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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1331480 
異議申立番号 異議2017-900012 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-19 
確定日 2017-08-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第5889786号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5889786号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5889786号商標(以下「本件商標」という。)は,「クロスフィット」の片仮名を横書きしてなり,平成28年3月24日に登録出願,同年8月19日に登録査定,第25類「靴下」を指定商品として,同年10月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の2件の国際登録商標であり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 国際登録第1086145号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「CROSSFIT」
国際登録出願日:2011年7月13日
設定登録日:2012年10月26日
指定商品:第25類「Clothing, namely, shirts, pants, shorts, jackets, sweatshirts, sweatpants, headwear.」
2 国際登録第1022145号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「CROSSFIT」
国際登録出願日:2009年8月6日
事後指定日:2011年7月14日
設定登録日:2013年5月10日
指定役務:第41類「Entertainment services, namely, an on-going series featuring fitness, nutrition, sports and exercise provided through television, internet, providing information, namely educational services in the field of fitness, nutrition, sports and exercise via a website; online publication of journals in the fields of fitness, nutrition, sports and exercise; entertainment services, namely, production of video material, images, motion picture and television programs in the fields of fitness, nutrition and exercise in the form of podcasts and distribution of video material, images, motion picture and television programs in the fields of fitness, nutrition and exercise from the Internet in the form of podcasts; educational services, namely, conducting lectures, seminars and workshops in the fields of fitness, nutrition, sports and exercise; entertainment in the nature of competitions in the field of fitness; entertainment in the nature of sports competitions; fitness training.」

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標について,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証(枝番号を含む。なお,甲号証において,枝番号を有するもので,枝番号のすべてを引用する場合は,枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 申立人及び引用商標の国際的周知性について
(1)申立人は,米国人グレッグ・グラスマンが設立したフィットネス団体であり,引用商標は,申立人の管理のもとで世界各国で運営されるフィットネスジム及び当該フィットネスジムにおいて提供されるウェア等の商品について使用されるものである。
