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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3541
管理番号 1330330 
異議申立番号 異議2016-900346 
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-26 
確定日 2017-07-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第5869886号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5869886号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5869886号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成27年12月16日に登録出願,第35類「広告業,移動体電話による広告,移動体電話による広告の代理,移動体電話による広告の企画又は作成,インターネットその他の通信ネットワークを介して行う広告,インターネットその他の通信ネットワークを介して行う広告の代理,インターネットその他の通信ネットワークを介して行う広告の企画又は作成,広告に関するコンサルティング,移動体電話用ウェブサイト上における広告用スペースの提供,インターネットその他の通信ネットワーク上に於ける広告スペースの提供,その他の広告用スペースの提供,商品の販売促進又は役務の提供促進のためのポイントの発行・清算又は管理,商品の販売促進又は役務の提供促進のための企画及び実行の代理,トレーディングスタンプの発行,ポイントカードの発行・清算及び管理,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査並びにそれらの調査結果の分析及びその調査結果に関する情報の提供,商品の販売に関する情報の提供,事業の管理・運営及びこれらに関する指導・助言,商品の売買契約に関する代理・取次ぎ・媒介,商品の販売促進又は役務の提供促進のための懸賞・クイズ・くじ・アンケート・ゲームの実施及びそれらに関する情報の提供,コンピュータデータベースへの情報構築及び情報編集,広告用具の貸与,求人情報の提供,新聞記事情報の提供」及び第41類「娯楽の提供,娯楽情報の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催に関する情報の提供,電子出版物の提供,電子出版物の提供に関する情報の提供,図書及び記録の供覧,図書及び記録の供覧に関する情報の提供,図書の貸与,図書の貸与に関する情報の提供,書籍の制作,書籍の制作に関する情報の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営に関する情報の提供,映画の上映・制作又は配給,映画の上映・制作又は配給に関する情報の提供,演芸の上演,演芸の上演に関する情報の提供,演劇の演出又は上演,演劇の演出又は上演に関する情報の提供,音楽の演奏,音楽の演奏に関する情報の提供,オンラインによる映像・音楽及び音声の提供,オンラインによる画像または画像と音声の提供,放送番組の制作,放送番組の制作に関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)に関する情報の提供,放送番組の制作における演出,放送番組の制作における演出に関する情報の提供,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作に関する情報の提供,スポーツの興行の企画・運営又は開催,スポーツの興行の企画・運営又は開催に関する情報の提供,インターネット等の電子計算機端末通信を利用して行うコンピュータゲームイベントの企画・運営または開催,テレビゲームイベントの企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)に関する情報の提供,競馬の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催に関する情報の提供,競輪の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催に関する情報の提供,競艇の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催に関する情報の提供,小型自動車競走の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催に関する情報の提供,娯楽施設の提供,娯楽施設の提供に関する情報の提供,移動体電話・インターネットその他の通信を用いて行うゲームの提供及びこれに関する情報の提供,オンラインによるゲームの提供」を指定役務として,同28年6月17日に登録査定,同年7月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は,以下の14件であるところ,その構成はそれぞれ以下のとおりであり,その他,それらの指定商品及び指定役務,登録出願日並びに設定登録日は,商標登録原簿又は国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりであって,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第5788675号商標(以下「引用商標1」という。):別掲2のとおり
2 国際登録第1048069号商標(以下「引用商標2」という。):別掲3のとおり
3 登録第5689430号商標(以下「引用商標3」という。):別掲3のとおり
