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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W384142
審判 全部申立て  登録を維持 W384142
管理番号 1339340 
異議申立番号 異議2017-900268 
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-01 
確定日 2018-04-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5953403号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5953403号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5953403号商標(以下「本件商標」という。)は、「ANVATO」の欧文字を標準文字により表してなり、2016(平成28)年5月24日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、平成28年11月14日に登録出願、第38類「メディアアセットマネジメントのために行うビデオ及びオーディオコンテンツへの電気通信接続用回線の提供,メディアアセットマネジメントのために行うオーディオ用及びビデオ用の材料のインターネット上でのストリーミング方式による通信」、第41類「メディアアセットマネジメントのために行うインターネットを通じた映像・音声の提供」及び第42類「メディアアセットマネジメントのために行うビデオ及びオーディオコンテンツの管理・配信・暗号化・ストリーミング・オンラインでの編集・広告掲載及びマネタイゼーション(収益化)に使用されるコンピュータソフトウェアの提供,メディアアセットマネジメントのために行うデータの暗号化処理」を指定役務として、同29年5月22日に登録査定、同年6月9日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第98号証を提出した。
1 引用商標
申立人が引用する商標は、「ウェブデザイン用のテーマやグラフィック、動画、音源、画像、3D素材等をインターネット上に投稿して販売することができるデジタルマーケットプレイス事業並びにそれに関連する商品及び役務」の業務について使用する「Envato」(以下「引用商標1」という。)、「envato」(以下「引用商標2」という。)及び「ENVATO」(以下「引用商標3」という。)の欧文字からなるものである。
なお、上記、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用商標」という。
2 具体的理由
(1)申立人の業務及び引用商標
申立人は、平成18年(2006年)にオーストラリアで設立され、オーストラリアを拠点に、世界中のクリエイターが自ら制作したウェブデザイン用のテーマやグラフィック、動画、音源、画像、3D素材等をインターネット上に投稿して販売することができるデジタルマーケットプレイス(以下「デジタルマーケットプレイス事業」という。)の「envatomarket」(https://market.envato.com/)やその他ウェブデザイン等に関するオンラインのチュートリアルコースの提供、ブログにおける情報発信等のオンラインサービスを世界に向けて展開している(甲2、甲3、甲8、甲18等)。申立人のウェブサイトは日本からも利用可能である。さらに、マーケットプレイスはカテゴリーごとに別れ、例えば、WordPress(ブログ作成のために開発されたオープンソースのソフトウェア)等を扱うのが「themeforest」、動画素材を扱うのが「videohive」、音源素材を扱うのが「audiojungle」である。
申立人は引用商標を社名のほか自らの業務である上記のデジタルマーケットプレイス事業及びそれに関連する商品役務を表示するものとして使用している(甲2、甲3、甲12)。
なお、引用商標3については、オーストラリア知的所有権保護局において、権利者を申立人とし、第38類、第41類等の商品・役務を指定して商標登録されている(登録番号:第1625463号、甲5)。また、日本においては、申立人は、平成29年9月20日に、引用商標3について、第38類、第41類及び第42類等の商品役務を指定商品役務として、登録出願を行っている(甲6)。
(2)引用商標の周知性
ア 需要者の範囲
引用商標が使用されるウェブ・デジタル素材等の販売のためのデジタルマーケットプレイス事業の性質を考慮すると、ウェブ・デジタル素材の投稿・販売サイト等を利用するのは、通常、ウェブクリエイターやウェブデザイナー等のウェブ制作に関わる者や映像制作等においてデジタル素材を扱う者に限られる。したがって、引用商標の周知性判断の対象となる需要者はウェブデザイナーやクリエイター等のIT業界に携わる者である。
イ 外国における周知著名性
申立人は、平成18年(2006年)の会社設立以降、ウェブデザイン等に関するウェブ上でのチュートリアルサービス事業を拡大させてきた。