申立人が率いるフィットネスジムにおいては,グレッグ・グラスマンが開発したフィットネス方法(以下「本件フィットネス方法」という。)を用いた身体トレーニングが教授され,当該方法に基づく運動方法に関する指導が行われている。
申立人は,世界中で所定の認定を受けたトレーニングセミナーを開催し,「WORKOUT OF THE DAY(WOD)」と呼ばれる,本件フィットネス方法に基づく日替わりトレーニングメニューを含むコンテンツを提供する,複数のウェブサイトを運営している(甲5)。さらに,申立人は,遅くとも2002年ごろから,身体トレーニングやフィットネスに関心を有する需要者,取引者を対象として,本件フィットネス方法に関する情報を掲載したニューズレターを頒布し,音声・映像コンテンツを閲覧・ダウンロードさせている(甲50)。
申立人のフィットネスジムにおいては,運動方法に関する所定の資格を有する者(「クロスフィット・レベル1トレーナー」と呼ばれる。)が,申立人より「アフィリエート」として認定を受け,年会費を納付することで初めて「CrossFit」の商標(引用商標2)を商業目的で使用する権利を取得することができる(甲6)。
2005年当時,申立人の許諾を受けたアフィリエートが運営するフィットネスジムは,アメリカ国内で13拠点であったが,その後,本件フィットネス方法は急速に広まって,アメリカのみならず世界中で莫大な人気を博するようになり(甲3?甲6),2014年には,ジムは全世界で9,000拠点以上に及び,日本国内でも現在18人のアフィリエートが活動しており,本件フィットネス方法に基づく身体トレーニング,フィットネストレーニングの教授・指導をしている(甲7,甲8)。
また,申立人により認定された「クロスフィット・レベル1トレーナー」は,全世界で35,000人に及ぶ(甲5)。そして,現在では,「クロスフィット」は,世界中で11,000店舗(9年前の22倍)に成長し,急速に拡大している(甲16)。
(2)申立人は,引用商標の他,米国において「CROSSFIT」の文字からなる商標について,第41類,第25類,第42類,第9類及び第36類の商品又は役務について連邦商標登録を受けている(甲9?甲15)。米国及び日本以外の国においても「CROSSFIT」の文字からなる商標若しくはこれを包含する商標について商標登録を取得している(甲17)。
(3)2009年にアフィリエートから受領された年会費は,総額339,000ドル(約3,400万円)であったが,その後,爆発的に増加し,2013年では20,853,160ドル(約20億円)に及び(甲18),2015年時点で年間40億ドルもの売り上げを生み出している(甲16)。
また,申立人は,世界各国において本件フィットネス方法に関するセミナーやトレーニングコースを開催しているが,2010年度におけるセミナー収入は総額7,570,875ドル(約7億5千万円)であったのに対し,2013年には35,258,692ドル(約36億円)に達している(甲18)。
これらの資料に照らせば,本件フィットネス方法を普及する申立人の活動によって,引用商標が,身体トレーニングやフィットネスに関心を有する需要者,取引者の間において,世界的に急速かつ劇的に浸透し,その周知性を高めていることは明らかである。
(4)申立人が普及する本件フィットネス方法は,日本でも新聞や雑誌において報道されてきた。この結果,引用商標は,身体トレーニングやフィットネスに関心を有する需要者,取引者の間で広く認識されている(甲22?甲40)。
本件フィットネス方法に基づく身体トレーニング・フィットネスの教授・指導を行う日本におけるフランチャイジーによっても,引用商標が大々的に宣伝,広告されている(甲41?甲43)。
以上のとおり,「クロスフィット」は,アメリカで設立されたフィットネス方法であり,アメリカを中心に世界各国へと浸透し,日本においても,2010年頃より広まり,現在では,有名アスリートやモデル等が実践していることもあり(甲19,甲20,甲55),人気と評判が確立されている。
(5)「クロスフィット」の日本における普及においては,申立人と2010年よりパートナーシップ契約を締結したリーボック(Reebok)の貢献が大きく(甲46,甲47,甲49,甲56?甲60,甲63),リーボックが製造販売する「クロスフィット」の売上は,2013年時点で,昨年同期より400%も伸びている(甲61)。
(6)これらの事実を総合すると,引用商標は,本件商標の出願日より前から,米国で身体トレーニングやフィットネスに興味のある需要者の関心を集めており,我が国においても,リーボックとパートナーシップを締結し,複数のクロスフィットジムが開設され,「クロスフィット」専用のウェアが製造販売され,身体トレーニングやフィットネスに興味,関心を有する需要者・取引者向けの雑誌において,本件フィットネス方法が繰り返し紹介されていたことに照らせば,申立人による使用許諾のもとでフィットネス方法の指導・教授について使用される商標,及び申立人とパートナーシップ契約を締結したリーボックにより製造販売される「クロスフィットウェア」に使用される商標としても,本件商標の登録査定時はもとより,登録出願時前から,身体トレーニングやフィットネスに興味を有する取引者,需要者の間に浸透して,周知著名となっていたものである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標1の類否について
