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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X0140
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X0140
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X0140
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X0140
管理番号 1332321 
審判番号 無効2016-890036 
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-05-31 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5417057号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5417057号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5417057号商標(以下「本件商標」という。)は、「ORGANO SCIENCE」の文字を標準文字で書してなり、平成22年6月16日に登録出願、第1類「芳香族有機化合物,脂肪族有機化合物,有機ハロゲン化物,アルコール類,フェノール類,エーテル類,アルデヒド類及びケトン類,有機酸及びその塩類,エステル類,窒素化合物,異節環状化合物,有機リン化合物,有機金属化合物,化学剤,原料プラスチック,有機半導体化合物,導電性有機化合物」及び第40類「有機化合物・化学品・原料プラスチックの合成及び加工処理」を指定商品及び指定役務として、平成23年6月10日に設定登録されたものである。その後、指定商品中の「第1類 化学剤,原料プラスチック」についての商標権は、平成28年3月18日受付の商標権の登録の一部放棄により、また、指定役務中の「第40類 化学品・原料プラスチックの合成及び加工処理」についての商標権は、平成28年6月17日受付の商標権の登録の一部放棄により、その登録の一部が抹消されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりである。
1 登録第1490120号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ORGANO」の欧文字を横書きしてなり、昭和51年4月5日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、昭和56年11月27日に設定登録されたものである。そして、その指定商品中、商標権の登録の一部放棄により、「無機工業薬品、有機工業薬品、のりおよび接着剤」についての商標権の抹消登録が昭和57年7月26日にされ、残余の指定商品について、平成14年10月9日に、指定商品を第1類「界面活性剤,化学剤」とする指定商品の書換の登録がされ、また、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
2 登録第1490119号商標(以下「引用商標2」という。)は、「オルガノ」の片仮名を横書きしてなり、昭和51年4月5日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、昭和56年11月27日に設定登録されたものである。そして、その指定商品中、商標権の登録の一部放棄により、「無機工業薬品、有機工業薬品、のりおよび接着剤」についての商標権の抹消登録が昭和57年7月26日にされ、残余の指定商品について、平成14年10月16日に、指定商品を第1類「界面活性剤,化学剤」とする指定商品の書換の登録がされ、また、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめていうときは、単に「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第143号証(枝番を含む。なお、枝番を有する証拠において、枝番のすべてを引用する場合は、枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 請求人の事業について
(1)請求人は、昭和21年に株式会社日本オルガノ商会として設立され、昭和41年に現商号に変更した。なお、請求人の英語表記は「ORGANO CORPORATION」である。
請求人は、本件商標の出願時及び登録時において、商号中に「オルガノ」の文字を有する数多くの子会社、孫会社を設立していた(甲6?甲9、甲11?甲14)。また、それらの子会社の英語表記には、「ORGANO」の文字が用いられている(甲10)。
(2)請求人は、総合水処理エンジニアリング企業として、用水製造や排水処理等の幅広い事業活動を行っており、電子産業、化学・素材産業、食品・飲料製造業、医薬品・化粧品・医療機器製造業、大学・研究所、病院・福祉施設、外食産業等、あらゆる産業にその事業活動は及ぶ。水処理装置事業としては、主として各種製造業者向けの純水製造装置、超純水製造装置、排水処理装置、発電所向けの復水脱塩装置、官公需向けの上下水設備等の製造、納入、メンテナンスを実施している。特に、超純水は半導体や液晶の製造過程に欠かせないものであるが、請求人が製造販売する超純水製造装置は、水処理装置事業の主力商品であり、市場シェアの3割以上を占め、半導体や液晶等の電子産業は、請求人の主要顧客層を形成している(甲15?甲20)。
また、薬品事業としては、水処理薬品、イオン交換樹脂、食品添加物との化学品の製造、販売等を実施している(甲7?甲21)。薬品事業のうち、水処理薬品及びイオン交換樹脂は、水処理を行う際に必要な薬品であり、水処理装置事業と密接に関連し、しばしば一体として販売される。
(3)請求人の事業の売上高は、本件商標の出願時である平成23年3月期(平成22年4月1日?平成23年3月31日)は、610億9700万円であり、そのうち水処理設備を主とする水処理エンジニアリング事業は406億1800万円、薬品事業を主とする機能商品事業は204億7900万円であった(甲7)。
また、本件商標の登録時である平成24年3月期(平成23年4月1日?平成24年3月31日)は685億200万円であり(甲8)、そのうち水処理エンジニアリング事業は490億9600万円、機能商品事業は194億500万円であった(甲8)。
(4)以上のとおり、請求人は、年間の売上高が600億円を超える企業であり、その事業は、水処理装置事業及び薬品事業を中核として、化学工学、工業化学分野を中心に多角的に事業展開している。
2 被請求人の事業について
(1)被請求人は、平成18年8月10日に、東海理化学産業有限会社を商号変更した企業であり、試薬及び有機化学工業薬品の製造販売、有機化学工業薬品の輸入販売及び輸出並びにそれらに附帯する一切の業務を事業目的としており、資本金の額は1500万円である(甲22)。
(2)本件商標の拒絶理由通知に対する意見書(甲24)及び拒絶査定不服審判請求書(甲25)において、被請求人は、「本出願人は、ウシオケミックス株式会社を基盤として創られた会社で・・・同社の新たな事業展開である有機半導体、有機EL材料等の研究開発及び製造販売の事業をより発展させるべく、同社とは分離して、本出願人を創った」旨述べていること、被請求人が液晶関連の特許出願(甲26?甲29)を複数行っていることからも明らかなように、被請求人の製造、販売する試薬及び有機化学工業薬品の主たる需要者は、有機半導体材料、有機EL材料を取り扱う化学産業、有機半導体、有機EL等を使用する電子産業である。
3 引用商標の周知・著名性