引用商標は、オーストラリア及び他の外国において周知著名となっており、申立人のデジタルマーケットプレイス事業は日本を含め世界的に展開されている。申立人のデジタルマーケットプレイス事業がオンラインサービスであり、外国からも容易に利用可能であることにも鑑みれば、このような事情は、引用商標の周知性の判断において、十分に考慮されるものである。
ウ 日本における周知性
(ア)使用状況
申立人が日本において引用商標を使用してサービスの展開を始めたのは、デジタルマーケットプレイスで「themeforest」等が開始されたのと同時期の平成20年(2008年)であった。平成24年(2012年)から同29年(2017年)までの過去5年間の「envatomarket」に関する日本での利用状況は、日本の売り手による販売数量146,428ユニット、日本の顧客による購入数量、477,611件、日本の売り手378人、日本の顧客39,186人、サイトトラフィック(2015年?2017年)4,585,345ヒットである。
(イ)広告宣伝
申立人は、平成24年(2012年)から同29年(2017年)までの間に、デジタルマーケットプレイス事業の広告宣伝のために、何万ドルもの費用を投下している。方法としては、マーケティング用の電子メールの送信(甲12)等のインターネットを介したものが主となるが、マーケテイング対象であるデジタルマーケットプレイス事業の需要者がIT業界に携わる者に限られることに鑑みれば、これは広告宣伝費用として少なくない。
(ウ)インターネット上の記事
申立人のデジタルマーケットプレイス事業の日本への進出・浸透に伴い、インターネット上のニュースやコラム、ブログ等において、申立人やその事業について紹介・言及する記事が多数掲載されるようになった。その中には、申立人及びデジタルマーケットプレイス事業の周知・著名性に言及する記事も多くある。
このほか、申立人のデジタルマーケットプレイス事業に言及するコラムやブログ等が多数あり(甲24?甲66)、これらは当該事業がメディア等を通して、当該事業の需要者である多数のIT業界に携わる者に知られるようになり、本件商標の出願時点及び登録査定時点において引用商標が周知性を獲得するに至っていたことを示すものである。
エ 小括
以上より、申立人の日本における引用商標の使用実績やインターネット上の多数の記事等から、引用商標は申立人の事業を表示するものとして、本件商標の出願時点及び登録査定時点のいずれにおいても、外国のみならず日本国内においても周知性を獲得していたといえる。
(3)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標と引用商標が類似すること
本件商標と引用商標とを比較すると、引用商標3とは欧文字6字のうち1文字目が異なるのみで残りの5文字は同一である。引用商標1及び2についても、大文字と小文字の違いはあるものの、1文字目が異なるのみで残りの5文字は類似し、全体として外観が類似する。称呼については、本件商標からは「アンバト」、引用商標からはいずれも「エンバト」の称呼が生じ、語頭が異なるのみである。そして「ア」の音と「エ」の音とは比較的近似した音であり、後半の「バト」と比べ印象が弱いことから、本件商標と引用商標の称呼は類似する。さらに、本件商標と引用商標からはいずれも特定の観念が生じない。したがって、本件商標と引用商標とは、類似する。
そして、申立人は、映像や音源も含むウェブ・デジタル素材の販売サイトを運営しており、当該サイトは検索機能も備えており(甲18)、オンラインチュートリアルのコースを提供する「envatotuts+」では素材作成に関するチュートリアルコースが提供されサイト上で動画等の視聴もできるところ(甲3、4)、その業務は少なくとも「インターネット上の電子情報・通信及び取引のためのプラットホームへの接続用回線の提供」、「オンラインによる映像・音楽及び音声の提供」、「ウェブサイトを通じて行う娯楽情報の提供」、「電子計算機用プログラムの提供」、「コンピュータデータベースへの情報編集」及び「ウェブサイト経由によるコンピューター技術に関する情報の提供」等に該当する。
イ 小括
したがって、本件商標は、周知である引用商標と類似の商標であり、その指定役務は申立人が引用商標を使用して行う業務と同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標についての検討
(ア)本件商標と引用商標との類似性
前述(3)アのとおり、本件商標と引用商標1ないし3とは類似する。
(イ)引用商標の周知性
前述(2)ウ及びエのとおり、引用商標は、本件商標の出願時点及び登録査定時点において、外国において著名な標章であり、日本国内の需要者にも広く認識されていた。よって、引用商標は、需要者の間で申立人の業務に係る商品役務を表示するものとして周知であった。
(ウ)引用商標が造語であること
申立人の社名は、当初「Eden」であったが、平成20年(2008年)に、申立人の創業者が独自に考案した名称である「Envato」に変更された(甲97)。したがって、引用商標は、申立人の創業者による造語である。
(エ)引用商標がハウスマークであること
引用商標は、上記社名変更以降、申立人のハウスマークとして使用されてきた(甲2)。
(オ)申立人による多角経営の可能性
