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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y0942
管理番号 1338271 
審判番号 取消2016-300555 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-08-10 
確定日 2018-02-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5041906号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5041906号商標の指定商品及び指定役務中,第9類「全指定商品」及び第42類「電子計算機用プログラムの提供」についての登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5041906号商標(以下「本件商標」という。)は,「MIRIS」の欧文字と「マイリス」の片仮名を上下二段に表してなり,平成18年7月19日に登録出願,第9類「電子計算機用プログラム,電子計算機用プログラムを記録させた記録媒体」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として同19年4月20日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成28年8月23日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第9類「全指定商品」,及び第42類「電子計算機用プログラムの提供」について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないものであるから,商標法第50条第1項の規定に基づき,取り消されるべきものである。
2 本件商標の使用者について
被請求人は,株式会社アルファインターナショナル(以下「アルファ社」という。)が,本件商標の通常使用権者である旨主張している。
しかしながら,被請求人とアルファ社とは,別個独立の法人であり,両者間における本件審判の請求の登録前3年以内の期間内(以下「要証期間内」という。)における通常使用権許諾契約が明示されないから,アルファ社は,商標法上の本件商標についての通常使用権者とは認められない。
被請求人が提出した基本契約書(乙1の3)において,その第1条に,「乙群(被請求人を含むアルファ社の子会社)は,甲(アルファ社)の社名及び甲の所有する商品名を無償で使用することが出来る。」と明記されている。すなわち,アルファ社の子会社は,アルファ社の所有する社名及び商品名について,その使用が許諾されている。
逆に,被請求人のようなアルファ社の子会社が,その所有する商標を,その親会社であるアルファ社に使用許諾するのであるならば,同様の取り決めが存在しなければならず,親会社であれば,必然的に,子会社の商標権等財産の使用許諾を受けているというようなことわりは成り立たない。
以上のとおり,両者間における要証期間内における通常使用権許諾契約が明示されない以上,アルファ社は,本件商標についての通常使用権者とは認められず,その使用の事実は,単に,被請求人が黙認していたと評価できるものである。
そうすると,乙第1号証は,アルファ社が,商標法上の本件商標についての通常使用権者である事実を立証するものではない。
3 本件商標と使用商標について
本件商標は,「MIRIS」と「マイリス」の欧文字及び片仮名を結合させたものであるが,被請求人も主張するとおり,造語と解される。
そして,本件商標に関する商標公報の称呼(参考情報)にも記載されるとおり,「MIRIS」は,「ミリス」とも称呼できるものであるから,「マイリス」は,「MIRIS」の自然な片仮名(音訳)とは直ちに認定できない。
そうであれば,「MIRIS」と「マイリス」の両者が一体に使用されてはじめて,本件商標及び本件商標と社会通念上の同一の商標の使用と認定できるのであって,乙第4号証及び乙第5号証にある「MIRIS」の英文字のみの使用をもってしては,本件商標の類似商標の使用と解されることはあるとしても,本件商標と社会通念上の同一の商標を使用したとは解されない。
よって,乙第4号証及び乙第5号証は,本件商標及び本件商標と社会通念上の同一の商標が使用されたものとは認められない。
4 広告宣伝媒体について
被請求人は,乙第2号証及び乙第3号証が,「コンピュータソフトウェアの提供」に関する広告であると主張しているが,そうであれば,実際にこれが,本件要証期間内に展示又は頒布等された事実が立証されなければならないが(商標法第2条第3項第8号),そのような事実は,立証されていない。
商標法は,広告宣伝媒体が実際に「展示又は頒布等」されて初めて,商標の使用行為と認める(商標法第2条第3項第8号)。これは,「展示又は頒布等」されて,取引者・需要者が見うる状態に置かれれば,そこに使用された商標に信用が化体するので,このような場合も,商標の使用の一態様ととらえたものである。
このように,「展示又は頒布等」は,商標の広告的使用に該当するか否かの重要要件である。単に,プレゼンテーション資料に,日付が付されていたとしても,それをもって,直ちにその日付に取引者・需要者に展示・頒布等されたと推認することができないことはいうまでもなく,上記被請求人の主張は合理的なものではない。
また,乙第3号証の1は,表紙及び裏面の記載から,アルファ社のカタログであることを認識できるところ,前記2のとおり,アルファ社は本件商標の通常使用権者ではない。そして,該カタログの裏面に「MIRISは(株)パスファインダーの登録商標です。」との記載があっても,被請求人が同商標を使用していることにはならない。
5 本件請求に係る指定商品及び指定役務の使用について
被請求人が主張する「画像管理システム(診察支援システム)『MIRIS』」(以下「本件システム」という。)は,「ハードウェア」(乙4)とその稼働に必要な「画像管理ソフトウェア」がインストールされて(乙5),一体となった「画像管理装置」である。
そうすると,本件システムは,「電子計算機用プログラムの提供」ではなく,「画像管理装置」という商品であり,そのような装置は第9類「電子応用機械器具」又は第10類「医療用機械器具」である。
そうであれば,被請求人によって,パッケージに記録された何らかのコンピュータソフトウェアや,ダウンロードできる何らかのソフトウェア(第9類のコンピュータソフトウェア)が独立した商品として販売されている事実は,認められない。
また,本件では「インストール」という作業が必須(乙5,乙13)であることから,「ダウンロードできないソフトウェアの提供」(第42類)の事実も認められない。