4 登録第5044896号商標(以下「引用商標4」という。):別掲2のとおり
5 登録第5431413号商標(以下「引用商標5」という。):別掲2のとおり
6 登録第5057229号商標(以下「引用商標6」という。):別掲3のとおり
7 登録第5730813号商標(以下「引用商標7」という。):別掲4のとおり
8 登録第5419513号商標(以下「引用商標8」という。):別掲5のとおり
9 登録第5427070号商標(以下「引用商標9」という。):別掲6のとおり
10 登録第5844163号商標(以下「引用商標10」という。):別掲7のとおり
11 登録第5868986号商標(以下「引用商標11」という。):別掲8のとおり
12 登録第5939477号商標(商願2016-85423号商標,以下「引用商標12」という。):別掲9のとおり
13 登録第5912248号(商願2016-87048号商標,以下「引用商標13」という。):別掲10のとおり
14 登録第5912249号(商願2016-87739号商標,以下「引用商標14」という。):別掲11のとおり
以下,これらを併せていうときは,「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第269号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人の使用に係る爪の図柄(引用商標1,引用商標4,引用商標5及び引用商標11に示す図形)は,申立人会社及び申立人が2002年に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業のブランド「MONSTER ENERGY」を代表する出所識別標識として,当該ブランドが創設された2002年から現在に至るまでの長年に亘り継続して使用されているものである。同ブランドのエナジードリンクは,2002年に米国で最初に販売を開始後,日本では2012年5月から販売を開始し,現在では日本を含む世界100以上の国及び地域で販売中である。申立人は2002年以降,現在まで継続して,当該ブランドから発売される「MONSTER」の文字を基調とするエナジードリンクの個別商品名(例えば,「MONSTER ENERGY」「MONSTER ASSAULT」等)に加えて,常にドリンク缶の中央に最も大きく目立つ態様に爪の図柄を付している。爪の図柄と「MONSTER」の文字を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は経済界でも高い評価を受けている(甲2?甲33,甲51?甲58)。
国内市場でも,2012年5月から現在までに,2012年5月8日発売の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー缶355ml)(甲5,甲7,甲12),2012年5月8日発売の「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス缶355ml)(甲6,甲7,甲14),2013年5月7日発売の「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ缶355ml)(甲10,甲13,甲15),2014年8月19日発売の「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3ワンウェイびん150ml)(甲59,甲61),2014年10月7日発売の「MONSTER COFFEE」(モンスターコーヒー缶250ml)(甲60,甲62),2015年7月21日発売の「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ缶355ml)(甲101?甲103,甲118)の異なる6種の味わいのエナジードリンクが販売展開されている。また,2016年4月12日に「MONSTER ENERGYM3」(モンスターエナジーM3ワンウェイびん150ml)がリニューアル発売(甲127,甲129,甲131),2016年5月17日に「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス缶355ml)がリニューアル発売(甲128,甲130)され,これらのすべてに爪の図柄が付されている。
2 申立人による当該エナジードリンクの広告及び販売促進活動は,世界の有名アスリート,レーシングチーム,スポーツ競技会,アマチュアスポーツ選手,音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供,スポーツ,音楽,ゲームなどの娯楽イベントの開催,米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行,これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン,各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布),プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(爪の図柄を付したTシャツ,帽子,キーホルダー,ステッカー,ギター,バッグパック,クーラーボックス,冷蔵庫,自動車など)の提供,爪の図柄を付したポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示,遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース,申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して,2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されており,当該広告物及び販売促進物に爪の図柄が使用されてきた(甲7?甲17,甲34?甲91,甲101?甲133,甲136?甲168,甲225?甲237)。
