• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W41
審判 全部申立て  登録を維持 W41
審判 全部申立て  登録を維持 W41
審判 全部申立て  登録を維持 W41
管理番号 1332407 
異議申立番号 異議2017-900021 
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-27 
確定日 2017-09-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第5892154号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5892154号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5892154号商標(以下「本件商標」という。)は、「合宿免許わかば」の文字を標準文字で表してなり、平成28年3月25日に登録出願、第41類「自動車教習所における自動車の運転の教授,その他の自動車の運転の教授,自動車教習所における運転技術の教授の申込みに関する媒介・取次ぎ,自動車教習所に関する情報の提供」を指定役務として、同年9月21日に登録査定、同年10月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第5355093号商標(以下「引用商標」という。)は、「わかば自動車学校」の文字を標準文字で表してなり、平成22年5月10日に登録出願、第41類「自動車運転の教授」を指定役務として、同年9月17日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標「合宿免許わかば」の一部を構成する文字「合宿免許」とは、自動車学校が管理しているホテルや民宿等に、宿泊滞在しながら自動車の運転に関する教習を受けて、自動車の運転免許を取得すること、自動車学校により指定された宿舎に泊まりながら、連日、自動車運転の教習を受けて通学よりも短い期間で自動車の運転免許を取得すること、あるいは、全国の優良自動車学校・教習所で宿泊しながら、入校から卒業までのカリキュラムが効率良くスケジュール化された教習を受けること等を意味するものである。 このことは、当業界の需要者及び取引者の間で著しく広く認識されていることであるばかりではなく、「合宿免許」は、自動車学校、自動車教習所等の自動車の運転を教授する機関において、現在、全国的に広く一般的に実施されている自動車運転の教授、教習方法の一態様にすぎないことも周知である。
そうすると、本件商標「合宿免許わかば」の一部を構成する文字「合宿免許」は、その指定役務である「自動車教習所における自動車の運転の教授,その他の自動車の運転の教授等」の一態様及び一提供の方法等を単に表すものにすぎず、本来、文字「合宿免許」には何ら識別力があるものではない。したがって、本件商標において識別力を有する部分は、単に「わかば」の文字のみである。
一方、引用商標「わかば自動車学校」の一部を構成する文字「自動車学校」が、自動車の運転に関する教授、教習を受けて、自動車の運転免許を取得するための学校を意味することは、当業界の需要者及び取引者の間で著しく広く認識されていることである。
そうすると、引用商標の一部を構成する文字「自動車学校」は、その指定役務である「自動車運転の教授」を提供する場所であることは明らかであり、引用商標において識別力を有する部分は「わかば」のみであることもまた明らかなことである。
してみると、本件商標及び引用商標のいずれも、その識別力を有する部分は「わかば」の文字のみであり、両者は同一である。また、当業界の需要者及び取引者は、これら両者の登録商標から識別力を有する文字「わかば」のみをもって、これら両者の商標を識別しようとすることは明らかなことである。
したがって、本件商標と引用商標とは、識別力を有する部分「わかば」において、外観、称呼、観念が同一であるから、両者は類似していると考えられるものであり、また、それぞれの指定役務も第41類の類似群41A01に属するものであって、同一又は類似している。
(2)当業界の需要者及び取引者は、本件商標の一部を構成する文字「合宿免許」からは、自動車学校において、合宿しながら自動車運転の教授、教習を受けること、及び、自動車運転の教授、教習を受けるための機関、即ち、自動車学校を観念する。
一方、引用商標の一部を構成する文字「自動車学校」からも、自動車運転の教授、教習を受けること、及び、自動車運転の教授、教習を受けるための機関を観念する。
