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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16 |
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管理番号 | 1331411 |
審判番号 | 取消2015-300621 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2015-08-26 |
確定日 | 2017-08-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4882830号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4882830号商標の指定商品及び指定役務中,第16類「全指定商品」については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4882830号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成16年9月17日に登録出願,第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,書画」を含む第35類,第36類,第38類,第39類,第41類,第42類及び第45類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成17年7月29日に設定登録されたものである。 そして,本件審判の請求の登録は,平成27年9月8日にされたものである。 第2 請求人の主張の要点 請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書及び審判事件弁駁書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,その指定商品及び指定役務中の第16類「全指定商品」について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれの者によっても使用した事実が存在しないから,その商標登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)本件商標の使用について ア 乙第2号証ないし乙第4号証について 被請求人は,2015年9月11日から16日まで東京ビッグサイトにおいて開催された印刷・紙工・デジタルグラフィックス関連の技術・サービスの国際総合印刷機材展である「IGAS2015」(以下「IGAS展」という。)におけるコダック株式会社(以下「コダック社」という。)のブースにおいて,同社プリンターにより印刷された紙製カード(以下「使用紙製カード」という。)が配布され,このカードに被請求人オリジナルのフルカラー二次元コード(審決注:「二次元コード」とは,水平方向と垂直方向に情報をもつ表示方式のコードのこと。)が表示されている(乙3)とのことであるが,使用紙製カードには本件商標及び日付が一切表示されていない。仮に被請求人が,総合的な商品・サービス紹介パンフレット(乙4)(以下「使用パンフレット」という。)に説明するように,使用紙製カードに表示される二次元コードが被請求人オリジナルの「文字 図形+QRコード」(文字キューアールコード)であったとしても,使用紙製カードにより,第16類「文房具類」及びその他の指定商品に関する本件商標の使用の事実が証明され得ないことは明らかである。 また,使用紙製カードの内容及びそれが配布された場所を考慮すると,使用紙製カードは,コダック社のデジタル印刷機に関する技術や機能を紹介するために配布されたもの,あるいは,被請求人のオリジナル二次元コード「ロゴQ」の特徴を紹介するために配布されたものと考えるのがごく自然である。そうすると,使用紙製カードにより証明され得るものは,「デジタル印刷機」関連の商品又は役務についての商標の使用,あるいは,「二次元コード」関連の商品又は役務についての商標の使用であり,商品「紙製カード」についての商標の使用であるということはできない。 さらに,IGAS展は,本件審判請求の予告登録日である平成27年9月8日前3年以内の期間(以下「要証期間」という。)後の2015年9月11日から16日に開催されたものであるから,要証期間内における本件商標の使用が証明され得ると考えることはできない(乙2?4)。 イ 使用パンフレット(乙4)について 使用パンフレットの3頁には「文字/図形+QRコード(文字キューアールコード)」を商品名とする二次元コードが紹介されているが,仮に当該記載において本件商標が識別標識として使用されていると考えたとしても,当該記載の構成態様からすれば,本件商標は,第16類の商品ではなく,二次元コードが属する第9類の商品の自他識別標識として使用されていると考えるのが相当である。 