(1)請求人の旧商号及び現商号の略称である「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」は、請求人が設立当初から使用しているハウスマークである。請求人のコーポレートマークは、時代の変遷によりその態様が変化したが(甲13、甲99、甲128)、平成8年4月10日に、水玉をイメージする図形と「ORGANO」又は「オルガノ」を組み合わせた標章(別掲1及び別掲2のとおりの構成からなる商標。以下、前者を「使用商標1」といい、後者を「使用商標2」という。)に変更され、かかる新たなコーポレートマークについて商標登録を受け(甲92、甲94?甲97)、現在に至るまで、請求人の広告類、カタログ類、報告書類等に使用されている。
(2)請求人のハウスマークでもある引用商標は、水や化学剤を必要とする製造業者、発電所、国の機関・自治体その他一般消費者等広汎な需要者の間で、本件商標の出願時、登録時及び現在において周知著名なものとなっている(甲30?甲133)。以下、各証拠の要旨について補足説明を行う。
ア 甲第30号証ないし甲第79号証は、請求人の総合カタログ、個別商品カタログ類であり、これらには、いずれの表紙にも、使用商標1又は使用商標2が請求人のコーポレートマークとして表示されている。そして、かかる図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字とは、常に不可分一体のものとして認識し把握されるものではなく、それぞれが独立して出所識別標識としての機能を果たしている。
請求人が本件商標の指定商品と類似の商品である多数の「化学品」のラインナップを有し、これらのカタログ類の頒布だけでも相当な宣伝効果を行っていることは証拠上明らかである。また、これらの水処理薬品やイオン交換樹脂等の「化学品」は、甲第16号証、甲第30号証、甲第31号証、甲第34号証及び甲第78号証等から明らかなように、純水製造設備、ボイラ、冷却水設備、給水設備、排水設備等で水を処理するために使用するものであり、水処理装置事業と密接に関連するものであることが明白である。したがって、水処理装置事業と薬品事業とは、その性質上区分し難い密接な関連性を有している。
請求人は、イオン交換樹脂の総合カタログ(甲78)や技術資料(甲79)等の頒布、専用WEBサイトの開設からも明白なように、我が国におけるイオン交換樹脂事業のパイオニアとして継続的な営業活動を行っており、「オルガノ」の商標は、イオン交換樹脂事業を示すものとして著名であることに揺るぎはない。
そして、請求人の水処理装置事業の売上高が403億3800万円であるのに対し、薬品事業の売上高は131億7600万円となっている(甲135)。
このように、請求人の事業における薬品事業は、水処理装置事業と比較すれば相対的には小さいが、絶対的な規模としては大きなものである。
イ 甲第80号証ないし甲第83号証は、請求人が新聞紙上に掲載した広告の一例である。請求人は、これらの題字広告では、「オルガノ」の文字からなる商標が、「総合水処理・イオン交換装置」、「純水装置・排水処理装置」、「水の高度処理全システム」、「すべての水は資源」、「水のプラントメーカー」、「水のトータルエンジニアリング」、「心と技で水の価値を創造する」、「工場の節水支援 排水処理・水リサイクル技術」等の語句とともに掲載されている。同号証は請求人が掲載した題字広告のごく一部であり、請求人は、昭和39年から現在に至るまで50年以上にわたり定期的に、新聞の1面の新聞紙名の真下に表示される題字広告を実施しており、引用商標である「オルガノ」の周知性向上に努めている。
ウ 甲第86号証及び甲第87号証は、請求人が受賞した日本工業新聞産業広告賞受賞作品、日本産業広告賞受賞作品の抜粋であり、甲第88号証は、請求人の広告賞入賞履歴一覧である。また、甲第89号証ないし甲第91号証は、請求人が雑誌・新聞等において実際に行った広告例の一例であるが、請求人が商標「ORGANO」及び「オルガノ」の認知度の向上に努めていたことは明白である。
そして、前記広告類は、請求人の水処理装置に係る事業に限定された広告ではなく、水処理薬品やイオン交換樹脂等の水の処理に必要な「化学品」を販売する薬品事業を含めた、請求人の水処理に関わる事業全体を抽象的に広告したものである。
また、カタログ類及び広告類には、「ORGANO」の文字からなる商標、「オルガノ」の文字からなる商標、及び、「ORGANO」又は「オルガノ」の文字と水玉をイメージする図形とを結合した請求人のコーポレートマークの商標(以下、「使用商標1及び使用商標2」という。)が使用されている。これらの商標はいずれも、化学剤、化学品、浄水装置、水処理装置の設計等を指定商品又は指定役務として商標登録されているものである。引用商標は、「界面活性剤,化学剤」を指定商品とするものであるところ、それ以外に登録されている請求人の登録商標の一部である甲第92号証ないし甲第98号証の商標は、いずれも「ORGANO」又は「オルガノ」の文字を有する商標であり、これらの登録商標の使用を通じて、請求人のハウスマークである「ORGANO」及び「オルガノ」が周知著名なものとなっているものである。
エ 甲第100号証ないし甲第127号証は、いずれも請求人が新聞、専門誌等の刊行物等に取り上げられた記事であり、甲第128号証及び甲第129号証は、請求人が作成した情報誌等の刊行物の一部であって、請求人が「ORGAの」及び「オルガノ」の表示のもとに自社の技術を刊行物として発行することにより、企業理解を促す活動も行ってきた。また、甲第130号証は、請求人が行ったプレスリリースであり、「ORGANO」の表示のもとに請求人は積極的にマスメディアに情報提供を行っている。
オ 甲第131号証ないし甲第133号証は、社団法人産業機械工業会が主催した「第33回優秀環境装置」において、請求人の電子部品洗浄用機能水製造装置が経済産業大臣賞を受賞したことを報道した記事であり、本件商標出願前の、半導体や液晶等の電子部品産業における請求人の高い周知度を示すものである。
(3)本件商標の指定商品・指定役務の需要者は、各種有機化合物を原料として必要とする製造業者であり、これらの製造業者は工場の操業にあたり水の使用と排水を必須とするから、同時に水処理事業の需要者でもある。したがって、請求人の薬品事業のみならず水処理装置事業が大規模に行われ、宣伝広告されることによっても、引用商標は、本件商標の指定商品・指定役務の需要者に周知・著名となっていることは明らかである。
(4)請求人の引用商標である「オルガノ」の周知著名性については、「オルガノサイエンス」の片仮名からなる被請求人の登録商標の無効審判事件(無効2014-890019)においても明らかである。この無効審判事件において、請求人は、「オルガノサイエンス」は、需要者、取引者の間に広く認識された請求人の登録商標である「オルガノ」と、識別力を有しない「サイエンス」という片仮名の結合商標であり、「オルガノ」に要部があるのであるから、引用商標「オルガノ」と類似し、商標法第4条第1項第11号の規定により商標登録を受けることができないものであると主張したが、審決は、かかる主張を排斥した(甲142)。
しかし、同審決を不服とするこの審決を審決取消請求訴訟(平成26年(行ケ)第10268号)において、知的財産高等裁判所は、審決の認定判断を取り消し、薬品事業に関しても「オルガノ」の周知・著名性を認めるとともに、「オルガノサイエンス」と「オルガノ」とは類似する商標であると判断した(甲143)。
4 無効理由1(商標法第4条第1項第11号違反)について
(1)商標の類否
本件商標は、その構成中の「ORGANO」の部分と「SCIENCE」の部分がスペースを介して明確に分離されている。そして、「ORGANO」は、一般用語としては認識されていない創造商標であり、請求人の薬品事業を示すものとして、自他商品及び役務の識別力を強く発揮している一方、「SCIENCE」は、「科学」等を意味する外来語として日本人の間に広く定着しているとともに、企業の商号中に極めて多く採用されており(甲136、甲137)、自他商品及び役務の識別力に極めて乏しいものである。