また、これら両者の登録商標においては、文字「わかば」が共通している。
そうすると、本件商標及び引用商標のいずれにおいても、その商標の全体から、自動車運転の教授、教習を受けるための機関である「わかば」、そして、その機関である「わかば」にて、自動車運転の教授、教習を受けることを観念する。即ち、いずれの商標からも、「わかば」という名称の自動車学校を観念する。
また、文字「合宿免許」が、自動車学校が実施している自動車運転の教授、教習方法の一態様を意味すること、そして、本質的には、自動車学校において自動車運転の教授、教習を受けることを意味することは、当業界の需要者及び取引者の間できわめて広く知られていることである故、上記のように、両商標が全体として同一の観念を有することを、需要者及び取引者に、きわめて強力に印象付けることは明白なことである。
したがって、本件商標と引用商標とは、相互に類似していると考えられ、それぞれの指定役務も第41類の類似群41A01に属するものであって、同一又は類似している。
(3)本件商標「合宿免許わかば」の指定役務は、第41類「自動車教習所における自動車の運転の教授,その他の自動車の運転の教授,自動車教習所における運転技術の教授の申し込みに関する媒介・取次ぎ,自動車教習所に関する情報の提供」であり、一方、引用商標の指定役務も、第41類「自動車運転の教授」である。
これら両者の役務は、その類似群がいずれも41A01に属するものであるというばかりではなく、全く同一の業種に関するものである。
そして、本件のように両者の指定役務が全く同一の業種に属するものである場合には、両者の間で誤認混同が生ずることに疑いはない。商標の類否は相対する二つの商標の構成の相違を重視して判断することはもちろんのこと、それらの商標を使用する役務が同一の類似群に含まれているというだけではなく、その類似群の中でも更に密接した関係を有しているか否か、即ち、全く同一の業種に属するか否かまで、重視して判断するべきものである。したがって、これら両登録商標の併存は認められるべきものではない。
(4)本件商標と引用商標とは、現実に混同が生じていると考える。例えば、Google、Yahoo等の検索エンジンにおいて、「わかば 運転免許」等のキーワードにより検索してみると明らかであり、いずれのキーワードを使用して検索してみても、「合宿免許わかば」と「わかば自動車学校」とが、その検索結果中に混在して現れることが認められる。一般需要者及び取引者、とりわけ需要者は、「合宿免許わかば」と「わかば自動車学校」との文字から、識別力ある「わかば」の文字のみを記憶し、運転免許の取得に関するものであるとの認識から、上記のようなキーワードを使用してインターネット上で検索して、運転免許取得の申し込みをすることは明らかである。たとえ、キーワードとして「わかば自動車学校」を使用して検索したとしても、「合宿免許わかば」と「わかば自動車学校」とが混在して現れる故、一般需要者及び取引者において、これら二つの登録商標間に誤認混同が生じていることは明白であり、「合宿免許わかば」のキーワードで検索しても同様である。
このように、インターネット上に現れた「合宿免許わかば」と「わかば自動車学校」との文字から、一般需要者及び取引者、とりわけ、需要者が、両者を識別することは困難であり、両者間に混同が生じていることはきわめて明らかなことである。
また、近年、当業界の需要者は、インターネットを使用して自動車運転免許の取得方法(自動車学校)を検索することが主流であり、とりわけ、当業界の需要者層は、その大部分が若年層(若者)であることから、インターネットにより検索して取引することが主流となっている。
そして、千葉県浦安市に存在するわかば自動車学校に、「わかば自動車学校」の商標に起因して、合宿免許に関する電話等の多くの問い合わせがなされているという事実がある。甲第3号証には、わかば自動車学校のコールセンターに残されている合宿免許に関する問い合わせ内容の一部を掲載した。甲第3号証から分かるように、一般需要者及び取引者は、「わかば自動車学校」の文字から合宿免許を連想(観念)し、それに基づいて電話等による問い合わせをしてきていることは明らかである。このように、商標「わかば自動車学校」からも当然のこととして合宿免許を連想(観念)するのであり、当然のことながら、商標「わかば自動車学校」と商標「合宿免許わかば」との間に誤認混同が生じている。