被請求人は,「国家公務員共済組合連合会虎の門病院(付属健康管理センターを含む。以下『虎の門病院』という。)において稼働している本件システムは,平成28年10月3日(乙8)の時点においても,被請求人ないし通常使用権者が実質的に管理しかつ支配している」と主張するが,「管理,支配」とは,商標法上の使用において,どのような使用を意味するか不明である。
対価を取って,本件システムを「保守,維持管理」しているのであれば,そのような役務は第37類に属し,本件システムを「貸与」しているのであれば,それは,本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務とは関わりのないものである。
また,本件システムがハードウェア(ソフトウェアをインストールした)装置,もしくは,ダウンロードできるソフトウェアとするならば,被請求人の乙第8号証に係る主張により,これらの商品は,平成20年4月に譲渡されたものと解されるが,上記の取引は,要証期間内のものではない。また,虎の門病院が本件システムを長期にわたり使用しているとしても,商品の購入者の商品の使用行為が,当該商品に使用された商標の使用に該当するものでない。
さらに,乙第11号証の「御見積書」は,「総合健康情報システム『THIS』開発・導入費用(平成26年度)」と題されており,その【内訳】として,「2 業務パッケージソフトウェア 1)総合画像管理システム『MIRIS』基本パッケージ 1式¥3,500,000」とあるところ,総合健康情報システム「THIS」の【内訳】がなぜ,総合画像管理システム「MIRIS」となるのか,これらの関係は不明である。
また,「基本パッケージ」「1式」とは何を意味するのかも不明である。同御見積書には,その下部に,「注2)総合画像管理システム『MIRIS』を導入するには,専用サーバが必要となります。」との記載もあり,「MIRIS」の商標が使用された「コンピュータソフトウェア」だけの販売を意味するものではないと解される。
その他,被請求人の提出する書証は,いずれも,その証書にある対象物が本件審判の請求に係る指定商品での使用及び指定役務の提供にあたるか不明又は商品又は役務とは関わりのないものであるか,若しくは要証期間内に使用されたことを立証したものではない。
以上のとおり,被請求人によって提出されたいずれの書証をみても,被請求人又はその商標法上の通常使用権者が,本件商標ないしそれと社会通念上同一の商標を,要証期間内に,本件取消請求に係る指定商品及び指定役務に使用したという事実は立証されていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人とアルファ社の関係について
被請求人とアルファ社は,共にコンピュータソフトウェアの企画,開発,製造,販売及び輸出入業務等を目的とする株式会社である(乙1の1,乙1の2)。
被請求人は,平成13年8月1日にアルファ社の下に発足したアルファグループの一員であり(乙1の3),アルファ社は被請求人の発行済株式総数の70%を保有している(乙1の4)。また,被請求人の代表取締役はアルファ社の取締役を兼ねている(乙1の1,乙1の2)。さらに被請求人はその本店を横浜市青葉区に置くとともに港区三田に支店を置いており,この支店住所はアルファ社の本店住所と同じである(乙1の1,乙1の2)。
このように,被請求人とアルファ社とは事業上非常に密接な関係を有するいわゆるグループ会社であり,互いに協力して事業を展開している。このため,本件商標と社会通念上同一の商標は,被請求人によって使用されるだけでなく,アルファ社によっても使用されている。被請求人は,アルファ社が本件商標ないしこれと社会通念上同一の商標を使用することを当然に認めており,アルファ社は,本件商標を使用する権利を有する通常使用権者である。
また,アルファ社作成の乙第3号証の1に,「MIRISは(株)パスファインダーの登録商標です。」とあることから,アルファ社は,本件商標が登録商標であり,商標権者が被請求人であることを認識している。
アルファ社が通常使用権者であるという法律効果を導くために,その根拠となる具体的事実が通常使用権許諾契約(書)に限られるものではないのはいうまでもない。また契約書などの書面によらなければ通常使用権を許諾することができないというわけではない。
2 本件商標と使用商標について
本件システムの紹介資料(乙2の1)の一葉目(表紙)には「MIRIS(マイリス)」(以下「使用商標1」という。)が,二葉目には「MIRIS」(以下「使用商標2」という。)が,それぞれ記載されている。五葉目?十三葉目には,そのすべてに表示画面(ブラウザ画面)が掲載されており,表示両面の左上方に,「MIRISマイリス」(以下「使用商標3」という。以下これらをまとめて「使用商標」という場合がある。)が表示されている。
また,本件システムのカタログ(乙3の1)にも使用商標1が随所に記載され,裏表紙には使用商標2が記載されている。
紹介資料及びカタログに記載されている使用商標は,いずれも隙間なく一連につづられた欧文字「MIRIS」を含む。また使用商標1および3には,欧文字「MIRIS」とともに「マイリス」の片仮名も一体につづられており,欧文字「MIRIS」は「マイリス」と読まれるべきものであることが把握される。
本件商標は「MIRIS」の欧文字を上段に「マイリス」の片仮名を下段にそれぞれ配置したものであるから,当然に「マイリス」の称呼を生じる。また,「MIRIS」及び「マイリス」はいずれも固有の観念を有しない造語である。
請求人は,使用商標2は,本件商標と社会通念上同一の商標ではない旨を主張し,その理由として,商標公報の称呼(参考情報)に「ミリス」と記載されている旨を述べる。
しかしながら,たとえば「Miami」の英単語が「マイアミ」と発音されて親しまれており,さらに「mineo」の造語がテレビコマーシャル等で「マイネオ」と発音されて放送されかつ宣伝されている例にならえば,先頭の2文字が「MI」から始まる5文字の欧文字において,先頭の2文字「MI」は「ミ」よりも「マイ」と称呼されやすく,かつそのように称呼されるとみるのが自然である。
使用商標2から自然に生じる称呼は「マイリス」であり,使用商標2も,本件商標と社会通念上同一の商標である。
このように使用商標と本件商標とは,称呼が同一であり,観念における相違もないのであるから,社会通念上同一の商標である。
3 本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務の広告における本件商標の使用について
(1)乙第2号証について
乙第2号証の1は,被請求人及び通常使用権者であるアルファ社の連名で平成26年5月頃に作成され,かつプレゼンテーションされた又は頒布された本件システムを紹介するプレゼンテーション資料であり,乙第2号証の2が,乙第2号証の1として提出する紹介資料の電子データ(パワーポイント・ファイル)のプロパティ画面である。乙第2号証の2から,乙第2号証の1として提出する紹介資料は,平成26年(2014年)8月9日に作成され(ファイル・コピーされ),平成28年(2016年)5月26日以降,修正ないし変更は加えられていないことが分かる。
