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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1331485 
異議申立番号 異議2017-900054 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-17 
確定日 2017-08-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第5898545号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5898545号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5898545号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成28年3月23日に登録出願、第9類「カウンター,はかり,計量用機器,計量器,信号用ベル,信号用カンテラ,発光式標識,着用可能なアクティビティトラッカー,カメラ(写真用のもの),写真装置用スタンド,測量用機器,測定用具,温度計(「診断用機械器具」に属するものを除く。),映写機用光源ランプ,光学用機器,送電線用材料,電気制御用機械器具,電気スイッチ,ソケット、プラグその他の電気接続具,制御盤(電気用のもの),調光器(光調整器)(電気式のもの),電気のコンセント用カバー,温度調整装置,電池用充電器,蓄電池,太陽電池,太陽光発電パネル」及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年10月25日に登録査定、同年11月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標はその指定商品中、第9類「カウンター,はかり,計量用機器,計量器,着用可能なアクティビティトラッカー,カメラ(写真用のもの),写真装置用スタンド,測量用機器,測定用具,温度計(「診断用機械器具」に属するものを除く。),映写機用光源ランプ,光学用機器,温度調整装置,蓄電池,太陽電池,太陽光発電パネル」(以下「申立てに係る商品」という。)について商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第64号証を提出した。
(1)本件商標と引用商標の類似性
本件商標は、横書き一列で書された欧文字「INSPIRE」の左横に赤色の円を配し、同円中に線図形が白抜きで書されたものであり、欧文字に相応して「インスパイア」の称呼が生じ、「元気、霊感、ひらめきを与える」程の観念が生じる。
申立人がドローンに使用している商標(甲2?甲4:以下「引用商標」という。)は、欧文字「INSPIRE」を横書き一列で書してなる。そして、欧文字「INSPIRE」に相応して「インスパイア」の称呼が生じ、「元気、霊感、ひらめきを与える」程の観念が生じる。
以上から、本件商標と引用商標は、外観上類似し、また、称呼及び観念を同一とする類似の商標である。
なお、甲第2号証のウェブサイトは、2014年12月31日から使用されている。
(2)引用商標の周知著名性について
ア 申立人は、2006年に創業された、マルチコプターの世界的リーディングカンパニーであって、本社は、中国の深センにあり、アメリカ、ドイツ、日本、北京、上海、香港まで拠点を拡大しており、民生用のドローン市場で世界シェアの7割を担っている(甲5)。
イ 申立人は、2014年から世界初となるプロ向けカメラ一体型ドローン「INSPIRE 1」を販売しており、日本において、3,400台が販売されている(2014年12月?2016年11月)。
ウ ドローン「INSPIRE 1」は、展示会・イベントへ数多く出品され(甲6?甲10)、ウェブサイトでも紹介されている(甲11?甲30)。
エ 新聞・雑誌を用いて「INSPIRE 1」の広告活動をしている(甲31?甲33)。
オ ドローン「INSPIRE 1」の販売代理店は、ドローンの普及に努めている。また、販売代理店は各種メディアに取り上げられている(SEKIDO:甲35?甲38,AIR STAGE:甲39)。
カ ドローン「INSPIRE 1」は、様々な分野で話題となっており(甲40?甲50)、スポーツ、保険、学校教育、映画等、多種多様な分野で活用され、そのことが紹介されている。
キ ユーチューブを使用した広告活動を行っており、「Phantom 3発表会」の模様の映像の動画には、「INSPIRE 1」も紹介されている。
ク 本件商標の登録査定後もドローン「INSPIRE」の紹介がある(甲51?甲62)。