また、上記のように「合宿免許」は、自動車学校が実施している自動車運転の教授、教習方法の一態様である故、わかば自動車学校においても、合宿免許を実施することが考えられ、その際、「合宿免許のわかば自動車学校」、「合宿免許わかば自動車学校」、「わかば自動車学校における合宿免許」、「合宿免許はわかば自動車学校で」等のフレーズをホームページ等で使用することは明らかなことである。かかる場合には、本件商標と引用商標との間に誤認混同が生じ得ることは自明のことである。
そして、わかば自動車学校が、一般的に自動車学校が実施している自動車運転の教授、教習方法の一態様である「合宿免許」の文字を含むこれらのフレーズを宣伝広告等に使用できないという理由はどこにもない。
このようなことは、健全な取引秩序の維持という観点から、到底認められるべきものではないし、本件商標は、引用商標権者が長年にわたって築き上げてきた信用にフリーライドするものであり、到底認められるべきものではない。
(5)よって、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標であり、また、その指定役務も同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人は、「わかば自動車学校」の商標を、自動車教習所の名称として、自動車運転の教授等の役務を提供するために、平成19年6月の開業以来、現在に至るまで継続して広く使用している。
申立人は、同19年6月14日に個人事業としてわかば自動車学校を設立開業し、同27年12月2日に法人化し(法人名:ディー・コム株式会社)、現在に至っている(甲4)。
そして、申立人は、わかば自動車学校を設立開業するにあたり、道路交通法に則って、「自動車教習所の届出書」を同21年10月23日に東京都公安委員会に提出し、その後、自動車教習所の所在地の移転に伴い、同24年1月16日に千葉県公安委員会に再度提出している(甲5)。また、「届出自動車教習所入所者数等の報告」を見れば明らかなとおり、わかば自動車学校への入所者数は、総計約3千人にのぼっている(甲5)。
また、わかば自動車学校は、同24年に、一般社団法人全国届出自動車教習所協会に入会し、現在に至っている(甲6)。
加えて、同20年11月30日に「わかば自動車学校」のホームページを立ち上げることにより、現在に至るまで、ホームページにより全国的に広く宣伝広告を実施している(甲7)。
また、平成25年12月に千葉テレビ放送株式会社において、人気お笑いコンビであるナイツによる「ナイツのHIT商品会議室」において1週間おきに4回にわたり、また、同26年(2014年)2月には同社における「ビジネスフラッシュ」において、及び、同年8月には同社における「ホリプレゼンツ“求人任三郎”がいく!」において、合計6回にわたって、「わかば自動車学校」のテレビコマーシャルによる宣伝広告を実施している(甲8)。
そして、同年8月から現在に至るまで、千葉県浦安市の了徳寺大学、明海大学浦安キャンパスの食堂の掲示板に「わかば自動車学校」の宣伝広告用のビラを貼付している(甲9)。
さらに、同22年2月から現在に至るまで、東京都江戸川区西葛西及び千葉市美浜区にて電柱看板により、「わかば自動車学校」の宣伝広告を実施し(甲10)、同21年6月から現在に至るまで、フリーダイヤル契約をして顧客の獲得及び宣伝広告を実施している(甲11)。
(2)上記のように、引用商標は、自動車教習所の名称として、自動車運転の教授等の役務を提供するために、平成19年6月の開業から、現在に至るまで継続して広く使用されてきている(甲4、甲5等)。
とりわけ、当業界における取引方法の主流をなすインターネットのウェブサイトにおいて、同20年11月30日から現在に至るまで継続して広く宣伝広告を実施している(甲7)。このようなホームページによる宣伝広告は、一地域のみに限定されることなく広く日本国内に商標を知らしめる効果があることのみならず、上記のようにホームページによる宣伝広告は当業界において主流をなし、大きな効果を有することから、引用商標は、このような長年にわたるホームページによる宣伝広告により広く国内に知られているといえる。
一方、自動車学校で実施する自動車運転の教授という役務の性質上、一般的には、その自動車学校が存在する比較的狭い範囲の地域、例えば、広くても隣県までの需要者が主であると考えられる。北海道、九州、関西、甲信越等の需要者が千葉県の自動車学校に入校して自動車運転の教授を受けるということは、それが合宿免許であっても、よほど特別な事情が存在しない限り極めて稀なことと考えられる。したがって、その宣伝広告の方法も、その自動車学校が存在する比較的狭い範囲の地域の需要者をターゲットとしてなされることが多い。
