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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z29
管理番号 1335208 
審判番号 取消2016-300697 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-10-07 
確定日 2017-11-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第1489481号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1489481号商標(以下「本件商標」という。)は、「ちぢみ」の文字を横書きした構成からなり、昭和52年9月29日に登録出願、第32類「こんにゃく」を指定商品として、同56年5月1日に登録査定、同年11月27日に設定登録されたものであり、その後、平成4年6月29日、平成13年6月5日及び平成23年6月7日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成14年4月10日に指定商品を第29類「こんにゃく」とする指定商品の書換登録がされたものであり、その後、その商標権は、平成29年8月14日受付の一般承継による移転登録申請をもって、尾道市長江1丁目26番16号の株式会社清水萬蔵商店(以下「前商標権者」という。)から広島県三原市木原四丁目5番1号の清水化学株式会社(本件商標権者)へ移転登録されているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成28年10月21日にされており、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成25年(2013年)10月21日ないし平成28年(2016年)10月20日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は、平成28年12月8日付提出の審判事件答弁書において、株式会社清水萬蔵商店は、本件商標を、愛知県愛知郡東郷町大字春木字下正葉廻間46番地に本店を有する「高章食品株式会社」に対して通常使用権を許諾しており、当該通常使用権者が、平成22年4月22日以降現在まで継続して、「ちぢみ」の商品名で、指定商品の「こんにゃく」を製造販売しているとして、秘密保持契約書の写しや商品包装箱の写真等を提出している。
しかしながら、前記提出資料は、本件商標がその登録取消を免れるに足る使用事実の証拠としては不十分、または疑念があるから、被請求人の主張には理由がない。
(1)被請求人は、通常使用権者「高章食品株式会社」が、側面に「ちぢみ」の文字が大きく横書きされた包装箱(ダンボール)を用いて、内容量1kgの「こんにゃく」を販売している旨を主張し、商品の納品書(控)の写し5点(乙8?乙12)と包装箱の請求明細書の写し(乙13)を提出している。そして、高章食品株式会社が前記包装箱を200個、2015年8月12日付けで製造依頼し、この包装箱を用いてこんにゃくを販売している旨を述べている。
高章食品株式会社の履歴事項全部証明書(乙4)によると、同社は平成27年3月13日高章食品有限会社を商号変更し、移行したことにより設立されたものである。
しかるに、「株式会社」に商号変更されてから5か月も経過した時期に納品された包装箱(乙5?乙7)が、商号変更前の「有限会社」のまま印刷表示されているというのは、いささか不自然である。被請求人が主張するように、「現在まで継続して、『ちぢみ』の商品名で、こんにゃくを製造販売している」のであれば、2015年8月12日に納品された包装箱が、その後1年以上も「株式会社」に印刷変更されることなく、旧名称のまま継続して使用されていることになるから、これまた不自然である。
また、当該商品の納品書(控)の写し(乙8?乙12)における「単価」欄や「金額」欄が黒塗りされていることは秘密情報としてやむを得ないとしても、納品先までもが黒塗りされているために証拠としての信ぴょう性を確認することができない。「商品計」欄が黒塗りされている一方、「消費税」欄や「税込合計」欄は何も印字されることなく空欄になっていることにも違和感がある。
(2)次に、別な商品の包装の表面を示す写真(乙14)では、縦書された「ちぢみこんにゃく」の文字(手書きされた赤い矢印で指示された部分)の脇において、反射光で一部読みづらいものの「賞味期限2017.2.12」のスタンプ印字の存在が認められる。こんにゃくは長期保存食品ではあるが、それでも賞味期限は製造後30日?90日が一般的であるとのことであるから、前記スタンプ印字の年月日から逆算すると、この商品は2016年12月以降に製造されたものであろうと推測される。
一方、同じ商品の包装の裏面を示す写真(乙15)では、左下欄に「製造者/高章食品有限会社 三好工場」と印刷表示されている。
食品包装における製造者の氏名の表示は、食品表示法に定められた法定表示であるところ、「株式会社」に商号変更されてから1年以上も経過した時期に製造された商品に、依然として旧名称「高章食品有限会社」が印刷表示された包装フィルムが使用されているのは、いささか不自然である。