そして,平成26年頃,西宮市医師会診療所健診部が,該資料を見ており,そのコピーを受領した(乙14)。
したがって被請求人及び通常使用権者は,要証期間内に,本件商標と社会通念上同一である商標を,指定商品である電子計算機用プログラムないし指定役務である電子計算機用プログラムの提供に関する広告に当たる乙第2号証の1の紹介資料に付して展示し,さらには頒布したものであり,これは商標法第2条第3項第8号所定の行為である。
(2)乙第3号証について
乙第3号証の1として提出するカタログ(リーフレット)は,本件システムを紹介するものであり,乙第3号証の2が,乙第3号証の1として提出するカタログ(リーフレット)の電子データ(エクセル・ファイル)のプロパティ画面である。乙第3号証の2から,乙第3号証の1として提出するカタログは,平成23年(2011年)5月23日以降,修正ないし変更は加えられていないから,該カタログは,同日又はそれ以降に取引者,需要者に対して頒布,展示されたとみるのが自然である。
カタログの裏表紙には,製造・販売元としてアルファ社の社名,住所,電話番号及びファクシミリ番号が記載されるとともに,被請求人が「MIRIS」の商標権者であることが明記されている。
(3)乙第9号証について
乙第9号証の1は,平成28年1月15日に発行されたアルファ社の会社案内パンフレットであり,乙第9号証の2は,乙第9号証の1の印刷に関する請求書である。
乙第9号証の2に「2016年1月度」,日付「01/15」,品名「会社案内」,数量「500部」と記載されているように,乙第9号証の1の会社案内パンフレットは,平成28年(2016年)1月15日に500部印刷されたものである。
要証期間内に発行された乙第9号証の1の「沿革」に「平成19年(2007)1月画像ファイル管理システム『MIRIS』販売開始」と記載されており,請求人及びアルファ社が提供する電子計算機用プログラム(これによって動作する画像ファイル管理システム)の識別標識として,使用商標2が使用されている。
4 本件審判の請求に係る指定役務の提供について
請求人及びアルファ社は,病院等の施設内に設けられた施設内ネットワークに接続されるサーバ機器及びクライアントコンピュータとを画像管理システムとして動作させるための電子計算機用プログラムを製造,販売しており,かつその電子計算機用プログラムを通信回線を通じて提供し,使用させる役務を提供している。
(1)乙第4号証ないし乙第8号証について
乙第4号証及び乙第5号証は,アルファ社が虎の門病院に平成27年10月1日付けで発行した総合健康情報システム「THIS」及び本件システムに関する見積書である。乙第4号証はハードウェア(サーバ機器)の見積書であり,乙第5号証はソフトウェア及び諸経費の見積書であり,これらの見積書には使用商標2が記載されている。
そして,乙第6号証及び乙第7号証は,それぞれ乙第4号証及び乙第5号証に対応するもので,乙第6号証がハードウェアの請求書であり乙第7号証がソフトウェアの請求書である。
乙第4号証及び乙第6号証は,電子計算機用プログラムの提供自体に関する取引書類ではないが,サーバ機器は,電子計算機用プログラムの提供に必須の装置であるので,乙第4号証及び乙第6号証は,要証期間内に「電子計算機用プログラムの提供」が行われたことを間接的に示しており,サーバ機器に関する取引書類がサーバ機器更新作業に関する取引書類(乙5,乙7)と別に発行されていることから,サーバ機器更新作業は,独立した商標法上の役務である。
サーバ更新作業では,サーバ機器を新しい機器に取り替え,新しいサーバ機器を本件システムとして再度稼動させるための作業が行われた。平成27年10月に入れ替えられたサーバ機器は,現在においても虎の門病院で稼働している。
乙第5号証及び乙第7号証には「電子計算機用プログラムの提供」の記載はないが,「(2)システムインストール作業」とあるように,入れ替えたサーバ機器を本件システムとして動作させるためのプログラムのインストールが行われたこと及び,「(6)既存システム動作検証」とあるように,サーバ機器の入替え後においても本件システムがこれまでどおり使えるかどうかの検証が行われたことが記載されている。
そして,「(6)既存システム動作検証」では,入れ替え後のサーバ機器を本件システムとして動作されることができるかどうかの確認作業が行われるところ,入替え後のサーバ機器を本件システムとして動作されるためのプログラムの提供が行われている。したがって,プログラムのインストール作業及び既存システム動作検証作業に「電子計算機用プログラムの提供」が含まれている。
また,本件システムは,平成20年4月より平成28年10月3日において,虎の門病院で稼動している(乙8)ことから,要証期間内において,医師等に対して電子計算機用プログラムの提供を行っていた。
本件システムに係るプログラム及びサーバ機器は,虎の門病院が購入し,虎の門病院が使用している。しかしながら,本件システムに係るプログラム及びサーバ機器は,要証期間を含む平成20年4月より平成27年10月3日(乙4?乙8)にわたって被請求人ないしアルファ社が管理しかつ支配している。
また,サーバ機器は,虎の門病院のために提供する電子計算機用プログラムを被請求人又はアルファ社が提供するために用意しているものである。
そうすると,形式的には虎の門病院がプログラムを使用し,これに基づいてサーバ機器の動作が制御されているとしても,実質的には,被請求人ないしアルファ社が,他人である虎の門病院のためにプログラムを提供し,これに基づいてサーバ機器の動作が制御されている。してみれば,被請求人ないし通常使用権者の行為は,他人である虎の門病院のために行う労務又は便益といえる。
被請求人ないし通常使用権者が継続的かつ実質的に管理しかつ支配しているからこそ,虎の門病院において本件システムを構成するサーバ機器に不具合が生じた平成27年10月頃に,被請求人ないし通常使用権者が対応する(サーバ機器を更新する)ことができたのである。
したがって,形式的には虎の門病院が要証期間内に電磁的方法により行う映像面において,使用商標3をクライアントコンピュータに表示していたとしても(乙2の1,乙8),実質的には,被請求人ないし通常使用権者が,虎の門病院を介して,要証期間に電磁的方法により行う映像面を介した電子計算機用プログラムの提供に当たりその映像面に使用商標3を表示して電子計算機用プログラムを提供していた(乙2の1,乙8)ものであり,これは商標法第2条第3項第7号所定の行為,または要証期間内に電子計算機用プログラムの提供に当たりその提供を受ける虎の門病院の利用に供する物に使用商標3を付していた(乙2の1,乙8)ものであり,これは商標法第2条第3項第3号所定の行為である,ということができる。
