定めている。このように、法の目的に応じて分類をする目的ないし観点も異なる以上、商標法上の第5類『薬剤』の分類区分と薬事法上の『医薬品』・『医薬部外品』の区分とが必ず合致しなければならないと解する理由はない。商標法上の『薬剤』が薬事法上は『医薬品』や『医薬部外品』でないとして扱われることがあっても、何ら差し支えないというべきである。身体用のものを除いた防臭剤は、その商品の用途、商品の性質、商品の販売形態、商品の使用方法等から見て、第1類『工業用、科学用、又は農業用の化学品』に含まれるものでないものは、それが薬事法上の『医薬品』や『医薬部外品』でないものであっても、第5類『薬剤』中の『防臭剤(身体用のものを除く。)』に含まれるものと解すべきである(東京高裁平成15年(行ケ)第350号判決)。」
そうすると、本件商品は、これに貼付された本件シールの「靴 除菌消臭剤」及び「約7日間(1日1回)靴中にまくだけで除菌され悪臭が消え」の表示からすれば「除菌効果を有する靴用の消臭剤」というべき商品であるから、これは、「消臭剤(身体用のものを除く。)」に包含される商品であり、上記判決に照らせば、類似の商品と理解され得る「防臭剤(身体用のものを除く。)」と同様に、本件審判の請求に係る指定商品中、第5類「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」の範ちゅうの商品と認められるものである。
なお、仮に、本件商品が第3類の「靴用消臭芳香剤」及びそれに類する商品と解される場合があるとしても、商品の二面性を否定し、第5類の「消臭剤(身体用のものを除く。)」に包含される商品でないということはできない。
イ 請求人は、「ア 使用商標1の意味については、被請求人と、請求人の我が国における本件商品の独占販売代理店であるTrans社とのサブライセンス契約によって、被請求人は、本件商品の日本における販売については、本件商品の容器について記載されたすべての英文情報について、正しい日本語訳文を付けて販売する事が義務づけられている。/イ 使用商標1が使用された本件シール(乙1、乙8)をみれば、本件商品の商品説明が詳しく日本語で表記され、そのシールの左上に、使用商標1が付されている。同使用商標1は、本件商品の容器に付された、『GRAN’S REMEDY』の片仮名表記の『グランズレメディ』の文字と、その下に、小さく『GRAN’S REMEDY』の英文が表記されて組み合わせられたもので、この片仮名は、『GRAN’S REMEDY』を日本語表記したものと容易に認識できるものである。これは、上記サブライセンス契約上の被請求人の義務として付されているものであり、また、本件商品の取引者、需要者からみて、この使用商標1だけを、被請求人の商標と別途認識するようなことはあり得ない。/ウ 本件シールには、『1986年特許取得PAT.NZ.NO225231』の文言(説明)もあるが、同PAT.NZ.の文字から、本件商品の製造者、つまり請求人のニュージーランド特許製品であることも一見容易に認識でき、他方、被請求人は、『?総輸入発売元? 株式会社シャッフル』と記載されているように、この商品の日本販売者、転売者と容易に認識でき、このような記載を総合的に見ても、使用商標1は、請求人の商標と実質同じもの又はその片仮名日本語訳と容易に認識できるものである。/エ 以上のとおり、被請求人が本件商標の使用と主張する、使用商標
1及び使用商標2並びに使用商標3は、被請求人商標と認識されるものではなく、請求人の商標の片仮名語訳として、請求人商標をより読みやすく等するため、請求人商標とともに使用されているものであって、取引者・需要者に、被請求人の商標と認識されるものではなく、よって、係る商標の使用は、被請求人の所有する本件商標の使用に該当するものではない。」、及び「(2)本件商品の容器の包装には、請求人の製造に係る本件商品の請求人ラベルが予め添付され、その容器の頭部、側面には、大きく、著しく、請求人の所有する本件商標と実質的に同一の商標『GRAN’S REMEDY』が付され、また、そのラベルには、英文が表示されている(甲12)。該記載は、被請求人が本件商標の使用と主張する本件シール(乙1、乙8)の日本語の表記と実質的に同一のものであることは明らかというべきであり、同シールは、この予め本件商品に添付された請求人ラベルの日本語による補助的説明と容易に認識されるものである。よって、被請求人が所有する本件商標について、被請求人自らが、その商標を『使用』していると評価できるものではないことは明らかである。」旨を主張している。
しかしながら、仮に、被請求人とTrans社とのサブライセンス契約によって、被請求人が、本件商品の日本における販売について、本件商品の容器について記載されたすべての英文情報について、正しい日本語訳文を付けて販売する事が義務づけられているとしても、使用商標1が使用された本件シール(乙1、乙8)は、被請求人が独自に作成したものであって、かつ、この本件シールには、「総輸入販売元」として被請求人の名称が記載されていることからすれば、被請求人が独自に本件シールを本件商品に貼付することによって本件商標を使用しているものと理解されるものである。
そうすると、本件商品には、請求人が付した商標のほかに、被請求人が付した商標が使用されているものと評価できるものである。
してみれば、仮に、同一又は類似する商標が製造者と我が国において本件商品を輸入販売している者によって使用された場合、両者による使用が併存するものであっても、本件商品の取引者、需要者からみて、何の問題も生じないものであり、また、「使用商標1だけを、被請求人の商標と別途認識するようなことはあり得ない」かどうかは、不使用商標についての判断の根拠にはならないものである。
