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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W35 審判 一部申立て 登録を維持 W35 審判 一部申立て 登録を維持 W35 審判 一部申立て 登録を維持 W35 審判 一部申立て 登録を維持 W35 |
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管理番号 | 1336368 |
異議申立番号 | 異議2017-900235 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-07-28 |
確定日 | 2018-01-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5943138号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5943138号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5943138号商標(以下「本件商標」という。)は,「AXES」の欧文字と「アクシーズ」の片仮名を上下二段に書してなり,平成28年6月9日に登録出願,第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,携帯用化粧道具入れの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,織物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,通信販売のカタログによる広告,その他の広告業」を指定役務として,同29年4月12日に登録査定,同月28日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由において,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は,以下の2件(以下,これらをまとめて「引用商標A」という。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第1396631号商標(以下「引用商標1」という。)は,「AXIS」の欧文字を横書きしてなり,昭和50年10月27日に登録出願,第21類に属する登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同54年10月30日に設定登録されたものであり,その後,3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,平成21年11月25日に,指定商品を第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (2)登録第2454867号商標(以下「引用商標2」という。)は,「AXIS」の欧文字と「アクシス」の片仮名を上下二段に横書きしてなり,昭和61年9月4日に登録出願,第21類に属する登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成4年9月30日に設定登録,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,同16年2月18日に,指定商品を第18類「かばん類,袋物」とする指定商品の書換登録がされたものである。 2 申立人が,登録異議の申立ての理由において,本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するとして引用する登録商標は,以下の2件(以下,これらをまとめて「引用商標B」という。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第5560833号商標(以下「引用商標3」という。)は,「axes」の欧文字と「femme」の欧文字を上下二段に横書きしてなり,平成24年1月24日に登録出願,第25類「女性用被服,女性用ガーター,女性用靴下止め,女性用ズボンつり,女性用バンド,女性用ベルト」を指定商品として,同25年3月1日に設定登録されたものである。 (2)登録第4899178号商標(以下「引用商標4」という。)は,「アクシーズファム」の片仮名を標準文字で表してなり,平成17年4月22日に登録出願,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同17年10月7日に設定登録,その後,同27年4月21日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第340号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用商標Aとが類似する理由 本件商標からは「アクシーズ」の称呼が生じ,他方,引用商標Aからは「アクシス」の称呼が生じるところ,「アクシーズ」と「アクシス」の称呼を比較してみれば,「アクシ」が共通し,異なるところは,第3音目の「シ」に長音を伴うか否かと,語尾音において「ス」と「ズ」の清濁の差である。 