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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W094142
管理番号 1335292 
異議申立番号 異議2017-900200 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-19 
確定日 2017-11-23 
異議申立件数
事件の表示 登録第5933389号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5933389号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5933389号商標(以下「本件商標」という。)は、「yarai」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年8月9日に登録出願、同29年2月22日に登録査定、第9類「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル又は映像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第41類「情報セキュリティに関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),インターネットを利用した映像又は動画の提供,放送番組の制作」及び第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,コンピュータシステムの分析,コンピュータシステムの分析に関する情報の提供,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守に関する情報の提供,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守に関する助言又は指導,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,デザインの考案,コンピュータソフトウェアに関する試験又は研究,コンピュータソフトウェアに関する試験又は研究に関する情報の提供,機械器具に関する試験又は研究,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,電子計算機用プログラムの提供に関する助言又は指導」を指定商品及び指定役務として、同年3月17日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する商標は、以下のとおりである。
(1)国際登録第838182号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおり構成からなり、2006年(平成18年)10月12日に国際商標登録出願(事後指定)、第1類「Chemicals used in industry; agricultural chemicals, except fungicides, weedkillers, herbicides, insecticides and parasiticides; chemicals for forestry and horticulture, except fungicides, herbicides, insecticides and parasiticides; fertilizers.」を指定商品として、平成22年3月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)国際登録第1119979号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおり構成からなり、2012年(平成24年)1月27日に国際商標登録出願、第13類「Ammonium nitrate for the production of emulsion explosives, including ammonium nitrate fuel oil explosives (ANFO), all for civil purposes.」及び第44類「Rental of farming equipment; consulting and advice in connection with aerial and surface spreading of fertilizers and other agricultural chemicals, gardening, tree surgery, weed killing, vermin exterminating (for agriculture, horticulture and forestry).」を指定商品及び指定役務として、平成25年10月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめて「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の著名性
申立人であり、引用商標の商標権者であるヤラ インターナショナル アーエスアーは、1905年に設立され、ノルウェーに本社をおく、世界最大の窒素肥料メーカーである。主要事業領域は、尿素、硝酸塩、アンモニアといった窒素化合物を主とした窒素肥料の製造、販売である(甲3)。2016年の売上高は952億クローネ、減価償却前営業利益(EBITDA)は156億クローネ、総売上量は3,610万トン、従業員数は14,736人であり、日本市場には、無機肥料を輸出している(甲4)。
引用商標は、申立人のハウスマークであり、その構成中「yARA」は、親しまれた既成の観念を有しない、独創的な語である。
そして、我が国では、申立人の硝酸石灰の肥料は、「ノルチッソ」のブランドで販売されており、需要者にとって、硝酸カルシウムといえば、「ノルチッソ」であり、一般的な肥料なので、ほとんどの農協で扱っており(甲5)、引用商標は、当該製品のパッケージ(甲6)、広告(甲7)に使用されているので、農家を含め、肥料の取引者、需要者に広く知られているということができる。
また、申立人は、「小売業者及び栽培業者が収穫量を最大限にするために、正しい時期に正しい量の栄養素をやることができるよう、幅広い肥料管理ツールを開発した。」
「ヤラには、スマートフォン及びタッチスクリーンタブレットに特化して設計された、一連のアプリケーションがある。これらのアプリケーションは、ヤラが提供するさまざまなサービスをカバーする。」
「Yara TankmixIT Guideは、YaraVita製品と他の葉面散布用製品を1つずつ又は多数をタンクで混合した、数千通りのテスト結果を集めたデータベースである。Yara TankmixITアプリケーションは、IOS(世界中)及びアンドロイド(世界中)で利用できる。」(甲4)
甲第4号証によると、上記の肥料管理ツールには、引用商標が使用されている。
以上のとおり、引用商標は、申立人によって、肥料のほか、その使用に関連する機器、コンピュータソフトウェア及びオンラインサービスについて長年盛大に使用された結果、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は、「yarai」の欧文字を書してなるものであり、その構成文字に相応して、「ヤライ」の称呼を生ずるものであり、該文字は、特定の意味合いを有しない造語である。
他方、引用商標は、「yARA」の欧文字を要部とするものであり、その構成文字に相応して、「ヤラ」の称呼を生ずるものであり、該文字は、親しまれた既成の観念を有しない造語である。
そこで、本件商標より生ずる「ヤライ」の称呼と引用商標より生ずる「ヤラ」の称呼とを比較すると、両称呼は、2音ないし3音構成であり、第1音及び第2音は同一である。唯一の差異である本件商標の「イ」音は、比較的聴取し難い語尾に位置する音であり、これが称呼全体に及ぼす影響は決して大きいものではない。
したがって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が極めて近似したものとなり、互いに相紛れるおそれがある。
外観についてみると、本件商標は、5文字の欧文字中、初めから4文字を引用商標と同じくし、末尾の「i」の文字の有無に差異を有するにすぎないから、両者が別異のものとして明確に区別されるとはいえない。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することはできないが、称呼において相紛らわしく、外観において、5文字の欧文字中、4文字を共通にするものであるから、近似する商標である。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標が使用されている商品及び役務との関連性
本件商標の指定商品中、第9類「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」は、引用商標が使用されている、スマートフォン・タブレット用のコンピュータソフトウェアを含むものである。