また,使用パンフレットの7頁にも本件商標が表示されているが,使用パンフレットは,被請求人の総合的な商品・サービス紹介パンフレットというよりは,むしろ被請求人オリジナルのフルカラー二次元コードである「Logo Q/ロゴQ」の内容及び活用方法を紹介するものであり,使用パンフレットの7頁における本件商標の表示は前後の文脈と関係なく形式的に表示されているといい得るものであるから,当該表示により,本件商標が具体的な商品に関する自他識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることはできない。 ウ 使用ワインラベル(乙5)について 被請求人は,IGAS展における株式会社SCREEN(以下「SCREEN社」という。)のブースにおいて,SCREEN社が製造するワインの紙製商品ラベル(以下「使用ワインラベル」という。)に「文字 図形+QRコード」を表示したとするところ(乙5),使用ワインラベルには本件商標が一切表示されていない。仮に使用ワインラベルに表示される二次元コードが被請求人オリジナルの「文字 図形+QRコード」(文字キューアールコード)であったとしても,使用ワインラベルにより,第16類「文房具類」及びその他の指定商品に関する本件商標の使用の事実が証明され得ないことは明らかである。 また,使用ワインラベルの内容を考慮すると,使用ワインラベル及び当該ラベルが貼付されたワインボトルは,SCREEN社により開発された印刷機や印刷技術を紹介するために展示されたものと考えるのがごく自然である。そうすると,使用ワインラベルにより証明され得るものは,「印刷機」又は「印刷技術」関連の商品又は役務についての商標の使用であり,商品「紙製ラベル」についての商標の使用であるということはできない。 さらに,上記(1)アと同様に,乙第5号証中の写真はIGAS展におけるSCREEN社のブース内の展示に関するものであるから,要証期間内における本件商標の使用が証明され得ると考えることはできない。 エ 乙第6号証について 被請求人は,被請求人の関連会社である朝日プロセス株式会社(以下「朝日プロセス社」という。)内のウェブページ(乙6)(以下「使用ウェブページ」という。)において,被請求人が作成する「文字 図形+QRコード」が第16類の「文房具類」に属する「シール」,「カード・名刺用紙」及び「年賀はがき」等へ活用する例が表示されているため,当該表示は本件商標の使用といえると主張するが,使用ウェブページは,被請求人のオリジナル二次元コード「ロゴQ」の内容を紹介するものであり,本件商標は一切表示されていない。仮に使用ウェブページに表示される二次元コードが被請求人オリジナルの「文字 図形+QRコード」(文字キューアールコード)であったとしても,使用ウェブページにより,第16類「文房具類」及びその他の指定商品に関する本件商標の使用の事実が証明され得ないことは明らかである。 また,使用ウェブページには当該証拠方法の発行日に関する記載がないことから,使用ウェブページにより,要証期間内における本件商標の使用が証明され得ると考えることはできない。 (2)小括 以上を総合的に勘案すると,被請求人が提出した証拠方法からは,要証期間内に取消の対象とされている第16類「文房具類」及びその他の指定商品について本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を日本国内で使用した事実を客観的に認めることはできない。 3 請求人による本件審判請求行為について (1)「QRコード」は,大容量でありながら他のコードより10倍以上のスピードで読み取ることができる二次元コードとして請求人により開発され,1994年に発表されたものである。「QRコード」という名称は,「QuickResponse/クイック・レスポンス」に由来し,高速読み取りにこだわり抜いた開発のコンセプトが込められた請求人の創作に係る造語である。請求人の長年に渡る普及活動の結果,「QRコード」は,自動車部品業界,食品業界,薬品業界,コンタクトレンズ業界等において商品管理等様々な用途に使用され,かつ,JIS規格やISO規格を取得することにより,現在,「QRコード」は国内・海外の各分野の企業活動において不可欠な存在となった。これは,我が国の取引者,需要者において広く知られている事実である。 上記の経緯を考慮すれば,誤認混同を防止する意味において,「QRコード」に係る商標は,そもそもの開発者であり,また,商標の創作者でもある請求人に帰属されるべきものである。また,請求人以外の企業による「QRコード」を利用した事業が円滑に進められるためにも,複数の区分に属する商品・役務を指定する「QRコード」の文字を含む本件商標が請求人以外の者により維持されているのは決して望ましい状況とはいえない。 