これらの差異音は,長音は「シ」に吸収され聴取され難い音であり,語尾音は称呼識別上弱く聴き取られる音である。さらに,「アクシーズ」と「アクシス」は,ともに語頭の「ア」にアクセントがおかれ「アクシ」が強く発音されるものであって,全体の語調,語感が近似する。 したがって,本件商標と引用商標Aとは称呼上類似する。 また,「AXES」は「軸,軸線」の語義を有する「AXIS」の複数形であることは一般的な英和辞書に記載されている(甲6)が,複数形と単数形の観念上の比較において,複数形であることによって単数形の場合とでは異なる観念が生じるとはいえないから,本件商標と引用商標Aとは観念上類似する。 (2)本件商標の指定役務と引用商標Aの指定商品との類似性 本件商標の指定役務中の「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と,引用商標1の指定商品「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」及び引用商標2の指定商品「かばん類,袋物」とは,役務の提供場所と商品の販売場所とを同一にする場合が多く,取引者ないし需要者を共通にするものである。 したがって,本件商標の指定役務と引用商標Aの指定商品とは類似する。 (3)小括 以上から,本件商標と引用商標Aとは類似し,その指定役務と指定商品についても類似するから,商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)申立人について 申立人は,福井県に本社を構え,レディースカジュアルウェアの専門店チェーンを日本全国及び海外に展開する法人である(甲10,甲11)。 (2)引用商標Bについて 引用商標Bは,申立人が全国及び海外に展開するレディースカジュアルウェアのSPA(製造小売)ブランドに使用する商標である(甲10?甲12)。 (3)引用商標Bの著名性について 申立人は1988年に郊外型ショッピングセンターにレディースカジュアルショップ「アクシーズ」の第1号店をオープンし,その後,SPA業態のブランドとして「axes/femme」を2002年10月より展開し,関西から関東へと進出し,さらには,イオンや三井不動産系列のショッピングセンターへの出店で全国展開に発展している。 「axes/femme」ブランド発足から約8年目の2010年には全国100店を達成し,2012年には中国上海に現地法人を設立し,広く使用し今日に至っている。 なお,店舗の詳細については,ショップ一覧(甲13)及び各店舗のインターネットウェブページ写し(甲14?甲109)のとおりである。 ア 宣伝広告活動 2002年から2016年の15年間の「axes/femme」にかかる宣伝広告費用の概算合計は,約6億5,000万円である。 これらの宣伝広告活動にかかる証拠は甲第110号証ないし甲第153号証のとおりである。 イ 業界における評価及び新聞・雑誌掲載記事 申立人は,「アクシーズファム」の業績について,2010年(平成22年)に公益社団法人中小企業研究センターが主催する「グッドカンパニー大賞」の最高賞である「グランプリ」を受賞した(甲154)。この「グッドカンパニー大賞」は,全国の中小企業の中から経済的,社会的に優れた成果をあげた企業を顕彰する賞であり,1967年(昭和47年)から継続して行われており,選考委員には特許庁長官,中小企業庁長官などが名を連ねている。 また,繊研新聞社が主催する「テナントが選ぶディベロッパー賞」における敢闘賞,ベストセラー賞を2007年度から2012年度の間,連続で受賞している(甲155)。この「テナントが選ぶディベロッパー賞」とは,全国の有力施設の投票により,積極的な販売促進活動で,売上実績や集客の効果を向上させたテナントに対して贈られる表彰である。 これらの表彰のほか,出店の話題,業績アップの話題,事業展開などのさまざまな話題について,繊研新聞などの業界紙をはじめ,各種新聞及び雑誌に掲載されている(甲156?甲333)。 (4)申立人の著名な商標「axes/femme」及び「アクシーズファム」が「アクシーズ」と略される蓋然性について 「axes/femme」と「アクシーズファム」における「femme」及び「ファム」の語は「女性」を示すフランス語であり,我が国においても被服等の分野において「女性用の商品」を示す表示として示されている(甲8)。商品の品質を表す部分は自他商品識別力の弱い部分であるから「axes/femme」及び「アクシーズファム」の商標の要部は「axes」及び「アクシーズ」となり得る。 また,申立人が使用する「axes/femme」と「アクシーズファム」にかかる商品は「レディースファッション」すなわち「女性用の商品」であるから,この申立人の取扱商品との関係においても「axes/femme」と「アクシーズファム」における「femme」と「ファム」の部分は商品の品質を表す部分である。 