また、本件商標の指定役務中、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,インターネットを利用した映像又は動画の提供」は、引用商標が使用されている、申立人の製品の使用方法をオンラインで助言する役務と、関連性の程度が極めて高いものである。
さらに、本件商標の指定役務中、第42類「電子計算機用プログラムの提供」は、引用商標が使用されている、スマートフォン・タブレット用のコンピュータソフトウェアと、関連性の程度が極めて高いものである。
そして、引用商標が使用されている商品及び役務の主たる需要者は、農家であり、本件商標の指定商品の需要者に含まれるものである。
(4)混同を生ずるおそれ
以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品又は指定役務について使用する場合には、これに接する取引者、需要者は、肥料のほか、その使用に関連する機器、コンピュータソフトウェア及びオンラインサービスについて周知著名となっている引用商標ないしは申立人を連想、想起することは必定であって、該商品又は役務が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、1905年に設立され、ノルウェーに本社をおく、世界最大の窒素肥料メーカーである(甲3)。
(イ)申立人の2016年の売上高は952億クローネ、減価償却前営業利益(EBITDA)は156億クローネ、総売上量は3,610万トン、従業員数は14,736人である(甲4)。
(ウ)申立人の硝酸石灰の肥料は「ノルチッソ」ブランドで日本で販売されており、また、申立人の硝酸石灰の肥料「ノルチッソ」及び「スーパーノルチッソ」のパッケージ及びパンフレットには引用商標が使用されている(甲5?甲7)。
イ 著名性の判断
上記アによれば、申立人は、1905年に設立されたノルウェーに本部をおく法人であって、我が国においては、硝酸石灰の肥料が「ノルチッソ」及び「スーパーノルチッソ」という名称で販売されていること並びに申立人のウェブページ、上記商品パッケージ及びパンフレットには、引用商標が表示されていることが認められる。
しかしながら、甲第3号証のウェブページには、「ヤラ インターナショナルは・・・世界最大の窒素肥料メーカーである。」の記載はあるが、その内容について、何を根拠としたものであるのかその出典が明らかではなく、また、甲第4号証の申立人のウェブページには、引用商標が表示されているものの、英語で作成されたものであり、翻訳文の提出がないことから、その内容が明らかとはいえないものであって、売上高や減価償却前営業利益等については、これを客観的に裏付ける証拠は見いだせない。
また、甲第5号証のウェブページには、「お近くの農協へ行って『ノルチッソを下さい』と言えば手に入ります。一般的な肥料なのでほとんどの農協で扱っていると思いますよ」の記載はあるが、引用商標及び申立人の表示も無く、上記記載内容は誰が何を根拠としたものであるかも明らかではないから、これをもって、引用商標の周知性を裏付ける証拠ということはできない。
さらに、甲第6号証のウェブページ及び甲第7号証のパンフレットによれば、引用商標が硝酸石灰の肥料「ノルチッソ」及び「スーパーノルチッソ」に使用されていることはうかがえるものの、我が国における、上記商品の販売期間、同地域、販売量やその宣伝広告の程度、業界における市場占有率など、引用商標の周知性を推し量るために必要な証拠は提出されていない。
加えて、申立人は、引用商標は、申立人によって、肥料のほか、その使用に関連する機器、コンピュータソフトウェア及びオンラインサービス(以下「関連商品及び役務」という。)について長年盛大に使用された結果、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、取引者、需要者の間に広く認識されていた旨を主張している。
しかしながら、申立人の提出した証拠によっては、関連商品及び役務の分野において、引用商標が申立人によって使用され、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認め得る証左は見いだすことができない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「肥料」並びに関連商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり「yarai」の欧文字を書してなるところ、その構成文字に相応して「ヤライ」の称呼を生じるものであり、また、該「yarai」の文字は、辞書類に載録されている成語又は特定の意味を有
する語として一般に親しまれているものではないから、その意味を想起することができない造語として理解されるものであって、これより特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、別掲のとおり角の丸い黒色の正方形内に、上段に船とその帆をモチーフにしたと思しき図形を、その下段に「yARA」の欧文字をいずれも白抜きで、配した構成からなるものである。
そして、上段の図形部分は、我が国において特定の事物を表したもの又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められず、該図形部分からは特定の称呼及び観念を生じないものである。
また、下段の「yARA」の文字部分は、辞書類に載録されている成語又は特定の意味を有する語として一般に親しまれているものではないから、その意味を想起することができない造語として理解されるものであって、これより特定の観念を生じないものである。
したがって、引用商標は、その構成中「yARA」の文字部分に相応して「ヤラ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標は、上記ア及びイの構成からなるところ、文字のみからなる本件商標と、図形と文字が結合した引用商標とでは、その構成態様が明らかに相違するものであるから、外観上、明確に区別できるものである。
そして、本件商標と引用商標の構成中の「yARA」の文字部分を比較してみても、大文字と小文字の差異のほか、末尾に「i」の文字の有無という差異を有し、これらの差異が5文字と4文字という比較的短い文字構成からなる両者の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、外観上、十分に区別し得るものである。
次に、本件商標から生じる「ヤライ」の称呼と引用商標から生じる「ヤラ」の称呼を比較すると、両者は末尾において「イ」の音の有無という明らかな差異を有し、この差異が3音と2音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両者をそれぞれ称呼した場合には、上記した差異により、称呼上、十分に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができない。
そうすると、両商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明らかな差異を有するものであるから、これらを総合してみれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「肥料」並びに関連商品及び役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標と認めることができないものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、十分に区別し得る別異の商標というべきものである。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品又は指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想、想起することはなく、当該商品又は役務を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように認識することはないというべきであって、商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(引用商標)



異議決定日 2017-11-15 
出願番号 商願2016-86370(T2016-86370) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W094142)
最終処分 維持  
前審関与審査官 旦 克昌 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 中束 としえ
木住野 勝也
登録日 2017-03-17 
登録番号 商標登録第5933389号(T5933389) 
権利者 株式会社FFRI
商標の称呼 ヤライ 
代理人 岡田 稔 
代理人 曾我 道治 
代理人 鈴木 昇 
代理人 坂上 正明 
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ 

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