なお,本件において,要証期間内に被請求人とアルファ社のどちらが虎の門病院でサーバ機器を稼働し,プログラムを提供していたのか,そして要証期間内に使用商標3を表示画面に表示していたのは被請求人とアルファ社のどちらであるかを切り分けるのは難しい。被請求人はアルファ社の名の下で対外活動を行っており,実質的な行為主体が被請求人であるとしても,対外的にはアルファ社の行為として示されるからである。
商標法第50条は,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによる登録商標(社会通念上同一の商標を含む)の要証期間内の使用を取消免除要件とするから,商標権者の使用であるか通常使用権者の使用であるかについては選択的適用が許されており,登録商標の使用主体が商標権者の立場にある者であっても,通常使用権者の立場にある者であっても,取消は免除される。
(2)乙第13号証について
平成27年10月24日又は25日に,本件システムに関する各種作業(サーバ環境設定,画像管理システム環境インストール,画像管理システムデータ移行,画像管理システム移行データ確認,電子カルテ・画像連携試験・確認)が行われた。「電子カルテ・画像連携試験・確認」は,乙第5号証別表には,「既存システム動作検証」と記載されている。
「既存システム動作検証」は取り替えられた新しいサーバ機器がこれまでどおりに使えるかどうか,その動作を検証することを意味する。すなわち,「既存システム動作検証」では新しいサーバ機器からクライアントコンピュータに本件システムに係るプログラムが提供され,クライアントコンピュータの表示画面に使用商標3(乙2の1)が表示されることが確認された。
このように,虎の門病院における本件システムの日常稼働のときとは別に,既存システム動作検証のとき,つまり,平成27年10月24日又は25日にも本件システムに係るプログラムは提供され,使用された(画面表示された)のである。この平成27年10月24日又は25日に行われた既存システム動作検証のときの「MIRISマイリス」の使用主体は,被請求人ないしアルファ社である。
このように,被請求人ないしアルファ社は,既存システム動作検証のとき(平成27年10月24日又は25日)に電磁的方法により行う映像面を介した電子計算機用プログラムの提供に当たりその映像面に使用商標3を表示して電子計算機用プログラムを提供した(乙2の1,乙13)ものであり,これは商標法第2条第3項第7号所定の行為,又は既存システム動作検証のときに電子計算機用プログラムの提供に当たりその提供を受ける虎の門病院の利用に供する物に使用商標3を付した(乙2の1,乙13)ものであり,これは商標法第2条第3項第3号所定の行為である。
5 本件審判の請求に係る指定商品の使用について
被請求人は,指定商品「電子計算機用プログラム」及び「電子計算機用プログラムを記録させた記録媒体」についての要証期間における本件商標と社会通念上同一の商標の使用を,以下に立証しかつ主張する。
(1)乙第5号証及び乙第7号書について
乙第5号証は,前記4(1)のとおり,ソフトウェア及び諸経費の見積書である。この見積書には使用商標2が記載されており,乙第7号証は,乙第5号証に対応する請求書である。
乙第5号証見積書には,「ソフトウエア・作業」との記載があり,「ソフトウエア」と「作業」の2つが該見積書の内容である。「ソフトウェア」は物(商品)であり,「作業」はサービス(役務)である。
そして,これに対応する乙第7号証請求書にも「ソフトウェア」との記載がある。
該見積書の「システムインストール作業」は,ソフトウェアの販売とそのインストール作業を含むものであって,ソフトウェアの販売のみ又はインストール作業のみはあり得ない。
そうすると,本件システムに係るソフトウェア(電子計算機用プログラム)は,平成27年10月に虎の門病院に販売され,販売に際して通常使用権者が虎の門病院に乙第5号証見積書及び乙第7号証請求書を頒布したものである。
したがって,本件商標の通常使用権者は,平成27年10月に,本件商標と社会通念上同一である使用商標2を,指定商品である電子計算機用プログラムに関する取引書類に当たる乙第5号証見積書に付して頒布したものであり,これは商標法第2条第3項第8号所定の行為である。
(2)乙第10号証について
乙第10号証は,平成27年5月20日にアルファ社が虎の門病院に発行した総合健康情報システム「THIS」及び本件システムに関する見積書である。乙第10号証見積書にも「ソフトウエア・作業」との記載があり,使用商標2の記載がある。
したがって,本件商標の通常使用権者は,平成27年5月20日に,本件商標と社会通念上同一である使用商標2を,指定商品である電子計算機用プログラムに関する取引書類に当たる乙第10号証見積書に付して頒布したものであり,これは商標法第2条第3項第8号所定の行為である。
(3)乙第11号証について
乙第11号証は,健診システムの販売会社であるNECネクサソリューションズ株式会社からの依頼に応じて本件商標の通常使用権者が平成25年12月19日に発行した見積書である。
乙第11号証見積書に「業務パッケージソフトウエア」との記載があり,ソフトウエア,すなわち電子計算機用プログラムについての取引書類であることが分かる。そして,その「2業務パッケージソフトウエア」(電子計算機用プログラム)について自他商品識別のための使用商標2が記載されている。
したがって,本件商標の通常使用権者は,要証期間内の平成25年12月19日に,本件商標と社会通念上同一である使用商標2を,指定商品である電子計算機用プログラムに関する取引書類に当たる乙第11号証に付して頒布したものであり,これは商標法第2条第3項第8号所定の行為である。
なお,該見積書に記載されている「1業務ソフトウェア」は,総合健康システム「THIS」であり,「THIS」と連動して画像データを参照することができるようにするソフトウェアの1つが「MIRIS」のソフトウエアである。
「THIS」は,画像データを管理する機能はないが,画像データを管理する別のソフトウェアと連動することができる。「THIS」と連動して画像データを参照することができるようにするソフトウェアの1つが「MIRIS」である。
(4)乙第12号証について
乙第12号証の1は,被請求人が作成した本件システムに係るプログラム(マスター・プログラム)のソース・コードの一部である。このソース・コードは乙第12号証の2の画面をクライアントコンピュータに表示するためのものである。
乙第12号証の1のソース・コードの第32行が,クライアントコンピュータの表示画面(乙12の2,乙2の1)の左上部分に使用商標3を表示するための電磁的な情報である。ソース・コードの第32行が本件システムに係るプログラムに組み込まれていることによって,クライアントコンピュータの表示画面(インターフェース)に,使用商標3が商標として認識できるように表示される。
