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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W28 |
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管理番号 | 1339266 |
審判番号 | 無効2016-890053 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2016-09-01 |
確定日 | 2018-03-19 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5597305号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5597305号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5597305号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成24年10月9日登録出願,同25年2月19日に登録査定,第28類「遊園地用機械器具,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,麻雀用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,ゴルフクラブ用グリップ,運動用具」を指定商品として,同年7月12日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。以下,枝番全てを示すときは枝番を省略する。)を提出した。 1 無効事由 本件商標は,国際信義に反するものであるから,商標法第4条第1項第7号に該当し,同法第46条第1項により無効にすべきものである。 (1)本件商標について 本件商標は,アルファベット6文字にて「CADERO」と一連に横書きされてなるものであり,当該構成より「カデロ」の称呼を生じ,後述するように「請求人の略称」との観念を有している。 本件商標の指定商品は,第28類に属する商品(上記第1に記載のとおり)である。 (2)本件商標と請求人の有する台湾における登録商標とが類似すること 請求人は,主として,ゴルフ用品の製造・販売を行う者であり,台湾において登録第01449624号の商標権(以下「台湾登録商標」という。)を有している(甲3)。 台湾登録商標は,別掲2のとおり,ややデフォルメされたアルファベット6文字にて「CADERO」と書してなるものであり(甲3の1),上記構成より,「カデロ」の称呼が生じる。 そして,請求人の英語表記は「CADERO GRIP INDUSTRIAL CO.,LTD.」であることから,「請求人の略称」との観念を有している(甲4)。 台湾登録商標の指定商品は,第28類「ゴルフ用ボール,ゴルフクラブ,ゴルフクラブヘッド,ゴルフクラブ用ヘッドカバー,ゴルフクラブのグリップ,ゴルフ用キャディーバッグ,ゴルフ用手袋,ゴルフバッグ(車付,車のないもの),運動用具専用バッグ,ゴルフ用パター練習具,テニスラケット,ラケット用グリップ」である。 本件商標と請求人の台湾登録商標は,それぞれ上述したとおりであるから,その商標が類似し,指定商品が同一又は類似するものである。 (3)本件商標は請求人の略称であること 本件商標は,請求人の略称であり(甲4),この「CADERO」の名称は,請求人の設立者の名前に由来しており,請求人が創作したものである(甲8)。 (4)被請求人の行為は,被請求人と請求人との間で締結された契約に違反すること ア 被請求人と請求人は,請求人の商標である「カデロ」に関し,主として商品「ゴルフのグリップ」について,平成22年9月15日に独占販売店契約(以下「本件販売店契約」という。)を締結している(甲5)。 イ 本件販売店契約の具体的な商品は,2011年ゴルフ用品総合カタログ(甲8)の54頁の記事(以下「雑誌掲載記事」という。)に記載のとおりである。当該記事には,ゴルフのグリップについて,請求人が独自に開発した製品であり,その商標として,自身の名称の略称を用いており,その名称が請求人の設立者の名前に由来している旨が掲載されている。さらに,2010年時点の請求人と被請求人との対話も掲載されている。 また,本件販売店契約における対象商標については,その第1条及び通知書(甲6)において「カデロブランド・グリップ」と明記されていることから「カデロ」の表示,請求人の台湾登録商標及び上記雑誌掲載記事に記載のとおりである。 本件販売店契約の有効期限は,その第22条に記載のとおり,平成22年10月1日から5年であり,期間満了の3か月前までに両者のいずれからも更新しない旨の書面による通知がない限り,その後1年間更新され,以後も同様とするものである。 ウ 被請求人と請求人は,少なくとも契約締結時から2016年3月8日まで有効な取引関係にあった。