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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W41
審判 全部申立て  登録を維持 W41
審判 全部申立て  登録を維持 W41
管理番号 1330316 
異議申立番号 異議2017-900017 
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-25 
確定日 2017-07-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5891204号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5891204号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5891204号商標(以下「本件商標」という。)は、「全日本中国人博士協会」の文字を標準文字で表してなり、平成28年3月25日に登録出願、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,スポーツ又は知識の教授」を指定役務として、同年9月27日に登録査定され、同年10月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、「一般社団法人全日本中国人博士協会」の文字からなり、同人が「勉強会、研究会、公開セミナー及び国際会議の開催事業」について使用し、需要者の間に広く認識されているとするものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号について
申立人が使用する「一般社団法人全日本中国人博士協会」との表示(引用商標)は、後述するように、本件商標の出願時において、既に、申立人が提供する勉強会、研究会、公開セミナー及び国際会議の開催事業に関連する役務を表すものとして、需要者(日本在住又は日本から中国に帰国した中国人の博士学位保有者等)の間に広く認識されていたものである。また、この周知性は今もなお継続している。
そして、本件商標は、引用商標と明らかに同一又は類似するものであるといえ、また、本件商標の指定役務は、申立人の業務に係る役務に明らかに同一又は類似するものであり、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(1)引用商標の周知性
申立人は、平成8年7月に発足した任意団体である「全日本中国人博士協会」を前身とし、平成23年4月28年に設立した一般社団法人である(甲2、甲3)。
申立人は、日本在住又は日本から中国に帰国した博士学位保有者等によって構成されている。申立人の活動は、会員相互の学術交流、研究協力及び親睦と、世界の社会・経済・科学・技術の発展への貢献及び日中両国間の学術研究の架け橋の役割を果たすことを目的としている。
申立人の会員は、日本全国に存在しており、また、中国本土にも複数の活動拠点を置いている(甲4)。会員数は、平成27年12月時点で563名を数え(甲5)、現在では600名近くにおよんでおり(甲6)、日本において活動する博士学位保有者の間に広く認識されている。
その活動は、中国の深セン政府主催のコンテストで表彰を受けたり(甲7)、広州で行われた交流会において最優秀団体賞を受けたり(甲8)、その他、中国の地方政府との交流を行ったりしており(甲9)、これらはメディアでの報道がなされている。
また、申立人は、毎年末・年始に定例の会合を開き、学術講演・セミナー及び忘年会・新年会を行っている。その会では、中華人民共和国領事、日本の商工会議所、その他貿易関係の団体などから祝電を受けるなど、公的な機関や著名な団体からも認知されている(甲6)。また、この会は、開催の度に複数のメディアで報道されており(甲5、甲6、甲10?甲12)、申立人が広く認識されていることが裏付けられている。
さらに、申立人の、任意団体時代から数えて発足20周年記念会が開催された際には、人民日報を始め、10社以上のメディアがこれを報道するなど(甲13?甲24)、その周知性は明らかである。
(2)本件商標と引用商標との同一性・類似性
本件商標は、「全日本中国人博士協会」であり、引用商標は、「一般社団法人全日本中国人博士協会」である。その相違は、一般社団法人であることを示す「一般社団法人」の部分のみである。
「一般社団法人」の語は、法律により表記を義務付けられているのであり、この部分は一般社団法人であることを示すということ以外に識別力はない。引用商標は、「全日本中国人博士協会」の語が、役務の出所識別標識としての機能を強く発揮するのであり、引用商標の中において、強く支配的な印象を与えるものであることは容易に想像のつくところである。
したがって、引用商標のうち、「全日本中国人博士協会」の部分は、本件商標と完全に一致するのであるから、外観、称呼、観念は、当然にいずれも同一といえる。
よって、本件商標と引用商標は同一であり、仮に、「一般社団法人」の部分を考慮したとしても、両者は類似するものということができる。
(3)役務の同一性又は類似性
申立人は、「勉強会、研究会、公開セミナー及び国際会議の開催事業」を行うことをその定款に定め(甲25)、実際に、上記(1)に記載したとおり、年末年始の会合で学術講演・セミナーを開催している。それ以外にも、学術フォーラム等においての研究発表等をたびたび行っている(甲7?甲9)。
したがって、本件商標の指定役務は、申立人の役務と同一又は類似しているということができる。
(4)小括
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、引用商標は、本件商標の出願時において、既に、申立人が提供する勉強会、研究会、公開セミナー及び国際会議の開催事業や、これに関連する役務を表すものとして、需要者(日本在住又は日本から中国に帰国した中国人の博士学位保有者等)の間に広く認識されていたものであり、この周知性は今もなお継続している。
したがって、このような中、本件商標の出願人が、引用商標と明らかに同一又は類似する本件商標を、申立人の事業に類似関連する役務に使用すれば、同役務が申立人の事業と出所混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
よって、本件商標は、出願時及び査定時において、他人(申立人)の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標にあたることから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号について
引用商標の周知性及び本件商標と引用商標が同一又は類似であることは上述のとおりである。
本件商標の出願人が、申立人と(「一般社団法人」以外)全く同一の「全日本中国人博士協会」なる名称を、その主催する任意団体に用いているのは、需要者に対して申立人との誤認・混同を生じさせることによって、申立人に未加入の者を出願人が中心となって組織する任意団体への加入を促すためのものであり、申立人に損害を加える目的があるというべきである。