商品が電子計算機用プログラムの場合,プログラムの起動時や作業時のインターフェースに顧客が商標として認識できるよう商標の電磁的な情報を組み込む行為によって,商標は商品(電子計算機用プログラム)に付される。
本件商標の通常使用権者は,上述のように,平成27年10月に,本件システムに係るプログラムを虎の門病院に販売しており,このプログラムに使用商標3が付されている(電磁的な情報が組み込まれている)のであるから,本件商標の通常使用権者は,平成27年10月に,本件商標と社会通念上同一の使用商標3を指定商品である電子計算機用プログラムに付したものを譲渡したものであって,これは商標法第2条第3項第2号所定の行為である。
(5)乙第13号証について
乙第13号証は,虎の門病院に新サーバ機器を導入する(サーバ機器を更新する)にあたって通常使用権者が平成27年10月19日に作成した導入スケジュール(案)である。乙第13号証は導入スケジュール(案)であるが導入スケジュールのとおりに新サーバ機器の導入は行われた。
乙第13号証スケジュールによると,サーバ環境設定,画像管理システム環境インストール,画像管理システムデータ移行,画像管理システム移行データ確認,電子カルテ・画像連携試験・確認の各作業が,平成27年10月24日又は25日に行われた。「画像管理システム環境インストール」には,本件システムに係るプログラムをサーバ機器の記録媒体に記録することが含まれる。これは,平成27年10月24日又は25日に,本件システムに係るプログラムが,新サーバ機器の記録装置に顧客が使用商標3として認識できるように使用商標3の電磁的な情報が組み込まれたこと,すなわち新サーバ機器の記録媒体に使用商標3を付されたことを意味する。
プログラムのインストールでは,ブランクの記憶媒体に,コンピュータ装置(サーバ機器)に所定の処理を実行させるためのプログラムが記録されることから,インストールによって「ブランクの記憶媒体」から「電子計算機用プログラムを記録させた記録媒体」が生産される。
したがって,被請求人又は本件商標の通常使用権者は,平成27年10月24日又は25日に,使用商標3を指定商品である電子計算機用プログラムを記録させた記録媒体に付したものであり,これは商標法第2条第3項第1号所定の行為である。
6 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者又は本件商標の通常使用権者が本件請求に係る指定商品「電子計算機用プログラム,電子計算機用プログラムを記録させた記録媒体」及び指定役務中「電子計算機用プログラムの提供」について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したので,本件商標の登録は取り消されるものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証の1は,商標権者(被請求人)の履歴事項全部証明書であり,「代表取締役」として「佐藤孝宏」とあり,支店欄に「1 東京都港区三田一丁目3番33号」「2 高知県南国市蛍が丘一丁目1番地1」の記載がある。
(2)乙第1号証の2は,アルファ社の履歴事項全部証明書であり,「取締役」として「佐藤孝宏」とあり,支店欄に「1 高知県南国市蛍が丘一丁目1番地1」の記載がある。
(3)乙第1号証の3は,平成13年8月付けの「(株)アルファインターナショナルグループ経営規約書」とするものであるが,2葉目には,「・・・現アルファインターナショナル社の下にアルファグループ会社を発足させ,グループの強化・発展を目指す事とする。・・・アルファグループの経営に関して,上記の内容に合意します。/平成13年8月1日」の記載及び「株式会社アルファインターナショナル/代表取締役 久野泰次」並びに「株式会社パスファインダー/代表取締役 佐藤孝宏」の記載及び押印がされており,5葉目にも「甲」として「株式会社アルファインターナショナル/代表取締役 久野泰次」並びに乙群として「株式会社パスファインダー/代表取締役 佐藤孝宏」の記載及び押印がされている。
(4)乙第1号証の4は,商標権者の決算報告書とするものであるが,2葉目の「出資関係図/平成28年4月30日現在」には「1.出資関係図」として「2内国法人/(株)アルファインターナショナル」の下に「70%」「5 内国法人/(株)パスファインダー」の表示がある。
(5)乙第2号証の1は,本件システムの紹介資料とするものであるが,その1葉目には「MIRIS(マイリス)/ご紹介/平成26年05月/株式会社パスファインダー/株式会社アルファインターナショナル」の表示があり,2葉目には「MIRIS」の文字及び5葉目?13葉目のコンピュータのブラウザ画面のバードコピーの表示と思しき画像には「MIRISマイリス」の表示がある。
(6)乙第2号証の2は「MIRISのご紹介.pptのプロパティ」と題する「Microsoft PowerPoint」のプロパティ画面のハードコピーであるが,「作成日時:2014年8月9日,18:28:41」,「更新日時:2016年5月26日,9:07:38」及び「アクセス日時:2016年5月26日,9:07:37」の表示がある。
(7)乙第3号証の1は,「医用画像管理&診療支援システム/MIRIS(マイリス)」の表題のカタログとするものであるが,「●製造・販売元」として「株式会社アルファインターナショナル」及び「*MIRISは(株)パスファインダーの登録商標です。」の表示がある。
(8)乙第3号証の2は,「MIRISリーフレット.xlsのプロパティ」と題する「Microsoft Excel」のプロパティ画面のハードコピーであるが,「変更日:2011/05/23 19:20」の表示がある。
(9)乙第4号証は,「虎の門病院付属健康管理センター様向け総合健康情報システム『THIS』・画像管理システム『MIRIS』ハードウエア(OS,DB含む)費用」と題する,平成27年10月1日付けの虎の門病院宛のアルファ社の見積書であり,「[内訳]/【ハードウエア】」の記載及び「費目」欄には「サーバ機器 ※詳細は,別紙1。」の記載があり,「価格(円)」欄には「合計」として「¥1,944,000」の記載がある。
また,「別紙1」には「総合健康情報システム『THIS』ハードウエア試算表」の表題の下,「1.サーバ機器」として「品名」が記載されている。
(10)乙第5号証は,「虎の門病院付属健康管理センター様向け総合健康情報システム『THIS』・画像管理システム『MIRIS』サーバ機器更新作業費用」と題する平成27年10月1日付けの虎の門病院宛のアルファ社の見積書であり,「[内訳]/【ソフトウエア・作業】」の記載及び「費目」欄には「2システム分導入費・諸経費」の記載があり「価格(円)」欄には「合計」として「¥3,366,554」の記載がある。
また,「別紙1」には,「1)総合健康情報システム『THIS』・画像管理システム『MIRIS』導入支援作業試算表」の表題の下,「注)『システム導入支援費用』には,2システム分の以下の内容が含まれております。(1)新OS・新DBインストール (2)システムインストール作業 (3)既存データバックアップ作業 (4)DB構築作業 (5)既存全データ移行作業 (6)既存システム動作検証 (7)入替調整費用」旨の記載がある。