また,申立人は,2002年から,ブレスレット,ラペルピン,キーホルダー,Tシャツ,スウェットシャツ,帽子,レーシングジャケット,手袋などのアパレル製品,運動用ヘルメット,バッグ類,ステッカー,傘,ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは,ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」「Monster」の文字の表示に加えて,爪の図柄を大きく表示して販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は国内の実店舗のほか,オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47,甲48,甲58,甲92?甲100,甲134,甲135)。
また,需要者における当該ライセンス商品の人気の高さに便乗して,海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?甲224)。
爪の図柄の世界規模での継続的使用に基づき,申立人は,エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について,引用各商標をはじめ,爪の図柄を基調とする様々な構成の商標について日本を含む諸外国で商標出願し,登録を取得しているほか(甲256?甲265,),米国では申立人の創作に係る爪の図柄ついて著作権登録も行っている(甲266,甲267)。
以上の事柄に照らせば,申立人の長期使用に係る爪の図柄は,本件商標の登録出願時及び査定時には,申立人及びその商標ライセンシーの製造販売に係るエナジードリンク及び各種ライセンス商品の代表的出所識別標識として国内外の取引者,需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
3 本件商標の指定役務は上記第1のとおりであり,申立人が爪の図柄を出所識別標識として使用して提供しているコンピュータゲーム・ビデオゲームの見本市,コンピュータゲーム・ビデオゲームの競技(一般に「e-Sports」と呼ばれているもの,甲268,甲269)イベント,並びに,スポーツイベント及び音楽関連のイベントに関わる役務と同一又は類似のもの若しくはこれらと密接に関連するものを多く含むものである。
本件商標の構成は別掲1のとおりであり,「NEW GENERATION E-SPORTS」及び「RAGE」の英文字からなる文字部分(以下,「本件文字部分」)と,上向きに尖った先端部を有する三角形様図形3個,小さな細長四角形様図形6個,並びに,下向きに尖った先端部を有する三角形様図形3個の図形部分から構成されるものである。本件商標を全体として考察すると,仮想垂直線に対して右方向にやや傾けた細く尖った上端部及び下端部を有し輪郭が不規則な凸凹状の細長い帯様図形で内部が極細線状に白抜きされたもの3本を概ね互いに平行に均等間隔で並べ,そのうち,左右に位置するものを概ね等しい長さにし,中央に位置するものをこれらよりも幾分長くした図形(以下,「3本の帯様図形」という。)を本件文字部分の背後に配置したデザインとして看取される。
当該構成中の3本の帯様図形は,鋭く尖った上端部と下端部を有し,輪郭が不規則な凸凹状の細長い帯様図形を互いに概ね平行かつ均等間隔で3本並べたものとして看取される点,3本の帯様図形のうち,左右に位置するものは長さが略等しく,中央に位置するものが幾分長い点,3本の帯様図形の輪郭が不規則な形状である点において,申立人の使用に係る爪の図柄の構成と共通の特徴を有しており,その外観全体から看取される印象が爪の図柄と近似する。
よって,本件商標と申立人の使用に係る爪の図柄は,類似性の程度が高いことが明らかである。
また,本件商標は,申立人が爪の図柄を使用して提供しているe-Sportsのイべン卜に関わる役務(甲87,甲88,甲142,甲144,甲166,甲167,甲226,甲227,甲229?甲241)を直観させる「E-SPORTS」の文字を構成中に有する。
本件商標の指定役務の需要者は一般消費者を多く含むから,通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
したがって,本件商標が使用された場合,これに接した取引者,需要者は,申立人の使用に係る爪の図柄及び申立人会社を想起連想し,申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係る役務であると誤信し,その出所について混同を生じるおそれが高いことが明らかである。
さらに,本件商標の使用は,申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている爪の図柄の出所識別力希釈化するものであり,また,その名声,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標等の著名性について
ア 引用商標について
引用商標は,別掲2ないし別掲11に示すとおりの構成よりなるものであるところ,このうち,引用商標2,引用商標3,引用商標6ないし引用商標10,引用商標12ないし引用商標14は,引用商標1,引用商標4,引用商標5及び引用11に示すとおりの態様からなる特徴的な図形(色彩の異なるものを含む。以下,この図形を「申立人図形」という。なお,申立人は,「爪の図柄」と表記している。)と同一又は類似する態様の図形を,それぞれの構成中に有してなるものである。
イ 引用商標等の使用について
申立人が提出した証拠及びその申立ての全趣旨によれば,以下のとおりである。