また、当該商品の納品書(控)の写し(乙16)についても、納品先までも黒塗りされているために証拠としての信ぴょう性を確認することができないし、「商品計」欄が黒塗りされている一方、「消費税」欄や「税込合計」欄が何も印字されず空欄になっていることに違和感がある。
(3)結 語
以上、被請求人が提出した本件商標の使用証拠には疑念があるため、本件商標が、本件審判請求の日前3年以内に日本国内においてその指定商品「第29類 こんにゃく」につき現実に使用された事実は明らかにされていないから、被請求人の主張には理由がない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第57号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の通常使用権者について
前商標権者と高章食品株式会社(以下「高章食品」という。)との間で、平成22年4月22日に締結された秘密保持契約の第3条(乙1)及び平成28年12月1日付け(前商標権者)、平成28年11月30日付け(高章食品)の商標の使用許諾の確認書(乙2、乙3)から明らかな如く、前商標権者は本件商標について、高章食品に通常使用権を許諾している。
なお、高章食品は、平成27年3月13日に商号を高章食品有限会社から高章食品株式会社に変更している(乙4)。
(2)使用商品及び使用商標について
ア 前商標権者から通常使用権を許諾された高章食品は、平成22年4月22日以降現在まで継続して、「ちぢみ」の商品名で、こんにゃくを製造販売している。
イ 乙第5号証は、商品名「ちぢみ」の商品の包装箱と、この包装箱に包装される商品のこんにゃくとを示す写真であり、乙第6号証及び乙第7号証は、乙第5号証に示す包装箱を展開した状態を示す写真である。この包装箱は、組み立てられた状態で、縦365mm、横280mm、深さ250mmの大きさである。
乙第5号証ないし乙第7号証において、包装箱の正面と背面にあたる部分には、濃い青色のゴシック体のような字体で「ちぢみ」(「ちぢみ」の文字の右下には、登録商標であることを示すものと認められる円の中に「R」の文字が付されている。以下、この文字を「ちぢみ(マルR)」という。)と記載されている。包装箱の一つの側面には、通常使用権者である高章食品の名称(高章食品有限会社)が記載され、高章食品の三好工場の住所と電話番号と、この包装箱の内容を示す「業務用 固形1kg×8」との記載がある。
乙第8号証ないし乙第12号証は、乙第5号証ないし乙第7号証に示す包装箱を用いた商品名「ちぢみ」の商品の納品書(控)の写しである。なお、納品書の品名欄では、商品名の「ちぢみ」と、商品の「こんにゃく」と、内容量が1kgであることを表す「1K」とを続けて「ちぢみこんにゃく 1K」と記載されている。
乙第8号証ないし乙第12号証から明らかであるように乙第5号証ないし乙第7号証に示す包装箱を用いた商品名「ちぢみ」の商品は、高章食品によって、少なくとも2016年6月4日に1ケース、2016年6月7日に1ケース、2016年6月20日に1ケース、2016年7月1日に5ケース、2016年7月2日に5ケース、販売されている。
乙第13号証は、高章食品がダンボールの製造販売業者に製造を依頼した乙第5号証ないし乙第7号証に示す包装箱の請求明細書の写しである。乙第13号証の日付「0812」、伝票番号「76093」、品名「ちぢみ」で示される行の記載から明らかであるように、高章食品は、「ちぢみ(マルR)」の表示を付した乙第5号証ないし乙第7号証に示す包装箱(縦365mm、横280mm、深さ250mmの大きさ)を200個、2015年8月12日付けで製造依頼した。高章食品は、この包装箱を用いてこんにゃくを販売している。
このように乙第5号証ないし乙第13号証より、「ちぢみ」を商品名とする商品は、こんにゃくであり、高章食品によって商品の包装箱に「ちぢみ」の標章が付され、その包装箱を用いて高章食品によって販売されているものであることが明らかである。
(3)さらに乙第14号証及び乙第15号証は、別の商品の包装の表面と裏面とを示す写真である。
乙第14号証において、包装の表面には明朝体のような字体で、縦書きで「ちぢみ(マルR)」「こんにゃく」の文字が記載されている。「こんにゃく」は商品がこんにゃくであることを表している。また、1食130gであることや、商品の特徴等が記載されている。
乙第15号証において、包装の裏面にはゴシック体のような字体で「肉蒟」「ちぢみ(マルR)」「こんにゃく」の文字が記載されている。「肉蒟」は、商標「ちぢみ」を付す高章食品のこんにゃくのうち、特製の照焼たれで食する肉のようなこんにゃくであることを示すために付している、商品の特徴を暗示的に示す文字である。また、その下に、この商品がこんにゃくであること、内容量が130g(こんにゃく100g、たれ30g)であることと、製造者として高章食品の名称と、高章食品の三好工場の住所等が記載されている。
乙第16号証は、乙第14号証及び乙第15号証に示される商品の納品書(控)の写しである。なお、納品書の品名欄では、この商品は「肉蒟ちぢみこんにゃく130g」と記載されている。
乙第16号証から明らかであるように乙第14号証及び乙第15号証に示される、商標「ちぢみ」を付した商品は、高章食品によって、少なくとも2016年6月1日に80コ、販売されている。