2011年7月14日から2016年3月8日までの間の,請求人から被請求人へのインボイスには,請求人の「CADERO」の商標を付した商品「ゴルフグリップ」が明記されている(甲9)。 したがって,少なくとも2016年3月8日まで,本件販売店契約は,有効に存続していたものである。 エ 本件販売店契約書の第14条2項において,「乙(被請求人)は,本件商標が甲(請求人)に帰属することを確認し,本地域内外を問わず,本件商標と同一若しくは,類似する商標,記号等をいかなる商品,役務についても登録しない。」旨規定されている。 ここでいう「本件商標」とは,上述したとおり,「カデロ」の表示,請求人の台湾登録商標及び上記雑誌掲載記事(甲8)に記載のとおりのものであるから,少なくとも,「カデロ」,「CADERO(ロゴ)」,「CADERO」の外観構成,「カデロ」の称呼及び「CADERO」,「CADERO GRIP」の観念が生じる表示がこれに該当する。 オ 本件販売店契約(甲5)によれば,被請求人は,平成22年10月1日から少なくとも平成28年3月8日までは,一般に国際信義則上,本件商標と同一若しくは類似する商標の出願を行ってはならないものである。 しかしながら,被請求人は,本件販売店契約に反し,請求人に無断で,契約期間である平成24年10月9日に本件商標を出願し,同25年7月12日にその登録を受けている。 そして,本件商標は,上述したとおりであるから,本件販売店契約上の「本件商標」である「カデロ」,「CADERO(ロゴ)」,「CADERO」の表示と類似する。 したがって,当該行為は,本件販売店契約の第14条2項に反するものである。 カ このような被請求人の行為は,被請求人を信頼して本件販売店契約を締結した請求人の信頼を裏切る行為であり,また,本件商標は,請求人の略称でもあることから剽窃的な出願でもあるから,一般に国際信義に反するというべきである。 2 結論 したがって,被請求人の行為は,国際信義に反するものであり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 第3 被請求人の主張 被請求人は,請求人の主張に対して何ら答弁していない。 第4 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第28類「ゴルフクラブ用グリップ,運動用具」のほか,上記第1に記載のとおりの商品を指定商品として,平成24年10月9日に登録出願されたものである。 2 請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,以下の事実が認められる。 (1)請求人,請求人の使用に係る商標,本件商標権者との取引について ア 請求人は,英語表記を「CADERO GRIP INDUSTRIAL CO.,LTD.」とするゴルフ用品の製造・販売を行う台湾の会社であって,別掲2のとおりの構成からなる台湾登録商標(登録日:2011年1月16日,第28類「ゴルフ用ボール,ゴルフクラブ,ゴルフクラブヘッド,ゴルフクラブ用ヘッドカバー,ゴルフクラブのグリップ」ほか)の権利を有している(甲3,甲4及び甲8)。 イ 2011年ゴルフ用品総合カタログ(平成23年2月18日 株式会社ユニバーサルゴルフ社発行:甲8)には,その54頁に,請求人に関する記事が,「業界初,水と空気で装着できるグリップを開発。もっと進化させてグリップ革命を起こしたい。」の見出しの下,「CADERO GRIP ORIGINAL」の表示があるグリップの写真とともに掲載された。そして,当該カタログの55頁に,「CADERO」という名前の経緯について記載され,その頁の右上には,台湾登録商標及びその下に小さく「GRIPS」の文字が表示された。 また,請求人のインボイス(甲9)においても台湾登録商標が表示されている。 そうすると,請求人は,「ゴルフクラブのグリップ」に,台湾登録商標を使用しているものである。 ウ 請求人のインボイス(甲9)によれば,請求人は,本件商標権者との間で,2011年(平成23年)11月9日(甲9の3),2012年(平成24年)8月6日(甲9の5)から2016年(平成28年)3月8日(甲9の33)までの間,「CADERO」の「GOLF GRIP」を取引していた。 (2)本件販売店契約書について 請求人と本件商標権者は,平成22年9月15日に,本件販売店契約(甲5)を締結した。そして,本件販売店契約には,以下アないしエのとおりの記載がある。 ア 第1条1項に「甲(審決注:請求人)は乙(審決注:本件商標権者)をカデロブランド・グリップ(以下,「本製品」という。)の独占的販売店として指定する。乙が本製品を販売する地域はアジア(以下,「本地域」という。)とする。」の記載。 イ 第14条の1項に「甲は乙に対し,本契約期間中,本地域内において,本製品の販売,販売促進および広告に関して甲の商標(以下,本件商標という。)を無償で使用する権利を許諾する。」の記載。 