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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W18
管理番号 1334530 
審判番号 無効2017-890017 
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-03-07 
確定日 2017-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5799460号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5799460号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5799460号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成27年5月1日に登録出願,同年9月8日に登録査定,第18類「愛玩動物用被服」を指定商品として,同年10月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効理由として引用する商標は,請求人が登録を所有する3本の台形様図形等を並べた構成よりなる商標(以下「3本線商標」という。)及び3本線に関連する商標,並びに,請求人がその製造販売に係るスポーツシューズ,スポーツウェア,被服,かばん類などに現実に使用している3本線商標(以下,これらの登録及び使用に係る3本線商標を総称して「引用商標」という。)である。
1 登録第4376377号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成10年6月26日に登録出願,「愛玩動物用被服類」を含む,第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同12年4月14日に設定登録されたものである。
2 登録第4376378号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成10年6月26日に登録出願,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同12年4月14日に設定登録されたものである。
3 登録第4378318号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成10年6月26日に登録出願,「愛玩動物用おもちゃ」を含む,第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同12年4月21日に設定登録されたものである。
4 上記1ないし3のほか,以下のとおりの登録商標である(以下(1)ないし(11)までを順次「引用商標4」ないし「引用商標14」という場合がある。)。
別掲2のとおりからなる(1)登録第4399811号商標,(2)登録第4614579号商標,(3)登録第5337064号商標,及び(4)登録第5411991号商標。
別掲3のとおりからなる(5)登録第4025668号商標,(6)登録第4180654号商標,(7)登録第2593080号商標,及び(8)登録第2708505号商標。
別掲4のとおりからなる(9)登録第3147520号商標,及び(10)登録第3284231号商標。
別掲5のとおりからなる(11)登録第5645150号商標。