このように乙第14号証ないし乙第16号証に示される、商標「ちぢみ」を付した商品は、こんにゃくであり、高章食品によって販売されているものであることが明らかである。
(4)以上のように高章食品は、こんにゃくについて、商品名として「ちぢみ」の文字からなる商標を使用している。
ところで、本件商標「ちぢみ」はまとまりよく表され、「チヂミ」の称呼が生じる。
乙第5号証ないし乙第7号証の包装箱に示された、ゴシック体のような字体で示された「ちぢみ」も、「チヂミ」の称呼を生じ、本件商標と別異の概念は生じない。
また、乙第14号証の包装の表面に示された、明朝体のような字体で縦書きに書された「ちぢみ」も、「チヂミ」の称呼を生じ、本件商標と別異の概念は生じない。
また、乙第15号証の包装の裏面に示された、ゴシック体のような字体で横書きに書された「ちぢみ」も、「チヂミ」の称呼を生じ、本件商標と別異の概念は生じない。
以上のように高章食品の上述の使用商標は、いずれも、「チヂミ」との称呼を生ずる。また、本件商標と、高章食品のいずれの使用商標との間にも、別異の概念は生じない。
したがって、本件商標と、高章食品の上述の使用商標はいずれも社会通念上同一の商標である。
(5)まとめ
以上によれば、前商標権者から本件商標の使用許諾を受けた通常使用権者は、要証期間内に日本国内において、上記商品の包装に本件商標と社会通念上同一の範疇に属する「ちぢみ」の文字からなる商標を、その指定商品に使用していることが明らかである。
そして、上記商品の包装は、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」(商標法第2条第3項第1号、第2号)に該当するものである。
2 口頭審理陳述要領書(平成29年5月10日付け)
(1)新たな証拠について
乙第17号証ないし乙第52号証を新たな証拠として提出する。
(2)乙第5号証ないし乙第7号証と乙第8号証ないし乙第12号証について
合議体は、平成29年4月20日付け審理事項通知書の「1 合議体の暫定的見解」の(1)において、乙第5号証ないし乙第7号証の包装箱の写真と、乙第8号証ないし乙第12号証の納品書(控)には、いずれも「ちぢみ」の文字が使用されていることは共通するものの、当該包装箱の写真の撮影日、作成日が不明であること、また、当該包装箱に付された「高章食品有限会社」の名称と納品書(控)に記載されている「高章食品株式会社」の名称が異なることから、上記納品書において取引された商品と当該包装箱との関係が明らかでないと指摘している。
そこで、上記の指摘事項について、以下のとおり説明する。
合議体の指摘のとおり、上記の包装箱には「高章食品有限会社」と記載され、上記の納品書(控)、又は、上記納品書(控)の金額の一部以外のマスキングを外した、今回新たに提出する納品書(控)(乙17?乙21)には「高章食品株式会社」と記載されており、文言上は包装箱と納品書(控)に記載された名称が異なっている。
しかし、履歴事項全部証明書(乙4)から明らかであるように、高章食品株式会社は高章食品有限会社を商号変更したものであり、高章食品有限会社から高章食品株式会社に商号変更する際に、本店の住所も、工場の住所も変更されていない。高章食品株式会社は、実態としては高章食品有限会社と変わるものではない。1969年(昭和44年)の創業以来、高章食品有限会社はこんにゃくを中心とする加工食品を製造販売しており、識別力のない「有限会社」又は「株式会社」の部分を除いて「高章食品」として、取引者・需要者に知られている。
ところで、平成27年4月1日に施行された食品表示法第5条には「食品関連事業者等は、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をしてはならない。」と規定され、食品表示基準第3条の表には、加工食品の表示事項として、製造者の名称、所在地等が挙げられている(乙22)。ただし、食品表示基準には、製造者の名称や所在地等、食品表示基準第3条の表に挙げられた表示事項に変更があった場合に、いつまでに表示を変更しなければならないという明示的な規定が設けられているわけではない。
高章食品株式会社において、識別力のない「株式会社」と「有限会社」の表示のみの相違が、直ちに、食品に関する表示が食品を摂取する際の安全性の確保及び自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保(食品表示法第1条)を阻害するものとは考え難いところであるが、高章食品株式会社は、上記の食品表示法の法目的を遵守すべく、現在、包装に表示される製造者の記載を、商号変更後の「高章食品株式会社」に変更する準備をすすめているところである。平成29年3月29日付けの「御連絡書」(乙23)は、高章食品株式会社が前商標権者宛に、「ちぢみ(マルR)こんにゃく」「肉蒟ちぢみ(マルR)こんにゃく」の包材に商号変更前の「高章食品有限会社」と表記されていることについて、遅くとも平成29年(2017年)8月までには商号変更後の名称である「高章食品株式会社」の表記に改める予定である旨を示した連絡書である。したがって、商号が変更された平成27年3月13日(乙4)から約2年5か月で包装上の表示が変更されることになる。
以上のように、「高章食品有限会社」と表示された上記の包装箱を用いて、平成27年3月13日から現在まで取引をしている者は「高章食品株式会社」である。
(3)乙第14号証ないし乙第16号証について