請求人は,「QRコード」の開発当初から,「より多くの人にQRコードを使ってもらいたい」という考えに基づき,第三者による規格化されたQRコードの使用について積極的に権利行使は行わないとのポリシーで普及活動を行ってきた。かかるポリシーの下,本件商標については登録後も実際の使用が長年行われていなかったことから,2015年7月29日の存続期間満了による権利消滅を待っていたところ,当該存続期間満了日直前の2015年6月に本件商標は被請求人に譲渡されたため,本件不使用取消審判を請求するに至ったものである。 以上の事実に鑑みれば,本件審判請求が本来の制度趣旨から逸脱するものでなく,また,専ら被請求人を害する目的で行われているものでもないことは明らかである。 (2)不使用取消審判については,商標法第50条第1項において,取消の対象となる登録商標の指定商品・指定役務毎に請求し得る。また,同第50条第2項においては,被請求人は,請求に係る指定商品・指定役務のいずれかについての当該登録商標の使用を証明すれば登録の取消を免れることができると規定されている。このような,わが国の不使用取消審判制度の内容を考慮すれば,商品及び役務を広く指定する登録商標に対して不使用取消審判請求を行う場合において,一定の範囲の指定商品・役務を一つのまとまりとして複数の審判に分けて請求することは,一般的に採用され得る手段であることはいうまでもない。 したがって,本件審判請求を含めた本件商標に対する計9件に渡る請求人よる不使用取消審判請求が権利の濫用とはいえず,また,不適法なものでないことは明らかである。 4 まとめ 被請求人が提出した証拠方法からは,要証期間内に取消の対象とされている第16類「文房具類」及びその他の指定商品について本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を日本国内で使用した事実を客観的に認めることはできない。また,本件審判請求は,請求人が被請求人を害する目的で行われたものとはいえず,権利の濫用として認められるべきものでもない。 第3 被請求人の主張 被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標の使用について 被請求人は,要証期間内に,取消の対象とされている指定商品中第16類「文房具類」について,本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を付して日本国内においてその商品を譲渡等してきた事実があり,これは商標法第2条第3項第1号,同項第2号及び同項第8号の行為であるから,商標の使用に該当する。 (1)被請求人の事業概要 被請求人は,各種商品やサービスに関するマーケティングの実施・助言や宣伝広告業を行う法人であり,主力事業の1つとして,「Logo Q」をはじめとするさまざまな独自開発のフルカラー二次元コードの提供を通じたマーケティングコンサルティング,商品の販売促進及び役務の提供促進をサポートする事業を行っている(乙1)。 被請求人が提供する各種フルカラー二次元コードの全ては,QRコード読取機能を有する装置により読み取ることが可能であるため,現在一般的に普及しているほぼ全ての携帯電話機,タブレット又はスマートフォンのカメラを使用して読取り可能である。これにより,「Logo Q」等を通じ,多くの需用者・取引者を特定のウェブサイト・情報媒体に直ちに誘導することができ,商品・役務に関する宣伝広告・受注発注・商品管理・物流処理その他の各種業務を飛躍的に効率化することを可能としている。 被請求人は,平成27年6月15日付けで,前商標権者より本件商標を譲り受け,特許庁へ移転登録申請手続を行い,本件商標の商標権者となった。そして,同日より,上記の「Logo Q」をはじめとする被請求人オリジナルのフルカラー二次元コードを通じたサービス全体の総称として「図形+QRコード」の使用を開始し現在に至るものである。 (2)本件商標の使用の事実について ア IGAS展(乙2)において,被請求人の「図形+QRコード」サービスに関する商品が複数出展・展示された実績がある。 なお,当該展示イベントの開催日は2015年9月11日から16日であり,要証期間より後に開催されたイベントではあるものの,出展内容・出展機材・出展資料等についてイベント実施の数週間あるいは数か月前から準備を行うのは当然のことである。よって,当該展示イベントの1週間程度前にすぎない要証期間から,出展のための相当の準備がすでになされていたと考えるのが自然である。したがって,以下のIGAS展に関する資料は9月11日付けのものであるが,要証期間内に商標の使用又は使用の具体的準備を行っていた証拠となるのは明らかである。 イ IGAS展におけるコダック社のブースにおいて,同社の業務用高性能プリンターにより印刷された紙製のカードを配布したが,このカードに被請求人オリジナルフルカラー二次元コードを表示した(乙3)。 