加えて,申立人が展開する「axes/femme」ブランドの発祥は「AXES/アクシーズ」であり,「axes/femme」,「axes girl」,「axes femme nostalgie」など,需要者の年齢層や価格帯などを分けた業態別の派生ブランドを展開している。一般需要者が申立人のブランドを「アクシーズ」と呼称していることは,ツイッターやブログなどから確認できる(甲334,甲335)。 (5)本件商標の「AXES」の使用について 本件商標は,オンライン通販ショップの標識として使用されている(甲336)。そのオンラインショップの取り扱いには,レディースファッション商品が含まれている(甲337)。 (6)出所混同のおそれについて 申立人のブランドは「AXES」及び「アクシーズ」が要部と理解され認識される蓋然性が高く,さらには,本件商標の登録にかかる「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」はレディースファッションに関連する商品であり,本件商標と引用商標Bの需要者及び取引者は共通する。 その上に,過去には,「AXES BRAND SHOP」のクーポン券が「axes/femme」の店舗に誤って持ち込まれた事実もあり,出所混同のおそれは事実上生じている。 (7)小括 上述のとおり,引用商標Bは,申立人の製造販売及びその小売業務に2002年より全国展開されて使用され,レディースファッションの需要者及び取引者において広く知られた商標である。 本件商標は,申立人がレディースファッション商品について使用する著名な「axes/femme」,「アクシーズファム」の要部となる「axes」「アクシーズ」と同一の商標であり,その指定役務はレディースファッションに関連し,類似する。 さらに,本件商標と「axes/femme」,「アクシーズファム」の需要者及び取引者は共通する。 したがって,本件商標がその指定役務に使用された場合,これに接する取引者及び需要者は誤認混同し,申立人の「axes/femme」,「アクシーズファム」の取り扱いにかかる商品と出所について混同するおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 商標法第4条第1項第19号について (1)申立人と本件商標の名義人とのやり取りについて 申立人は,「AXES BRAND SHOP」のクーポン券が「axes/femme」の店舗に誤って持ち込まれたことから「AXES BRAND SHOP」のウェブページを知り,その「AXES」の使用について変更を求めるべく平成28年5月17日付けで要請書の内容証明郵便を本件商標の名義人へ送付した(甲338)。この要請書に対して,平成28年6月1日付けのFAXにより,事案を把握し,方針を決定中であり,回答は6月中旬以降になる見込みである旨を述べる回答があった(甲339)。そして,回答が届いたのは,平成28(2016)年6月23日である(甲340)。 (2)不正の目的を有する理由について 本件商標の登録出願日(分割遡及日)は,平成28年6月9日であるから,申立人からの要請書を受けた直後に出願したものであって,本件商標は,申立人からの「AXES」の使用にかかる表示についての要請に対して,自己を有利に展開するため,あるいは,申立人の業務を妨害するなどの不正の目的をもって出願したものである。 甲第336号証に示すとおり,名義人会社「株式会社AXES(アクセス)」の呼称は「アクセス」であるが,本件商標に「アクシーズ」を併記して出願したことは実際の使用と矛盾し,申立人が「axes/femme」についてレディースファッションに関連する「かばん類」の商標登録を受けていないことを知り,「AXES/アクシーズ」について登録を先取りしようとした不正の目的がある。 したがって,商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は,前記第1のとおり,「AXES」の欧文字と「アクシーズ」の片仮名からなるところ,該文字は「斧,まさかり」等を意味する英語「ax」又は「(回転体)の軸,軸線」等を意味する英語「axis」の複数形を表す英単語である。 そして,その下段の片仮名部分が上段の欧文字部分の読みを特定したものと無理なく理解できるものであるから,これより「アクシーズ」の称呼を生じるものである。 また,該文字は,上記の各意味合いを表す英語として辞書に記載があるものの,これらが我が国において特定の意味合いを有する成語として,一般に親しまれているとはいい難いものである。 したがって,本件商標は,「アクシーズ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものというのが相当である。 (2)引用商標A 前記第2の1のとおり,引用商標1は,「AXIS」の欧文字を書してなるところ,該文字は,上記(1)のとおり,「(回転体)の軸,軸線」等を意味する英単語であるから,その構成文字に相応して,「アクシス」の称呼を生じるものである。 また,引用商標2は,「AXIS」と「アクシス」の文字を二段に書してなるところ,その下段の片仮名部分が上段の欧文字部分の読みを特定したものと無理なく理解できるものであるから,これより「アクシス」の称呼を生じるものである。 