合議体は、平成29年4月20日付け審理事項通知書の「1 合議体の暫定的見解」の(3)において、乙第14号証及び乙第15号証の商品の外袋の写真と、乙第16号証の納品書(控)(伝票No.7029)には、いずれも「肉蒟」「ちぢみこんにゃく」「130g」の部分が共通するものの、上記写真の撮影日、作成日が不明であること、また、上記写真に付された「高章食品有限会社」の名称と上記納品書(控)に記載された「高章食品株式会社」の名称が異なること、さらに、商品の外袋に記された賞味期限の日付が要証期間外であることから、これらの証左によって要証期間内に当該商品の外袋を用いて本件商標を付した商品が取引されたことを証明したということはできないと指摘している。
そこで、上記の指摘事項について、以下のとおり説明する。
まず、新たな証拠として、乙第16号証の納品書(控)の金額の一部以外の部分のマスキングを外した納品書(控)(伝票No.7029)(乙28)によって、2016年6月1日に、高章食品株式会社が株式会社マルイチ産商に品名「肉蒟ちぢみこんにゃく」「130g」を納品したことが示されている。
合議体も認定しているように、上記の商品の外袋の写真(乙14、乙15)と、上記のマスキングを外した納品書(控)(乙28)には、いずれも、「肉蒟」「ちぢみ」「こんにゃく」「130g」との記載がされている。したがって、上記の商品の外袋(乙14、乙15)によって販売された商品は、上記の納品書(控)(乙28)によって取引されたものである。また、上記の商品の外袋の写真(乙14、乙15)と、上記の納品書(控)(乙28)から、この商品がこんにゃくであることも明らかである。
確かに、上記の納品書(控)(乙28)には「高章食品株式会社」と記載され、上記商品の外袋(乙14、乙15)には「高章食品有限会社」と表示されている。しかし、上述の「(2)乙第5号証ないし乙第7号証と乙第8号証ないし乙第12号証について」において述べたように、2016年6月1日に「高章食品有限会社」と表示された上記商品の外袋を用いて取引をしている者は「高章食品株式会社」である。
次に、上記商品の外袋の写真の撮影日は平成28年(2016年)11月30日であり、賞味期限は表示どおりの2017年2月12日であり、これらの日付は、合議体の指摘どおり、いずれも本件審判請求の登録後である。
賞味期限の過ぎた商品を保存しておく必要はないので、審判請求書を受領した平成28年11月10日の時点では、既に、審判請求日である平成28年10月7日より前の賞味期限が表示された商品、すなわち、既に賞味期限が1か月も過ぎた商品は、高章食品には残っていなかった。
しかし、高章食品株式会社(2015年3月12日以前は高章食品有限会社)は、要証期間の間、平成28年11月30日に撮影された乙第14号証及び乙第15号証の写真に表れているものと同等の外袋を用いて、こんにゃくを継続的に販売している。このことを以下に説明する。
まず、高章食品株式会社のこんにゃくの賞味期限は製造日から90日である。「こんにゃく製品に関する表示基準」(平成24年3月、財団法人日本こんにゃく協会他)(乙29)の第9頁の「第9 期限表示(賞味期限又は消費期限)」の「賞味期限」の欄に「3ヶ月を超えるものは年月で表示し、3ヵ月以内のものは年月日で表示できる」と記載されており、上記の包装袋には賞味期限が年月日で表示されていることからも、この商品の賞味期限が製造日から3ヶ月以内であることが裏付けられている。したがって、上記外袋(乙14、乙15)の商品は、賞味期限として表示されている2017年2月12日の90日前である2016年11月14日頃に製造されたものであることがわかる。このように、商品の外袋に記載された賞味期限から逆算して、商品の製造日を推定することができる。
次に、新たに提出する2012年5月31日付けの納品書(乙30)は、2012年5月31日付けで株式会社服部商店から高章食品有限会社に、「肉蒟(にくこん) 照焼たれ付」等の包装材が納品されたことを示すものである。
当時納品された包装材そのものは高章食品には現存していないが、上記納品書(乙30)と、乙第14号証及び乙第15号証の商品の外袋は、「肉蒟」「にくこん」「照焼たれ付」の記載が共通している。上記納品書(乙30)によって納品された包装材は、乙第14号証及び乙第15号証の商品の外袋である。つまり、高章食品有限会社は、2012年5月31日に「ちぢみ」の商標をこんにゃくの外袋(乙14、乙15)に付していた。
また、新たな証拠として提出する、要証期間内である2013年10月29日にインターネット上に公開された、「豆と野菜の料理教室」による記事「わらび餅のような豆乳白玉、おから茶、大豆加工製品いろいろ。」(乙31)には、以下の記載がある。
「豆乳白玉こんにゃくと同じ高章食品有限会社様の肉蒟(にくこん)」「特殊製法のちぢみ蒟蒻だからタレがよく絡みました。油なしでフライパンで炒めて、付属の甘辛タレを絡めて頂きます。ホルモンみたいな食感!一緒に食べた旦那さんの感想は『味噌だれにしたらホルモンっぽさが増しそう、きっと食べても蒟蒻だと分からないや?』とのことで、男性がOKなほど食べやすいです。ネギや七味をかければ、本当美味しい。それでも蒟蒻だからお腹も喜びますね」