(11)乙第6号証は,「件名 健康管理センター様向け総合健康情報システムサーバ」と題する,平成27年10月30日付けの虎の門病院宛のアルファ社の請求書であり,「御請求合計(税込)¥1,944,000」及び「【ソフトウエア】(被請求人注:【ハードウエア】の誤り)」の記載並びに「商品名」欄に「総合健康情報システムサーバ」の記載がある。
(12)乙第7号証は,「件名 虎の門病院付属健康管理センターサーバ機器更新作業」と題する,平成27年10月31日付けの虎の門病院宛のアルファ社の請求書であり,「御請求合計(税込)¥3,366,554」及び「【ソフトウエア】」の記載並びに「商品名」欄に「虎の門病院付属健管理センターサーバ機器更新作業」の記載がある。
(13)乙第8号証は,「画像管理システム『MIRIS』の導入について」と題する平成28年10月3日付けの虎の門病院付属健康管理センター・画像診断センター 総括センター長荒瀬康司の陳述書と認められるところ,「当センターでは,平成20年4月に株式会社アルファインターナショナルから画像管理システム『MIRIS』を導入し,稼働しています。」の記載がある。
(14)乙第9号証の1は,アルファ社の会社案内パンフレットであり,「沿革」の項に「平成19年(2007)1月 画像ファイルシステム『MIRIS』販売開始」の記載がある。また,乙第9号証の2は,2016年(平成28年)1月20日付けの乙第9号証の1のパンフレットの印刷に係る請求書と認められる。
(15)乙第10号証は,「虎の門病院付属健康管理センター様向け総合健康情報システム『THIS』・画像管理システム『MIRIS』サーバ機器更新作業費用」と題する平成27年5月20日付けの虎の門病院宛のアルファ社の見積書であり,その内容は乙第5号証と同じものである。
(16)乙第11号証は,「総合健康情報システム『THIS』開発・導入費用(平成26年度)」と題する平成25年12月19日付けのNECネクサソリューションズ宛のアルファ社の見積書であり,「[内訳]/【ソフトウエア】」の記載及び「費目」として「業務パッケージソフトウエア」「1)総合画像管理システム『MIRIS』基本パッケージ」「2)総合画像管理システム『MIRIS』カストマイズ価格試算表『別紙6』」「システム導入支援費(導入打合せ含む)」の記載がある。
(17)乙第12号証の1は,本件システムに係るプログラムのソースコードとするものであり,乙第12号証の2は,本件システムによって表示される画面のコピーとするものであるところ,乙第12号証の1の32行目には「MIRIS」の文字があり,乙第12号証の2のブラウザと思しき画面の左上には「MIRISマイリス」の表示がある。
(18)乙第13号証は,アルファ社が作成した,平成27年10月19日付けの「虎の門病院付属健康管理センター様向け総合健康情報システム新サーバ導入スケジュール(案)」とのことであるところ,「作業内容」として「サーバ機器搬入/設置」「サーバ環境設定(OS,DB構築・設定,等)」「画像管理システム環境インストール」「画像管理システムデータ移行」「画像管理システム移行データ確認」「電子カルテ・画像連携試験・確認」「画像管理システム新サーバへ切替」「サーバ環境設定(DB構築・設定,等)」「健診システム環境インストール」「健診システムデータ移行」「健診システム移行データ確認」「健診・医事連携試験・確認」「健診・生理検査連携試験・確認」「健診システム新サーバへ切替」「更改立会い」の記載がある。
(19)乙第14号証は,「画像管理システム『MIRIS』について」と題する平成29年7月4日付けの西宮市医師会診療所 所長野口貞夫の陳述書と認められるところ,「当診療所健診部では,平成26年頃,・・・画像管理システム『MIRIS』の紹介資料(乙第2号証の1)を見せて頂きながら,画像管理システム『MIRIS』に関する説明を受けたこと,また,この紹介資料のコピーを受領したことに相違ありません。」の記載がある。
2 判断
(1)本件商標の商標権者と使用権者について
商標権者とアルファ社は共に,株式会社アルファインターナショナルグループを構成しており(乙1の3),アルファ社は商標権者へ出資しているものと認められる(乙1の4)。また,商標権者の代表取締役はアルファ社の取締役を兼ねており,商標権者の支店のひとつはアルファ社の支店と同一の住所である(乙1の1,乙1の2)。
そうすると,アルファ社は,商標権者の親会社若しくは関連企業と認められるものであり,商標権者がアルファ社に本件商標の使用許諾をしていたとみて差し支えない。
したがって,アルファ社は本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)本件商標と使用商標について
本件商標は,前記第1のとおり,「MIRIS」の欧文字と「マイリス」の片仮名を上下二段に表してなるものであるが,下段の片仮名は,上段の欧文字の読みを表したものと理解できる。
また,両文字は,辞書等には記載されていない造語と認められるものであり,特段の観念は生じないものである。
これに対し,本件システムの紹介資料及びブラウザ画面と思しき画面には,「MIRIS(マイリス)」(使用商標1),「MIRIS」(使用商標2)及び「MIRISマイリス」(使用商標3)の欧文字及び片仮名が表示されている(乙2の1,乙12の2)。
そこで,本件商標と使用商標を比較するに,本件商標は,「MIRIS」の欧文字と「マイリス」の片仮名を上下二段に表したものであり,使用商標1と使用商標3とは,これらの各文字を一連に表示しているという相違はあるものの,両者は,各構成文字を共通にしており,「マイリス」の片仮名が「MIRIS」の欧文字の読みを表しているといえるから,社会通念上同一の商標と認めることができる。
また,使用商標2は,本件商標の上段の欧文字部分と同一のつづりからなるものであり,本件商標と同一の称呼が生ずると認められる。
そして,使用商標2も本件商標と同じく特段の観念を生じない文字であることからすれば,使用商標2は,欧文字のつづり及び称呼が本件商標と同一であることをもって本件商標と社会通念上同一の商標といって差し支えない。
そうすると,使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標と解することができる。
(3)本件商標の使用について
ア 紹介資料及びカタログについて