そして,該「AXIS」の文字は,上記の意味を有する英単語として辞書に記載があるものの,これが我が国において特定の意味合いを有する成語として一般に親しまれたものとはいい難いものであることから,引用商標Aは,特定の観念を生じないものというのが相当である。 (3)本件商標と引用商標Aとの類否について 本件商標と引用商標Aとは,上記(1)及び(2)のとおりの構成態様よりなるところ,本件商標は,欧文字と片仮名の二段書きの構成からなるものである一方,引用商標1は,欧文字を一段に横書きしてなる構成であり,かつ,欧文字部分を比較しても,3文字目において「E」と「I」の相違があり,また,引用商標2は,欧文字と片仮名の二段書きであるとしても,欧文字においては,3文字目において「E」と「I」の相違があり,片仮名部分においても,長音「ー」の有無及び語尾の「ズ」と「ス」の相違があることから,本件商標と引用商標Aとは,その構成態様において明らかな相違があり,外観上,十分区別し得るものである。 次に,称呼においては,本件商標が「アクシーズ」の称呼を生じるのに対し,引用商標Aは「アクシス」の称呼を生じるものであるから,両者は,「アクシ」の前3音を共通にするものであるが,本件商標は5音であり,引用商標Aは4音であるから,両者は,音数を異にし,また,長音の有無及び語尾において「ス」の濁音と清音の差異を有するものである。 したがって,両者をそれぞれ一連に称呼するときは,その語調,語感が相違し称呼上,相紛れるおそれのないものである。 さらに,観念においては,本件商標と引用商標Aとは,共に特定の観念を生じないものであるから,両者は,観念上,比較することができないものである。 してみれば,本件商標と引用商標Aとは,観念において,比較することができないとしても,外観及び称呼の点において明らかに異なるものであり,相紛れるおそれのない非類似の商標である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標Bの周知著名性について ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。 (ア)申立人は1988年に郊外型ショッピングセンターにレディースカジュアルショップ「アクシーズ」の第1号店をオープンし,その後,SPA業態のブランドとして「axes/femme」を2002年10月より展開し,関西から関東へと進出し(甲10,甲11),さらには,イオンや三井不動産系列のショッピングセンターへの出店で全国展開している(甲13?甲109)。「axes/femme」ブランド発足から約8年目の2009年11月には全国100店を達成し,2012年には中国上海に現地法人を設立している(甲11)。 (イ)売上高について,2011年度は128億500万円,2012年度は149億7,800万円,2013年度は159億8,410万円,2014年度は158億1,800万円,2015年度は152億3,000万円,2016年度は139億2,300万円であり,また,店舗数について,2011年(平成23年)は114店,2012年(平成24年)は129店,2013年(平成25年)は132店,2014年(平成26年)は142店,2015年(平成27年)は142店,2016年(平成28年)は137店である旨を主張している。 (ウ)申立人は,2002年から2016年の15年間の「axes/femme」にかかる宣伝広告費用の概算合計は約6億5,000万円である旨を主張し,証拠として「axes/femme」雑誌+カタログ費用明細,支払明細,広告取引証明及び2008年?2017年のカタログ,雑誌(「ファッション販売」,「InRed」,「non-no」,「SPRiNG」等)の写しを提出し,引用商標Bが使用された申立人の商品について,商品カタログ,我が国で発行されている女性向け雑誌等に掲載される等の宣伝広告を行った(甲110?甲153)。 (エ)申立人は,2010年(平成22年)に公益社団法人中小企業研究センターが主催する「グッドカンパニー大賞」の最高賞である「グランプリ」を「アクシーズファム」の業績により受賞した(甲154)。 また,繊研新聞社が主催する「ディベロッパーが選んだテナント大賞」における敢闘賞,ベストセラー賞を2007年度から2012年度の間,「アクシーズファム」で連続で受賞した(甲155,甲204,甲215,甲218,甲233,甲236,甲245,甲250)。 (オ)出店の話題,業績アップの話題,事業展開などのさまざまな話題について,繊研新聞などの業界紙をはじめ,各種新聞及び雑誌に記事が掲載された(甲156?甲333)。 (カ)2008年から2017年の商品カタログ,商品チラシには,衣服,靴類の商品写真及びその価格が掲載され,その最終頁には,「SHOP LIST」として,販売店の情報が掲載され,当該カタログ,チラシには引用商標3が表示されている(甲116?甲141)。 イ 前記アで認定した事実によれば,以下のとおりである。 