この記事(乙31)には商品の外袋の写真も掲載されており、その写真から「肉蒟」「ちぢみ(マルR)こんにゃく」「130g」と記載されていることをはじめ、この記事(乙31)中に掲載されている写真に表わされている外袋が、賞味期限が2017年2月12日と表示されている外袋(乙14、乙15)と同じ外観の外袋であることがわかる。
また、上記の記事(乙31)中の商品の外袋の写真を拡大したもの(乙32)からは、賞味期限が2014年1月14日であることが読み取れるので、この商品は、その90日前である2013年10月16日以降に製造されたものであるといえる。
したがって、高章食品有限会社は、遅くとも2012年5月31日に「ちぢみ」の商標をこんにゃくの外袋(乙14、乙15)に付し始め、2013年10月16日(外袋に記載された賞味期限(乙32)の90日前)?2013年10月29日(記事(乙31)の掲載日)の間に、「ちぢみ」の商標を付した上記商品の外袋(乙14、乙15)と同じ外観の外袋を用いて、こんにゃくを販売していたことが明らかである。
この販売が事実であることは、以下の証拠によっても裏付けられる。
新たに提出する「商品売上明細一覧表」(乙33)は、高章食品有限会社において「ニクコンチヂミコンニャク」というキーワードによって抽出された商品、すなわち、「肉蒟」「ちぢみ」「こんにゃく」の表示のある上記の外袋(乙14、乙15)と同じ外観の外袋によって販売されるこんにゃくの2013年10月21日?29日の売り上げの一覧を示している。「ピッキングリスト」(乙34?乙38)には、上記の商品売上明細一覧表(乙33)に表示されている売上の詳細が記載されている。
「商品売上明細一覧表」(乙33)と「ピッキングリスト」(乙34?乙38)から、高章食品有限会社は、2013年10月22日、2013年10月25日、2013年10月27日、2013年10月29日に、「ニクコンチヂミコンニャク」として管理されている商品を販売していることが明らかである。この「ニクコンチヂミコンニャク」として管理されている商品は、上記の外袋(乙14、乙15)と同じ外観の外袋によって販売される商品である。上記の記事(乙31)中の商品は、「商品売上明細一覧表」(乙33)に記載されている「ニクコンチヂミコンニャク」として管理されている商品のいずれかであると考えられる。
このように、乙第30号証ないし乙第38号証によっても、高章食品有限会社が、要証期間内に、「ちぢみ」の商標を付した上記の包装袋(乙14、乙15)によってこんにゃくを販売していた事実が証明されている。
また、例えば、新たな証拠として提出する乙第39号証は、要証期間内である2015年5月23日にインターネット上に公開された、「樽政本店従業員 趣味的なブログ」内の記事「蒟蒻の話:樽政本店従業員 趣味的なブログ」である。この記事の中には、「今日紹介するこんにゃく屋さんは、『高章食品』という伝統の蒟蒻からアイデア蒟蒻まで蒟蒻の事を知り尽くしているこんにゃく製造会社です」「これはですね。こんにゃくらしくない蒟蒻となんです」「画像でもわかると思いますが、ちぢみこんにゃくって書いてありますよね」「つるんって感じが蒟蒻だとすると、細かい波状の様な繊維が縮んだように仕上げてある調味料が絡みやすい形状なんです。・・・」の記載がある。
この記事には商品の外袋の写真も掲載されており、その写真から「肉蒟」「ちぢみ(マルR)こんにゃく」「130g」と記載されていることを初め、この記事(乙39)中に掲載されている写真に表わされている外袋が、賞味期限が2017年2月12日と表示されている外袋(乙14、乙15)と同じ外観の外袋であることがわかる。
また、上記の記事中の商品の外袋の写真を拡大したもの(乙40)からは、賞味期限が2015年8月1日であることが読み取れるので、この商品は、その90日前である2015年5月3日以降に製造されたものであるといえる。
したがって、高章食品は、2015年5月3日(外袋に記載された賞味期限限(乙40)の90日前)?2015年5月23日(記事(乙39)の掲載日)の間に、「ちぢみ」の商標を付した上記商品の外袋(乙14、乙15)と同じ外観の外袋を用いて、こんにゃくを販売していたことが明らかである。
この販売が事実であることは、以下の証拠によっても裏付けられる。
新たに提出する「商品売上明細一覧表」(乙41)は、高章食品有限会社において「ニクコンチヂミコン 130g」というキーワードで抽出される商品の、上記の記事(乙39)の日付に近い2015年4月1日?5月23日の売り上げの一覧である。納品書(控)(乙42?乙45)は、上記の「商品売上明細一覧表」(乙41)に記載されている取引の伝票No.4555,4776,4870,4904に対応するものである。
「商品売上明細一覧表」(乙41)と納品書(控)(乙42?乙45)から、高章食品有限会社は、2015年4月13日、2015年4月21日、2015年4月30日、2015年5月1日、2015年5月15日、2015年5月22日に、「ニクコンチヂミコン」として管理される商品、または「肉萄ちぢみこんにゃく」「130g」を品名とする商品を販売していることが明らかである。この「ニクコンチヂミコンニャク」として管埋されている商品と、「肉萄ちぢみこんにゃく」「130g」を品名とする商品は、上記の外袋(乙14、乙15)と同じ外観の外袋によって販売される商品である。上記の記事(乙39)中の商品は、「商品売上明細一覧表」(乙41)に記載されている商品のうち、賞味期限から逆算して推定した製造日である2014年5月3日以降の、2015年5月15日または2015年5月22日のいずれかに販売された商品であると考えられる。