また,使用パンフレット(乙4)に「文字 図形+QRコード」を紹介し,本件商標と同一あるいは社会通念上同一の商標を表示した。 ウ 「IGAS展におけるSCREEN社のブースにおいて,ワインの紙製商品ラベルに,「文字 図形+QRコード」を表示した(乙5)。 エ 被請求人の関連会社であり,印刷総合サービス業を行う朝日プロセス社内のウェブページにおいて,被請求人が作成する「文字 図形+QRコード」を,「シール」,「カード・名刺用紙」及び「年賀はがき」等へ活用する例を表示した(乙6)。 オ 上記アないしエのとおり,被請求人が,要証期間内において,第16類「文房具類」について商標法第2条第3項第1号,同項第2号及び同項第8号に規定する行為により,本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を日本国内で使用した事実があることは明白である。 2 請求人による本件審判請求行為について 請求人は,被請求人の本件商標の全区分について,1区分毎に(第42類については2つに分けて)不使用取消審判を請求し,あわせると実に9件にもなる審判請求をほぼ同時に行っている。これらの取消審判事件の対象区分は,第16,35,36,38,39,41,42及び45類にわたるものであるが,請求人による「QRコード」関連の商標権取得実績を確認すると,それらのほとんどが第9類及び第42類のみに限られているものである。また,近年出願された商願2014-071942号「QR Code」及び商願2014-071943号「QRコード」もやはり第9類,第35類及び第42類の3区分のみに限られており,その他の区分については全く出願の事実を確認できない(乙7)。 したがって,請求人がこのような広範囲にわたって,しかも各区分に分け,9件もの不使用取消審判を請求し,本件商標の登録の取消を求める合理的な理由もメリットも全くないはずである。さらに,請求人の本件商標に対する関心の程度は長期にわたって極めて低かったのであり,長らく本件商標の存在を容認し続けていたのである。にもかかわらず,被請求人が本件商標を譲り受け商標権者になった途端,事前の譲渡交渉や話し合いによる解決の申出もなく,突然に全区分に及ぶ不使用取消審判を大量に請求するという行為に及んだのである。 請求人の目的は,商標権取得や自己の商標使用を安全にするなどの純粋な商標法上の考えに基づくものでなく,専ら被請求人を取消審判請求の対応に追い込み,本来の業務を妨害することにあると考えざるを得ない。 ここで,商標法第50条の不使用取消審判の制度趣旨は,一定期間未使用の商標には保護すべき信用がもはや生じておらず,一方そのような未使用の商標に独占権を与え続けては商標使用希望者が商標法上の保護を受けられず不利益を被ることになるため,これを防止する趣旨である。 このような趣旨を鑑みれば,前商標権者に相当の対価を支払い,適式な商標権移転登録申請手続を行い,正当に商標権を取得し,直ちに本件商標の使用を開始している被請求人に対し,何ら事前の交渉もなく,全く商標を使用する意思のない区分にまで及ぶ大量の不使用取消処分を求める請求人の行為は,不使用取消審判の制度趣旨及び商標法上の立法趣旨に著しく反する行為といわざるを得ない。 したがって,このような本来の制度趣旨から逸脱し,専ら被請求人を害する目的で行われている本件審判請求は,権利の濫用として認められるべきではない。 3 当審における審尋に対する被請求人の答弁 被請求人は,乙第2号証ないし乙第6号証により,商標権者が要証期間内に本件商標を第16類「文房具」に使用したものとは認められないとする審尋に対して,要旨以下のように回答するとともに,乙第8号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)使用紙製カード(乙3)について 使用紙製カード(乙3)の左側部分には,「アンケート」の文字が表示された被請求人オリジナルの二次元コードが印刷されている。そして,使用パンフレット(乙4)の3頁目下部に,このようなオリジナル二次元コードは「文字 図形+QRコード」(モジキューアールコード)と称呼し,「図形+QRコード」の一つであることを明確に説明している。 これらを総合すれば,使用紙製カードに印刷された被請求人オリジナルの二次元コードの表示をもって,本件商標「図形+QRコード」を「紙製カード」に表示したといえる。 また,使用紙製カードは,被請求人がコダック社の展示ブースの一部をコダック社から無償で提供を受け,そのスペースを使用して被請求人自身が展示・配布したものであるから(乙9,乙10),使用紙製カードは被請求人の業務に係る商品そのものである。 (2)使用ワインラベル(乙5)について 使用ワインラベルの左下部分には,「プレゼント」の文字が表示された被請求人オリジナルの二次元コードが印刷されている。