申立人は,レディースファッション製品に2002年10月から引用商標Bを付して販売してきたこと,また,イオンや三井不動産系列のショッピングセンターへの出店で全国展開し,さらに,引用商標Bを表示した販売事業を申立人が展開している記事が新聞,雑誌に掲載されてきたことを考慮すれば,引用商標Bは,我が国において,申立人の販売事業のブランドとして,申立人の商品を購入する需要者の間に一定程度認識されていたものと推認することができる。 しかしながら,申立人が提出した全証拠をみても,引用商標Bを表示し,販売した商品の取引の実情等について,申立人の2011年度ないし2016年度の売上高は,多い年で,159億8,410万円(2014年度)を売上げているが,我が国での「レディースカジュアルウェア」商品の取引全体に占める申立人のマーケットシェアを把握することができず,かつ,申立人の商品の我が国及び外国における販売数量等は明らかでなく,また,これらの売上高,販売数量については,各年の売上げランキングの新聞記事(甲196,甲211,甲224,甲225,甲240,甲255?甲257,甲274,甲275)が提出されているが,企業名でのランキングであったり,複数のブランドの合計でのランキングであったり,「アクシーズファム」の単独の売上高やランキングを示す客観的な裏付け資料は何等提出されていないから,我が国及び外国における量的規模(マーケットシェア等)を客観的かつ具体的に把握することができないものといわざるを得ない。 また,広告宣伝活動については,「axes/femme」の雑誌及びカタログ制作費の2002年(平成14年)ないし2016年(平成28年)の合計が約6億5,000万円(甲110)であるとしても,この15年の平均の広告宣伝費は,年間約4,300万円程度であり,決して多くの金額を広告宣伝費に使用されたとはいえないものである。 さらに,これらの雑誌やカタログに掲載されている商品は,衣服がほとんどであり,カタログにおいては,洋服,靴,カバン,帽子及びアクセサリーがトータルコーディネイトされたセットで販売されているものも少なくないことから,この宣伝広告費の主なものは衣服が中心であり,引用商標Bが,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,需要者に広く宣伝されたとはいい難いものである。 そして,申立人の外国での主な営業活動は,中国の8店舗のみである(甲13)。 なお,申立人は,「申立人のブランドは『AXES』及び『アクシーズ』が要部と理解され認識される蓋然性が高い」旨を主張している。 しかしながら,上記の新聞記事等によれば,「アクシーズファム」,「axes femme」は,「アクシーズ」,「axes」から派生したショップであり,異なる業態のものであり,取り扱う商品もより若い女性をターゲットとしたものであるから,「アクシーズ」,「axes」とは異なるものである。 そして,その後,「アクシーズ」は,「アクシーズファム」に業態変更し,「アクシーズファム」の1業態に集約され,「アクシーズファム」の1ブランドによる事業展開を目標としていることがうかがえる(甲143,甲159,甲161,甲174,甲219,甲330)。 また,申立人は,平成22年に公益社団法人中小企業研究センターが主催する「グッドカンパニー大賞」の最高賞である「グランプリ」を「アクシーズファム」(甲154)の業績で受賞し,また,6年連続で繊研新聞が主催する「敢闘賞,ベストセラー賞」(甲155)を「アクシーズファム」で受賞している。 以上のことから,「アクシーズファム」及び「axes femme」と「アクシーズ」及び「axes」は,取り扱う商品が異なり別のショップであったが,その後,1業態の「アクシーズファム」に集約され,商標権者は,「アクシーズファム」の1ブランドによる事業展開を目標としていることがうかがえる。 また,賞については,2つの賞を「アクシーズファム」で受賞していることから,現在では「アクシーズファム」,「axes femme」のブランドで事業展開されており,これらのことを総合勘案すると「アクシーズファム」又は「axes femme」の一連一体の商標が需要者の間に一定程度認識されていたとしても,これらの前半部分「axes」又は「アクシーズ」の文字のみが認識される蓋然性はないとみるのが自然である。 さらに,申立人が提出した証拠からは,引用商標Bについて「axes」及び「アクシーズ」と略称されて著名であるとみるべき事情も見いだせない。 そうすると,かかる証拠によっては,引用商標Bは,申立人の商品の販売事業に使用され,ある程度知られているということはできても,それは,当該商品を購入する需要者という限られた範囲であって,それを超えて,引用商標Bの指定商品の取扱商品全般の需要者においてまで,広く知られたものになっているとまではいうことができない。 なお,申立人が提出し証拠によっては,引用商標Bについて「axes」及び「アクシーズ」と略称されて著名であるとみるべき事情も見いだせない。 してみれば,引用商標Bは,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務を表示するものとして,我が国及び外国の需要者の間に,広く認識されていたと認めることはできない。 (2)本件商標と引用商標Bとの類似性について ア 本件商標 本件商標は,前記1(1)のとおり,「AXES」の欧文字と「アクシーズ」の片仮名を上下二段に書してなるところ,その構成文字より,「アクシーズ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標B (ア)引用商標3は,「axes」と「femme」の欧文字を上下二段に横書きしてなるところ,その構成態様は,「axes」の欧文字を大きく横書きし,その「xe」の文字の下に小さく「femme」の欧文字を書しているものの,各文字は,同じ書体であり,かつ,上段と下段の文字部分の幅が近接し,下段の文字部分を上段の文字部分の中央にそろえ,バランス良く配置され,全体としてまとまりよく一体的に表されていることから,上段と下段の文字部分は,一体不可分のものとして認識,把握されるとみるのが相当である。 そうすると,引用商標3は,その外観によって極めて密接な一体性を有しているものというべきであり,構成中の「axes」の文字のみが,取引者,需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとして見るべき事情は見いだせない。 そして,その構成文字全体を,我が国で一般的に親しまれた英語風読み又はローマ字風読みに倣って称呼すれば,「アクシーズファム」の称呼を生じるものと認められ,よどみなく一連に称呼し得るものである。 また,「axes」は前記1(1)のとおり,特定の観念を生じないものであり,「femme」の文字は,「女性。また,女性服。」等の意味を有するフランス語(デジタル大辞泉)であるものの,これらを組み合わせてなる引用商標3が我が国において特定の意味合いを有する成語として一般に知られている語とは認められないものであるから,一種の造語として認識され直ちに特定の観念を想起させるとはいえないものである。 したがって,引用商標3は,「アクシーズファム」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (イ)引用商標4は,「アクシーズファム」の片仮名からなるところ,その構成文字に相応して,「アクシーズファム」の称呼を生じ,該文字は,辞書等に掲載がなく,かつ,親しまれた意味を有するものとして一般に知られているとも認められないから,特定の意味を有しない一種の造語として看取,理解されるものである。 したがって,引用商標4は,「アクシーズファム」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標Bとの類否について 本件商標と引用商標Bとの類否について検討するに,外観においては,上記ア及びイのとおり,両商標は,その構成が相違し,外観上,十分に区別できるものである。 次に,称呼においては,本件商標から生じる「アクシーズ」の称呼と引用商標Bから生じる「アクシーズファム」の称呼とは,その構成音,構成音数において明らかな差異を有するものであるから,明瞭に聴別できるものである。 また,観念においては,本件商標及び引用商標Bは,共に特定の観念を生じないものであるから,両者は,観念上,比較することができないものである。 したがって,本件商標と引用商標Bとは,観念においては,比較することができないとしても,外観及び称呼の点において明らかに異なるものであり,相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 (3)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の関連性について 本件商標の指定役務中,「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,携帯用化粧道具入れの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,織物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と,引用商標Bの指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」等(以下「被服」等という。)を比較すると,両者は,小売等役務と商品の関係にあるものの本件商標の小売等役務の対象商品である「かばん,袋物及び携帯用化粧道具入れ,織物」等と,引用商標Bの指定商品「被服」等は異なる商品であり,その商品の販売場所,流通経路及び製造業者等も異なるものである。 また,上記以外の本件商標の指定役務である「通信販売のカタログによる広告,その他の広告業」と引用商標Bの指定商品「被服」等の間には何ら関連性が見いだせない。 してみれば,本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の関連性は低いものといわなければならない。 (4)出所の混同について 以上を総合的に考慮すると,引用商標Bは,上記(1)のとおり申立人又は同人の業務を表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。 