本件システムの紹介資料の日付(乙2の1)及び紹介資料のPowerPointファイルのデータのプロパティ(乙2の2)並びに本件システムのカタログのExcelファイルのデータのプロパティ(乙3の3)に記載されている日付から,被請求人及びアルファ社は,要証期間内以前及び要証期間内に,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる使用商標を付して本件システムを広告するための紹介資料及びカタログを作成したことは推認できるが,要証期間内に紹介資料を展示又は頒布したとする証拠は,西宮市医師会診療所の陳述書(乙14)のみであり,この陳述を裏付ける客観的な証拠は提出されていない。
また,該陳述書には,紹介資料の展示又は頒布時期について,「平成26年頃」との大まかな時期が記載されているのみであり,展示及び配布の状況についての詳細な事実関係の記載はなく,該陳述のみでは,要証期間内に紹介資料が頒布されたことを認めることはできない。
さらに,要証期間内に該カタログを展示又は頒布した証拠の提出はない。
したがって,商標権者又は通常使用権者が,要証期間内に紹介資料又はカタログの展示又は頒布を行ったとは,認めることはできない。
イ 取引書類について
(ア)【ハードウエア】の見積書及び請求書について
平成27年10月1日付けの虎の門病院宛のアルファ社の見積書(乙4)及び平成27年10月30日付けの虎の門病院宛のアルファ社の請求書(乙6)とは,表題及び件名,費目及び商品名の内容に差異はあるものの,共に「ハードウエア」に関する取引書類であり,見積金額及び請求金額が同一であることから,乙第6号証の請求書は,乙第4号証の見積書に係る請求書と認められる。
そして,該見積書には,その表題に「画像管理システム『MIRIS』」の表示がある。しかしながら,該見積書及び該請求書は,それらの「費目」及び「商品名」の項目の記載から,共に「ハードウエア(サーバ機器)」に係る取引書類と認められ,サーバ機器は,本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務には当たらない。
そうすると,該見積書及び該請求書は,本件商標(社会通念上同一の商標を含む)を使用した,本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務についての取引書類と認めることはできない。
(イ)【ソフトウエア・作業】(平成27年10月)の見積書及び請求書について
平成27年10月1日付けの虎の門病院宛のアルファ社の見積書(乙5)及び平成27年10月31日付けの虎の門病院宛のアルファ社の請求書(乙7)とは,表題及び件名に共に「サーバ機器更新作業」の文字があり,見積金額及び請求金額が同一であることから,乙第7号証の請求書は,乙第5号証の見積書に係る請求書と認められる。
そして,該見積書には,「[内訳]/【ソフトウエア・作業】」の文字が記載されているものの,表題は「虎の門病院付属健康管理センター様向け・・・・画像管理システム『MIRIS』サーバ機器更新作業費用」であり,該請求書の商品名欄の記載も「虎の門病院付属健康管理センターサーバ機器更新作業」である。また,該見積書の「費目」欄及び別紙1にも,商品としてのソフトウェア(電子計算機用プログラム)又は本件審判の請求に係る商品又は役務若しくは請求に係る商品又は役務と同義の商品又は役務の記載は認められない。
そうすると,該見積書及び請求書は,「サーバ機器の更新作業」を提供するための費用の見積書及び請求書と認められる。
したがって,該見積書及び請求書は,本件審判の請求に係る指定商品の販売又は指定役務に係る取引書類であるとは認めることはできない。
(ウ)【ソフトウエア・作業】(平成27年5月)の見積書について
平成27年5月20日付けの虎の門病院宛のアルファ社の見積書(乙10)は日付が異なるものの,その表題,見積内容及び見積金額は,平成27年10月1日付けの見積書(乙5)と同一であるから,前記(イ)と同様に,該見積書は本件審判の請求に係る指定商品の販売又は指定役務の提供についての取引書類とは認めることはできない。
また,乙第10号証の見積書は,見積書のみの提出であり,これに対応する納品書若しくは請求書等の書証の提出はないから,これのみによっては,要証期間内に本件審判の請求に係る指定商品又は指定役務についての取引が行われていたものとは認めることはできない。
(エ)【ソフトウエア】の見積書について
平成25年12月19日付けのNECネクサソリューションズ宛のアルファ社の見積書(乙11)は見積書のみの提出であり,これに対応する納品書若しくは請求書等の書証の提出はないから,これのみによっては,要証期間内に指定商品についての取引が行われたものと認めることはできない。
また,該見積書には,「費目」欄に,「電子計算機用プログラム」と認められる「業務パッケージソフトウエア」の項目があり,その下に「画像総合管理システム『MIRIS』基本パッケージ」とあるが,該「MIRIS」の文字は,見積書にある品目のひとつとしての記載であると理解されるにすぎず,広告的機能を被請求人が期待して表示した記載とはいえないものであるから,この文字をもって,該見積書の頒布が,商標法第2条第3項第8号の商品に関する広告的使用であると認めることはできない。
(オ)まとめ
以上より,被請求人が提出した取引書類をもっては,要証期間内に本件審判請求に係る指定商品及び指定役務についての取引が行われたものとは認めることはできない。
また,取引書類の費目欄に記載された「MIRIS」の文字は,広告的使用であると認めることはできない。
そうすると,要証期間内に本件審判請求に係る指定商品及び指定役務について本件商標又は使用商標が使用されたものと認めることはできない。
ウ 虎の門病院の陳述書について
平成28年10月3日付けの虎の門病院の陳述書(乙8)の陳述を裏付ける客観的な証拠の提出は認められないが,仮に,この陳述のとおりであるならば,虎の門病院は,平成20年4月に,電子計算機用プログラムを含む本件システムをアルファ社より購入したこととなる。しかしながら,平成20年4月は要証期間内ではない。
したがって,該陳述書からは,要証期間内に「電子計算機用プログラム」についての取引が行われたものとは認められない。
また,平成20年4月以降,平成28年10月3日まで虎の門病院が本件システムを使用していたとしても,該陳述書,前記イ(ア)(イ)及び被請求人の主張より,サーバ機器及びプログラムを含む本件システムは,虎の門病院が購入し,同人が使用しているものであり,商標権者及びアルファ社が電子計算機用プログラムを提供しているものではないから,該陳述書によって,商標権者及びアルファ社が「電子計算機用プログラムの提供」を行ったものとは認められない。
エ アルファ社の会社案内について
アルファ社の会社案内(乙9の1)には,「平成19年(2007)1月画像ファイル管理システム『MIRIS』販売開始」の記載はあるものの,該書証は,「会社案内」であり,商標法第2条第3項第8号の「商品又は役務に関する広告」のためのパンフレットとは認められない。
オ 本件システムに係るプログラムのソースコード及び画面表示について