したがって、本件商標は、その構成中の「ORGANO」の部分が要部となるから、引用商標と類似する。
(2)指定商品及び指定役務の類否
ア 本件商標の指定商品のうち、「芳香族有機化合物,脂肪族有機化合物,有機ハロゲン化物,アルコール類,フェノール類,エーテル類,アルデヒド類及びケトン類,有機酸及びその塩類,エステル類,窒素化合物,異節環状化合物,有機リン化合物,有機金属化合物及び化学剤」については、類似商品・役務審査基準で示される「化学品」に該当するものである。
また、本件商標の指定商品のうち「有機半導体化合物及び導電性有機化合物」についても、「化学品」の一種であるから、類似商品・役務審査基準で示される「化学品」に該当するものである。
一方、引用商標の指定商品の「化学剤」は、類似商品・役務審査基準で示される「化学品」の中の「化学剤」に該当するものである。
したがって、両者は、類似商品・役務審査基準で示される同一の「化学品」に属する同一又は類似の商品である。
イ 本件商標の指定商品中の「原料プラスチック」は、「化学剤」とは別の商品に属するものの、「化学剤」と同様、工業上使用される化合物であるから、引用商標に係る指定商品との類似の判断において何ら消長を来すものではない。
ウ 本件商標の指定役務は、「有機化合物・化学品・原料プラスチックの合成及び加工処理」であるが、これらの役務は、各種化合物の受託製造に他ならず、化学剤を製造販売する事業者が行うことが一般的な役務であるため、引用商標に係る指定商品と類似する。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似し、その指定商品・指定役務は引用商標の指定商品と同一又は類似するから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 無効理由2(商標法第4条第1項第15号違反)について
(1)広義の混同の判断基準
商標法第4条第1項第15号における「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商標も含まれると解されることについては、最高裁判所平成12年7月11日第三小法廷判決(レールデュタン事件)で示したとおりである。
そこで、最高裁判例及び商標審査基準に示した判断基準に従い、本件商標における「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」の該当性について、以下述べる。
(2)本件商標と引用商標の類似性
前記4(1)のとおり、本件商標は、引用商標と類似する。
(3)引用商標の創造性
「ORGANO」は、それ自体独立した言語として掲載した辞書は存在せず、一般用語としては認識されていない独創性のある語である。わずかに、英語辞書の中には、接頭語として「organ-o-(接尾語)」として掲載されている場合があるにすぎない。したがって、「ORGANO」の文字単独で、「有機の」といった意味を持つと解することはできない。「ORGANO」の文字は、一般用語としては認識されていない創造商標である。
(4)引用商標の周知・著名性
前記3のとおり、引用商標は、請求人の水処理装置事業及び薬品事業を示すものとして、需要者・取引者の間で周知・著名なものである。
(5)ハウスマークである引用商標
引用商標は、請求人の商号である「オルガノ株式会社」の略称であり、甲第30号証ないし甲第133号証に示されるカタログ、広告類でも使用されているように、請求人が使用しているハウスマークである。
(6)請求人の多角経営
請求人は、主として、総合水処理エンジニアリング会社として水処理装置事業と薬品事業を柱としつつ、その技術力を活かして、化学工学及び工業化学分野での広範な事業を行っており、また、請求人は、工業薬品類の販売、水処理機器類の販売、食品素材・添加物、栄養補助食品等の開発・製造販売、工場排水処理設備の製造販売を行っている子会社、孫会社を多数設立し、これら子会社、孫会社のほとんどが、その商号中に「オルガノ」の文字を有しているのであり、「オルガノ」ブランドの下に多角的な事業運営を行っている。
(7)商品間又は役務と商品の関連性
請求人の行う水処理装置事業は、純水・超純水、上水などの用水製造装置、下排水処理装置、クロマト分離装置などの、プラントや機器を工学的に設計・製造・販売等する事業であり、化学工学の技術分野に属するものである。また、薬品事業は、工業的に化学品を製造・販売する事業であり、様々な化合物の混合物を薬品として製造・販売する事業であり、例えば、様々な有機化合物や無機化合物を含む、重金属固定剤、洗浄剤、除菌剤、消臭剤、消泡剤、非イオン性界面活性剤除去剤、高分子凝集剤、不純物除去剤、給水用防錆剤、過酸化水素分解剤、次亜塩素酸ナトリウム剤、燃料添加剤、ボイラ処理剤、防食剤、冷却水処理剤等を製造・販売している(甲33?甲77)。さらに、イオン交換樹脂や食品添加物も取り扱っている(甲78、甲79、甲8)。
一方、本件商標の指定商品・指定役務は、様々な種類の有機化合物に係る商品と、その合成等に係る役務とされている。
このように、請求人の業務に係る商品又は役務と、本件商標の指定商品及び指定役務は、いずれも化学に関する技術を活かした商品及び役務である点で同一分野に属するものであり、特に、請求人の製造、販売する薬品の中の多くは、本件商標の指定商品である様々な種類の有機化合物を混合することにより得られるものであるから、本件商標の指定商品及び指定役務との間の抽象的な関連性及びその可能性を越えて、現実かつ具体的に、両者は密接不可分に関連している。
(8)需要者・取引者の共通性
請求人の事業の需要者、取引者は、用水製造や排水処理等の水処理プラント又は中・小型装置、水処理薬品等の化学剤等を必要とする各種製造業、サービス業、発電所、国の機関、自治体、一般消費者等である一方、本件商標の指定商品の需要者は、指定商品である化合物を製品原料などとして必要とする各種製造業者である。そして、化合物を原料などとして必要とする製造業者は、水処理設備又は水処理装置、水処理用化学剤を必要とする製造業者でもある。
したがって、請求人の事業の需要者、取引者と、本件商標の指定商品の需要者、取引者とは、その多くが共通する。
ここで、「混同を生ずるおそれ」の可能性が高いことについて、補足する。
前記4に記載のとおり、請求人にとって、半導体や液晶等の電子産業は、超純水を大量に消費する重要な需要層である(甲15?甲20)。また、請求人は、化学工業に対して、用水又は排水処理装置を提供するのみならず、イオン交換樹脂を、酸・塩基の固体触媒、電子材料の分離精製、電解液の精製といった用途にも提供しており(甲18)、電子材料メーカー等の化学産業は、水処理以外の事業においても需要層である。すなわち、電子産業及び電子材料産業は、請求人にとって重要顧客である。
一方、本件商標の指定商品の主たる需要者もまた、有機半導体材料、有機EL材料を扱う化学産業、又は有機半導体材料や有機EL材料を使用する電子産業であることから、請求人の事業の需要者と本件商標の指定商品の主たる需要者は一致する。このような状況において、本件商標がその指定商品に使用された場合は、当該商品が請求人の系列会社の業務に係る商品であると誤認される可能性は極めて高い。
(9)小括
以上を総合的に勘案すると、本件商標をその指定商品又は指定役務に使用する場合には、その需要者及び取引者において、その商品又は役務が、請求人との間にいわゆる親子会社等の緊密な営業上の関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると混同される可能性が極めて大きいものである。