申立人は、引用商標を、千葉県の地方局である千葉テレビを介して、人気お笑いコンビ等によるテレビコマーシャルを6回にわたって実施して宣伝広告し(甲8)、また、多くの需要者を擁する大学生をターゲットとして、千葉県浦安市の了徳寺大学及び明海大学浦安キャンパスの食堂の掲示板にビラを貼付することにより宣伝広告し(甲9)、さらに、不特定多数の需要者をターゲットとして、東京都江戸川区西葛西及び千葉市美浜区にて電柱看板(電柱広告)により宣伝広告し(甲10)、わかば自動車学校が存在する周辺地域での宣伝広告も長年にわたって実施してきている。
加えて、フリーダイヤル契約をして顧客の獲得及び宣伝広告も行っている(甲11)。また、「届出自動車教習所入所者数等の報告」(甲5)にあるように、わかば自動車学校への入所者数は、既に総計約3千人にものぼっており、それらの人々による口コミにより相当数の人が引用商標を認識するようになっていると考える。このように、引用商標は、長年にわたる宣伝広告により広く地域住民にも知られている。また、「届出自動車教習所入所者数等の報告」(甲5)を見れば明らかなとおり、わかば自動車学校への入所者数は、平成22年から年を追って増加していることが分かる。このように、年を追って増加しているということは、年を重ねるごとに、引用商標の知名度(信用)が上昇していることにほかならない。とりわけ、ここ数年における入所者数の増加は著しく、引用商標が、著名性、周知性を獲得していることは明らかである。
加えて、わかば自動車学校は、平成24年から現在に至るまで、一般社団法人全国届出自動車教習所協会に入会して活動しており、かつ、毎年発行される名簿にも「わかば自動車学校」の名称が表記されていることから(甲6)、当業界の業者間においても広く認識されていると考える。
(3)したがって、引用商標は、全国的にも、また、わかば自動車学校が存在する周辺地域においても広く認識されているものであるから、引用商標の識別力を有する部分「わかば」を含む本件商標が、引用商標と同一又は類似する役務、とりわけ同一の業種に係る役務に使用されれば、当業界の需要者は、申立人の業務に係る役務と、出所の混同を生ずるおそれがあることは明白である。
(4)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、「合宿免許わかば」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大、同間隔で、外観上まとまりよく一体的に表されており、これより生じる「ガッシュクメンキョワカバ」の称呼も、無理なく一連に称呼できるものである。
そして、構成中の「合宿免許」の文字は、「合宿をして免許を取得すること」の意味合いを認識させる文字であり、「わかば」の文字は、「若葉」を意味する語であるところ、両語を結合させた「合宿免許わかば」の文字全体は、特定の意味合いを理解させるとはいえないものである。
また、本件商標は、上記構成からなるものであるから、その構成中の一部に着目して取引にあたるものというよりも、むしろその構成全体をもって、取引に資されるものというのが相当である。
そうすると、本件商標からは、その構成文字全体に相応して、「ガッシュクメンキョワカバ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、「わかば自動車学校」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大、同間隔で、外観上まとまりよく一体的に表されており、これより生じる「ワカバジドウシャガッコウ」の称呼も、無理なく一連に称呼できるものである。
そして、構成中の「わかば」の文字は、「若葉」を意味する語であり、また、「自動車学校」の文字が、「自動車運転の教授」等の役務を提供する学校(自動車教習所)の名称を表す語として使用されているものであり、本件商標は、その構成文字全体をもって特定の自動車学校の名称を表したものとして、取引者、需要者に理解されるものであるから、その構成全体を持って、一体不可分のものと認識、把握されるものというのが相当である。