(3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係るドローンの関連性について
ア 「カメラ(写真用のもの),写真装置用スタンド,映写機用光源ランプ,光学用機器」との関連性について
ドローン「INSPIRE」は、空撮に使用される製品であり(甲63)、「INSPIRE」用カメラが販売されている(甲64)。このことから、ドローンとカメラは、関連性が相当に高いといえ、しかも、ドローンとカメラの需要者は共通している。
イ 「カウンター,はかり,計量用機器,計量器,着用可能なアクティビティトラッカー,測量用機器,測定用具,温度計(「診断用機械器具」に属するものを除く。),温度調整装置」との関連性について
飛行中の「INSPIRE」を自動的に安定させるために、各種測定装置(6軸ジャイロスコープ、加速度計)が使用され(甲63)、これら測定装置により、「INSPIRE」の傾きや動きのわずかな変化を監視し、「INSPIRE」の傾きを補正、調整する。このように、ドローンと測定装置は関連性が相当に高いといえる。
ウ 「蓄電池,太陽電池,太陽光発電パネル」との関連性について
ドローン「INSPIRE」は、電池から電源を供給され飛行する(甲63)から、ドローンと電池は関連性が相当に高いといえ、しかも、ドローンと電池の需要者は共通している。
(4)むすび
以上から、本件商標と引用商標とは、外観において類似し、称呼及び観念において同一の商標であること、本件商標の登録出願及び登録査定時において、引用商標は、日本国内において周知著名であること、本件商標の指定商品中、申立てに係る商品は、申立人が製造販売するドローンとの関連性が相当に高いことを総合すれば、本件商標が申立てに係る商品に使用された場合、取引者、需要者において、それらが申立人又は同人の系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信し、それらの出所について混同が生じる。

3 当審の判断
(1)使用商標の周知著名性について
申立人の提出した本件商標の登録査定時前の証拠によれば、以下の事実が認められる。なお、使用商標は、申立人がドローンに使用している商標(甲2?甲4)であって、「INSPIRE 1」の文字からなるものである。
ア 申立人は、2006年に創業、2011年にドローン関連商品をリリース、2013年に「Phantom2 Vision」をリリース、2014年にカメラ一体型ドローン:「Phantom2 Vision+」及び世界初となるプロ向けカメラ一体型ドローン:「Inspire 1」を発表しており、また、「マルチコプターの世界的リーディングカンパニーとなりました。現在、・・・アメリカ、ドイツ、日本、北京、上海、香港まで拠点を拡大しており、民生用のドローン市場で世界シェアの7割を担っています。」等と紹介している(甲5)。
イ 「InterBEE2014」(甲11)において、「360度視野で空撮できるドローン『Inspire 1』」として登場し、フォトイベント「CP+2015」(甲7,甲12?甲16)において、2015年2月に「『Inspire 1』を展示。ブース内では定期的にデモンストレーション飛行を実施した。」旨、また、カメラと写真映像の展示会「CP+2016」(甲21?甲24)において、「ドローンメーカーのDJI Japanは、『INSPIRE 1』や『PHANTOM 3』などといったカメラが搭載できる各種ドローンを紹介していたほか、飛行デモも行っていた。」旨、「ジャパン・ドローン2016」(2016年3月29日:甲25)において、「DJI Japanのブースでは、空撮対応ドローンとして発売されたばかりのPhantom 4を中心に、Phantom 3シリーズ、Inspire 1、SPREADING WINGS S900などが展示されていた。この他にも・・・」等記載され、各種ウェブサイトに掲載されている。
また、最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2015」(甲20)には、「DJIブースでは、4K/30Pでの記録に対応したドローン『Phantom 3』や『Inspire 1』といった、おなじみの製品に加え、新製品も展示・紹介されていた。」との記載がある。
そして、上記イベントの登録来場者数は、「InterBEE2014」が3万7959人(甲6)、「CP+2015」が6万7617人(甲7)、「CP+2016」が6万7792人(甲9)、「CEATEC JAPAN 2015」が13万3048人(甲8)、「ジャパン・ドローン2016」(甲10)が8023人となっている。