また、本件商標は、請求人が長年の事業の蓄積により引用商標に化体した信用にフリーライドするものであり、かかる事態は、引用商標に化体した信用、顧客吸引力を容易に損ない、請求人の営業上の利益が害されるばかりでなく、需要者、取引者に商品及び役務の誤認混同による多大な不利益を与えるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 請求人に対する反論
(1)請求人の事業について
ア 請求人の子会社については、現在、そのうちの7社が請求人に吸収合併され、インターネット(以下、ネットとする)上には関連会社として6社が記載されているだけである(乙11)。
請求人の事業内容は、水処理設備を主とする水処理エンジニアリングと薬品事業を主とする機能性商品事業に大別され、大よそであるが、前者が売り上げの3/4を占め、後者が1/4を占めるものと推察される。請求人の薬品事業については、現在でも著名ではなく周知でもないと思われる。
イ 「薬品事業のうち、水処理薬品及びイオン交換樹脂は、水処理を行う際に必要な薬品であり」との記載があるが、これらは請求人が一部抹消した無機工業薬品、有機工業薬品に含まれる。
(2)被請求人の事業について
ア 被請求人は、高付加価値・高純度の有機化合物、換言すれば有機工業製品を製造販売する企業であり、請求人とは目的等企業方針が全く異なる企業である。被請求人がその名称を「オルガノサイエンス」としたのは、有機化学を、電子工学等広い分野に利用することを目指し、商号として登記したものである。
イ 「被請求人の製造、販売する試薬及び有機化学工業薬品の主たる需要者は、有機半導体材料、有機EL材料を取り扱う化学産業、有機半導体、有機EL等を使用する電子産業である。」と請求人が指摘する。この試薬及び有機化学工業薬品は、請求人が引用商標の指定商品から一部放棄した無機工業薬品、有機工業薬品である。
ウ 本件商標は、引用商標1及び引用商標2を基に商標法第4条第1項第11号、あるいは同第15号により拒絶理由通知を受けたことはない。これは、本件商標が、引用商標1及び引用商標2と非類似であり、狭義・広義の出所の混同の恐れはないものとして扱われていた証左となる。
(3)「ORGANO」及び「オルガノ」の周知・著名性
ア 請求人の保有している登録商標を特許庁の特許情報プラットフォームにて検索すると、ヒット件数として285件表示される(平成28年6月26日現在)。これだけ多くの登録商標を請求人は有し、「ORGANO」及び「オルガノ」は、設立当初から使用し周知・著名となり、ハウスマークとして使用してきたならば、これらの商標はより広範囲な保護を求めるため防護標章登録することが一般的である。しかし、これらの商標についての登録防護標章は見当たらない。
また、請求人の使用の歴史から見れば、周知・著名商標として掲載されてもよいはずであるが、乙第3号証のとおり、引用商標は記載されていない。企業が新聞等のマスメディアを介し自社の名称や事業内容を周知することは普通に行われており、それらの資料をもって周知・著名といえるものではない。
さらに、登録防護標章は見当たらず、著名・商標としての記載はなく(乙3)、上記の件を考慮すれば、引用商標は必ずしも周知・著名というものではない。
イ 請求人は、図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字とは、常に不可分一体のものとして認識し把握されるものではなく、それぞれが独立して出所識別標識としての機能を果たしている旨主張する。
しかし、使用商標1及び使用商標2は、文字、図形、又はこれらと色彩との結合商標であって、「オルガノ」の文字が独立して出所識別標識としての機能を果たしているものではない。なぜなら、引用商標である「オルガノ」又は「ORGANO」の文字だけで独立した登録商標及び文字がない水玉図形だけの登録商標が別に存在するからである(乙8、乙15)
同様に、本件商標「ORGANO SCIENCE」も、「ORGANO」や「SCIENCE」が、それぞれ独立して出所識別標識としての機能を果たしているのではなく、一体不可分の結合商標として出所識別標識としての機能を果たしているのである。
2 無効理由1(商標法第4条第1項第11号に基づく無効理由)について
(1)商標について
ア 外観
外観の対比は商標全体の観察により行われるべきものであって、色分けでもしない限り一部に着目して行われることはない。外観の対比は見た目、すなわち図形的に判断されるものであって文字として判断されるべきものではない。外観を対比すると、本件商標は「ORGANO SCIENCE」全体で観察対比され、「ORGANO」の部分のみを色を変えたり文字を大きくしているものではないことから、「ORGANO」の部分に着目して外観を対比することはありえない。まして、引用商標2の仮名書の「オルガノ」については、対比するまでもなく外観非類似である。
イ 称呼
本件商標は「オルガノサイエンス」と9音からなっている。近年商標登録件数は増加し、短い音からなる商標は登録されにくくなり、長い音からなる商標は増加し、9音程度で冗長ということはできない。すなわち、「オルガノサイエンス」と一息に発声することに負担を感じることはなく、これを短縮して「オルガノ」と発声することはない。
ウ 観念
標準的な英和辞典に見られるように、「organo」は、接頭語であり有機、器官とあらわされている。例えば、「ORGANO-ELECTROLUMINESCENCE CIRCUIT」有機EL回路、「ORGANO SILICA SOL」オルガノシリカゾル等である。すなわち「ORGANO SCIENCE」は「有機の科学」の観念を生ずる造語ともいうべきものである。一方、「ORGANO」は辞書にもあるように有機、器官の観念を生ずる。
エ 本件商標は、「ORGANO」と「SCIENCE」の結合商標であり、いずれの単語も標準的な辞書に掲載され、一般的に使用される用語である。本件商標の「SCIENCE」も自他商品識別力があり、「ORGANO」が要部というものではなく、双方が結合して一つの意味を有する一体不可分の商標になっている。
オ 小活
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、外観、称呼及び観念ともに相違し、互いに非類似の商標である。
(2)指定商品及び指定役務について
本件商標の指定商品及び指定役務は、請求人が指定商品のうち、一部抹消した無機工業薬品、有機工業薬品にすべて含まれ、互いに指定商品及び指定役務は共通するものがなく、出所の混同は生じ得ない。また、一般的に使用されている無機工業薬品、有機工業薬品の言葉の意味からすれば、一部抹消前の本件商標の指定商品及び指定役務であっても、請求人が一部放棄した無機工業薬品、有機工業薬品にすべて含まれるといえる。
請求人が、本件商標の指定商品及び指定役務が、引用商標中の自ら放棄した指定商品に含まれることを知って本審判請求することは、信義・誠実の原則に違背するものである。
(3)小括
「ORGANO」は標準的な辞書に掲載され、独創性のある創造商標といえるものではなく、また、「SCIENCE」は、出所識別標識としての称呼及び観念が生じ、自他商品及び役務の識別力に極めて乏しい等といえるものではない。
本件商標「ORGANO SCIENCE」の「ORGANO」と「SCIENCE」は、いずれも英和辞典に記載され、「ORGANO」の部分は、辞書の記載どおりに有機の意味で接頭語として使用され、いずれかが要部であるとすることはできず、全体で「有機の科学」という観念を生ずる一体不可分の結合商標であって、新しく造られた造語である。
したがって、本件商標と引用商標とは、全く非類似の商標である。
(4)以上のように、本件商標が引用商標1及び引用商標2をもとに商標法第4条第1項第11号を適用する場合はない。
3 無効理由2(商標法第4条第1項第15号)について
