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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 035
管理番号 1330268 
審判番号 取消2016-300261 
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2017-07-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第3271986号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3271986号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3271986号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成4年12月2日に登録出願、第35類「商品に関する市場調査」を指定役務として、同9年3月12日に設定登録され、その後、同19年1月6日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、同28年4月28日である。
また、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成25年4月28日から同28年4月27日までの期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務、第35類「商品に関する市場調査」(以下「取消請求役務」という場合がある。)について、要証期間内に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)取消請求役務について
取消請求役務である「商品に関する市場調査」は、他人の依頼に基づいて、商品の販売促進や新製品の開発などのために市場動向を調査することであり、それ自体が独立して商取引の対象となるような態様にて行われていることが必要である。
一般に、「市場調査」は、いわゆる調査会社と称される企業によって提供される役務であり、顧客から特定の内容・テーマ・目的による調査を委託され、当該調査会社がこれを受託し、一定期間の調査を経て報告書を作成し、委託先に提出することにより対価を得るのが通例である。甲第3号証ないし甲第6号証は、我が国における代表的な調査会社の事業内容の説明や、市場調査の受託から調査完了までの流れを紹介する資料及び市場調査の結果報告書である。
(2)提出された証拠について
ア 乙第3号証について
乙第3号証からは、東北電力株式会社(以下「東北電力」という。)が、安全靴等の仕様見直し検討の円滑化を図ることを目的として、安全靴等のメーカーである被請求人に、助言やデザインの提案、試作品の提供を委託したことがうかがえる。加えて、当該委託業務への参加資格として、試作品の安全靴等が東北電力に採用された場合、所定期間内に所定数量の当該安全靴等を納入できる者であることが条件として課せられており(乙3)、最終的に安全靴等の発注を見越した業務委託契約であることがうかがえる。事実、当該委託業務を通じて採用された安全靴が、東北電力の指定により東北電力の取引先から被請求人に発注されたことが乙第14号証にて確認できる。
(ア)市場において独立して取引の対象となる役務か否か
乙第3号証からは、被請求人と東北電力の間に安全靴等の仕様見直しに関わる業務委託契約が存在したことはうかがえるが、当該委託業務は、被請求人が安全靴等を東北電力(若しくはその取引先)に販売する前段階を画すものであり、その後に商品の販売が伴うことから、付随的に行われる業務であると評価でき、それ自体が独立した取引の対象となっていないといえる。
したがって、被請求人が東北電力との業務委託契約に基づいて提供した役務は、商標法上の役務に該当しない。
(イ)「商品に関する市場調査」の範ちゅうに含まれる役務か否か
当該委託業務の具体的な内容は、〈1〉コンサルティング、〈2〉「デザイン画」の作成及び納入、〈3〉試作品の作成及び納入並びに〈4〉商品の発注から納入までの工程及び見積の作成、であると記載されている(乙第3号証添付の「委託仕様書」の「5.委託業務の内容」)。当該委託業務〈1〉ないし〈4〉はいずれも「市場調査」に該当するものではなく、乙第3号証は、取消請求役務についての使用を裏付けるものではない。
なお、被請求人は、当初の委託料38,400円(税別)が、1,573,743円に増額されたことについて、かかる増額は、度重なるサンプル作製、「デザイン画」の変更、技術仕様変更の提案などの経緯によるものと説明している。このことからも、東北電力による対価の支払いは、「市場調査」に対するものではなく、安全靴等のデザインに関するコンサルティング(乙3に記載の委託業務〈1〉)やデザイン画の作成(同〈2〉)、試作品の作成(同〈3〉)に対するものであったことが裏付けられている。
イ 乙第4号証について
乙第4号証からは、被請求人が東北電力に複数種類の安全靴等に関する提案書(デザイン画)を提供したことがうかがえる。
(ア)市場において独立して取引の対象となる役務か否か
