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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W25
管理番号 1340262 
審判番号 不服2016-13200 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-02 
確定日 2018-04-16 
事件の表示 商願2015-58071拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「匠の技」の文字と「倉敷の靴」の文字を上下二段に書してなり、第25類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年6月18日に登録出願、その後、指定商品については、原審における同28年2月8日受付及び当審における同年12月14日受付の手続補正書により、第25類「倉敷市で製造された靴」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、『匠の技』の文字と『倉敷の靴』の文字を上下二段に分けて横書きしてなるところ、『匠の技』は、指定商品の分野において『職人の技』ほどの意味合いで、『職人の技を生かして製造された商品』の広告・宣伝文句を構成する語として一般に使用されるものであり、『倉敷の靴』は、『岡山県倉敷市で製造された靴』であると理解されるから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、『職人の技を生かして製造された商品である旨をうたっている岡山県倉敷市で製造された靴』であることを表示したものと認識するにとどまり、本願商標は自他商品の識別機能を果たすものではなく、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして、平成29年9月21日付けで審尋し、期間を指定してこれに対する回答を求めた。

4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
本願商標の構成中、「匠の技」の文字が、商品(靴)の製造工程等に職人の技術が生かされていることの宣伝や説明等において多用されている実情があり、仮に当該文字から「職人の技術を生かした」という意味合いを想起するとしても、「職人の技術を生かした」という直接的な表現ではなく暗示的な表現であり、それは品質の暗示のレベルにとどまるものである。
一方、「職人の技術を生かした」という意味合いに関して、靴は本来職人の技術を生かして製造されるものであり、それが具体的にどのようなことを誇示しているかが不明であり、それに接した需要者、取引者は具体的な品質を直感し得ないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、上記1のとおり、「匠の技」の文字と「倉敷の靴」の文字とを上下二段に書してなるものである。
そして、本願商標の構成中、上段の「匠の技」の文字部分は、以下に示すア及びイのとおり、「匠」の文字は、「手先や道具を使って物を作る職人。」の意味を、「技」の文字は、「技術。技芸。」の意味を有する、いずれも一般に慣れ親しまれた漢字であるから、これらを助詞の「の」で結合した「匠の技」の文字部分は、全体として、「職人のわざ」若しくは「職人の技術」ほどの意味合いを容易に想起させるものである。
さらに、以下に示すウないしツのとおり、本願の指定商品に係る業界において、「匠の技」の文字が、商品(靴)の製造工程等に職人の技術が生かされていることの宣伝や説明等において多用されている実情がある。
また、本願商標の構成中、下段の「倉敷の靴」の文字部分は、「岡山県倉敷市の靴」ほどの意味合いを想起させ、本願の指定商品との関係においては、「倉敷市で製造された靴」であることを表示したものと認識されるものである。
以上からすると、「匠の技」の文字と「倉敷の靴」の文字とからなる本願商標は、「職人の技術を生かした倉敷市の靴」ほどの意味合いを容易に想起、認識させ、これをその指定商品について使用しても、需要者に、その商品に関心を持たせるための宣伝文句のひとつを表したものと理解されるにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当であるから、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない商標というべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
ア 「大辞泉第二版」(株式会社小学館発行)の「匠」の項に「細工師・大工など、手先や道具を使って物を作る職人。」との記載があり、「技」の項に「ある物事を行うための一定の方法や手段。技術。技芸。」との記載がある。
イ 「大辞林第三版」(株式会社三省堂発行)の「匠」の項に「手先の技術や道具を用いて、工作物や建物を作り出すことを業とする人。工匠。大工や細工師をいう。」との記載があり、「技」の項に「技芸。技術。腕前。」との記載がある。
ウ 2017年1月24日付け「西日本新聞」朝刊(26頁)