そして使用パンフレット(乙4)の3頁目下部に,このようなオリジナル二次元コードは「文字 図形+QRコード」(モジキューアールコード)と称呼し,「図形+QRコード」の一つであることを明確に説明している。 これらを総合すれば,使用ワインラベルに印刷された被請求人オリジナルの二次元コードの表示をもって,本件商標「図形+QRコード」を「ワインのラべル」に表示したといえる。 また,使用ワインラベルは,被請求人がSCREEN社の展示ブースの一部をSCREEN社から無償で提供を受け,そのスペースを使用して被請求人自身が展示・配布したものであるから,使用ワインラベルは,被請求人の業務に係る商品そのものである。 (3)使用パンフレット(乙4)について 本件商標は図形要素を含んだロゴ商標であり,使用パンフレットの3,7及び8頁目に大きく目立つように本件商標が表示されているから,使用パンフレット自体に本件商標が自他役務識別標識として機能する状態で表示されているのは明らかである。 また,使用パンフレットには,宣伝文句や被請求人のアピール文が表示されており,これらの文章は,被請求人が提供するサービスの総合的な宣伝広告媒体であるからこそ盛り込まれているものであるから,使用パンフレットは,単なる技術の説明や紹介ではなく,被請求人が提供するサービスを紹介する総合的な宣伝広告媒体と考えるのが自然である。そして,当該宣伝広告媒体たる使用パンフレットの第6頁目中段において,被請求人サービスを印刷媒体へ利用できる具体例として,「カタログ」,「チラシ」,「パンフレット」,「新聞/雑誌広告」,「ダイレクトメール」,「証明書」,「シール」,の記載がされている。 したがって,被請求人の総合的な宣伝広告媒体である使用パンフレットに,本件商標を大きく数力所に渡って表示するとともに,被請求人のサービスの応用例として「シール」を表示する行為は,第16類の指定商品「文房具類」に関する広告に標章を付して頒布する行為に他ならないから,本件商標を指定商品「文房具類」について使用しているといえる。 (4)使用ウェブページ(乙6)について 使用ウェブページは,朝日プロセス社が公開しているウェブページであるが,その内容は,朝日プロセス社の業務に関するものではなく,専ら被請求人のサービスを広告する内容である。 被請求人は,「図形+QRコード」や「LogoQ/ロゴキュー」等のオリジナル二次元コードのデザイン制作やコード生成などのコードを生み出し管理する部分を業務としており,使用ウェブページの内容は,「図形+ORコード」や「LogoQ/ロゴキュー」自体の機能やメリットを,朝日プロセス社が被請求人のために紹介し宣伝するものである。 そして,被請求人の業務に関する使用ウェブページにおいて,被請求人が作成する「文字 図形+QRコード」を「シール」,「カード・名刺」及び「年賀はがき」等へ活用する例を表示しており,これらは「文房具類」に属するものであるから,使用ウェブページは,第16類の指定商品「文房具類」に関する広告について本件商標を使用したものといえる。 (5)乙第9号証について 使用紙製カードは,「アンケート」と表示された「文字 図形+QRコード」を携帯電話等のカメラで読み取ると,被請求人が作成アンケート回答用のウェブサイトが携帯電話画面に現れ,そこで回答を行うと,抽選で景品用のBoxティッシュが当選するというしくみになっている。そのため,「アンケート」と表示された「文字図形+QRコード」が印刷された使用紙製カードは第16類「印刷したくじ(おもちゃを除く。)」であるともいえる。 被請求人は,このくじを宣伝するものとして,「紙製看板」(乙9)(以下「使用紙製看板」という。)を制作し,コダック社より無償提供されたブースの一部に設置した。使用紙製看板には大きく「Kodak Nex Press出力制作\オリジナルのBoxティッシュプレゼント」と表示され,その下部には,「アンケート」の表示のある「文字 図形+QRコード」とともに,本件商標が大きく横書きに表示されている。 よって,被請求人によるオリジナルBoxティッシュの抽選を受けられる使用紙製カードの宣伝媒体である使用紙製看板に本件商標を表示する行為は,第16類の指定商品「印刷したくじ(おもちゃを除く。)」に関する広告に標章を付して展示する行為に他ならないから,本件商標を指定商品「印刷したくじ(おもちゃを除く。)」について使用しているといえる。 (6)使用紙製カード及び使用紙製看板の使用時期について 本件審判の請求の登録日が平成27年9月8日であるところ,IGAS展の開催時期は平成27年9月11日から16日であり,要証期間外の証拠に見える。 しかしながら,このような大規模な展示会においては,出展の準備を数か月前・数週間前から行うのは当然であり,数日前から準備を開始するということはない(乙10)。 したがって,本件商標は,要証期間内における商標の使用に該当する。 