(ア)申立人は,申立人図形を,米国において2002年に創設したエナジードリンク事業のブランド「MONSTER ENERGY」を代表する出所識別標識として使用し,日本では2012年5月から,その使用を開始,以降,諸外国及び我が国における申立人図形を含む各商標を使用してエナジードリンクの販売を行ってきた。
そして,申立人のエナジードリンクは,我が国において,2012年5月8日からアサヒ飲料株式会社を通じて,主に,申立人図形をその構成中に含む引用商標2,引用商標3,引用商標6及び引用商標12(色彩の異なるものを含む。以下,これらをまとめて「使用商標」という。)が使用されて,継続して販売されてきたものであって,発売当初から100万箱を突破する売上げで(甲7?甲9),2015年6月30日までの期間に,約2億3,600万缶が販売され,この期間の総販売額は,日本円で170億円以上であるとの主張がされている(甲58)。
また,アサヒ飲料のニュースリリースにおいては異なる色彩の使用商標が表示されている(甲7,甲8,甲10,甲101,甲130)。
(イ)申立人図形は,インターネットショッピングサイトにおいて取り扱われているステッカー,Tシャツ,帽子等に使用され(甲47,甲48等),また,スポーツイベントやキャンペーン等に使用されている(甲58,甲73?甲91,甲104?甲113等)。
また,申立人は,我が国におけるエナジードリンクのサンプル配付等が,2012年及び2013年にかけて,渋谷やモータースポーツ,マリンスポーツ等のイベント会場において行われたと陳述している(甲58)。
ウ 上記ア及びイによれば,申立人は,我が国において2012年5月の発売以降,申立人のエナジードリンクについて,主に,使用商標を継続して使用してきたことが認められる。
そして,使用商標は,その構成及び上述の取引の実情に照らすと,申立人図形と文字部分とは分離して観察されるものであり,申立人のエナジードリンクは,「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」と称され,継続して販売,宣伝広告されていたことが認められるものであるが,そのキャンペーン等が,比較的若い世代が集まる繁華街やイベント会場等において申立人のエナジードリンクのサンプル配布,スポーツイベント等での出場選手のユニフォーム等に申立人図形又は使用商標が表示されたことからすると,申立人図形は,本件商標の登録出願日前までには,我が国の若い世代を中心とした消費者の間では,ある程度知られていたものと認めることができる。
しかしながら,申立人の提出した証拠においては,同人のエナジードリンクの販売に関する期間及び地域等における限定的なキャンペーン,該商品に関するニュースリリース(甲7?甲10,甲59,甲60,甲129,甲130,甲132等)のほかには,申立人が,我が国において,新聞,雑誌等において,広く当該商品の広告を積極的に行ったものと認められる事実を確認できる証拠はない。
さらに,申立人のエナジードリンクの我が国の飲料市場におけるシェアは明らかでなく,国内販売実績として確認できるのは,2012年(平成24年)5月ないし12月における販売実績の157万箱であり,この数量は,日本国内で申立人のエナジードリンクを販売する,アサヒ飲料が販売している他の飲料の2012年の販売実績,例えば,「ワンダ」4,048万箱,「三ツ矢」3,908万箱,「十六茶」2,010万箱(甲9)と比べ,販売期間が異なることを考慮しても,その差は極めて大きく,販売数量自体からは使用商標の周知性を裏付けることはできない。
また,提出されている証拠からは,使用商標及び申立人図形を除くその他の引用商標については,申立人のエナジードリンクに使用された結果,これが需要者の間に広く需要者に認識されていたものと認めることはできない。 なお,申立人は,申立人図形は,アパレル製品,ステッカー,バッグ類などのライセンス商品にも大きく表示して販売及び宣伝広告して使用され(甲47,甲48,甲58,甲92?甲100,甲134,甲135),また,申立人が支援する世界的有名アスリートやレーシングチームが着用・使用するユニフォームや車体等のステッカーなどにも使用されており(甲34?甲45等),さらに,申立人が主催又は協賛するコンピュータゲーム及びビデオゲーム等の娯楽イベント(甲87,甲142,甲144,甲167,甲226等)に関する広告媒体等において,一般消費者の目に触れる機会が多いものであり,インターネットやソーシャルメディアにおける露出度も高く,需要者において,「MONSTER ENERGY」ブランド及び申立人会社を直感させる申立人の代表的商品出所識別標識であり,需要者の間で広く認識されている旨を主張している。
しかしながら,これらの主張を裏付ける証拠については,例えば,ライセンス商品の売上高や広告の詳細に関する証拠の提出はなく,また,ユニフォームや車体等のステッカー及びビデオゲーム等の娯楽イベントに関する広告媒体への使用は,これらに興味を有する限られた者しか接する機会のないものであり,その他,客観的に申立人図形が申立人の業務に係る商品に使用されて需要者の間に広く認識されるものと認め得る証拠の提出はない。
以上を総合勘案すると,申立人が主に使用している使用商標及び申立人図形は,幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては,我が国の取引者,需要者の間に申立人のエナジードリンクを表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,黒字で太く大きく描いた「RAGE」の欧文字を白枠で縁取りして中央に配置し,その上部に同じ横幅で黒地に白抜き文字で「NEW GENERATION E-SPORTS」の欧文字(本件文字部分)を表示し,かつ,当該両欧文字の背景に,右上端部から左下方にやや傾けて3本の引っ掻き傷を象ったような図形(以下「本件図形」という。)を配置した構成よりなるところ,本件商標は,その構成態様に照らせば,一見して,本件図形がその文字部分の背景図形として描かれ,構成全体がまとまりよく一体的に表されたものとして看取,把握されるものである。