(1)本件商標の指定商品及び指定役務の全ては、請求人が指定商品のうち、一部抹消した無機工業薬品、有機工業薬品に含まれ、互いに指定商品及び指定役務は共通するものがなく、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、狭義にせよ広義にせよ出所の混同は生じ得る場合は全くなく、商標法第4条第1項第15号が適用される場合はない。
(2)本件商標「ORGANO SCIENCE」は、辞書に記載とおりに使用した接頭語であり、有機という意味を持つ「ORGANO」と「SCIENCE」が、一体不可分の結合商標として出所識別標識としての機能を果たしているのであり、それぞれ独立して出所識別標識としての機能を果たしているのではない。本件商標と引用商標とは、互いに非類似の商標であり、この視点からも、狭義にせよ広義にせよ出所の混同は生じ得ない。
(3)被請求人は本件商標において、化学剤について、一部抹消の手続きをしている。本審判請求書において、請求人が一部放棄し抹消した指定商品である「無機工業薬品,有機工業薬品,のり及び接着剤」について何ら記載することなく、請求人が抹消した範囲について狭義・広義の出所の混同を主張することは、信義・誠実の原則に違背する。
(4)請求人は、子会社、孫会社を有していたが、吸収合併した後、現在では6社であることがネット上から知ることができる(乙11)。そこには、使用商標1及び使用商標2が付されていて、「ORGANO」又は「オルガノ」の文字だけの商標は付されていない。この使用商標1及び使用商標2は、文字、図形、又はこれらと色彩との結合商標であって、「オルガノ」の文字が独立して出所識別標識としての機能を果たしているものではない。そして、この使用商標1及び使用商標2は子会社であるオルガノプラントサービス(株)、オルガノテクノ(株)、オルガノアクティ(株)には付されているが、他の関連会社では見当たらない。また、「オルガノ」、「ORGANO」だけの商標はいずれの関連会社にも付されていない。さらには、請求人のネット上のホームページにも使用商標1及び使用商標2が付されている(乙12)。なお、甲第10号証には水玉のみの商標が付されている。甲第6号証から甲第79号証までのカタログでは、使用商標1及び使用商標2が多用され、「オルガノ」又は「ORGANO」の文字だけの商標は見当たらない。
甲第80号証ないし甲第83号証には、各新聞に引用商標1の「ORGANO」を見つけることはできないが、引用商標2の「オルガノ」が記載されている。しかし、甲第80号証ないし甲第83号証を見る限り、2013年までの記事である。
請求人は「オルガノ」又は「ORGANO」がハウスマークと主張しているが、甲各号証を見る限り、引用商標1は、使用していない状態であり、また、引用商標2は、新聞紙上に掲載されていたが、前述のように2013年までであり、現在も掲載しているか否か不明である。また、新たな製品を開発したり新たな市場を開拓したりする多角化はほとんどの企業が行っていて、請求人だけではない。
こうした状況下にあっては、引用商標1や、引用商標2がハウスマークとはいえるものではなく、標準的な辞書に掲載されている単語が創造標章などといえるものでもない。
商品間、役務間又は商品と役務との関連性は、前述のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務の全ては、請求人の指定商品のうち、一部抹消した無機工業薬品、有機工業薬品に含まれ、引用商標の指定商品には含まれず、狭義にせよ広義にせよ出所の混同は生じ得る場合は全くなく、総合的に考慮して、商標法第4条第1項第15号が適用される場合はないのである。
4 結論
以上のように、本件商標と引用商標とは指定商品及び指定役務が全く重複せず、商標も非類似であり、本審判請求は、成り立つものではなく、当然に棄却すべきものである。

第5 当審の判断
1 引用商標の著名性
(1)請求人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 請求人は、昭和21年に株式会社日本オルガノ商会として設立され、昭和41年に現在の「オルガノ株式会社」に商号を変更した。請求人の商号の英訳名は、「ORGANO CORPORATION」であり、「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」は、請求人設立以来、請求人のハウスマークとして使用している。また、請求人の子会社の多くは、社名に「オルガノ」の文字を冠している(甲7)。
イ 請求人は、総合水処理エンジニアリング会社として、水処理エンジニアリング事業と機能商品事業を中心に営業活動を行う企業であり、主要営業品目には、産業用水処理設備、上下水道関連設備、環境関連設備、地下水・土壌浄化関連設備、産業プロセス関連設備、標準型水処理機械関連設備、水処理関連薬品、食品添加剤、サービス事業がある(甲12等)。
また、薬品関連の事業では、水処理薬品、イオン交換樹脂、食品添加物等の化学品の製造・販売等をはじめ(甲8、甲78、甲79)、様々な有機化合物や無機化合物を含む、重金属固定剤、洗浄剤、除菌剤、消臭剤、消泡剤、非イオン性界面活性剤除去剤、高分子凝集剤、不純物除去剤、給水用防錆剤、過酸化水素分解剤、次亜塩素酸ナトリウム剤、燃料添加剤、ボイラ処理剤、防食剤、冷却水処理剤等の製造・販売を行っている(甲33?甲77)。
ウ 請求人は、1980年代における半導体の急成長に伴い、その製造に不可欠な超純水の製造装置を半導体製造企業に納品したことで、急成長を遂げ、2008年度(平成20年度)の超純水製造装置の市場占有率は30%を超えている。
また、原子力発電所向けの水処理プラントでは圧倒的なシェアを有しており、さらに、請求人の製造販売に係る水処理薬品及びイオン交換樹脂は、水処理を行う際に必要な薬品・材料であり、水処理装置事業と密接に関連しており、イオン交換樹脂とイオン交換膜から構成され、純水・超純水製造装置に組み込まれる電気再生式イオン交換装置の請求人の2008年度(平成20年度)の市場占有率は約15%である(甲15)。
そして、請求人のボイラ用水・冷却水向け薬品の2008年度(平成20年度)の市場占有率は8.3%で、いずれも我が国においては、栗田工業株式会社に次いで2位であった(甲8、甲11、甲15等)。
エ 請求人は、平成23年3月の時点において、子会社21社、関連会社2社及び東ソー(親会社)で構成されるグループを形成し、幅広い分野での経営の多角化を推し進めており、さらに、海外に関連会社を有し、国際的な事業展開も行っている。
請求人の事業の売上高は、本件商標の登録出願日(平成22年6月16日)に近接した平成23年3月期(平成22年4月1日?平成23年3月31日)は、610億9700万円であり、そのうち水処理エンジニアリング事業は406億1800万円、薬品事業を主とする機能商品事業は204億7900万円である。本件商標の登録査定日(平成23年5月13日)に近接した平成24年3月期(平成23年4月1日?平成24年3月31日)は、685億200万円であり、そのうちの水処理エンジニアリング事業は490億9600万円、機能商品事業は194億500万円である(以上、甲6?甲8等)。
オ 請求人は、1964年(昭和39年)から少なくとも本件商標の登録査定日に至るまでの間、新聞の題字広告(1面の新聞紙名の真下に表示される広告)として、「オルガノ」の文字を大きく表示するとともに、例えば、本件商標の登録出願日に近接した時期である2010年(平成22年)4月20日付け朝日新聞には、「一滴から超純水 デスクトップ用超純水装置」、同じく2010年(平成22年)3月20日付け読売新聞には、「地下水・土壌環境対策技術」、同じく2010年(平成22年)1月20日付け日本経済新聞には、「心と技で水の価値を創造する」、同じく2000年(平成12年)8月20日付け毎日新聞には、「心と技で水の価値を創造する/水のトータルエンジニアリング」などの文字を表示して、継続して広告を行った(甲80?甲83)。