ウ 「Response」のウェブサイト(甲17,甲18)には、「【第54回静岡ホビーショー】世間を騒がせる『ドローン』」(2015年5月19日)の見出しの下、「ここ1年で大きく盛り上がったのが、トイ・ドローンとホビー・ドローンのジャンル。その上に業務として使えるプロフェッショナル・ドローンの3タイプが存在する。・・・今回のホビーショーで、ドローンを出品していたのは、プロフェッショナル・ドローンを専門に扱うセキド、トイからセミプロフェッショナルまでを扱う京商、トイとホビーを扱うハイテック、そして主としてトイを扱う童友社とヨコモという5社だった。このうちセキドが扱うのは、基本的にプロが使うDJIという中国のメーカーが作るもの。・・・現在セキドが扱うDJIのドローンはファントムと呼ばれるものとインスパイア1と呼ばれるモデルが中心。」との記載がある。
エ 「第55回全日本模型ホビーショー」(2015年9月)の展示写真(甲19)には、「SEKIDO」のブースにおける「INSPIRE1」(「1」の文字は赤色で表されている。)の展示の様子が表されている。
オ 「ラジコン技術 2015年4月号」及び「RCFan 2015年12月号」(自遊舎出版:甲31,甲32)には、「INSPIRE1」(「1」の文字は赤色で表されている。)の広告が掲載され、また、2016年7月25日付け日本経済新聞の24頁(甲33)に「『空の産業革命』到来!/地方で進むドローンビジネスを支える『DJI』」の見出しの下、申立人に関する広告記事の中に「DJI JAPAN」が集計した2015年12月から2016年3月末における「国土交通省 型式別許可承認状況」が示され、「DJI PHANTOM 3」が「1000」、「DJI INSPIRE 1」が「600」、「DJI PHANTOM 2」が「200」、「DJI S900」が「100」、「DJI S1000」が「80」程の棒グラフが掲載及びその下に、申立人の正規販売代理店募集広告と共に、「DJIプロダクトラインアップ」として、「PHANTOM 4」、「INSPIRE 1」、「OSMO」、「RONIN-M」、「MATRICE 600」が商品写真と共に表示されている。
カ 「DJI(ドローン)正規代理店セキド」のオフィシャルサイト(甲37)には、2015年2月6日及び3月13日に「INSPIRE 1 安全フライト講習会inTOKYO」、同年11月25日に「INSPIRE 1/PRO 安全フライトテクニカル講習会inTOKYO」及び2016年5月17日に「SEKIDO×竹原商工会議所ドローン活用セミナー」において、「DJI初の農業用ドローン『AGRAS MG-1』プロトタイプ機のデモフライトや赤外線カメラ『zenmuse-xt』を搭載したINSPIRE1、絶賛発売中の『Phantom4』といった様々な機体のデモフライトをご覧いただけました。」との記載がある。
キ 「DRONE」のウェブサイト(甲40)には、「サントリーサンゴリアス、DJI Inspire 1でスクラムを空撮分析」(2015年12月15日掲載)の見出しの下、「選手のプレー分析と改善にDJI Inspire 1を導入したと発表した。」との記載、同ウェブサイト(甲43)には、「DJIが新商品開発のためのインダストリアルデザイナーを募集。日本でもカメラ開発に関わる人材を募集中」(2016年2月2日掲載)の見出しの下、「インダストリアルデザイナーを募集ということは、新たな商品ライナップが出てくるということは間違いない。PhantomそしてInspireに続く、新製品が出てくるのもそう先ではない。」との記載、「デジカメwatch」のウェブサイト(甲41)には、「DJI、対人/対物を含む『ドローン賠償責任保険』を提供」(2015年12月24日)の見出しの下、「補償の対応機種は、Phantomシリーズ、Inspireシリーズ、Matrice 100、その他DJI製のフライトコントローラーを搭載した機体。」との記載がある。
ク 「ビジネス+IT」のウェブサイト(甲42)には、「『ドローン業界のアップル』世界市場でシェア7割のDJI副社長が語る、急成長の3つの要因」(2016年1月27日)の見出しの下、「今ではPhantomに続き、『Inspire 1』という4Kカメラを搭載可能なハイスペックなドローンをリリースしている。」等と記載されている。
ケ 正規代理 AIR STAGE(甲39)が2015年から講習会を行っていることが記載されているが、「Inspire 1」を使用していることが確認できない。