そうすると、本件商標からは、その構成文字全体に相応して、「ワカバジドウシャガッコウ」の称呼を生じ、「わかば自動車学校という自動車学校の名称」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標を比較すると、両商標は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、その構成文字は異なるものであるから、両商標は、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「ガッシュクメンキョワカバ」の称呼と、引用商標から生じる「ワカバジドウシャガッコウ」の称呼とを比較すると、両者は、「ワカバ」の音を共通にするとしても、「ガッシュクメンキョ」及び「ジドウシャガッコウ」の音に、明らかな差異を有するものであるから、両商標は、称呼上、明確に聴別できるものである。
また、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「わかば自動車学校という自動車学校の名称」の観念を生じるものであるから、両者は観念上、相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人は、「本件商標及び引用商標のいずれも、その識別力を有する部分は『わかば』の文字のみであり、両者は同一である。また、当業界の需要者及び取引者は、これら両者の登録商標から識別力を有する文字『わかば』のみをもって、これら両者の商標を識別しようとすることは明らかなことである。」旨を主張している。
しかしながら、本件商標は、上記(1)に記載のとおりの外観上まとまりよく一体的に表されているものであるから、かかる構成においては、その構成全体をもって取引に資されるものというのが相当であり、また、引用商標は、前記(2)に記載のとおり、その構成全体をもって、特定の自動車学校の名称を表すものと理解されるものであるから、その全体をもって一体不可分のものと認識、把握されるものというのが相当である。
イ 申立人は、「本件商標と引用商標のいずれにおいても、その商標の全体から、自動車運転の教授、教習を受けるための機関である『わかば』、そして、その機関である『わかば』にて、自動車運転の教授、教習を受けることを観念する。即ち、いずれの商標からも、『わかば』という名称の自動車学校を観念する。」旨を主張している。
しかしながら、本件商標の構成中の「合宿免許」の文字が、「合宿をしながら自動車学校において自動車運転の教授、教習を受けること」を認識させるものであるとしても、該語が「自動車学校」を表す語として認識されるものとはいえず、また、それを裏付ける証拠の提出はないものである。
一方、引用商標の構成中の「自動車学校」の文字は、前記(2)に記載のとおり、「自動車運転の教授」等の役務を提供する学校(自動車教習所)の名称を表す文字として使用されているものであるから、引用商標は、全体として「わかば自動車学校という自動車学校の名称」を認識させるものであり、本件商標と引用商標の観念は同一のものということはできない。
ウ 申立人は、「本件のように両者の指定役務が全く同一の業種に属するものである場合には、両者の間で誤認混同が生ずることに疑いはない。商標の類否は相対する二つの商標の構成の相違を重視して判断することはもちろんのこと、それらの商標を使用する役務が同一の類似群に含まれているというだけではなく、その類似群の中でも更に密接した関係を有しているか否か、即ち、全く同一の業種に属するか否かまで、重視して判断するべきものである。」旨を主張している。
しかしながら、上記(3)のとおり、両商標は非類似の商標であって、かつ、下記2のとおり、引用商標の周知性は認められないものであるから、これらの商標が同一の業種に関する指定役務に使用されたとしても、取引者、需要者に誤認混同が生じるものとはいえない。
よって、申立人の主張は、いずれも採用することができない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人が提出した甲各号証及びその主張について
ア 申立人は、平成19年6月14日付けで、職業を「自動車学校」、屋号を「わかば自動車学校」として、市川税務署へ「個人事業の開業等届出書」を提出して開業し(甲4)、平成21年10月23日に、東京都公安委員会へ東京都品川区を所在地とする「自動車教習所の届出書」を、その後自動車教習所の所在地の移転に伴い、平成24年1月16日に、千葉県公安委員会へ千葉県浦安市を所在地とする同届出書を提出している(甲5)。
そして、「届出自動車教習所入所者数等の報告」によれば、平成22年から平成28年の入所者数は、それぞれ、17人、113人、251人、446人、597人、786人、629人であり、7年の合計で2,839人である。(甲5)
イ 「わかば自動車学校」のホームページには、画面左上の葉っぱとおぼしき図形の右側、及び、画面右側の「安さ、早さ、楽しさ No.1を目指します」の文字の下に、「わかば自動車学校」の文字が表示されている。