申立人は、「envatomarket」において、カテゴリーごとにマーケットプレイスを分けて、WordPress等は「themeforest」、音源は「audiojungle」、plugin等は「codecanyon」、映像は「videohive」、イラスト等は「graphicriver」、画像は「photodune」、ゲーム等は「3docean」というようにそれぞれ引用商標とは異なる名称で展開している(甲2、甲18)。
また、申立人は、「envatomarket」のほかに、別のマーケットプレイスである「envatostudio」やオンラインチュートリアルのコースを提供する「envatotuts+」等を運営している(甲3)。
これらの申立人による事業展開の状況に鑑みれば、本件商標がその指定役務に使用された場合、その出所について、申立人の子会社や関連会社等といった経済的又は組織的に何等かの関係にある企業によって提供される役務であると需要者に誤認混同されるおそれがある。
(カ)商品役務の関連性
前述2(3)(ア)のとおり、本件商標の指定役務と申立人の業務とは、同一又は類似の関係にあり、共にオンラインで映像や音源を提供するサービスを含む点で業種が共通し、極めて強い関連性がある。
(キ)需要者の共通性
申立人のデジタルマーケットプレイス事業の需要者はIT業界に携わる者であるのに対して、本件商標を使用して行われている事業はオンライン動画配信等をサポートするプラットフォームの提供(甲98)であるところ、本件商標の指定役務も当該事業に関係する役務であり、配信会社やメディア企業におけるIT業界関係者をも対象に展開している。
したがって、本件商標の指定役務の需要者と申立人の事業の需要者には共通性がある。
イ 小括
したがって、本件商標をその指定役務に使用した場合、引用商標の周知性に鑑みれば、これに接する需要者であるIT業界に携わる者において、申立人の業務に係る商品役務と混同を生ずるおそれがあり、また周知な引用商標を連想・想起し、商品役務の関連性や申立人の事業展開の状況等から申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると出所を誤認混同するおそれがあり(広義の混同)、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 むすび
本件登録は、商標法第4条第1項第10号に違反し、又は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第3 当審の判断
1 引用商標の周知性等について
(1)申立人は、引用商標は、本件商標の登録出願時点及び登録査定時点で、申立人のデジタルマーケットプレイス事業及びそれに関連する商品・役務を表示するものとして需要者に広く認識され、周知性を獲得していた旨主張し、甲各号証を提出しているので、以下検討する。
ア 甲第2号証は、「envatomarket」のウェブサイト(https://market.envato.com/)であり、そこには、「envatomarket」の記載があり、「envato」の文字部分が、他の文字部分と色分けされていることが確認できる。また、「themeforest」、「audiojungle」、「graphicriver」「photodune」、「3docean」の記載も確認できる。
しかしながら、具体的な商品又は役務の内容を窺わせるような記載は見出すことができない。
イ 甲第3号証及び甲第4号証は、「envatocommunity」、「envatotuts+」等の記載があり、「envato」の文字部分が、他の文字部分と色分けされていることが確認できるものの、具体的な商品又は役務の内容を窺わせるような記載は見出すことができない。
そして、甲第2号証ないし甲第4号証は、いずれもすべて外国語で作成されたものであり、「envato」等の文字が、申立人の名称あるいは申立人の業務に係る商品又は役務を表すものであることを認識させる日本語の記述はなく、その内容を我が国の一般的な需要者が理解し得るとは考え難いし、我が国において多くの需要者が閲覧するものとも認められないものである。
ウ 甲第8号証は、豪州と日本のビジネス情報ブログであり、そこには、「オーストラリアのスタートアップ企業、記録的な収益力(//www.j-abc.com/jp-blog/5796674)」と題する2016年10月28日付け記事において、「The Australian Financial Review紙によれば、オーストラリアのスタートアップ企業で世界的なテクノロジー企業と知られ最も成功した収益力のある会社があります。この会社というのがEnvato社で、これまでオーストラリアのスタートアップ企業として成功を収めてきたAtlassian、WiseTech、Compaign Monitorsよりも収益力があり、10年前にシドニーのボンダイにある自宅ガレージから事業を始めて以来、すべて自己資金で運営を行ってきました。」及び「同社は、Wordpress(オープンソースのブログソフトウエア)を利用者向けに、ブログやウェブサイトのテンプレート、テーマを販売しているThemeforestサイトの運営を行っています。Themeforestサイトは、世界中のウェブサイトで最もアクセスがあるトップ300に入っています。同社では、テンプレートのデザインは直接行っておらず、デザインを販売するユーザーに対してマーケティングを行い、デザインが販売された際に、売上の一部をユーザー側から受け取るというビジネスを行っています。」との記載がある。