また,引用商標Bは,上記(2)イとおり,それぞれ一体不可分のものと認識されるものであって,本件商標とは,観念は比較できないとしても,外観及び称呼の点からみれば,明らかに異なるものであり,相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,全体としての視覚的印象,記憶を与え,看者に全く別異のものとして認識されるものである。 さらに,上記(3)のとおり,本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の関連性は低いものであることを考慮すれば,本件商標をその指定役務について使用した場合に,これに接する取引者,需要者が引用商標Bないしは申立人を連想,想起するようなことはないというべきである。 してみれば,該役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。 (5)申立人の主張について 申立人は,「本件商標の登録にかかる『かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』はレディースファッションに関連する商品であり,本件商標と引用商標Bの需要者及び取引者は共通する。・・・過去には,『AXES BRAND SHOP』のクーポン券が『axes/femme』の店舗に誤って持ち込まれた事実もあり,出所混同のおそれは事実上生じている。」旨を主張している。 しかしながら,上記(1)のとおり,引用商標Bは,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務を表示するものとして,我が国及び外国の需要者の間に,広く認識されていたものと認めることはできないし,上記(2)のとおり,本件商標と引用商標Bは,非類似の商標である上,上記(3)のとおり,本件商標の指定役務と引用商標Bの指定商品の関連性は低いものであるから,たとえ需要者を共通にする場合があるとしても,出所の混合を生じるおそれがあるものということはできない。 また,商標権者のクーポン券が誤って持ち込まれた事実があったとしても,その原因や回数等は不明であり,これをもって取引者及び需要者の多くが,出所について混同している事実であるとみることはできない。 したがって,申立人の主張は,採用することができない。 (6)小括 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標Bは,上記2(1)のとおり申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであり,上記2(2)ウのとおり,本件商標と引用商標Bとは,観念については比較できないとしても,外観及び称呼の点について,明らかに異なるものであり,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 そして,申立人は,「本件商標の登録出願日(分割遡及日)は,平成28年6月9日であるから,申立人からの要請書を受けた直後に出願したものであって,・・・甲第336号証に示すとおり,名義人会社『株式会社AXES(アクセス)』の呼称は『アクセス』であるが,本件商標に『アクシーズ』を併記して出願したことは実際の使用と矛盾し,申立人が『axes/femme』についてレディースファッションに関連する『かばん類』の商標登録を受けていないことを知り,『AXES/アクシーズ』について登録を先取りしようとした不正の目的がある。」旨を主張している。 確かに,本件商標の出願日は,申立人からの要請書の日付から1か月以内に出願されており,また,商標権者のウェブサイトの会社概要(甲336)には,「AXES(アクセス)」の記載があるとしても,これのみをもって,商標権者が,不正の利益を得る目的や引用商標Bの出所表示機能を希釈化させ,その名声等を毀損させる目的を持って本件商標を出願し,登録を受けたと認めることはできない。 さらに,本件商標が不正の目的をもって使用する商標であることを認めるに足りる証拠の提出はないから,本件商標は,不正の目的をもって使用するものということができない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-12-26 |
出願番号 | 商願2016-142535(T2016-142535) |
審決分類 |
T
1
652・
271-
Y
(W35)
T 1 652・ 222- Y (W35) T 1 652・ 262- Y (W35) T 1 652・ 261- Y (W35) T 1 652・ 263- Y (W35) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 安達 輝幸 |
特許庁審判長 |
井出 英一郎 |
特許庁審判官 |
榎本 政実 山田 正樹 |
登録日 | 2017-04-28 |
登録番号 | 商標登録第5943138号(T5943138) |
権利者 | 株式会社AXES |
商標の称呼 | アクシーズ、アクシズ |
代理人 | 樺澤 襄 |
代理人 | 山田 哲也 |
代理人 | 樺澤 聡 |
代理人 | 國分 孝悦 |