ウ 「(3)近時の登録商標の使用を問題とする不使用取消審判事件において、裁判所は、『商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、(中略)商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むと解するのが相当である』との判断している(例えば、知財高裁平成25年3月25日平成24年(行ケ)第10310号)。すなわち、同判決は、商品の製造者によって、その商標が付された商品が、その流通業者を介して販売されている場合において、商標法上は、当該使用商標は、流通業者の使用する商標とも、形式的には解することもできるが、それは、商品の製造者の意思にしたがって流通しているものであり、よって、その使用商標は、流通業者の使用する商標としてではなく、商品の製造者の使用する商標と評価、認定できるとするものである。翻って、本件において、本件商品には、予め、請求人の商標及び商品の説明(英文)を記載した請求人ラベルが添付されており、かつ、そのラベルには、この商品は、請求人らの所有するニュージーランドの特許製品(甲5)である旨の記載もあり、さらには、『Made in New Zealand』の記載もあるところから(甲2の2及び3、甲12)、たとえ、本件商品の流通業者である被請求人が、その商標と実質的同一と解される本件商標を使用した被請求人の本件シール(乙11、乙34)を添付し、本件商品を我が国で販売しているとしても、このシールは、請求人の英文ラベルの日本語訳であると、取引者及び需要者に容易に認識されるものである。・・・被請求人の本件シールには、被請求人を『総輸入発売元』として記載しており、被請求人は、本件商品の流通業者であることが明らかである。上記裁判例での判断手法・考え方に照らしても、本件商品に使用されている商標は、被請求人の本件シールに添付の商標も含め、その流通業者である被請求人の商標と認識されるものではなく、本件商品の製造者であるニュージーランド国の請求人の商標と認識され、評価されるべきものである。」旨を主張している。
しかしながら、上記の判例は、「商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは」といっているのであって、商標権者ではない外国の請求人のような商標の使用者についてのものではない。また、本件審判における本件商標の商標権者は、請求人の主張によれば、我が国において本件商品の販売権(サブライセンス)を有し、これを販売している被請求人であるから、単なる流通業者ではなく、その判例における事例には当てはまらないものである。
そして、請求人の主張のとおり、被請求人とTrans社とのサブライセンス契約によって、被請求人が、本件商品の日本における販売について、本件商品の容器について記載されたすべての英文情報について、正しい日本語訳文を付けて販売する事が義務づけられているものであるとするならば、被請求人は、単なる流通業者ではなく、当該契約に基づいて我が国において本件商品を販売する販売者である。
そうすると、被請求人による本件シールにおける本件商標の使用もまた、通常、日本国内における商標の使用者としての使用行為というのが相当である。
エ なお、請求人は、平成29年6月15日付け上申書において、「本件契約書の原本の提出を検討し、本件契約書の署名がなされた経緯について、
他方当事者の宣誓供述書などの文書を提出することについて検討中である。」及び「甲第12号証の本件商品の容器写真は、上記の記載について必ずしも明瞭でないおそれもあり、請求人は同ラベル自体及びその訳文を追って提出する予定である。」などと述べているが、相当の期間が経過するも書面の提出はなく、また、該書面は上記判断を左右するものではなく、本件商標の使用については、上記のとおり判断するのが相当であるから、請求人の上記書面の提出は必要ないものと判断した。
したがって、上記請求人の主張は、いずれも認めることができない。
3 むすび
以上のとおり、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品中「消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」の範ちゅうに含まれる「除菌効果を有する靴用の消臭剤」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものと認められる。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(使用商標1)(色彩は、乙第31号証参照)



審理終結日 2017-12-13 
結審通知日 2017-12-15 
審決日 2017-12-27 
出願番号 商願2001-21648(T2001-21648) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z05)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 中束 としえ
山田 正樹
登録日 2004-12-17 
登録番号 商標登録第4825570号(T4825570) 
商標の称呼 グランズレメディ 
代理人 正林 真之 
復代理人 林 栄二 
代理人 飯島 秀明 
代理人 東谷 幸浩 
代理人 知念 芳文 
代理人 三浦 大 

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