しかしながら、このブログ記事が、申立人の業務に係る引用商標を使用したデジタルマーケットプレイス事業の売上高、市場シェア等を具体的、客観的に示すものともいえないし、また、引用商標に対する需要者の認識に大きな影響を与えたと認めるに足る証拠の提出もない。
エ 甲第12号証は、申立人の主張によれば、「広告用電子メール」であり、そこには、「envato」、「Envato」及び「ENVATO」の文字が表示されていることが確認される。
しかしながら、当該メールは、外国語で作成されたものであり、その内容を我が国の一般的な需要者が理解し得るとは考え難いし、また、その配布先、配布範囲、配布数等は明らかでない。
オ 甲第13号証ないし甲第17号証の「ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト」、「BIGLOBEニュース」、「Rakuten infoseek News」、「ライブドアニュース」、「WORKSIGHT」には、「オーストラリアを拠点にフレキシブルな製作物を仲介するデジタルマーケットプレイスを展開するエンバト。彼らはまたオーストラリアの『働きたい会社』ランキング上位の常連組である。」旨の記載があるが、このことをもって直ちに引用商標が周知著名性を有するとまではいえない。
カ 甲第18号証は、「NOMADIC WOOD」のブログサイト(LastUpdated:2017/02/27)であり、そこには、「Envato Marketはオーストラリア発のグローバル企業“Envato.com”という会社が運営しているサイトで、世界中の人たちが自分のプロダクトを投稿して販売することができるECプラットフォームになります。世界中で会員登録者数は約800万人、販売されているコンテンツは1100万点を超えるデジタルコンテンツのマンモスサイトです。」との記載がある。
しかしながら、その会員登録者数やデジタルコンテンツ数をどのような証拠に基づいて数値を算出しているのか不明であり、その数値の多寡について、比較すべき客観的な証拠の提出はない。
キ 甲第22号証は、「ヒロキヤマモト」のブログサイトであり、そこには、「オーストラリアのEnvatoという企業が手掛ける世界最大級の音源のマーケットプレイス。ロイヤリティ支払いの必要ない音源(ロイヤリティー音源)が1ドルから購入できます。AudioJungleは、正確にいうと『Envato Mareketplace』というデジタルマーケットプレイスの音楽部門。Envato Marketplaceではウェブサイトのテンプレート、動画材料、ロゴ、写真集、3Dモデルなど、ありとあらゆるデジタル素材を購入できます。」との記載がある。
しかしながら、これは個人のブログ投稿記事にすぎず、これによって引用商標について、需要者の認識の程度を推定することはできない。
ク 甲第24号証は、「LEAN MASTER」のウェブサイトであり、そには2016年10月23日付けで、「【envato market】webサイトやデジタルコンテンツ作成のためのツールが売買できるマーケットプレイス」と題する記事があり、その中の「サービスの特徴2:お支払い方法」の見出しの下、「海外のサイトで、すべて英語表記なので『買いにくい』と思うかもしれませんが、paypalでの決済になるので簡単に購入することが可能です。」との記載があり、申立人の「envato market」のウェブサイトがすべて英語で作成されていることがわかる。
ケ 甲第25号証ないし甲第66号証は、申立人のデジタルマーケットプレイス事業について紹介、言及するインターネット上のニュースやコラム、ブログ等であり、そこには「Envato」、「envato」の文字が使用されていることが確認できる。
しかしながら、その多くは「Market」や「market」の文字と結合して使用されているものであるから、直ちに引用商標が、申立人の業務に係る役務を表示する商標として、本件商標の登録出願時には取引、需要者の間に相当程度広く認識されていたとまでは認めることができない。
コ 甲第69号証は、「Gigazine」のブログ形式のニュースサイトであり、そこには、「総額7000円以上のアイコン・BGM・テンプレートなどが無料でダウンロード可能になるEnvatoグループ素材シリーズ2013年1月版」と題する記事のもと、「3DCGモデル・Flashファイル・Photoshopを使うチュートリアルファイル、BGMやサイトテンプレートなど企業や公式サイトが使うようなハイクオリティな素材の有料販売サイトを運営しているのがEnvatoですが、Envatoの運営するこれらの素材販売サイトでは毎月1つだけ無料でファイルがダウンロード可能になります。」との記載があり、また、甲第70号証ないし甲第93号証にも同様の記載がある。
サ その他、甲各号証は、主に、外国語の紹介記事の写し、ウェブサイト、ブログ等の記事の写しであり、いずれも、引用商標の商品及び役務についての使用を直接的に裏付けるものとはいい難い。