このように、乙第39号証ないし乙第45号証によっても、高章食品有限会社が、要証期間内に、「ちぢみ」の商標を付した上記の包装袋(乙14、乙15)によってこんにゃくを販売していた事実が証明されている。
高章食品有限会社は、少なくとも2012年5月31日から2016年11月14日まで継続して、同じ外観の外袋をこんにゃくに用いている。したがって、2015年6月1日に販売された、納品書(控)(乙28)の品名欄に「肉蒟ちぢみこんにゃく」「130g」と記載されている商品も、同じ外袋によって販売されたものである。
以上のように、上記の記事(乙31、乙39)、「商品売上明細一覧表」(乙33、乙41)、ピッキングリスト(乙34?乙38)、納品書(控)(乙28、乙42?乙45)によって、本件商標の通常使用権者である高章食品株式会社または高章食品有限会社が、要証期間内である2013年10月22日(乙33、乙34)、2013年10月25日(乙33、乙35)、2013年10月27日(乙33、乙36)、2013年10月27日(乙33、乙37)、2013年10月29日(乙33、乙38)、2015年4月13日(乙41)、2015年4月21日(乙41、乙42)、2015年4月30日(乙41、乙43)、2015年5月1日(乙41)、2015年5月15日(乙39、乙40)、2015年5月15日(乙41、乙44)、2015年5月22日(乙41、乙45)、2015年6月1日(乙28)に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標「ちぢみ」をこんにゃくの包装に付して販売していた事実が証明されている。
さらにまた、上記の納品書(控)(乙28、乙42?乙45)には、いずれも、上述のように「ちぢみ」の文字が記載されている。品名欄において明朝体のような書体で表わされた「肉蒟ちぢみこんにゃく」「130g」の記載のうち、「こんにゃく」は明らかに商品がこんにゃくであることを示しており、「130g」は明らかに商品の内容量が130gであることを示している。
したがって、上記納品書(控)(乙28、乙42?乙45)の品名欄において商品名を表わしているのは「肉蒟」と「ちぢみ」の文字部分である。「肉蒟」は漢字でまとまりよく一体的に表され、「ちぢみ」はひらがなでまとまりよく表わされており、また、この商品の取引者の間で、「肉蒟」は、「ちぢみ」の商標が用いられる高章食品の複数のこんにゃくの商品(例えば「1kg×8袋」の内容量で販売されている業務用の「ちぢみ」等)のうちの一種類を指すものとして取引されているので、「肉蒟」と「ちぢみ」のそれぞれの部分は独立して需要者・取引者に認識され記憶される。よって、納品書(控)(乙28、乙42?乙45)の品名欄の「肉蒟ちぢみこんにゃく」「130g」は、「肉蒟ちぢみこんにゃく130g」という一連の語ではなく、「肉蒟」「ちぢみ」「こんにゃく」「130g」と分離して認識されるべきである。この「ちぢみ」の文字は、本件商標と同一の「チヂミ」の称呼を生じ、本件商標と別異の概念を生じない、本件商標と社会通念上同一の商標である。
したがって、上記の納品書(控)(乙28、乙42?乙45)によって、高章食品が、要証期間内である2015年4月21日(乙42)、2015年4月30日(乙43)、2015年5月15日(乙44)、2015年6月1日(乙28)に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標「ちぢみ」をこんにゃくの取引書類(納品書)に使用していた事実が証明されている。
(4)結び
以上によれば、被請求人は、本件審判の要証期間内に日本国内において、取引書類及び商品の包装に、本件商標と社会通念上同一の範疇に属する「ちぢみ」の文字からなる商標を、その指定商品に使用していることが明らかである。
よって、本件審判事件について答弁の趣旨どおりの審決を求める。
3 上申書(平成29年6月20日付け)
(1)「高章食品株式会社」と「三好工場」の関係について
高章食品株式会社の本社の所在地は愛知県愛知郡東郷町大字春木字下正葉廻間46番地(乙4)であり、高章食品三好工場の所在地は愛知県みよし市三好町半野木1-92である。
高章食品株式会社は、平成16年9月から三好工場を有している。食品の包装には製造所の住所を記載することになっているので、ダンボール箱等の包装には製造所である高章食品株式会社の三好工場の住所を記載している。高章食品株式会社が三好工場を有しており、三好工場の住所が上述のとおりであることは、高章食品株式会社のウェブサイトの「会社情報」(乙54)と、高章食品株式会社の2016年2月15日付け作成の「会社概要」(乙55)に記載されているとおりである。
(2)商号変更後の請求明細書である乙第13号証及び乙第24号証に商号変更前の「高章食品有限会社」が記載されている理由について
株式会社エムパックが旧商号で請求明細書を発行した事情はわからないが、商号が変更されたことが認識されていなかったと推察される。実際に、高章食品株式会社の取引先によっては現在でも商号変更前の名称で請求書等を発行されることがある。しかし、そのために混乱を生じる等の不都合が生じたことはない。
また、既に商号が変更されていた2015年8月12日に発注(乙24)したダンボールに旧社名を記載したことについて、印刷の版を変更するためには、手続きや費用、作業の面で検討や確認が必要になり、時間がかかり断念した(乙53)。