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第154号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 利害関係
本件商標は,請求人が長年商品出所識別標識として使用している3本線商標(引用商標1?引用商標14の構成中の図形部分に示す態様)と基本的構造を同じくするものであり,当該引用商標と細部の構成が相違しても,依然として容易に「3本線」を基調とする商標として看取されるものである。
本件商標は,請求人の使用に係る3本線商標の一類型として認識されるから,これがその指定商品に付された場合,請求人の業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがある。また,請求人の商品出所識別標識として広く認識されている3本線商標を容易に想起連想させる本件商標の使用は,請求人の3本線商標の顧客吸引力にフリーライドするものであって,その出所表示力を稀釈化する。
よって,請求人は,本件商標の登録無効審判の請求について利害関係を有する。
2 請求の理由の要点
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 請求人は,過去60年以上の長期間にわたり,継続して3本のストライプを基本的構成とする3本線商標(引用商標)を,スポーツシューズ,スポーツウェアなどのスポーツ用品に付して使用している。
請求人の使用に係る3本線商標は,請求人の商品出所識別標識として本件商標の登録出願時及び査定時には国内外の取引者,需要者の間で広く認識されていたものであり,その著名性の程度は極めて高い。
イ 本件商標は,黒塗りの長方形の中に,仮想水平線に対し,左方向にやや傾けた黒塗りの細長の台形様図形を互いに平行になるように等間隔で3本並べ,そのうちの左端に位置するものを最も短くし,右方向に向かって順次長くしていき,右端に位置するものを最も長くした図形において,各細長台形様図形の上端が二枚葉状もしくはハート型状であり,そのうち右端に位置するものの下端右半身が一枚葉状である図形を白抜きで描いたもの(以下「本件商標の3本線図形部分」という。)から構成される。
本件商標の3本線図形部分は,請求人の使用に係る3本線商標,とりわけ,引用商標1?引用商標14の構成中の図形部分と基本的構造が同じであり,件外商標登録異議申立事件(異議2007-900190)でこれらの引用商標と「構成の軌跡を一にする」と認定判断された図形部分(甲134)と略同一の構成よりなるものである。
本件商標の3本線図形部分は,仮想垂直線に対してやや傾けた長さの異なる細長い台形様図形3本(3本のストライプ)を等間隔で互いに平行に並べて,当該3本のストライプ全体で三角形様の外形を形成している点で上記引用商標と一致し,これらの引用商標と共通の印象を看者に与える。
本件商標では,ストライプの先端が二枚葉(ハート型)状又は一枚葉状に構成されている点が当該引用商標と相違するが,請求人の使用に係る3本線商標には,3本のストライプの形状,デザイン,配置方法,着色方法等に関して極めて多様なデザインのバリエーションが存在し,しかも,そのようなバリエーションの中には,本件商標の3本線図形部分のストライプと同様に,ストライプの先端のみを別色で配色して視覚的に強調し,先端に装飾的な効果を加えたデザインも豊富に存在することを斟酌すれば,上記相違点は,請求人の使用に係る上記引用商標の構成との共通点(ストライプ3本によって形成された三角形様の外形の印象)を凌駕する程度まで出所識別標識として強く看者を印象づける特徴とはいえない。
本件商標の3本線図形部分は,依然として3本のストライプを基調とした商標として容易に看取されるものであり,上記引用商標との類似性の程度は極めて高い。
ウ 本件商標の指定商品である第18類「愛玩動物用被服」の分野では,海外の高級ファッションや服飾品の有名ブランドが犬用首輪・引き紐,犬用衣服,犬猫用食器などのペット用品を製造販売することが珍しくなく,高級ブランドのペット用品が大手インターネットのショッピングモールで一般消費者向けに販売されている(甲135,甲136)といった事情に照らせば,本件商標の指定商品は,請求人が3本線商標を永年使用しているスポーツシューズ,スポーツウエア,被服,かばん類等と製造部門,販売場所,原材料,需要者の範囲が一致ないし重複する関連性の高い商品といえるものである。
本件商標の指定商品は,ワンポントマークとして商標を付すことも一般に行われる。本件商標がワンポイントマークとして表示された場合,構成中の3本線図形部分の二枚葉状や一枚葉状の先端の形状が細部まで表示されないことや,取引者,需要者がこれに気づかないことがある。
本件商標の指定商品は,ペット用品店などで販売される比較的安価な日用品で,比較的短期間で買い替える消耗品である。
そして,その最終的な需要者は,一般家庭の消費者であって,必ずしも商標やブランドについて十分な知識を有している者ではないから,本件商標の指定商品の通常の需要者の注意力は高いものといえない。
また,請求人は,一般消費者に人気のあるアニメや映画のキャラクターや,有名アパレルブランド,著名デザイナー等との共同開発されたいわゆるコラボレーション商品や提携商品も多数取り扱っている(甲121,甲124?甲127)。
エ これらの事項を総合して本件商標について考察すれば,本件商標がその指定商品に使用された場合,これに接した取引者,需要者は,本件商標を請求人の使用に係る3本線商標(3本のストライプを基調とする商標)の一類型として認識し,当該商品が,請求人又は請求人と経済的又は組織的関連を有する者の業務に係る商品であると誤信するおそれが高いことが明らかである。
よって,本件商標は,請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることが明らかであり,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
被請求人による本件商標の登録及び使用は,公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の目的,国際信義に反することが明らかであり,公の秩序を害するおそれがあるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は,請求人の上記主張に対し,何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人の引用商標の著名性について
請求人の提出に係る証拠によれば,請求人は,1920年からスポーツシューズを開発し,1949年に3本線を基調とした商標(3本線商標)の使用を開始して以来,今日まで60年を超える長期にわたり,請求人の業務に係る商品の識別標識として,世界各国において,各種のスポーツシューズ,スポーツウェアを始めとするスポーツ用品に使用してきたものであり,我が国においても,1971年頃から使用権者である株式会社デサントを通じて販売が開始され,現在は請求人の子会社であるアディダスジャパン株式会社によって販売が継続され(甲26?甲127),3本線商標は,本件商標の登録出願日前から,我が国及び世界各国においても,請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものであり,その著名性は,本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
(2)本件商標と引用商標1ないし14の3本線商標との類否について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,黒塗り長方形内に,いずれも白抜きで,右から,台形図形と左側に二枚葉状図形及び右側に半分切断された一枚葉状図形を組み合わせた図形,台形図形と左側に二枚葉状図形を組み合わせた図形及び左側端が切断された二枚葉状図形を,右方向から左方向に等間隔で平行に並べてやや傾けた三角形様(3本線図形)の外形構成からなるものである。
そして,本件商標の黒塗り長方形の図形は,背景図形として認識されるものであるから,本件商標は,その構成中の上記3本線図形部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすとみるのが相当であり,本件商標からは,特定の称呼及び観念を生じないものである。
イ 引用商標1ないし14の3本線商標について
引用商標1ないし14は,別掲2ないし別掲5のとおりの構成からなり,3本線商標(引用商標1ないし7)及びその構成中,独立して着目される3本線商標(引用商標8ないし14)は,いずれも,左方向にやや傾けた黒塗り台形様図形を,その図形自体の幅の3分の1程度の間隔で3本並べ,そのうちの左端のものを最も短くし,右方向に向かって順次長くしていき,右端のものを最も長くした三角形様の構成からなるものである。
そして,引用商標1ないし14の3本線商標からは,特定の称呼及び観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1ないし14の3本線商標との類否について
本件商標の3本線図形部分と引用商標1ないし14の3本線商標とを対比すると,両者は,左方向にやや傾けた長さが異なる細長い台形様図形3本を等間隔で平行に並べ,そのうちの左端に位置するものを最も短くし,右方向に向かって順次長くしていき,右端に位置するものを最も長くした図形であって,当該図形全体で三角形様の外形からなる点で,構成の軌を一にし,外観において近似した印象を与えるものである。
エ 上記アないしウからすると,本件商標と3本線商標は,称呼及び観念において比較することができないものの,これを時と所を異にして離隔的に観察した場合は,互いに混同を生じさせるおそれがある外観上,類似の商標というべきである。
(3)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品について
本件商標の指定商品は,上記第1に記載のとおり,第18類「愛玩動物用被服」であるところ,3本線商標は,スポーツシューズ,スポーツウェアなどのスポーツ用品をはじめ,被服,かばん類,履物等に使用されているものであり,これらの服飾品を扱う者が犬用衣服などを販売している実情がある(甲135,甲136)。
(4)出所の混同のおそれについて
前記(1)のとおり,3本線商標は,本件商標の登録出願日前から,我が国及び世界各国においても,請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認められ,本件商標と3本線商標とは,互いに混同を生じさせるおそれがある外観上,類似の商標というべきである。
そして,本件商標の指定商品は,被服,かばん類,履物等の服飾品を扱う者が販売する実情があることからすると,本件商標は,本件商標権者がこれをその指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者は,請求人に係る著名な3本線商標を想起し,請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあったというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものというべきであるから,その余の請求の理由について検討するまでもなく,同法第46条第1項第1項の規定により,無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1?引用商標7


別掲3 引用商標8?引用商標11


別掲4 引用商標12,引用商標13


別掲5 引用商標14


審理終結日 2017-08-31 
結審通知日 2017-09-05 
審決日 2017-09-20 
出願番号 商願2015-46611(T2015-46611) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W18)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深田 彩紀子 
特許庁審判長 田中 亨子
特許庁審判官 小林 裕子
平澤 芳行
登録日 2015-10-16 
登録番号 商標登録第5799460号(T5799460) 
代理人 柳田 征史 

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