「福岡県/お仕事なう=“重症”の革靴 匠の技で完治 1949年創業 清屋商店 博多区/ふくおか都市圏・福博」の見出しの下、「街のリペアショップでさえさじを投げた“重症”の靴を新品同様によみがえらせる同社の工場はいわば『靴の総合病院』。匠(たくみ)の技を一目見ようと訪ねてみた。・・・皮革と接着剤の臭いが漂う工場内には、ソール(靴底)を縫い付ける特殊なミシンや圧着機など靴修理に欠かせない機械がずらりと並ぶ。その中で忙しく動く7人の職人。年齢は20?30代。オールソール(靴底をすべて張り替え)やかかと交換、婦人靴のヒール革巻きなどの作業を黙々とこなしていた。」との記載がある。
エ 2016年10月24日付け「北海道新聞」朝刊(28頁)
「<せんこん匠の技>靴修理*林末孝さん(83)=釧路市*愛着深い一足 若返り」の見出しの下、「仕事場の『釧路リペアサービス』は、釧路市鳥取大通2のビッグハウス釧路店にある。わずか2坪ほどのカウンター内で林末孝さん(83)は長男の和俊さん(58)と一緒に靴を修理し、合鍵を作る。以前は靴を作る職人だった林さんが主に靴修理を担当する。取材した日は女性もののロングブーツのヒール部分を修理していた。ヒールを取り外し、側面のカバーをそぎ落とし、はけでのりを塗る。上から新しいカバーを貼り付け、余分な部分を切り取り、黒く塗って取り付ける。愛用の椅子に座り、黙々と、丁寧に。」との記載がある。
オ 2009年9月20日付け「読売新聞」東京朝刊(23頁)
「[匠の技]腕が舞い命注ぐ 頂を目指す一足=東京」の見出しの下、「登山靴の手縫い職人、森本勇夫さん(66)。本底と分厚い革でできた甲を、松ヤニを付けた糸でしっかりと縫い合わせていく。その集中力は声をかけるのがはばかられるほど。」との記載がある。
カ 2009年6月13日付け「毎日新聞」地方版/福岡(19頁)
「TENJIN便り:30人の職人、匠の技披露/福岡」の見出しの下、「職人の技を紹介する『日本の職人展』が、岩田屋(中央区天神2)で開かれている。伝統技術に新しいアイデアを取り入れた全国の職人30人が、匠(たくみ)の技を披露している。・・・会場では『あなただけの一品』をテーマに、・・・その場でサイズをあわせる手縫いの靴(東京)などがある。」との記載がある。
キ 2006年10月1日付け「読売新聞」大阪朝刊(34頁)
「匠の技凝縮 紳士靴発売 アシックス、きょうから100足=兵庫」の見出しの下、「スポーツ用品メーカー『アシックス』(神戸市)は、スポーツシューズ開発で培ったノウハウ、技術と靴作りの伝統技を融合させた最高級の紳士靴を開発、1日から神戸、大阪などの8直営店で発売する。縫製に〈匠(たくみ)の技〉が凝縮されており、100足限定。2年前から開発を始め、靴上部の革はエルメス社なども使う仏『デュ・プイ』社の最高級子牛革を、靴底には足になじみやすいイタリア製の革を使うなど、素材にこだわった。靴職人と協力し、靴上部と底を手作業で縫い付けたほか、厚さ1.3ミリの革の間に糸を通して糸を表面に見せない『スキンステッチ縫製』も採用。」との記載がある。
ク 2006年9月9日付け「北国・富山新聞」朝刊
「『匠の技』、五輪選手支える 特注靴作りを解説 金沢学院大が公開講座」の見出しの下、「金沢学院大経営情報学部の公開講座『メダルなき勝利者たち』は八日、同大講堂で開かれ、スポーツビジネス学科の学生や一般参加者約七十人がアシックスのグランドマイスター三村仁司さんから五輪選手や各競技の第一人者らを支える特注靴作りの職人技を学んだ。三村さんは『金メダルシューズをつくる』と題して、女子マラソンの野口みずき選手らに靴底や中敷きを調整した靴を制作したことを紹介し、受講者は金メダル獲得の原動力となった『匠の技』に関心を高めた。」との記載がある。
ケ 2003年2月11日付け「中国新聞」中国朝刊
「気になるお仕事 靴職人 一足一足魂込める匠の技」の見出しの下、「靴作りに頑固なこだわりを持ち続けている轟祐治さん(55)は、デザインもでき、どんな靴でも作る超一流の職人さん。靴一足が完成するまでに何と五百もの工程があり、轟さんのようにすべてをこなせる職人は高齢化が進んで国内でも数少なくなったそうだ。」との記載がある。
コ 「株式会社ナガセ」のウェブサイトにおいて、「NETWORK SHOE FACTORY NSF(ネットワークシューファクトリー)を支える『熟練』の技」の見出しの下、「ナガセの製造ラインは大きく分けてふたつ。自社オリジナルブランドとOEMライン(有名ファッションブランド)。多様な機械設備と熟練された匠の技により多種多様な靴を日産300?500足生産しています。」との記載がある。
(http://www.nagase-shoe.co.jp/outline/factory.html)
サ 「MEN’S EX ONLINE」のウェブサイトにおいて、「匠の靴 オーツカプラスの快適性が凄い!【ニッポンの匠企画】」の見出しの下、「日本の匠の技で進化を遂げた グッドイヤーウエルト靴」、「昨秋登場したオーツカプラスは、独自の手法でグッドイヤーウエルト製法を進化させた新コレクション。ライニングには婦人靴では一般的なシープスキンを使い、さらに快適な履き心地を実現。ハンドフィニッシュによるアンティークカラーも魅力的だ。」との記載がある。
(http://www.mens-ex.jp/news/event/150402_00.html)