被請求人が主張する本件システムに係るプログラムソースコード(乙12の1)の内容でプログラムされた結果,クライアント機器の画面上のブラウザの左上に使用商標3が表示される(乙12の2)ことは認められるが,当該プログラムが要証期間内に提供又は譲渡されたことについての証拠の提出はない。
また,前記イ及びウのとおり,要証期間内に商標権者又は通常使用権者によって当該プログラムの販売又は提供が行われたとは認められない。
カ 新サーバ導入スケジュール(案)について
平成27年10月19日付のアルファ社作成のサーバ導入スケジュール(案)(乙13)の「作業内容」欄に記載されている作業内容には,「画像管理システム環境インストール」,「画像管理システムデータ移行」,「サーバ環境設定」等とあり,また,被請求人の主張からも,上記スケジュールの下に行われた作業は,サーバにプログラム及びデータをインストールし,インストールしたサーバの動作確認を行うことであることが認められる。
そうすると,これらの作業中に本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務が含まれているとは認められない。
したがって,該新サーバ導入スケジュール(案)をもって本件審判請求に係る指定商品及び指定役務についての取引が行われたものとは認めることはできない。
キ 小括
以上のとおりであるから,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に,商標権者又は通常使用権者のいずれかが,本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を本件審判の請求に係る指定商品又は指定役務に使用したものとは認めることはできない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は「被請求人又はアルファ社は,虎の門病院が所有している本件システムを実質的に管理かつ支配している。」ことから,被請求人又はアルファ社が「電子計算機用プログラムの提供」を行っている旨主張している。
しかしながら,前記2(3)ウのとおり,サーバ機器及び電子計算機用プログラムを含む本件システムの所有者は虎の門病院であり,被請求人又はアルファ社が「電子計算機用プログラムの提供」を行ったものとは認められない。
なお,被請求人は,特許事件に係る判決例を挙げて,商標の使用行為も同様である旨主張しているが,業として提供する役務としての「本件システムの管理及び支配」を行っている証拠は提出していない。
仮に,被請求人及びアルファ社が「電子計算機用プログラムを含む本件システムの管理」を行っていたとしても,該役務と「電子計算機用プログラムの提供」とでは,他人に提供する労役の内容が異なるものであるから,別異の役務であり,上記主張は認められない。
(2)被請求人は,乙第5号証の見積書に「[内訳]/【ソフトウエア・作業】」及び乙第7号証の請求書に「【ソフトウェア】」と記載されており,乙第5号証別紙1に「(2)システムインストール作業」があることをもって,該見積にはソフトウェアの販売が含まれる旨主張している。
しかしながら,取引は行われなかったものの,「業務パッケージソフトウエア」に関する書類と認められる,乙第11号証の見積書には,「費目」欄に「業務パッケージソフトウエア」として「画像総合管理システム『MIRIS』基本パッケージ」と明記されているところ,乙第5号証の見積書には,商品としての「パッケージソフトウェア」等の見積が費目又は内訳として明示されておらず,別紙1の,「『システム導入支援費用』には,2システム分の以下の内容が含まれております。」とする内容にも商品としての「ソフトウェア」又はソフトウエアと同義の表示はない。
また,「ソフトウェア」の見積が費目又は内訳として明示されていない理由を示す証拠の提出もないことから,乙第5号証及び乙第7号証によって「ソフトウエア」の取引が行われたものと認めることはできない。
(3)被請求人は,新サーバ導入スケジュール(案)(乙13)の作業に基づき,要証期間内に「画像管理システム環境インストール」を行うことは,「MIRIS」に係るプログラムをサーバ機器の記録媒体に記録したことで,「電子計算機用プログラムを付した記録媒体」を製造し,それに使用商標3を付した行為である旨主張している。
しかしながら,本件システムに係る電子計算機用プログラムは,虎の門病院が所有しているサーバ機器にインストールされるものであり,そのサーバ機器内の記録媒体が被請求人又はアルファ社によって取引されるものではない。
また,サーバ機器自体は,「電子計算機用プログラムを付した記録媒体」とは別異の商品である。
(4)被請求人は,サーバ機器更新作業費用(乙5)及び新サーバ導入スケジュール(案)(乙13)の作業に基づき,要証期間内に,サーバ機器の「既存システム動作検証」を行ったことをもって「電子計算機用プログラムの提供」を行い,それに使用商標3を使用した旨主張している。
しかしながら,該「既存システム動作検証」において,被請求人又はアルファ社が「電子計算機用プログラムの提供」を行ったことを示す証拠の提出はない。また,前記2(3)ウのとおり,本件システムに係る電子計算機用プログラムは虎の門病院が所有しているものである。
(5)小括
以上のとおりであるから,被請求人の主張はいずれも採用できない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務のいずれかについて,本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また,被請求人が,本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務のいずれかについて,本件商標を使用しないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,その指定商品及び指定役務中,「結論掲記の指定商品及び指定役務」についての登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-12-01 
結審通知日 2017-12-07 
審決日 2017-12-20 
出願番号 商願2006-67241(T2006-67241) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y0942)
最終処分 成立  
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 大森 友子
冨澤 武志
登録日 2007-04-20 
登録番号 商標登録第5041906号(T5041906) 
商標の称呼 マイリス、ミリス 
代理人 正林 真之 
代理人 東谷 幸浩 
復代理人 林 栄二 
代理人 東京UIT国際特許業務法人 
代理人 三浦 大 

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