上述のとおり、乙第3号証から、被請求人と東北電力との業務委託契約は、最終的に安全靴等の売買を見越したものであり、乙第14号証から、東北電力の取引先が東北電力からの指定により乙第4号証に記載された安全靴等を被請求人に対して発注した事実が確認できる。かかる事実に鑑み、乙第4号証に示される「デザイン画」の提供は、被請求人の商品である安全靴等の販売を前提としたものであったことは明らかである。してみれば、乙第4号証は、東北電力が被請求人から購入する安全靴等を選別し決定するために、メーカーである被請求人によって作成された商品企画提案書であり、実質的には被請求人の商品カタログの性質を有するものであると考えるのが妥当である。被請求人が東北電力との業務委託契約に基づいて「デザイン画」を提供した行為は、商品「安全靴」等の販売に付随する役務にすぎず、乙第4号証に付された標章「Simon」の使用は、「安全靴」等の商品についての使用であると考えられる。被請求人が東北電力に提供した役務は、それ自体が独立した取引の対象となっておらず、商標法上の役務に該当しない。
(イ)「商品に関する市場調査」の範ちゅうに含まれる役務か否か
一般に、市場調査の成果物である調査結果報告書には、甲第6号証に示されるように、調査の目的や調査方法などが明記され、得られた結果やその分析が具体的に記載されるものである。乙第4号証において、かかる市場調査の手法や結果は一切記載、報告されておらず、安全靴等の商品デザインの提案を行った事実が読み取れるのみである。乙第4号証からは、被請求人が提供したのは「安全靴等のデザインの考案,安全靴等に関するコンサルティング」といった役務であって、「市場調査」の範ちゅうに含まれる役務ではないといえる。被請求人は、乙第4号証に、被請求人が行った安全靴等に関する調査の結果得られた市場情報が含まれると主張しているが、これは、安全靴等のデザインの提案において、市場調査の結果に基づく知識を間接的に利用しているにすぎず、被請求人商品の販売促進活動のために調査結果を利用したにすぎない。「デザイン画」の作成に際して市場調査の結果を反映することは、消費者に好まれる安全靴をデザイン、設計するために必要な情報を提供するものであって、「デザイン画」の作成を行うに当たって必然的に伴うものとして、「安全靴等のデザインの考案,安全靴等に関するコンサルティング」といった役務の一部を構成するものである。
ウ 乙第6号証ないし乙第12号証について
これら乙各号証からは、被請求人が自社の製品開発を目的として「市場調査」を行っていることがうかがえ、乙第8号証に「このアンケートにご回答いただいた内容は、弊社(被請求人)の社内目的以外には使用いたしません。」と記載されていることからも、当該「市場調査」が自社のためにのみ行われたものであったことが裏付けられる。
かかる「市場調査」は、他人のためにする労務又は便益ではないことから、商標法上の役務とはいえない。
(3)まとめ
被請求人により提出された答弁書及び証拠からは、被請求人が、安全靴等の販売に付随する役務として、安全靴等の仕様見直しに関わるデザインの提案やコンサルティングを行ったことは理解できる。しかしながら、かかる役務は、安全靴等の販売の付随役務であって独立した取引の対象となっていないため商標法上の役務に該当しない。また、仮にデザインの提案やコンサルティングが付随役務ではなく独立した取引の対象であったとしても、これらの役務は取消請求役務の範ちゅうに含まれる役務でない。してみれば、被請求人の提出に係る証拠からは、本件商標を取消請求役務について使用していないものといわざるを得ない。
したがって、提出された証拠からは、取消請求役務について、本件商標を使用したことが立証されていないことは明白である。
3 口頭審理陳述要領書(平成29年1月30日付け)
(1)被請求人の主張に対する反論
ア 被請求人が提供した役務は「商品に関する市場調査」に該当しないこと
被請求人は、「被服仕様等見直しに関わるコンサルティングおよび試作品作成業務委託契約書」(以下「コンサルティング契約」という場合がある。:乙3)に基づき東北電力に提供した役務が、「情報提供」であり、「商品に関する市場調査」に該当すると主張している。しかしながら、提出された証拠によって、被請求人が「商品に関する市場調査」を提供したことは証明されていない。
(ア)コンサルティング契約の目的
被請求人が東北電力と交わした「コンサルティング契約」(乙3)の目的が「安全靴等の仕様に関する助言を提供すること」であることは、被請求人の主張及び委託仕様書(乙3)に記載されているとおりである。
「コンサルティング」とは、「専門的な事柄について、相談に乗ったり指導したりすること」(甲7)であり、「コンサルタント」が「一定の事柄について相談・助言・指導を行う専門家」(甲7)であることからも、「コンサルティング」と「助言を提供すること」は同義と考えられる。
被請求人は、口頭審理陳述要領書において、乙第3号証のコンサルティング契約の目的は、「安全靴等の仕様に関する助言を提供することを目的とする」と主張し、これを「本件情報提供」と略称しており、当該契約の目的が「情報提供」であったと主張しているように思われる。しかしながら、「助言を提供すること」と「情報提供」とは同義であるとはいえない。当該契約の目的は、「コンサルティング」又は「助言の提供」であって、「情報提供」ではないと考えられる。