また、請求人は、本件商標の登録出願日前までに、テレビやインターネットを介して、使用商標1や、「ORGANO」や「オルガノ株式会社」の文字を表示して広告をし(甲84、甲85)、請求人の行った広告について、「日本工業新聞産業広告大賞」、「日本産業広告賞」を受賞した(甲86?甲88)。
さらに、請求人は、本件商標の登録出願日前から登録査定日までに、「工業用水」(平成16年5月20日発行)、「PHARM TECH JAPAN」(平成16年12月1日発行)、「New Food Industry」(平成19年4月1日発行)、「水と水技術」(2010年(平成22年)7月15日発行)といった雑誌に、使用商標1を表示して広告を行った(甲90)。
その他、請求人は、後記キの「第33回優秀環境装置表彰」を報道する記事と同時にした新聞広告(甲132、甲133)やプレスリリース(甲130)において、使用商標1を表示した。
カ 請求人は、総合水処理エンジニアリング会社として、本件商標の登録出願日前から登録査定日に至るまでに、新聞、雑誌等に頻繁に取り上げられている(甲100の1、甲102?甲122、甲124?甲127)。
例えば、2005年(平成17年)5月26日付け日経産業新聞には、「国内大手の栗田工業とオルガノ/水処理、中国でも激突」の見出しのもと、「自動車、電機、食品など、幅広い業種の工場で必要な水処理。国内大手の栗田工業とオルガノが、中国でも激しいつばぜり合いを演じている。・・・栗田は水処理薬品、オルガノは装置メーカーと出発は異なるが、水処理専門の上場会社として、自他共に認めるライバル。国内ではともに民需が主体で、『営業の栗田』『技術のオルガノ』と並び称される。特に高純度の水処理技術が求められる液晶・半導体向けの超純水製造装置では、大手電機メーカーからの受注を獲得しようと、しのぎを削ってきた。」(甲102)と、2008年(平成20年)2月5日号の「エコノミスト」には、「工場排水についても、栗田工業やオルガノ、三菱重工業などの水処理プラントの海外での出番が増えている。・・・世界では、飲料水不足も深刻化している。・・・汚水を浄化、海水を淡水化して飲料水に換える逆浸透膜やイオン交換樹脂で世界的に高いレベルの技術を持つ東レ、東洋紡、三菱レイヨン、栗田工業、オルガノ、荏原が、海外展開を図っている。」(甲104)と、それぞれ記載されている。
そして、フジサンケイ ビジネスアイでは、2006年(平成18年)9月18日から同22日まで、「明日への布石」と題する特集記事で「純水を求め続けて」として、使用商標2とともに請求人の事業が紹介された(甲105?甲109)。
さらに、2009年(平成21年)12月4日付け化学工業日報には、「排水中の窒素 連続処理/オルガノ3?5倍高速に」の見出しのもと、「オルガノは、排水の嫌気性生物処理(UASB)で一般的なグラニュール法について、有酸系の好気性手法を適用した窒素の高速処理技術を開発した。」(甲112)と、2009年(平成21年)2月12日付け化学工業日報には、「食品事業を子会社に集約/オルガノ」の見出しのもと、「・・・オルガノは、リン酸塩などの食品の価値を高める品質改良剤、食品素材を製造・販売する食品事業を展開している。食品事業を専門的に扱う連結子会社に同社の食品事業を集約することで、グループ経営の効率化を図り、より機動的に事業を展開することを目的としている。」(甲115)と、2008年(平成20年)9月11日付け日経産業新聞には、「オルガノ廃フッ酸を再資源化」の見出しのもと、「オルガノは半導体工場で材料加工に使い現在はそのまま廃棄しているフッ酸(フッ化水素酸)を再資源化する技術を開発した。」(甲117)と、2007年(平成19年)9月1日号の「週刊ダイヤモンド」の「厳選!知られざる優良原発企業」(50頁)には、「オルガノ/国内原子炉浄化系水処理装置でシェア9割/一般企業や電力向けの純水装置、復水脱塩装置など水処理事業とイオン交換樹脂、活性炭など薬品事業が二本柱。」(甲126)と、それぞれ記載されている。
また、請求人は、2007年(平成19年)に、社団法人日本産業機械工業会主催の「第33回優秀環境装置表彰」において、請求人の電子部品洗浄用機能水製造装置が経済産業大臣賞を受賞し、このことが新聞報道された(甲130?甲133)。そして、これらの記事等の多くにおいて、請求人は、「オルガノ」と紹介された。
(2)前記(1)によれば、請求人は、総合水処理エンジニアリング会社として我が国大手の企業であり、そのグループ会社は、これに関連した商品の製造販売・役務の提供その他幅広い分野において営業活動を展開しており、「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」の表示は、請求人の略称を表示するものとして、また、請求人のハウスマークを表示するものとして、本件商標の登録出願日前から、我が国の産業界で広く知られていたと認め得るところである。
請求人の作成・発行に係る総合カタログ及び各種商品の個別カタログには、その表紙に、使用商標1又は使用商標2が表示されている(甲16?甲19、甲30?甲79)。また、使用商標1又は使用商標2における図形部分と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分とは、外観、観念及び称呼の点からみて、これらを常に一体のものとして把握、認識しなければならない特段の理由は存在しないから、それぞれ独立して自他商品及び役務の識別機能を果たし得るというべきである。
さらに、請求人の主たる業務である水処理装置事業には、当該事業を遂行する上でイオン交換樹脂などの水処理薬品等が不可欠な存在であり、また、請求人も化学・薬品に関する技術開発に力を入れ、そのことがしばしば新聞等で報道されていることなどを認めることができる。
そうすると、「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」の表示(以下「請求人商標」という。)は、請求人の主たる業務に係る純水製造装置、超純水製造装置、排水処理装置等の製造・販売を含む水処理装置事業並びに当該事業と密接に関係するイオン交換樹脂、水処理薬品等の製造・販売を含む薬品事業を表示するものとして、本件商標の登録出願日前から、我が国の半導体メーカーなどの電子産業、化学・食品、原子力発電所、発電所等の関連分野において、その取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認め得るところであり、その著名性は、本件商標の登録査定日においても継続していたものと認めることができる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)商標の類否
ア 本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ORGANO SCIENCE」の文字を標準文字からなるところ、その構成中の「ORGANO」と「SCIENCE」の各文字の間には、1文字程度の間隔があり、これらの文字は、外観上分離して看取されやすいばかりでなく、本件商標の構成文字全体から生ずると認められる「オルガノサイエンス」の称呼は、やや冗長である。
また、本件商標中の「SCIENCE」の文字部分は、「科学」を意味する英単語として、我が国において広く知られているものであり、その指定商品・指定役務である化合物、化合物の合成及び加工処理との関係からみると、さほど強い識別機能を有するものとはいえない。これに対し、本件商標中の「ORGANO」の文字部分は、「有機の」を意味する英単語である(乙4、乙6)ところ、その片仮名表記である「オルガノ」の語が、本件商標の登録出願時において、広辞苑に掲載されていない(甲134の1)など、我が国において一般によく知られていない語と認めることができる。
