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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W45
管理番号 1330334 
異議申立番号 異議2017-900082 
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-15 
確定日 2017-06-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第5903539号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5903539号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5903539号商標(以下,「本件商標」という。)は,「プリナップ協会」の文字を標準文字で表してなり、平成28年4月28日に登録出願、第41類「技芸又は知識の教授,セミナー企画・運営又は開催,電子出版物の提供,教育・文化用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」及び第45類「契約書その他の権利義務又は事実証明に関する書類の作成及びこれらに関する助言・指導,身の上相談,人生相談,法律相談」を指定役務として,同年10月31日に登録査定、同年12月9日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の指定役務中、第45類の「法律相談」については、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べている。
1 本件商標について
本件商標は、「プリナップ協会」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、婚姻をする前に婚姻に関する取り決めをしておき、契約書・覚書を作成しておくことの「プリナップ」の文字と、ある目的のために集まった会員が協力して組織し、維持していく団体である「協会」の文字とを結合して一体に表したものであって、構成文字全体として「婚前契約『プリナップ』を取り扱う組織・団体」程の意味合いを理解させるものである。
そして、本件商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないことは明らかであり、他に、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などに該当するということはできないものである。
婚姻前に、当事者間で、予め財産分与の割合や養育費の額などを決めておくことによって、婚姻解消時の紛争の発生を予防・回避させて、国民全体の利益に資する活動を行っている商標権者の取り組みについては評価できるものであって、申立人は、それを否定するつもりはないものである。
2 本件商標の指定役務中の「法律相談」について
本件商標の指定役務において、「法律相談」が含まれているところ、これについては、弁護士法第74条第2項が「弁護士又は弁護士法人でない者は、利益を得る目的で、法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはならない。」と規定している。
本件商標含め「プリナップ」が国民に広く普及する過程において、「プリナップ」の概念に「法律相談」が含まれるような解釈が広がってしまうことは、行政書士が、報酬を得て「プリナップ」に関する業務に携わることが、非弁行為に該当し、できなくなることを意味し、弁護士・弁護士法人にしか、その取扱いが許されないこととなっては、「プリナップ」の普及・促進の障壁となり、婚姻解消の際における紛争の発生を予防・回避して、国民全体の利益につなげていこうとする、今日に至るまでに築き上げてきた関係者の取り組みを反故にしてしまう可能性が否定できない。
したがって、本件商標の指定役務中、「法律相談」については、公の秩序、善良な風俗を害するおそれがある商標に該当する。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号に規定する、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれると解される(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号同18年9月20日判決)。
2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「プリナップ協会」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「プリナップ」の文字に関して、「デジタル大辞泉」(株式会社小学館)に載録されている「プレナップ(prenup)」の語において、「結婚前の男女が、あらかじめ結婚後の生活などについての取り決めを書面で交わすこと。また、その書類。財産分与や離婚の条件、家事の分担などについて取り決めるのが一般的。プリナップ。婚前契約書。結婚契約書。」の記載があることからすれば、該「プリナップ」の文字は、「結婚前の男女が、あらかじめ結婚後の生活などについての取り決めを書面で交わすこと。」を意味する語と認められ、また、「協会」の文字は、「ある目的のため会員が協力して設立・維持する会。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味する語であるから、本件商標は、全体として「あらかじめ結婚後の生活などについての取決めを書面で交わすことに関する会」ほどの意味合いを理解させるものである。
そうすると、上記の意味合いを理解させる本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないことは明かである。
また、本件商標権者が、「プリナップ協会」の文字からなる本件商標を「法律相談」について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するというべき事情は認められないものである。
この点に関し、申立人は、「本件商標権者が、本件商標をその指定役務中の『法律相談』に使用した場合に、『プリナップ』の概念に『法律相談』が含まれるような解釈が広がり、行政書士が、報酬を得て『プリナップ』に関する業務に携わることが、非弁行為に該当することとなり、ひいては、『プリナップ』の普及・促進の障壁となり、婚姻解消の際における紛争の発生を予防・回避して、国民全体の利益につなげていこうとする、今日に至るまでに築き上げてきた関係者の取り組みを反故にしてしまう可能性がある」旨の主張をしている。
しかしながら、申立人は、上記主張を裏付ける証拠を提出しておらず、本件商標権者が、本件商標をその指定役務中の「法律相談」に使用したとしても、「プリナップ」の概念に「法律相談」が含まれるような解釈が広がり、行政書士が報酬を得て「プリナップ」に関する業務に携わることが非弁行為に該当することとなるとの事情を見いだすことはできず、また、本件商標権者の使用が、「プリナップ」の普及・促進の障壁となり、婚姻解消の際における紛争の発生を予防・回避して、国民全体の利益につなげていこうとする、今日に至るまでに築き上げてきた関係者の取り組みを反故にしてしまう可能性を示すような事情も見いだせない。
さらに、本件商標は、特定の国若しくはその国民を侮辱し、国際信義に反するようなものと認めることもできないし、本件商標権者による登録出願の経緯に、社会的相当性を欠くものとするべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-06-20 
出願番号 商願2016-48207(T2016-48207) 
審決分類 T 1 652・ 22- Y (W45)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野口 沙妃林田 悠子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 真鍋 恵美
中束 としえ
登録日 2016-12-09 
登録番号 商標登録第5903539号(T5903539) 
権利者 夛田 由里子
商標の称呼 プリナップキョーカイ、プリナップ 
代理人 小野寺 隆 
代理人 関口 正夫 

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