シ 「BARKS」のウェブサイトにおいて、「浜崎あゆみ×下町の匠の技、オリジナルレイン・シューズが誕生」の見出しの下、「浜崎あゆみのレインシューズが誕生した。といっても、“いわゆるアーティストグッズ”のようなイメージのものではなく、世界に誇る日本の職人技を投入したという逸品だ。」との記載がある。
(http://www.barks.jp/news/?id=1000086252)
ス 「世靴三國」のウェブサイトにおいて、「ビジネスの現場」の見出しの下、「時には匠の技で。時には高性能な機械で。私たちのビジネスの現場には、靴への想いをカタチにする技術とノウハウがあります。」との記載がある。
(http://www.san392.jp/business.html)
セ 「F-WORKS」のウェブサイトにおいて、「匠の技 三澤則行さん(ミサワ&ワークショップ) 靴をアート作品の域にまで高める」の見出しの下、「現在、三澤さんは36歳。東京・荒川区に『ミサワ&ワークショップ』という工房を構え、オーダー靴とアート作品を制作している。靴職人とアーティストという2つの顔を持っているのだ。」との記載がある。
(http://www.f-works.com/fwp/fwpbn/16-11/pick2.html)
ソ 「All About」のウェブサイトにおいて、「匠の技と感性が生み出す 『そのみつ』の靴。」の見出しの下、「代表の園田元が靴メーカー勤務を経て、靴をつくり始めたのは96年。スタート当初から仲間と分業でつくる道を選んだ。全工程をたった一人でやるとなると、気の遠くなるような時間がかかる。園田は手製靴ながら、ビジネスとして成り立たせることを考えたのだ。」との記載がある。
(https://allabout.co.jp/gm/gc/196645/)
タ 「大きい靴屋」のウェブサイトにおいて、「革について」の見出しの下、「人にとって自分以外の皮、それは生き物の皮(牛)。 靴職人の信念と匠の技が、履きやすく、心地良く・・・素直に人のことだけを想い、皮を革にし、平面から切り抜き、立体的に縫い合わせたもの、それが『靴』。よい革の良い靴は、もう一つの皮膚となり、アナタの足を包みます。」との記載がある。
(http://www.matt-trading.co.jp/takumi/kawa.html)
チ 「VARISISTA」のウェブサイトにおいて、「【VARISISTA】」の見出しの下、「Made in Japanメイド・イン・ジャパン ならではのこだわりと、匠の技といえる熟練された日本の靴職人の手により生み出されるクオリティの高いシューズは業界内外から多くの注目を集めています。」との記載がある。
(http://www.varisista.jp/profile.html)
ツ 「folk」のウェブサイトにおいて、「メイドインイタリー&オールハンドメイドの『Corso Roma 9』の靴」の見出しの下、「『Corso Roma 9 (コルソ・ローマ・ノーヴェ)』の靴は、靴職人の匠の技が集約されたハンドメイドによる上質な品質と、イタリアのクオリティーの高い革を使用した靴が特徴です。そのデザイン性とクオリティーの高さで、日本にも多くのファンを持つシューブランドです。」との記載がある。
(https://folk-media.com/460711)
(2)請求人の主張について
請求人は、「匠の技」から「職人の技術を生かした」という意味合いを想起するとしても、「職人の技術を生かした」という直接的な表現ではなく暗示的な表現で、品質の暗示のレベルにとどまるものであり、また、「職人の技術を生かした」という意味合いにしても、靴は本来職人の技術を生かして製造されるものであり、それが具体的にどのようなことを誇示しているかが不明であり、それに接した需要者、取引者は具体的な品質を直感し得ない旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、「匠の技」の文字と「倉敷の靴」の文字とからなる本願商標は、「職人の技術を生かした倉敷市の靴」ほどの意味合いを容易に想起、認識させるものであり、その構成中の「匠の技」の文字が、本願の指定商品である「靴」に係る業界において、宣伝や説明等において多用されている実情があることから、本願商標をその指定商品に使用しても、需要者に対し当該商品に関心を持たせるための宣伝文句のひとつを表したものと理解されるにとどまり、商標としての機能を果たし得ないと判断しているのであるから、「匠の技」の文字に接した需要者、取引者が当該文字から商品の具体的な品質を直感し得ないという請求人の主張は、本願商標に係る商標法第3条第1項第6号の該当性の判断に何ら影響するものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-02-16 
結審通知日 2018-02-19 
審決日 2018-03-06 
出願番号 商願2015-58071(T2015-58071) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宗像 早穂 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 原田 信彦
松浦 裕紀子
商標の称呼 タクミノワザクラシキノクツ、タクミノワザ、クラシキノクツ、クラシキクツ 
代理人 神保 欣正 

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