コ 上記事実からすると、ドローンには、トイ・ドローン、ホビー・ドローンとプロフェッショナル・ドローンの3タイプがあり、申立人は、プロフェッショナル・ドローンを主に扱っており、本件商標の登録出願前から申立人は、相当数の来場者のあるフォト(カメラや写真映像)イベントや最先端IT・エレクトロニクス総合展などの各種展示会において申立人ブース、あるいは正規代理店のSEKIDOのブースを設け、申立人のドローンを展示・紹介していたといえる。
しかしながら、該展示会は、メインの展示がドローンではなく、フォト(カメラや写真映像)や最先端IT・エレクトロニクス等であるため、全体の展示会の来場者が全て、申立人や正規代理店のSEKIDOのブースに行って使用商標を付したプロ向けカメラ一体型ドローンに接するとはいい難く、また、該ブースに訪れた人数については、不明である。
また、申立人は、ドローン業界において世界市場でシェア7割とされているところ、申立人は、Phantomシリーズ、Inspireシリーズ、Matrice 100、その他DJIの各種ドローンを製造、販売しているものであり、上記証拠からは、Phantom3及び4を中心にPhantomシリーズの占める割合が多いものといえること及び2014年から販売を始めた使用商標を付したドローンについて、3,400台を日本で販売している旨の主張があるものの、その販売数及びシェアについては、確認できない。
以上を総合すると、使用商標は、申立人の業務に係るドローンを表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において、その取引者及び需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と使用商標の類否
本件商標は、別掲のとおり、図形と「INSPIRE」の欧文字からなり、図形と欧文字がそれぞれ視覚的に分離して看取されるというべきであるから、該欧文字に着目して取引されることも少なくなく、該欧文字部分より「インスパイア」の称呼を生じ、「元気、ひらめきを与える」程の観念を生じるものである。
他方、使用商標は、「INSPIRE 1」の文字を表してなるところ、その構成における「1」は、商品の記号、符号を表す数字を認識するものであって、これのみでは自他商品の識別標識としての機能を果たす文字ということができないものであるから、使用商標の構成中の「INSPIRE」の欧文字が、独立して自他商品の識別標識として機能するものというのが相当であって、該欧文字部分より「インスパイア」の称呼を生じ、「元気、ひらめきを与える」程の観念を生じるものである。
そうとすると、本件商標と使用商標の欧文字部分は、同一の文字綴りであり、同一の称呼を生じ、外観及び観念においても共通にするものといえる。
したがって、本件商標と使用商標とは、類似する商標といえる。
(3)出所の混同のおそれについて
以上のとおり、使用商標は、前記(1)コのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において申立人の業務に係る商品を表すものとして広く認識されていたということはできない。
また、本件商標における申立てに係る商品は、申立人の使用するドローンの部品として使用されるものとしても、その商品の目的、用途、生産部門、販売部門、流通経路、需要者の範囲等を異にする非類似の商品である。
してみれば、本件商標と使用商標とが類似するとしても、使用商標は、本件商標の登録出願時において我が国の需要者の間に広く認識されていたものではなく、その商品においても非類似のものというべきであるから、商標権者が本件商標をその申立てに係る指定商品に使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想し、又は想起させることはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、申立てに係る商品について商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
本件商標

(色彩については、原本を参照のこと。)

異議決定日 2017-08-14 
出願番号 商願2016-31936(T2016-31936) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 綿貫 音哉高橋 幸志 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 酒井 福造
田中 幸一
登録日 2016-11-18 
登録番号 商標登録第5898545号(T5898545) 
権利者 チェク,ミョウ クワン
商標の称呼 インスパイア 
代理人 龍華国際特許業務法人 
代理人 新池 義明 

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