そうすると、本件商標を構成する「ORGANO」と「SCIENCE」の各文字の間には、その有する意味の浸透の程度及び識別力の点において、極めて大きな差異を有するばかりか、前記1のとおり、「ORGANO」及び「オルガノ」の文字からなる請求人商標は、請求人の略称及びハウスマーク並びに請求人の主たる業務に係る水処理装置事業及び薬品事業を表示するものとして、著名性を獲得している実情を併せ考慮すると、本件商標中の「ORGANO」の文字部分は、取引者、需要者に対し、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということができる。
したがって、本件商標は、その構成中の「ORGANO」の文字部分が要部ということができるから、その構成文字全体を称呼した場合の「オルガノサイエンス」の称呼のほか、その要部である「ORGANO」の文字部分から、単に「オルガノ」の称呼をも生ずるものであって、特定の観念を有しないものと認める。
イ 引用商標
(ア)引用商標1は、前記第2の1のとおり、「ORGANO」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「オルガノ」の称呼を生ずるものであり、特定の意味合いを有しない造語を表したと理解されるものとみるのが相当である。
(イ)引用商標2は、前記第2の2のとおり、「オルガノ」の文字からなるものであるから、その構成文字に相応して、「オルガノ」の称呼を生ずるものであり、引用商標1と同様、造語を表したと理解されるものとみるのが相当である。
ウ 上記ア及びイによれば、本件商標の要部「ORGANO」は、引用商標1と観念においては比較することはできないが、外観において類似し、引用商標と「オルガノ」の称呼を共通にするものである。
したがって、本件商標と引用商標は、類似する商標と認める。
エ 上記に関し、被請求人は、「『ORGANO』や『オルガノ』の語は、『有機、器官』等の意味の連結形としてよく使用される語であり、また、有機や器官という商標の商品及び役務の効能や用途を示す場合もあり、独創性のある語とはいえないから、そのような登録商標に後願排除効を生じさせることは他者の商標選択の余地を不当に狭めることになり、このような登録商標の類似範囲は限定して解釈すべきである。」旨を主張している。
しかしながら、上記アのとおり、「ORGANO」や「オルガノ」の語は、我が国において、一般に十分に浸透していない語と認められる一方で、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして著名であることを考慮すると、「ORGANO」や「オルガノ」は、独創性がないとはいえず、請求人の商標として十分に自他商品及び役務の識別標識としての機能を果たしているというべきである。
したがって、本件商標と引用商標の類否判断において、商標の類似範囲を限定して解釈すべきとする合理的根拠はない。
よって、被請求人の上記主張は理由がなく、失当である。
(2)指定商品の類否等
ア 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、いずれも「化学剤」を含んでいる点において共通する。
イ 指定商品等の類否に関し、被請求人は、「本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品中、一部抹消した『無機工業薬品、有機工業薬品』にすべて含まれ、指定商品及び指定役務は共通するものがなく、出所の混同は生じ得ない。」旨を主張している。
しかしながら、本件商標の登録が商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたか否かは、本件商標の登録査定時を基準として判断すべきである(商標法第4条第3項)ところ、本件商標の登録査定時には、その指定商品中に「化学剤」が含まれていたことは、前記第1のとおり明らかである。
なお、本件商標の指定商品中の「化学剤,原料プラスチック」は、本件商標の登録査定後である平成28年3月18日を受付日とする商標権の一部放棄によりその登録が抹消されたが、商標権の放棄の効力は登録により発生するから(商標法第35条、特許法第98条第1項第1号を参照)、本件商標の登録査定後に、「化学剤」等の商標権が放棄によりその登録が抹消された事実が存在するとしても、その事実が、本件における指定商品の類否判断に何ら影響を及ぼすものではない。一方、引用商標の指定商品には、「化学剤」が含まれていることは、前記第2のとおりである。
よって、被請求人の上記主張は理由がなく、失当である。
(3)以上のとおり、本件商標と引用商標とは類似し、両商標の指定商品中にはいずれも「化学剤」を含んでいることから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものというべきである。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号、平成12年7月11日第三小法廷判決)。
以上の観点から、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて検討する。
(2)混同を生ずるおそれの有無
ア 本件商標と請求人商標の類似性の程度
前記2(1)のとおり本件商標と引用商標との類否判断は、本件商標と「オルガノ」又はその英語表記である「ORGANO」の文字からなる請求人商標との類否判断においても、そのまま当てはまるものであるから、本件商標と請求人商標は、外観又は称呼において類似する商標というべきである。
イ 請求人商標の周知著名性及び独創性の程度
前記1(2)のとおり、請求人商標は、請求人の略称及びハウスマーク並びに請求人の業務に係る水処理装置事業及び水処理薬品等を含む薬品事業を表示するものとして、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものである。
また、英単語「organo」及びその片仮名表記の「オルガノ」の語が、「有機の」を意味するものとして、我が国の国民一般の間に広く浸透しているものと認めることができないから、請求人商標は、独創性が極めて高いとはいえないものの、独創性が備わっていないということもできない。
この点に関し、被請求人は、請求人商標は「有機」又は「器官」の意味の連結形としてよく使用される語であり、また、有機や器官という商標の商品及び役務の効能や用途を示す場合もあり、独創性のある語とはいえない旨主張し、乙第13号証を提出するが、前記2(1)エのとおり、「ORGANO」や「オルガノ」は、我が国において、一般に十分に浸透していない語と認められる。
このことは、「organo」の語が英語辞典に記載されていることによって左右されるものではない。また、乙第13号証において、「organo」が、商品の効能等を表示するものとして単独で使用されている事例は見いだせない。
したがって、上記に関する被請求人の主張は理由がなく、他に、「organo」や「オルガノ」が、「有機」又は「器官」の意味の連結形として、我が国において、一般に熟知され、かつ、商品の効能等を表示するものとして普通に使用されている事実を明らかにする証拠の提出はない。
ウ 本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との関連性の程度及びその需要者の共通性等
請求人は、前記1(1)のとおり、総合水処理エンジニアリング会社として、水処理装置事業とこれに密接に関連する薬品事業を柱とする企業であり、薬品関連の事業では、水処理薬品、イオン交換樹脂、食品添加物等の化学品の製造・販売(甲16?甲21)や様々な有機化合物や無機化合物を含む、重金属固定剤、洗浄剤、除菌剤、消臭剤、消泡剤、非イオン性界面活性剤除去剤、高分子凝集剤、不純物除去剤、給水用防錆剤、過酸化水素分解剤、次亜塩素酸ナトリウム剤、燃料添加剤、ボイラ処理剤、防食剤、冷却水処理剤等の製造・販売を行っており(甲33?甲77)、その需要者は、半導体や液晶等の電子産業をはじめ、用水製造や排水処理等の水処理プラント又は中・小型装置、水処理薬品等の化学剤等を必要とする各種製造業、サービス業、発電所、国の機関、自治体、一般消費者等である。