ア 本件商標
本件商標は,その構成文字より「クロスフィット」の称呼が生じる。また,観念においては,「クロス」は「十字架」や「十字の印」を意味する語として知られており(甲44,甲45),また,これに結合した「フィット」の語は,「適した,ふさわしい」の意義を有する語である(甲48)。
したがって,本件商標からは,「クロスにフィットした」といった意味合いを想起させるものである。
イ 引用商標1
引用商標1は,その構成文字より,「クロスフィット」の称呼が生じ,観念においては,本件商標と同様に「クロスにフィットした」といった意味合いを想起させるものであると同時に,申立人による使用許諾のもとで本件フィットネス方法の指導・教授について使用される商標,及び,申立人とパートナーシップ契約を締結したリーボックにより製造販売される「クロスフィットウェア」に使用される商標として,周知著名性を獲得している申立人のブランドとしての観念をも生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1は,いずれも「クロスフィット」の同一の称呼が生じ,「クロスにフィットした」あるいは申立人とパートナーシップ契約を締結したリーボックにより製造販売される「クロスフィットウェア」といった同一の観念が生じるものである。
したがって,本件商標は,引用商標と称呼・観念において同一又は類似する商標である。
(2)本件商標と引用商標1の指定商品の類否について
ア 本件商標と引用商標1の指定商品の類似性
本件商標と引用商標1の両商品とも「人が着用するもの」(「商品及び役務の区分解説[国際分類第10版対応]特許庁商標課編)として使用されるものであり,用途を同じくするものである。
イ 本件商標と引用商標1の指定商品間における取引実情
商品の取引実情によれば,本件商標と引用商標1の指定商品は,同一の業者により製造・販売が行われ,同一の場所(又は隣接した場所)においてこれらの商品が販売されている取引実情がある。また,「靴下」と引用商標1の指定商品中「シャツ,パンツ,スウェットシャツ,スウェットパンツ等」は,いずれも下着やフィットネス関係の商品として関連性が深く,小売業者が同一の場所においてこれらの商品を紹介・販売等しており,これは,小売業者が,いずれの需要者も,同一の場所に訪れることを想定しているといえるから,両商品の需要者の範囲も一致しているというべきである。
そうすると,本件商標と引用商標1の指定商品は,商品の用途が一致し,製造・販売業者は同一であり,製造場所が一致又は隣接し,これらの商品は関連性が深く,需要者の範囲は一致し,小売業者が同一の場所で提供するという場合があることから,これらを総合的に判断すると,両商品に同一又は類似の商標が使用された場合には,需要者において互いに混同を生ずるおそれがある,類似の商品というべきである(甲62)。
(3)小括
上述より,本件商標は,引用商標1と称呼及び観念において同一又は類似するものであり,本件商標の指定商品は,引用商標1の指定商品と製造・販売部門,販売場所,用途及び需要者の範囲が一致する事実があるから,同一又は類似するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性と独創性の程度
引用商標は,申立人の管理のもとで世界各国で運営されるフィットネスジムについて使用され,かかるフィットネスジムにおいて提供される「クロスフィット」用のウェア等に使用される商標として,「クロスフィット」のフィットネスメソッド及びそれ専用のウェアの出所を表示するものとして,米国のみならず日本を含む世界各国において周知著名となった。
日本においても,2010年頃よりリーボックとパートナーシップ契約を締結したことにより,全国各地に「クロスフィット」ジムが展開され,そこで使用するシャツやパンツ等のウェアがリーボックにより製造販売され人気となっている。したがって,引用商標は,本件商標の登録出願時には,我が国の取引者・需要者の間で周知・著名となっていた。
引用商標の独創性の程度については,引用商標を構成する「CROSSFIT」(クロスフィット)は,「クロスにフィットした」程度の意味合いを有するものであるが,「CROSSFIT」の文字は,既存の語としては存在しないものであることから,造語であり,引用商標の独創性は,極めて高い。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は,引用商標と同一の称呼及び観念を生じる商標として,引用商標との類似性は,極めて高いものである。
(3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性
上記のとおり,本件商標と引用商標1の指定商品は,商品の用途が一致し,製造・販売業者は同一であり,製造場所が一致又は隣接し,これらの商品は関連性が深く,需要者の範囲は一致し,小売業者が同一の場所で提供するという取引実情があることから,両商品の間には高い密接関連性があるというべきである。