なお、現在は、2017年6月13日撮影の現行の展開されたダンボール箱の表面と裏面の写真(乙56?乙57)に見えるように、ダンボール箱上の商号の表示は「高章食品株式会社」に変更されている。
(3)乙第30号証よりも新しい包装材の納品書があるかということについて
乙第30号証の「肉蒟(にくこん)照焼たれ付」のフィルム包装材の納品書は2012年5月31日発行であり、要証期間よりも前のものであるが、このフィルム包装材はこの時に7,820mも購入したため、現在でも3巻残っており、その後、発注していない。したがって、「肉蒟(にくこん)照焼たれ付」のフィルム包装材の要証期間内に発行された納品書はない(乙53)。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠について
被請求人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙第1号証は、前商標権者と高章食品有限会社が連名で作成した平成22年4月22日付けの「秘密保持契約書」である。
そこには、「高章食品有限会社(以下、「甲」とする。)と、株式会社清水万蔵商店(以下、「乙」とする。)とは、乙が甲に継承するちぢみ・さらしくじら風さしみこんにゃくの製造及び販売(以下、「製造・販売」とする。)のために乙が甲に開示する乙の秘密事項の取扱いに関し、次の通り契約する。」、「第3条(使用目的) 甲は、本契約により開示される秘密事項を本製造・販売の目的のためにのみ使用し、又、乙の保有する「ちぢみ」の商標については、販売目的のみに使用することとし、それ以外の目的には一切使用しないものとする」の記載がある。
(2)乙第2号証は、前商標権者の作成に係る平成28年12月1日付けの「商標の使用許諾の確認書」である。
これには、「株式会社清水萬蔵商店(以下、「甲」という。)と高章食品株式会社(以下、「乙」という。)とは、平成22年4月22日付けの秘密保持契約書の第3条(使用目的)において、甲の保有する商標登録第1489481号に係る商標「ちぢみ」(以下、「本件商標」という。)の乙への使用許諾につき、下記の通り取り決められていたことを承知していたことを確認する。」、「甲は、乙に対し、以下の本件商標について、通常使用権を許諾した」等の記載がある。
(3)乙第3号証は、高章食品株式会社の作成に係る平成28年11月30日付けの「商標の使用許諾の確認書」である。
これには、「株式会社清水萬蔵商店(以下、「甲」という。)と高章食品株式会社(以下、「乙」という。)とは、平成22年4月22日付けの秘密保持契約書の第3条(使用目的)において、甲の保有する商標登録第1489481号に係る商標「ちぢみ」(以下、「本件商標」という。)の乙への使用許諾につき、下記の通り取り決められていたことを承知していたことを確認する。」、「甲は、乙に対し、以下の本件商標について、通常使用権を許諾した」等の記載がある。
(4)乙第4号証は、高章食品株式会社の「履歴事項全部証明書」である。
これには、登記記録に関する事項の欄に、「平成27年3月13日高章食品有限会社を商号変更し、移行したことにより設立 平成27年3月13日登記」の記載がある。
(5)乙第14号証は、包装袋の表面の写真である。
これには、右中央に大きく「肉蒟」の文字、右上部には「特製 照焼たれ付」の文字、左上部に図形とともに「たかあき」の文字、その下に「ちぢみこんにゃく」(「ちぢみ」の右下に小さく円で囲んだ「R」の文字がある。)の文字、その横に「賞味期限」として「2017 2 12」の文字が記載されている。
(6)乙第15号証は、乙第14号証の包装袋の裏面の写真である。
これには、中央に「肉蒟ちぢみこんにゃく」(「ちぢみ」の文字の右下に小さく円で囲んだ「R」の文字がある。)の文字、その下に「名称/こんにゃく」の文字、「製造者/高章食品有限会社」と記載されている。
(7)乙第42号証は、高章食品株式会社から(株)マルイチ産商236367-145首都圏に宛てた「納品書(控)」である。
これには、右上に「納品日 15年04月21日」の記載があり、品名の欄に「肉蒟ちぢみこんにゃく 130g」の記載、数量の欄に「80コ」との記載がある。
(8)乙第43号証は、高章食品株式会社から(株)マルイチ産商236367-145名古屋に宛てた「納品書(控)」である。
これには、右上に「納品日 15年04月30日」の記載があり、品名の欄に「肉蒟ちぢみこんにゃく 130g」の記載、数量の欄に「40コ」との記載がある。
(9)乙第44号証は、高章食品株式会社から(株)おとうふ工房 知立店に宛てた「納品書(控)」である。
これには、右上に「納品日 15年05月15日」の記載があり、品名の欄に「肉蒟ちぢみこんにゃく 130g」の記載、数量の欄に「20コ」との記載がある。
(10)乙第45号証は、高章食品株式会社から(株)マルイチ産商236367-145名古屋に宛てた「納品書(控)」である。
これには、右上に「納品日 15年05月22日」の記載があり、品名の欄に「肉蒟ちぢみこんにゃく 130g」の記載、数量の欄に「20コ」との記載がある。
(11)乙第30号証は、株式会社服部商店から高章食品有限会社に宛てた「納品書」である。