ウ 第14条2項に「乙は甲の商標が甲に帰属することを確認し,本地域内外を問わず,本件商標と同一もしくは類似する商標,記号等をいかなる商品,役務についても登録しない。」の記載。 エ 第22条に「本契約の有効期間は平成22年10月1日から5年間とする。・・・本契約は1年間更新され,以後も同様とする。」の記載。 オ なお,本件販売店契約における上記「本件商標」とは,少なくとも,台湾登録商標が該当するものといえる(請求人の主張,甲6)。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)請求人の使用に係る商標について 請求人の使用に係る商標は,ゴルフ用品総合カタログ(甲8)及びインボイス(甲9)に表示されているとおり,別掲2のとおりの構成からなる請求人の台湾登録商標(甲3の1)である。 そして,台湾登録商標は,2011年ゴルフ用品総合カタログ(甲8)やインボイス(甲9)において,「CADERO」の欧文字とともに表示されているものであるから,「CADERO」欧文字をデザイン化して表したものと認められ,これからは,「カデロ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (2)本件商標と台湾登録商標との類否について 本件商標は,別掲1のとおりの構成からなるところ,最近の文字のデザイン化からすると「CADERO」の欧文字を表したものと容易に認識されるというべきであって,これからは「カデロ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 そこで,本件商標と台湾登録商標とを比較すると,両商標は,それぞれデザイン化され,その外観において差異を有するとしても,いずれも「CADERO」の欧文字からなるものであるから,外観において近似し,両商標からは,「カデロ」の同一の称呼を生じ,いずれも特定の観念を生じないものの,同一のつづりであるから,観念において相違することのないものである。 以上を総合すれば,本件商標と台湾登録商標とは,類似の商標と認められる。 (3)本件商標の指定商品と台湾登録商標を使用する商品について 本件商標は,「ゴルフクラブ用グリップ,運動用具」を指定商品とするものであって,台湾登録商標は,主に「ゴルフクラブのグリップ」に使用するものであるから,両商品は,同一又は類似のものと認められる。 (4)本件販売店契約と本件商標の登録出願との関係 請求人と本件商標権者との間における本件販売店契約は,上記2(2)のとおり,平成22年10月1日から5年間を有効期間とするカデロブランド・グリップの独占的販売に関するものであって,請求人と本件商標権者は,平成28年3月8日までの間,「CADERO」の「GOLF GRIP」を取引していた(甲9)。 そして,本件販売店契約の第14条2項には,本件商標権者は請求人に帰属する商標と同一もしくは類似する商標,記号等をいかなる商品,役務についても登録しない旨規定され,本件販売店契約における請求人に帰属する商標には,少なくとも本件商標と類似する台湾登録商標が含まれるものである。 台湾登録商標と類似する本件商標は,当該商標が主に使用される「ゴルフクラブのグリップ」と同一又は類似の商品である第28類「ゴルフクラブ用グリップ,運動用具」を含む商品を指定商品として,本件販売店契約の有効期間内である平成24年10月9日に登録出願されたものである。 (5)以上からすると,本件商標権者は,本件販売店契約の内容を知っていながら,その有効期間内に台湾登録商標と類似する本件商標を,当該商標が主に使用される「ゴルフクラブのグリップ」と同一又は類似の商品である,第28類「ゴルフクラブ用グリップ,運動用具」を含む商品を指定商品として登録出願したものであるから,かかる本件商標権者の行為は,上記本件販売店契約の第14条2項に規定されている内容に反したものというべきである。 そして,本件商標権者による本件商標の登録出願は,請求人との間の契約上の義務違反となるのみならず,適正な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであるから,公正な取引秩序の維持の観点からみても妥当ということができない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(台湾登録商標) |
審理終結日 | 2017-10-24 |
結審通知日 | 2017-10-27 |
審決日 | 2017-11-09 |
出願番号 | 商願2012-84865(T2012-84865) |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(W28)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
田中 亨子 平澤 芳行 |
登録日 | 2013-07-12 |
登録番号 | 商標登録第5597305号(T5597305) |
商標の称呼 | カデロ |
代理人 | 皆川 由佳 |
代理人 | 三浦 光康 |