また,本件商標と引用商標2との関係においても,本件商標にかかる「靴下」には,運動や身体のトレーニングに使用されるものも含まれるものである。他方,引用商標2は,申立人による資格付与と商標使用許諾を受けたアフィリエート会員が,本件フィットネス方法を指導・教授するにあたって使用し,またそのフィットネスジムの名称として使用されるものである。
そうすると,本件商標の指定商品と,引用商標2が使用される役務との間には,共に,身体トレーニングを行う需要者という点で重複する部分があるというべきであるから,これら商品及び役務の間には,高い密接関連性がある。
(4)出所の混同の有無
以上の(1)ないし(3)を総合勘案すれば,本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用した場合,その需要者・取引者は,直ちに引用商標を想起,連想し,本件商標権者が販売する商品が,申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し,その出所につき混同を生じるおそれが高い。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 申立人は,米国人グレッグ・グラスマンが2000年に設立したフィットネス団体であり,引用商標を,申立人の名称のほか,自らの管理のもとで運営されるフィットネスジムの名称,及び,当該フィットネスジムにおいて指導する,グレッグ・グラスマンが開発したフィットネス方法(本件フィットネス方法)について使用している(甲5,甲6)。
申立人のフィットネスジムにおいては,運動方法に関する所定の資格を有する者が,申立人より「アフィリエート」として認定を受け,年会費を申立人に納付することで引用商標を使用できる形態となっていること,そして,申立人の代表者は,「申立人によって認定された全世界のアフィリエートの数は,2014年4月現在で9,568名であり,アフィリエートから受領された年会費の総額は,2013年で約2千万ドル(約20億円),申立人が世界各国において運営する,本件フィットネス方法に関するセミナーやトレーニングコースの収益額は,2013年で約3500万ドル(約36億円)である」旨述べた(甲18)。
イ 我が国においては,18人のアフィリエートが活動しており(甲7),雑誌等で,本件フィットネス方法が紹介されている(甲23?甲40)。
また,申立人はリーボックと提携し,当該企業を通じて,クロスフィット用のウェアが日本で販売されている(甲57,甲58,甲61)。
(2)上記(1)によれば,申立人は,引用商標を本件フィットネス方法等について使用していることはうかがえるものの,そのアフィリエートの数,年会費,セミナー等の収益費について,申立人の代表者が陳述するにすぎず,我が国における引用商標に係る営業規模や広告宣伝の実績等は,示されていない。
また,各種の雑誌(甲23?甲40)については,その多くがスポーツ分野の専門誌(甲23,甲31,甲32,甲40)や自衛隊員向けの情報誌(甲25?甲30)であって,一般需要者が購読するものとはいい難く,また,提出された全ての雑誌について,その掲載回数は少なく,「クロスフィット(CROSSFIT,CrossFit)」は,それぞれ数ページに掲載されているにすぎないから,これらによって,引用商標を使用した申立人の業務に係る本件フィットネス方法が,我が国のフィットネス及びフィットネス用の商品の需要者の間に,広く宣伝,広告されたものということができない。
さらに,申立人と提携したリーボックが我が国において「CROSSFIT(クロスフィット)」に対応した各種ウェアを紹介し,販売している(甲57,甲58,甲61)ことがうかがえるとしても,引用商標を使用した該商品に関する宣伝広告の方法,回数,内容等,及び営業の規模(店舗数,売上高)等を示す証拠は,提出されていない。
したがって,申立人が提出した上記証拠からは,引用商標が,申立人の業務に係る本件フィットネス方法及びフィットネス用のウェアを表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国のフィットネス及びフィットネス用のウェアの取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,「クロスフィット」の片仮名を一連に表してなるから,その構成文字に相応して「クロスフィット」の称呼を生じ,また,該文字は,辞書等に載録された既成の語ではないから,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるとみるのが自然である。
そうすると,本件商標は,「クロスフィット」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
この点に関し,申立人は,「クロス」が,「十字架,十字の印」の意味を有し,「フィット」が「適した,ふさわしい」の意味を有することから,「クロスにフィットした」との意味合いを想起すると主張しているが,「クロス」及び「フィット」の語がそれぞれ上記の意味を有するとしても,これらの語を結合した「クロスフィット」の文字からは,直ちに申立人が主張する意味合いを理解,認識させるものとまではいうことができない。