一方、本件商標の指定商品及び指定役務は、様々な種類の有機化合物に係る商品と、その合成及び加工処理に係る役務であり、その需要者は、指定商品である化合物を製品原料として、あるいは、これらを合成及び加工処理したものを必要とする各種製造業者であって、特に、指定商品中の「有機半導体化合物,導電性有機化合物」の需要者は、有機半導体材料や有機EL材料を使用する電子産業であるといえる。
そうすると、本件商標の指定商品及び指定役務と請求人の事業に係る商品及び役務は、いずれも化学品の分野に属する商品及び役務である点において一致し、加えて、本件商標の指定商品は、請求人の業務に係る薬品の原材料となり得るものが多く含まれているといえるから、両者は、極めて関連性の高い商品及び役務というべきである。
また、需要者においても、化合物を原料として必要とする製造業者は、水処理設備又は水処理装置、水処理用化学剤を必要とする製造業者でもあり、特に、電子産業分野であるという点において、共通する場合が多いといえる。
エ 請求人の多角経営
前記1(1)エのとおり、請求人は、平成23年3月の時点において、子会社21社、関連会社2社及び東ソー(親会社)で構成されるグループを形成し、主力事業である水処理装置事業と薬品事業の技術力を活かして、化学工学及び工業化学分野での広範な事業を行う一方、工業薬品類の販売、水処理機器類の販売、食品素材・添加物、栄養補助食品等の開発・製造販売、工場排水処理設備の製造販売等を行うなど多角的な経営を行っている。
オ 以上を総合すると、請求人商標と、その要部において類似する本件商標をその指定商品及び指定役務中の「化学剤」以外の指定商品及び指定役務について使用するときは、その取引者、需要者に直ちに請求人商標を想起、連想させ、該商品及び役務が、請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品及び役務であると誤信され、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に該当するものと認める。
(3)商標法第4条第1項第15号に関する被請求人のその他の主な主張について
ア 被請求人は、「本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品中、一部抹消した『無機工業薬品、有機工業薬品』に含まれ、互いに指定商品及び指定役務は共通するものがなく、本件商標と引用商標とは、狭義にせよ広義にせよ出所の混同は生ずるものではない。」、及び「請求人が引用商標の指定商品について、一部放棄し登録が抹消された指定商品『無機工業薬品、有機工業薬品、のり及び接着剤』について何ら述べることなく、上記登録抹消された指定商品の範囲について狭義・広義の出所の混同を主張することは、信義・誠実の原則に違背する。」旨を主張している。
しかしながら、前記3(1)のとおり、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者・需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。
そして、その判断時期は、本件商標の登録出願時及び登録査定時である(商標法第4条第3項)から、その両時点において、著名な請求人商標に類似する本件商標をその指定商品及び指定役務中の「化学剤」以外の指定商品及び指定役務について使用した場合は、請求人の業務に係る商品及び役務との間に、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきであることは、前記認定のとおりである。
したがって、上記に関する被請求人の主張は妥当でなく、失当である。
イ 被請求人は、「請求人のホームページやカタログには、使用商標1又は使用商標2が付され、『ORGANO』や『オルガノ』は見当たらないから、これらがハウスマークとはいえるものではない。」旨を主張している。
確かに、ホームページやカタログには、「ORGANO」の文字のみの使用は少ないといえる。
しかしながら、前記1(2)のとおり、使用商標1又は使用商標2における「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分は、図形部分とは、分離して把握、認識されるものであるから、「ORGANO」又は「オルガノ」の文字が使用されていないとはいえないばかりか、新聞や雑誌の記事において請求人が取り上げられる場合は、活字や紙(誌)面上等の関係、あるいは、読みやすさ等の関係から、片仮名の「オルガノ」の文字で表記されることは必然の結果であって、そうであるからといって、「ORGANO」の表示が、請求人のハウスマークとして著名であることは、前記した事実から明らかである。
したがって、被請求人の上記主張は理由がない。
ウ 被請求人は、「『ORGANO』又は『オルガノ』の文字を含む登録商標、登録出願の例を挙げ、そのうちの登録商標『ORGANO GOLD』は、引用商標と指定商品の一部が類似すると思われるが、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当することなく登録されているから、引用商標とは非類似として取り扱われたものである。」旨を主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、上記アのとおり、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質等を総合的に勘案して、個別具体的に判断すべきものであり、また、商標法第4条第1項第11号の商標の類否判断についても、対比される商標の構成や指定商品等の取引の実情等を考慮して、個別具体的に判断すべきものである。
してみれば、上記登録商標「ORGANO GOLD」が、第3類(歯磨き、化粧品等)、第5類(サプリメント)、第30類(コーヒー等)及び第35類(市場調査、経営の診断等)に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として登録されているとしても、このことから、本件商標と請求人商標、あるいは、本件商標と引用商標とが、混同を生ずるおそれがないということはできない。
したがって、被請求人の上記主張は理由がない。
(4)以上によれば、本件商標は、その指定商品及び指定役務中の「化学剤」以外の指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 使用商標1





別掲2 使用商標2





審理終結日 2016-11-08 
結審通知日 2016-11-10 
審決日 2016-12-20 
出願番号 商願2010-47546(T2010-47546) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (X0140)
T 1 11・ 263- Z (X0140)
T 1 11・ 261- Z (X0140)
T 1 11・ 271- Z (X0140)
最終処分 成立  
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
清棲 保美
登録日 2011-06-10 
登録番号 商標登録第5417057号(T5417057) 
商標の称呼 オルガノサイエンス、オーガノサイエンス、オルガノ、オーガノ、サイエンス 
代理人 山本 健男 
代理人 平尾 和女 
代理人 安國 忠彦 
代理人 永島 孝明 
代理人 若山 俊輔 

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