(2)判断
ア 引用商標に係る申立人の業務について
上記(1)アないしサ及び申立人の主張によれば、申立人は、インターネットウェブサイト、「envatomarket」(https://market.envato.com/)において、ウェブ・デジタル素材の販売を仲介するデジタルマーケットプレイス事業、すなわち、商品及び役務の区分第35類に属する役務「インターネットウェブサイトにおけるマーケットプレイスを介したウェブデザイン用の動画、音源、画像、3D素材等の売買契約の仲介・媒介又は取次ぎ」(以下「申立人役務」という。)に係る業務を行っていると推認できる(甲2)。
ところで、申立人は、「引用商標を・・・自らの業務である上記のデジタルマーケットプレイス事業及びそれに関連する商品役務を表示するものとして使用している。」とし、上記のデジタルマーケットプレイス事業の他に、「その業務は少なくとも『インターネット上の電子情報・通信及び取引のためのプラットホームへの接続用回線の提供』、『オンラインによる映像・音楽及び音声の提供』、『ウェブサイトを通じて行う娯楽情報の提供』、『電子計算機用プログラムの提供』、『コンピュータデータベースへの情報編集』及び『ウェブサイト経由によるコンピューター技術に関する情報の提供』等に該当する。」旨を主張している。
しかしながら、申立人がこれらの役務を独立して提供していることを認めるに足りる具体的な証拠は見いだせないことから、この主張は採用することができない。
イ 引用商標の周知性について
上記(1)アないしサを総合して考察すれば、「envato」「Envato」「EVANTO」の文字が、単独で又は他の文字等とともに、外国語又は日本語のウェブサイト(ブログやブログ形式のニュースサイト等)に、申立人を表示する文字として記載されている事例が認められるが、いずれも、当該ウェブサイト等にアクセスした者しか見る機会のないものであり、外国語で作成されたものについては、その内容を我が国の需要者が直ちに理解し得るとはいい難いものであるから、これらの証拠からは、我が国及び外国での引用商標の取引者、需要者への周知度等を具体的、客観的に把握することができない。
そうすると、これらの証拠のみをもって、引用商標が申立人役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時に、我が国及び外国の取引者、需要者間において広く認識されていたと認めることはできない。さらに、申立人が、申立人役務の需要者として限定されると主張しているIT業者の間で、これらのウェブサイトが特に参照されていたとすべき証拠も見当たらないから、引用商標が、IT業者の間で広く認識されていたということもできない。
そして、申立人は、平成20年(2008年)頃から、申立人役務を行ってきていると主張しているが、そのことを裏付ける資料の提出はなく、申立人役務に関する売上高、市場占有率(シェア)、宣伝広告等の実態(カタログ、宣伝販促チラシ等の配布部数及び配布地域等)等も不明である。
その他、引用商標が、本件商標の登録出願日(平成28年11月14日)前に、申立人役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されるに至っていたと認めるに足る事実は見いだせない。
なお、申立人は、「引用商標の日本における周知性として、平成24年(2012年)から同29年(2017年)までの5年間の『envatomarket』に関する日本での利用状況について、日本の売り手による販売数量、日本の顧客による購入数量、日本の売り手、日本の顧客等の具体的な数字を挙げ、また、デジタルマーケットプレイス事業の広告宣伝のために、何万ドルもの費用を投下しており、広告宣伝費として少なくない。」旨を主張している。
しかしながら、引用商標の日本での利用状況として挙げた数値や、何万ドルもの費用を投下しているとする広告宣伝費用は、具体的な証拠を挙げて主張されているものではないから、申立人の主張をそのまま採用することはできない。
以上を踏まえれば、引用商標は、申立人役務を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。
2 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、「ANVATO」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、辞書等に採録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。そして、その構成文字に相応して、「アンバト」の称呼を生じるものである。
他方、引用商標1は、「Envato」、引用商標2は、「envato」及び引用商標3は、「ENVATO」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、辞書等に採録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。そして、構成文字に相応して、それぞれ「エンバト」の称呼を生じるものである。