4 まとめ 上記のとおり,被請求人は,本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を,指定商品「文房具類」について,日本国内において要証期間内に使用してきた事実が存在し,これらは商標法第2条第3項第1号,同項第2号及び同項第8号により商標の使用に該当する。 また,本件審判請求は,審判請求人が被請求人を害する目的で行われたことが明らかであるから,このような請求は権利の濫用として認められるべきではない。 したがって,本件審判請求は成り立たない。 第4 当審の判断 被請求人の提出する証拠及び主張によれば,以下のとおりである。 1 商標権者について 商標権者は,平成19年に設立された,二次元コードを研究・開発・販売するとともに,スマートフォン,携帯コンテンツ及びウェブサイトの企画・製作・販売並びにシステム構築等の事業を行っている法人である(乙1)。 2 本件商標の使用について 被請求人は,商標権者が要証期間内に日本国内において,本件審判に係る指定商品中,第16類「文房具類(紙製カード,紙製ラベル,シール),印刷したくじ(おもちゃを除く。)」について本件商標を付して,商標法第2条第3号第1号,同項第2号及び同項第8号の行為を行った旨主張し,その証拠として乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出しているが,提出された証拠によっては,次の(1)ないし(5)の理由によって,上記主張を立証したものとは認められない。 (1)使用パンフレット(乙4)について 使用パンフレットは,商標権者が要証期間内の平成27年6月15日に作成したものであり,また,使用パンフレットの3,7及び8頁目に,本件商標の表示を認めることができる。 しかしながら,使用パンフレットは,「次世代の電子情報化のインフラコード」(1頁)と題するパンフレットであり,3頁目には,「(1)ロゴキュー/LogoQ」,「(2)バリアブル ロゴキュー/LogoQ」及び「(3)ロゴパス/LogoPass」等見出しの下に二次元コードとともにそれらの説明が記載され,その一つとして「(6)文字QRコード」の文字とともに本件商標が表示され,その説明として「文字とQRコードを掛け合わせ,更に色を加味した,誰が見てもサイトの内容がわかりやすいコードが『文字QRコード』です。」の記載,その右側に文字を含む二次元コードの例が掲載されている。また,7頁目の表示には,「A・Tコミュニケーションズが目標とするビジネス構想」及び「膨大かつ多様なビッグデータ時代の革命ツール」の見出しの下,「A・Tコミュニケーションズが提供するセキュリティを兼ね備えたフルカラーQRコード『ロゴQコード』は,ビッグデータ収集を促進すると共にオムニチャンネルの新時代の革命ツールであると確信しております。」の記載とともに,本件商標が「ロゴQコード」の商標と並べて表示され,その下に文字又は図形を含む二次元コードの例が掲載されている。さらに,6頁目には,「印刷メディア」の使用例として「シール」等の記載,8頁目には,「2015年6月(本件商標の表示)左記のQRコードの商標を取得しました。」との記載がある。 そうすると,上記の記載内容から,商標権者は,使用パンフレットにおいて,その業務に係る二次元コードを説明しているものであり,これを上記1と併せみると,使用パンフレットに表示された本件商標は,商標権者が企画・開発した二次元コードを表示するものとして使用されているものであり,その具体的な使用例として「シール」等の記載がされているとみるのが相当である。 したがって,使用パンフレットにおいて,本件商標は,商標権者が開発した二次元コードを表示するものとして使用されているものであり,商標権者が業としてシール等の「文房具類」を製造,販売する出所を表示するものとして,使用されたものとは認められない。 (2)IGAS展に関連する証拠(乙2,3,5,9,10)について ア 乙第2号証によれば,IGAS展は,2015年(平成27年)9月11日から同月16日(要証期間経過後)に開催されたものであることが認められる。 イ 使用紙製カード(乙3)は,商標権者がIGAS展におけるコダック社のブースにおいて配布したとするものであるところ(乙9,10),使用紙製カード(乙3)には,「次世代のIoTタグコード:ロゴQ」の見出しの下に,商標権者が開発した「ロゴQ」の特長及び使用紙製カードについて商標権者が協力していることが記載されているものであり,また,「アンケート」の文字を含む二次元コードが表示されていて,その下に「LogoQ」の文字が記載されている。 しかしながら,使用紙製カード(乙3)には,被請求人が主張するとおり,商標権者が開発した二次元コードが表示されているが,本件商標は,別掲のとおり,デザイン化された「QRコード」の文字とゴシック体の文字からなる「QRコード」の文字を上下に書したものであるから,使用紙製カード(乙3)における当該二次元コードの表示とは,その構成が明らかに相違するものである。 