また、「ホームページ制作・保守契約書」において、「株式会社ヒゴワンコンサルティング(以下、甲という。)と、わかば自動車学校(以下、乙という。)は、乙のホーム-ページを甲が制作すること及び、甲による継続的なホームページの保守管理に関して、次の通り契約を締結した。・・・制作業務の納期は平成27年10月20日とする。」の記載がある(甲7)。
ウ 千葉テレビ放送株式会社が、「わかば自動車教習所」宛てに作成した、2013年12月17日付け、2014年2月6日付け及び同年8月8日付けの、2014年1月分、同年3月分及び9月分の請求書には、番組名、放送料に対する金額等の記載がある(甲8)。
エ 平成29年1月に撮影したとされる大学の食堂の掲示板に貼付したビラの写真には、「通学免許17万円台?/最短6回」の文字の下部に「わかば自動車学校」の文字及び電話番号が表示された広告が写っている(甲9)。
オ 平成29年1月に撮影したとされる2箇所の電信柱の写真には、それぞれ「わかば自動車学校」の文字及び電話番号が表示された広告が写っている(甲10)。
(2)引用商標の著名性について
上記(1)によれば、申立人は、平成19年に「わかば自動車学校」の文字を屋号として開業し、平成21年から東京都品川区において、その後自動車教習所の所在地の移転に伴い、同24年からは千葉県浦安市において、上記名称で自動車教習所を運営していることが認められるところ、申立人の自動車教習所は上記のものしかなく、また、平成22年から同28年の7年間の合計入所者数は2,839名であるところ、該人数は、多いとはいい難いものである。
そして、申立人は、ホームページ及び電信柱の広告において、引用商標を表示していることが認められるが、ホームページは、該ホームページにアクセスした者しか見る機会のないものであり、電信柱における広告がなされたのは、わずか2箇所にすぎないものである。
加えて、申立人は、テレビ及び大学の掲示板において、引用商標を広告した旨主張し、証拠を提出しているが、テレビにおける広告は、その内容が明らかでなく、広告が実施されたとする回数も、その主張によれば、6回にすぎないものである。
さらに、大学の掲示板による広告は、その掲載期間、掲載場所等の詳細が明らかではなく、かつ、大学構内の掲示板は、これを見る機会が有るのは限られた者といえる。
その他、引用商標が、我が国の取引者、需要者において、申立人の業務に係る商標として周知であると認めるに足る証拠を見いだすことはできない。
したがって、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
(3)出所の混同について
本件商標は、前記1のとおり、引用商標とは類似しない、別異の商標というべきものであり、また、上記(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に、広く認識されていたとはいえないものである。
してみると、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、該役務が申立人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の提供に係る役務であるかのように、連想、想起するとは考え難く、その出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-09-06 
出願番号 商願2016-33110(T2016-33110) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W41)
T 1 651・ 271- Y (W41)
T 1 651・ 262- Y (W41)
T 1 651・ 263- Y (W41)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大森 友子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 中束 としえ
真鍋 恵美
登録日 2016-10-28 
登録番号 商標登録第5892154号(T5892154) 
権利者 株式会社ティー・アイ・エス
商標の称呼 ガッシュクメンキョワカバ、ガッシュクメンキョ、ワカバ 
代理人 河野 生吾 
代理人 平山 精孝 
代理人 河野 誠 
代理人 楠 和也 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