また,本件商標は,構成全体が一体不可分のものとして把握,認識されるものであるとしても,その構成中極めて大きく特徴的に表された「RAGE」の文字部分は,取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。
してみれば,本件商標は,その構成文字に相応して,「ニュージェネレーションイースポーツレイジ」の称呼を生じるほか,該「RAGE」の文字部分に相応して「レイジ」の称呼をも生じ,特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標1,引用商標4,引用商標5,及び引用商標11は,上端部に左向きに細く尖らせた端部を有し,その上端から下端に向かって徐々に幅が収斂し細くなる不規則な凸凹を有する形状の図形を,3本縦方向に平行に配置し,このうちの中央の図形は左右のそれに比べてやや長く描いてなる図形(申立人図形)からなるものである。
また,引用商標2,引用商標3,引用商標6ないし引用商標10,引用商標12ないし引用商標14は,上記した申立人図形(同一又は類似の態様の図形を含む。)をその構成中に有するものである。
そして,これら引用商標の申立人図形からは,特定の称呼及び観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,上記アに記載のとおり,外観上,構成全体が一体不可分のも
のとして把握できるものであり,他方,引用商標は,申立人図形からなるか,又はその図形を含むものというのが相当であるところ,本件商標と申立人図形は,その構成態様を全く異にする別異の商標として看取されるものである。
また,本件商標の背景図形として描かれた本件図形と引用商標の申立人図形とを比較してみても,本件図形は,右上端部から左下方にやや傾けて3本の引っ掻き傷を象ったような図形であり,他方,申立人図形は,上端部に左向きに細く尖らせた端部を有し,その上端から下端に向かって徐々に幅が収斂し細くなる不規則な凸凹を有する形状の図形を,3本縦方向に平行に配置し,このうちの中央の図形は左右のそれに比べてやや長く描いてなるものであるから,両者は互いに,その構成態様を全く異にする別異の図形商標というべきものである。
してみれば,構成全体が一体不可分のものとして把握できる本件商標と,引用商標の申立人図形は,外観上,互いに紛れることはないと判断するのが相当であるから,本件商標と引用商標とは,外観上,非類似の商標というべきである。
さらに,本件商標からは,「ニュージェネレーションイースポーツレイジ」及び「レイジ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
他方,引用商標の申立人図形からは,特定の称呼及び観念は生じないものであり,本件商標と引用商標とは,称呼及び観念においても,互いに類似するということはできないものである。
したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点から見ても何等相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)出所の混同について
前記(1)認定のとおり,申立人図形は,申立人の商品(エナジードリンク)を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであり,さらに,上記(2)認定のとおり,本件商標と引用商標とは,別異の商標として認識されるものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者が引用商標を連想又は想起させるものとは認められず,その役務が申立人又は同人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく,その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1,4,5)



別掲3(引用商標2,3,6)



別掲4(引用商標7)



別掲5(引用商標8)



別掲6(引用商標9)



別掲7(引用商標10)(色彩は原本参照)



別掲8(引用商標11)(色彩は原本参照)



別掲9(引用商標12)(色彩は原本参照)



別掲10(引用商標13)



別掲11(引用商標14)




異議決定日 2017-07-04 
出願番号 商願2015-123891(T2015-123891) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W3541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 厚子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 木住野 勝也
中束 としえ
登録日 2016-07-29 
登録番号 商標登録第5869886号(T5869886) 
権利者 株式会社CyberZ
商標の称呼 ニュージェネレーションイイスポーツレイジ、ニュージェネレーションイイスポーツレージ、ニュージェネレーションイイスポーツ、ニュージェネレーション、イイスポーツ、レイジ、レージ 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 
代理人 佐久間 剛 

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