(2)引用商標1について
引用商標1は,「CROSSFIT」の欧文字を横書きしてなるところ,これからは「クロスフィット」の称呼を生じ,該文字は,辞書等に載録された既成の語ではないから,特定の意味合いを想起させることのない,一種の造語として理解されるものと認められる。
そうすると,引用商標1は,「クロスフィット」の称呼を生じ,また,特定の観念を生じないものである。
なお,申立人は,引用商標1は申立人のブランドとしての観念をも生じる旨主張しているが,上記1のとおり,引用商標1は,申立人のフィットネス方法及びフィットネス用の商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているとはいえないものであるから,申立人の係る主張は採用できない。
(3)本件商標と引用商標1との類否について
ア 外観
本件商標は,上記(1)のとおり,「クロスフィット」の片仮名からなるものであり,他方,引用商標1は,上記(2)のとおり,「CROSSFIT」の欧文字からなるものであるから,両者は,外観において相違する。
イ 称呼
本件商標と引用商標1とは,共に「クロスフィット」の称呼を生じるものである。
ウ 観念
本件商標と引用商標1とは,共に特定の観念を生じるものではないが,「クロスフィット」の片仮名は,「CROSSFIT」の欧文字の読みを表したものといえるから,観念において異なることのないものである。
エ 小括
以上のことからすると,本件商標と引用商標1とは,外観において相違するとしても,同一の称呼を生じ,観念において異なることはないものであるから,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(4)本件商標と引用商標1の指定商品の類否について
ア 申立人の主張する取引の実情について
申立人は,本件商標の指定商品は,第25類「靴下」であり,引用商標の指定商品は,「shirts, pants, shorts, jackets, sweatshirts, sweatpants, headwear(申立人の主張する『ワイシャツ類及びシャツ,ズボン及びパンツ,ショートパンツ及びショーツ,ジャケット,スウェットシャツ,スウェットパンツ,帽子』の商品をいうものと解する。)」であるところ,申立人は,商品の取引実情によれば,両商標の指定商品は,商品の用途が一致し,製造・販売業者は同一であり,製造場所が一致又は隣接し,これらの商品は関連性が深く,需要者の範囲は一致し,小売業者が同一の場所で提供することから,類似の商品であると主張する(甲62)。
申立人が提出した甲第62号証によれば,以下のとおりである。
(ア)「靴下・アンダーウェア・ホームウェア」の商品として,シャツやパンツ等の下着と靴下が掲載されている(甲62の1)。
(イ)「アンダーウェア・靴下・足袋靴下」の商品として,「靴下」と「パンツ(下着)」が掲載されている(甲62の2)。
(ウ)「Tシャツ&パンツ&ソックスセット」の商品として,出産祝い用の商品の一例に,靴下とTシャツ,パンツが掲載されている(甲62の3)。
(エ)「紳士靴下」,「紳士肌着」及び「紳士パジャマ」が百貨店の同じ売場で販売されている(甲62の4)。
(オ)百貨店において「紳士用品雑貨 肌着・ナイティ」と「靴下」の売場が隣接している(甲62の5)。
(カ)「アンダーウェア」の商品として,「靴下」と「パンツ(下着)」が掲載されている(甲62の6)。
(キ)「ジム・フィットネス」の商品として,「靴下」と「スウェットシャツ」,「スウェットパンツ」,「パンツ」及び「シャツ」が掲載されている(甲62の7)。
(ク)「ジム&トレーニング」の商品として,「靴下」と「シャツ」が掲載されている(甲62の8)。
(ケ)「新作入荷」した商品の紹介に,新生児用品として,「靴下」と「シャツ」が掲載されている(甲62の9)。
(コ)「メンズ」の商品の紹介において,「アクセサリー」のカテゴリーに,「靴下」が掲載されている(甲62の10)。
(サ)「フィットネス・トレーニング」の商品として,「靴下」と「シャツ,パンツ」が掲載されている(甲62の11)。
(シ)「おすすめ特集」の見出しのもと,「靴下」,「パンツ」等の商品が並んで紹介されている(甲62の12)。
イ 本件商標と引用商標1の指定商品について
(ア)販売部門の同一性について
申立人の提出した証拠によれば,百貨店において,靴下と下着類等が,同一の売場において取り扱われ(甲62の4,5),通信販売のウェブサイト上で,靴下と下着等が共に紹介や販売がされている(甲62の1,2,6?9,11,12)から,これらの商品については,販売場所を同じくするものといえる。
(イ)商品の用途の同一性について
本件商標の指定商品である「靴下」は,「靴を履く時などに足に直接はく衣料」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)である。