そこで、本件商標と引用商標を比較するに、外観においては、第1文字目において「A」と「E」、又は「A」と「e」という顕著な相異があることから、判然と区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標より生ずる「アンバト」の称呼と引用商標より生ずる「エンバト」の称呼は、ともに4音からなり、語頭音において「ア」と「エ」の音の差異を有し、第2音以下において「ンバト」の音を共通にするものである。
しかして、当該差異音の「ア」と「エ」は、明瞭に澄んだ音として称呼され、かつ、聴取されるばかりでなく、僅か4音という短い構成音数の称呼において、称呼の類否を判断する上で重要な要素を占める語頭に位置することから、その差異が両称呼に与える影響は大きく、両称呼全体をそれぞれ一連に称呼した場合、その語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはないというのが相当である。
さらに、両者は、いずれも特定の意味合いを有しない造語よりなるから、観念において比較することができない。
そうとすれば、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、その外観及び称呼のいずれの点においても類似しないものであるから、これらを総合して考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当であって、「本件商標と引用商標は類似する」旨の申立人の主張は、採用できない。
3 本件商標の指定役務と申立人役務との関連性等について
本件商標の指定役務は、第38類、第41類及び第42類に属する、電気通信、教育、訓練、娯楽、電気計算機又はソフトウェアの設計及び開発に関連する役務である。一方、申立人役務は、インターネットウェブサイト上のデジタルマーケットプレイスにおいて、ウェブデザイン用のテーマやグラフィック、動画、音源、画像、3D素材等を商品として扱い、当該商品の売買に関する契約の仲介・媒介又は取次ぎを行っているものであり、これは商標法施行令第2条別表に定める商品及び役務の区分第35類に属する役務「商品の売買に関する契約の仲介・媒介又は取次ぎ」に含まれるものである。
してみれば、本件商標の指定役務と申立人役務は、提供の手段、目的又は場所等が一致するとはいえないし、全く異なる業種であって、役務の関連性や、取引者、需要者の共通性は、認められない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
前記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において周知性を獲得していたものと認めることはできない。
また、前記2のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
前記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において周知性を獲得していたものと認めることはできないし、前記2のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であって、別異のものである。
また、本件商標の指定役務と申立人役務とは、前記3のとおり、関連性がない異なる業種の役務であって、取引者、需要者も異にするものである。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき特段の事情は見いだせない。
してみれば、本件商標は、商標権者が、これをその指定役務について使用したとしても、これに接する取引者、需要者が、申立人役務に係る引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、引用商標が造語で、ハウスマークであること等を考慮したとしても、該役務が申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生じるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-03-30 
出願番号 商願2016-127538(T2016-127538) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W384142)
T 1 651・ 25- Y (W384142)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柿本 涼馬馬場 秀敏安達 輝幸 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 鈴木 雅也
山田 正樹
登録日 2017-06-09 
登録番号 商標登録第5953403号(T5953403) 
権利者 グーグル エルエルシー
商標の称呼 アンバト 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 石田 昌彦 
復代理人 右馬埜 大地 
代理人 乾 裕介 
代理人 田中 克郎 
代理人 窪田 英一郎 

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