これには、右上に「12年5月31日」の記載があり、品番・品名の欄に「肉蒟(にくこん)照焼たれ付」の記載、数量の欄に「7,820.00m」の記載がある。
2 被請求人の主張及び上記1で挙げた証拠によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)上記1(1)ないし(4)のとおり、前商標権者と高章食品有限会社が交わした「秘密保持契約書」(乙1)、前商標権者と高章食品株式会社による「商標の使用許諾の確認書」(乙2、乙3)及び高章食品株式会社の履歴事項全部証明書(乙4)の記載を総合勘案すれば、高章食品株式会社は、平成27年3月13日に、高章食品有限会社から商号変更されたものであり、いずれも本件商標の通常使用権者であったといえる。
(2)上記1(7)ないし(10)の各納品書(控)の品名「肉蒟ちぢみこんにゃく」の表示と、上記1(6)の包装袋の裏面の「肉蒟ちぢみこんにゃく」(「ちぢみ」の文字の右下に小さく円で囲んだ「R」の文字がある。)の表示が一致し、各納品書(控)に記載された「高章食品株式会社」は、上記1(6)の包装袋の裏面に記載された高章食品有限会社から商号変更された後の名称であることから、これらの納品書は、乙第14号証及び乙第15号証の商品と同一の商品についての取引書類といえる。
なお、請求人は、高章食品有限会社が株式会社に商号変更された後も、高章食品有限会社の表示が用いられていることは不自然である旨主張している。
なるほど、上記1(5)の包装袋の表面においても、「賞味期限」として「2017 2 12」の記載、上記1(6)の包装袋の裏面には、「製造者/高章食品有限会社」の記載があり、この賞味期限の時期における通常使用権者は、本来ならば商号変更後の「高章食品株式会社」と記載されるべきところである。しかしながら、上記1(11)のとおり、2012年5月31日付けで「肉蒟(にくこん)照焼たれ付」の包装袋のフィルム包装材が、7,820m納品され、現在もその包装袋のフィルム包装材が残っているという被請求人の主張を考慮すれば、上記1(5)及び(6)の包装袋は、2012年5月31日に納品されたものをその後要証期間も含め上記1の(5)に記載の賞味期限2017年2月12日前後までも使用したものということは優に推認できる。そうすると、上記1(6)の包装袋の裏面に商号変更前の高章食品有限会社が製造者として記載されていることに矛盾はない。
してみると、本件商標の通常使用権者である高章食品株式会社は、上記1(5)及び(6)の包装袋を使用した商品を、上記1(7)ないし(10)の各納品書(控)に記載された宛先に要証期間内に販売したものと推認することができる。そして、上記1(6)の包装袋の裏面には、「名称」として「こんにゃく」と記載されており、各納品書(控)の品名の欄の「肉蒟ちぢみこんにゃく」の「こんにゃく」の文字部分は商品「こんにゃく」を指すものといえるから、各宛先に納品された商品は「こんにゃく」であるといえ、これは、本件請求に係る指定商品と同一の商品である。
(3)上記1(5)の包装袋の表面の記載によれば、「肉蒟」の文字と「ちぢみこんにゃく」(「ちぢみ」の文字の右下に小さく円で囲んだ「R」の文字がある。)の文字とは、離れて配置され、それぞれ文字の大きさ、書体が明らかに異なる態様であることから、「肉蒟」の文字と「ちぢみこんにゃく」の文字が、常に不可分一体のものとしてのみ認識されるべき格別の理由は見いだせないものであり、それぞれが独立して自他商品識別標識としての機能を有するものといえる。さらに、同包装袋の表面及び裏面の「ちぢみこんにゃく」(「ちぢみ」の文字の右下に小さく円で囲んだ「R」の文字がある。)の文字のうち「こんにゃく」の部分は商品を指すものであるから、「ちぢみ」の文字(以下「使用商標」という。)が商品の識別標識としての機能を果たす部分であるということができる。
一方、本件商標は、「ちぢみ」の文字を横書きした構成からなるものである。
そうすると、本件商標と使用商標とは、いずれも「ちぢみ」の文字からなり、同一の称呼及び観念を生じるものであるから、社会通念上同一の商標ということができる。
(4)小括
以上によれば、通常使用権者は、要証期間内において、本件審判の請求に係る指定商品「こんにゃく」について、本件商標と社会通念上同一の商標を付したものを譲渡又は引き渡した(商標法第2条第3項第2号)と認めることができる。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、その請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-09-08 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-29 
出願番号 商願昭52-68631 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z29)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 豊泉 弘貴
小松 里美
登録日 1981-11-27 
登録番号 商標登録第1489481号(T1489481) 
商標の称呼 チジミ 
代理人 赤岡 和夫 
代理人 吉岡 亜紀子 
代理人 赤岡 迪夫 

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