他方,引用商標1の指定商品中,「shirts」は,「(シャツ)上半身に着る肌着。ワイシャツなど,中着又は上着として着るものもいう。」,「pants」は,「(パンツ)足を別々に覆う洋装の外衣の総称。運動する時などにはく短いズボン」,「shortsは,「(ショーツ)丈の短いズボン。ショーツ。婦人用下ばき。パンティー」,「jackets」は,「(ジャケット)腰丈ほどの上着の総称」,「sweatshirts」は,「(スウェットシャツ)運動着として汗取り・保温のために着る,ゆったりとした長袖のセーター」,及び,「sweatpants」は,「(スウェットパンツ)汗取り・保温用のズボン」(以上,前掲書)であるから,一般に身体の保温や汚れの吸収のための下着及び下着の上に着る衣服であるから,体を覆うものや身に着けるものとしての使用する各種商品である。
また,引用商標1の指定商品中「headwear」は,「(帽子)頭にかぶって寒暑又は塵埃を防ぎ礼容をととのえるもの」(前掲書)であり,直射日光やほこりなどから頭部を保護し,身なりを整えることを用途とする商品である。
ウ 検討
上記ア及びイによれば,本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品中,下着としての「shirts, pants」及び「shorts」とは,肌に直接着ける商品であって,その販売部門を同じくする場合があるとしても,本件商標の指定商品は,専ら足(脚)に着用する商品であるのに対し,引用商標1の下着としての上記指定商品は,「肌に直接着ける衣服,上着の下に着用する衣服」であるから,それらの商品の具体的な用途,及び,それらの商品を買い求める需要者の目的は,明らかに異なるものである。
そうすると,本件商標の指定商品と引用商標1の上記指定商品とに同一又は類似の商品が使用されたとしても,商品の出所について混同を生じるおそれはないものであり,また,本件商標の指定商品と,引用商標1のその他の指定商品とは,明らかに類似しない商品といえるものである。
(5)小括
以上のとおり,本件商標と,引用商標1とが同一又は類似の商標であるとしても,本件商標の指定商品は,引用商標1の指定商品と類似するものではないから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2のとおり,本件商標と引用商標1とは,類似の商標であり,また,引用商標2は,前記第2のとおり,引用商標1と同一の構成からなるものであるから,本件商標と引用商標2も,類似の商標であるというのが相当である。
しかしながら,上記1のとおり,引用商標は,本件フィットネス方法及びフィットネス用のウェアを表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国のフィットネス及びフィットネス用のウェアの取引者,需要者の間に広く認識されていた商標とはいえないものである。
そして,上記2のとおり,本件商標と引用商標1の指定商品は,非類似の商品であって,本件商標の指定商品と引用商標2の指定役務についても,商品の生産者,販売者,取扱い系統,用途と,役務の提供者,提供手段,目的,提供に関連する物品等との間に,密接な関連性を有するものとは認められない。
そうすると,本件商標は,本件商標権者が,これをその指定商品について使用しても,本件商標に接する取引者,需要者に,引用商標を連想又は想起させることはなく,該商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
なお,申立人は,本件商標の指定商品と引用商標2の指定役務との関連性について,本件商標の指定商品には,運動や身体のトレーニングに使用されるものが含まれ,身体トレーニングを行う需要者という点において重複するから,密接に関連するものである旨主張するが,たとえ,運動や身体トレーニング用に靴下が使用され,需要者が共通する場合があるとしても,本件商標の指定商品と,引用商標2の指定役務とは,一般に,同一事業者によって行われるものではなく,また,これらの用途や販売(提供)場所も異なるものであるから,これらの商品及び役務の間に密接な関連性があるものとはいい難い。
よって,申立人の上記主張は,採用できない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-08-07 
出願番号 商願2016-32495(T2016-32495) 
審決分類 T 1 651・ 264- Y (W25)
T 1 651・ 261- Y (W25)
T 1 651・ 271- Y (W25)
T 1 651・ 262- Y (W25)
T 1 651・ 263- Y (W25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 啓之 
特許庁審判長 田中 亨子
特許庁審判官 平澤 芳行
小林 裕子
登録日 2016-10-21 
登録番号 商標登録第5889786号(T5889786) 
権利者 株式会社グランディ
商標の称呼 クロスフィット 
代理人 廣中 健 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 河内 幸雄 
代理人 田中 克郎 
代理人 島田 義勝 
代理人 池田 万美 
代理人 水谷 安男 

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