また、申立人のWEBサイトのトップページの上部には、富士山と万里の長城の画像が配置されている(甲26)。申立人は、このWEBサイトを、前身となる任意団体が発足した平成8年ころから運営し、そのデザインに富士山と万里の長城の画像を用いてきた。
これに対し、出願人が主催する任意団体のWEBサイトは、ここ数年以内に作成されたものであるが、申立人と同様に、富士山と万里の長城の画像が配されており、その左右を逆転させただけの構成になっている(甲27)。これは、同任意団体のWEBサイトをあえて申立人のWEBサイトに似せて作っていると考えざるを得ず、このことからも、出願人が、需要者に対して申立人との誤認・混同を生じさせる意図がうかがえるのである。
よって、本件商標は、出願人が不正の目的をもって使用するものであり、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号及び同第15号の該当性
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、会員間の学術交流、研究協力及び親睦を促進すること、並びに世界トップレベルの研究成果を挙げるとともに、人類の科学進歩と技術発展に寄与し、日中両国の社会、経済、科学及び技術の発展に貢献すること等を目的とし、コンピューターネットワークによる研究討議に関する事業、並びに勉強会、研究会、公開セミナー、国際会議等の主催及び共催に関する事業等を行う、平成23年4月28年に設立された一般社団法人であって、主たる事務所を東京都豊島区に置いていることが認められる(甲2)。
(イ)申立人は、日本在住の博士学位保有者等を会員とし、現在の会員数は約600名であること(甲3、甲6、甲25)、申立人は遅くとも平成26年頃から2月と12月に定例の会合を開催していること(甲5、甲6、甲10?甲12)、及び本件商標の登録出願から約5ヵ月経過後の平成28年8月に発足20周年記念式典を東京都文京区で行い講演会などを開催したことがうかがえる(甲13?甲24)。
(ウ)それらの会合及び式典など申立人の活動は、中国語のウェブサイト(甲5?甲13、甲15?甲24)及び日本語のウェブサイト(甲14)において紹介されている。
イ 上記アからすれば、申立人によるいくつかの活動は認められるものの、提出された証拠は、ほとんどが中国語のウェブサイトの写しであり、翻訳文が添付されているとしても、正しく翻訳されておらず、その掲載内容の詳細は判然としないものであるが、これらから、申立人が開催したものとして、把握できる事実は、新年会・忘年会の開催、発足20周年記念式典における講演会の開催程度であり、また、申立人の業務に係る役務について引用商標が使用されている事実は発見できなかった。
その他、申立人の事業として掲げられている勉強会、研究会、公開セミナー又は国際会議等が広く開催されている事実、又は、引用商標及び申立人の事業に係る宣伝広告の実績等、引用商標が需要者の間に広く認識されていることを認めるに足りる証拠の提出はない。
してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は中国をはじめとする外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類否
本件商標は、前記第1のとおり、「全日本中国人博士協会」の文字からなるものである。
他方、引用商標は、前記第2のとおり、「一般社団法人全日本中国人博士協会」の文字からなり、その構成中「一般社団法人」の文字は法人格を表すものであるから、「全日本中国人博士協会」の文字部分が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものである。
そうすると、本件商標と、引用商標の構成中それ自体が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得る「全日本中国人博士協会」の文字とは、その構成文字全てを同一にするから、本件商標と引用商標は類似する商標といえる。
(3)本件商標の指定役務と引用商標の使用役務の類否
本件商標の指定役務は、前記第1のとおり、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,スポーツ又は知識の教授」であるのに対し、引用商標が使用されている役務は、申立人が提出した全証拠をみても、特定することはできないから、本件商標の指定役務と引用商標の使用役務の類否を判断することはできない。
(4)小括
上記(2)及び(3)のとおり、本件商標と引用商標は類似する商標であるといい得るが、両者の使用をする役務を比較することができない上、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものということはできず、また、商標権者がこれをその指定役務について使用をしても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第19号の該当性
上記1(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、本件商標は、引用商標の周知著名性へのただ乗りをするものであるともいえない上、商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
そうとすれば、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
なお、申立人は、商標権者(出願人)が自己の主催する任意団体の名称に「全日本中国人博士協会」を用いているのは、需要者に対して申立人との誤認・混同を生じさせ、当該任意団体への加入を促すためであり、申立人に損害を加える目的がある旨、及び商標権者(出願人)は当該任意団体のウェブサイトを申立人のウェブサイトに似せて作っているから、需要者に対して申立人との誤認・混同を生じさせる意図がうかがえる旨主張しているが、該主張を裏付ける証拠の提出はないから、かかる主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-06-28 
出願番号 商願2016-39968(T2016-39968) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W41)
T 1 651・ 222- Y (W41)
T 1 651・ 25- Y (W41)
最終処分 維持  
前審関与審査官 阿部 達広小林 正和 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
榎本 政実
登録日 2016-10-28 
登録番号 商標登録第5891204号(T5891204) 
権利者 張 善俊
商標の称呼 ゼンニホンチューゴクジンハカセキョーカイ、ゼンニホンチューゴクジンハクシキョーカイ、ゼンニッポンチューゴクジンハカセキョーカイ、ゼンニッポンチューゴクジンハクシキョーカイ、ゼンニホンチューゴクジンハカセ、ゼンニホンチューゴクジンハクシ、ゼンニッポンチューゴクジンハカセ、ゼンニッポンチューゴクジンハクシ、チューゴクジンハカセキョーカイ、チューゴクジンハクシキョーカイ、チューゴクジンハカセ、チューゴクジンハクシ 
代理人 弓倉 京平 

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