したがって,使用紙製カード(乙3)の二次元コードの表示は,本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできないものであり,その他,使用紙製カード(乙3)には,本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下同じ。)の表示を認めることができない。 ウ IGAS展の使用紙製カード(乙3)を配布する展示ブースを撮影した写真(乙9)によると,被請求人が使用紙製カード(乙3)の宣伝媒体と主張する使用紙製看板には,「オリジナルのBoxティッシュ プレゼント」及び「アンケートにご回答ください」の見出しの下,「ケータイ・スマホでアクセスして下さい」の文字及び「アンケート」の文字を含む二次元コードが掲載され,その下に「この▲Q▼Rコード[QRコード]は LogoQ Code Marketing で作られています」の記載及び商標権者が協力していることが記載されている。 そして,上記使用紙製看板における「▲Q▼Rコード[QRコード]」の表示は,「▲Q▼Rコード」の部分が本件商標の上段部分と同一の構成からなり,[QRコード]の部分が本件商標の下段部分と同一の構成文字からなるものと認められるから,本件商標と社会通念上同一の商標であるとみることができる。 また,被請求人は,使用紙製カードは第16類「印刷したくじ(おもちゃを除く。)」であるともいえるものであり,このくじを宣伝するものとして,使用紙製看板(乙9)を制作し,コダック社より無償提供されたブースの一部に設置したと主張している。 しかしながら,被請求人の主張及び使用紙製看板の記載からすると,使用紙製看板の前に置かれた使用紙製カードを配布された者が,使用紙製カード上の「アンケート」と表示された二次元コードを携帯電話等のカメラで読み取ることにより,商標権者が作成したアンケート回答用のウェブサイトが携帯電話等の画面に現れ,そこで回答すると,抽選で景品用のティッシュが当選する仕組みとなっているものと認められることから,商標権者の使用紙製看板を設置し,展示する行為は,使用紙製カードに表示された二次元コードを試してもらうためのものであり,商標権者の開発した二次元コードの宣伝活動とみるのが相当であって,商標権者が業として商品「印刷したくじ(おもちゃを除く。)」を製造,販売する出所を表示するものとして,本件商標が使用されたものとは認められない。 エ 被請求人の主張によれば,使用ワインのラベル(乙5)は,IGAS展において,商標権者がIGAS展のSCREEN社のブースにおいて展示したワインボトルに貼付したとするものであるところ,使用ワインのラベルには,本件商標の表示を認めることができないし,商標権者の表示を確認することもできない。 オ 上記アないしエによれば,使用紙製看板には本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていることが認められるが,商標権者がこれを商品「印刷したくじ(おもちゃを除く。)」について使用したものとは認められず,使用紙製カード及び使用ワインのラベルには、本件商標が使用されているものと認めることはできないものであり,さらに,IGAS展の開催は,要証期間経過後である。 したがって,IGAS展に関連する証拠(乙2,3,5,9,10)により,商標権者が要証期間内に本件商標の使用をしていたものと認めることはできない。 なお,被請求人は,IGAS展の開催日が要証期間経過後であるとしても,要証期間内に本件商標の使用又は使用の具体的準備を行っていた旨主張するが,商標法第50条第2項に規定されている登録商標の使用は,被請求人がその要証期間内における「商標の使用」が成された事実を具体的に証明することが必要であって,要証期間内における本件商標の使用準備の主張により,商標法第50条第2項所定の事実を認めることはできない。また,上記アないしエに係る本件商標の使用は要証期間経過後の使用であることは明らかであって,さらに,被請求人は,本件商標を要証期間内に使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていないから,被請求人の上記主張は,採用することができない。 (3)使用ウェブページ(乙6)について 使用ウェブページ(乙6)には,本件商標及びその掲載日についての記載がないことから,仮に,朝日プロセス社が商標権者の関連会社であって(乙1),使用ウェブページの内容が,商標権者等のサービスを広告するものであるとしても,商標権者が本件商標を要証期間内に使用したものとは認められない。 (4)その他,被請求人の提出に係る全証拠により,被請求人が要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の取消に係る指定商品について,具体的に本件商標を使用していることを証明したものと認めることはできない。 (5)小括 以上を総合すると,被請求人の提出に係る証拠によっては,要証期間内に日本国内において,商標権者が取消請求に係る指定商品について,本件商標の使用をしていたものと認めることはできない。 さらに,被請求人は,本件審判の取消請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 3 請求人による本件審判請求行為について 被請求人は,請求人による「QRコード」関連の商標権取得実績を確認すると,請求人が本件商標の登録の取消を求める合理的な理由もメリットも全くないはずであり,本件商標の使用を開始している商標権者に対し何ら事前の交渉もなく商標の使用意思が全くない区分にまで大量の不使用取消処分を求める請求人の行為は,不使用取消審判の制度趣旨及び商標法上の立法趣旨に著しく反するものであり,本来の制度趣旨から逸脱し,専ら商標権者を害する目的で行われている本件審判請求は,権利の濫用である旨主張している。 しかしながら,商標法第50条第1項で規定される審判請求は,「継続して三年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標…の使用をしていないときは,何人も,その指定商品又は指定役務に係る登録商標を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定されており,この規定において,請求人適格については,「何人も」とされていて,当該登録商標に係る譲渡等の事前交渉,請求人の使用意思等を要するとする規定はない。 また,上記規定における「各指定商品又は指定役務」とは,指定商品又は指定役務が二以上あるものをいうものであって,「商標登録に係る指定商品又は指定役務がいくつもあるときは,その一部の指定商品又は指定役務についての取消を請求することもできる。」(「工業所有権逐条解説 第19版」(特許庁編))と解されるものであり,一部の任意の指定商品を選択し,その取消を求めることができる。 そして,本件商標は,上記第1のとおり,第16類,第35類,第36類,第38類,第39類,第41類,第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品又は指定役務としているものであるから,本件商標について,商標法第50条第1項の規定による審判を請求する場合,上記の一部の「各指定商品又は指定役務」毎についての取消を請求することもできることは明らかである。 さらに,本件審判請求は,商標権者に何ら事前の交渉もないまま請求を行ったことのみにより,被請求人を害することを目的としたものであると認めることはできないものであり,この認定が請求人による「QRコード」関連の商標権取得状況に左右されるものともいえない。その他,被請求人及び請求人提出の証拠により,本件商標に係る請求人の不使用取消審判請求行為が,主として被請求人を害することを目的としたものであったことをうかがわせる事実はない。 したがって,本件審判請求は,請求人の権利濫用にあたるということはできない。 よって,被請求人の上記主張は採用することができない。 4 むすび 以上のとおり,被請求人は,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。 また,被請求人は,本件審判の取消請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 さらに,本件審判請求は,請求人の権利濫用にあたるということもできない。 したがって,商標法第50条の規定により,本件商標の指定商品及び指定役務中の第16類「全指定商品」についての登録を取り消すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本件商標![]() |
審理終結日 | 2016-11-25 |
結審通知日 | 2016-11-30 |
審決日 | 2016-12-20 |
出願番号 | 商願2004-86034(T2004-86034) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(Y16)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 榎本 政実 |
特許庁審判長 |
堀内 仁子 |
特許庁審判官 |
早川 文宏 小林 裕子 |
登録日 | 2005-07-29 |
登録番号 | 商標登録第4882830号(T4882830) |
商標の称呼 | キュウアアルコード、コード |
代理人 | 雨宮 康仁 |
代理人 | 磯田 一真 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 大橋 啓輔 |
代理人 | 外川 奈美 |
代理人 | 田島 壽 |