(イ)安全靴等の仕様に関する「コンサルティング」又は「助言の提供」は第35類の「商品に関する市場調査」に該当しないこと
国際分類を構成する類別表注釈によると、第35類に属する役務について「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとされている。
そして、共に第35類の役務であり、「市場調査又は分析」と並んで同一類似群に属するとされている「商品の販売に関する情報の提供」は、「商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。そうすると、商業等に従事する企業に対し、商品の販売実績に関する情報、商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供することがこれに該当すると解されるのであって、商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは、『商品の販売に関する情報の提供』には当たらないというべきである」と解されている(最高裁平成21年(行ヒ)第217号平成23年12月20日判決言渡参照)。そうすると、第35類に属する「市場調査」とは、商業等に従事する企業に対して、その管理・運営等を援助するための市場調査を行い、その結果を提供する役務であると解される。すなわち、商業等に従事する企業に対し、商品の販売促進や新製品の開発などのために市場動向を調査し、その結果を提供することがこれに該当すると解されるのであって、商品の最終需要者である消費者に対して、消費者の嗜好といった市場動向の調査結果を提供することは、第35類の「市場調査」には当たらないというべきである。
乙第13号証によると、東北電力は、電力供給を主たる事業とする電力会社であり、安全靴等の製造販売に従事する者ではない。東北電力は安全靴の消費者であり、被請求人がかかる消費者に対して、仮に、安全靴の需要に関する市場動向の調査を行い、その結果を提供していたとしても、それは第35類の「商品に関する市場調査」には当たらない。
さらに、被請求人が東北電力に提供したと主張する安全靴等の仕様に関する「コンサルティング」又は「助言の提供」は、市場動向の調査結果の提供でもない。被請求人は、東北電力に安全靴等の仕様に関するコンサルティング(助言の提供)を行う上で、自社が蓄積・保有する市場調査の結果を利用したにすぎず、かかる「コンサルティング」又は「助言の提供」が、第35類の指定役務「商品に関する市場調査」に該当しないことは明らかである。
(ウ)小括
被請求人が、乙第3号証のコンサルティング契約に基づき東北電力に提供した役務は、第35類の「商品に関する市場調査」に該当せず、被請求人が提出した証拠からは、被請求人が「商品に関する市場調査」を提供したことは立証されていない。
イ 被請求人が行う市場調査は、商標法上の役務ではないこと
被請求人は、コンサルティング契約(乙3)に基づき東北電力のために行った「情報提供」は、「商品に関する市場調査」であって、「他人のために行う労務又は便益」に該当すると主張しているが、被請求人が行った「市場調査」は、商標法上の役務に該当するとは認められない。
(ア)被請求人が行った「市場調査」について
被請求人が行った「市場調査」は、乙第6号証ないし乙第12号証に示されるものであり、自社製品の開発を目的として、自社のためにのみ行われたものであったことは明らかである。したがって、かかる「市場調査」は、「他人のためにする労務又は便益」ではないから、商標法上の役務とはいえない。被請求人は、「一つの労務又は便益が、一方において『自社製品のため』でありつつ、同時に他方において『他人のため』であることはありうる」と主張するが、乙第8号証に、「このアンケートにご回答いただいた内容は、弊社(被請求人)の社内目的以外には使用いたしません。」と記載されていることからも、当該「市場調査」は、東北電力の依頼に基づくものではなく、自社のためにのみ行われたものであったことが裏付けられている。
(イ)被請求人が東北電力に行った「情報提供」行為について
乙第4号証はより良い性能を有する安全靴に関しての提案書であり、乙第24号証は、従来品との性能比較資料であって、いずれも市場調査の結果を報告する書面ではない。被請求人は、市場調査の結果を口頭により東北電力に提供したと主張するものと思われるが、仮に、被請求人が、東北電力とのコンサルティング契約を履行する過程で、自社が蓄積、保有する市場調査の結果を、情報として東北電力に提供したとしても、かかる行為は、「コンサルティング」又は「助言の提供」に付随して行われた行為であって、独立した取引対象となっていない。したがって、かかる「情報提供」は、「独立して商取引の目的たりうべきもの」ではなく、商標法上の役務とはいえない。
(ウ)小括
被請求人が行った「市場調査」は、自社のために行われたものであり、「他人のためにする労務又は便益」ではないから、商標法上の役務に該当しない。
ウ 被請求人の行為は、業としての行為でないこと
商標法第50条の登録商標の使用といい得るためには、業としての使用でなければならない。「業として」とは、「反復継続して」と解されており(甲8)、登録商標の使用といい得るためには、その使用が反復継続性を伴った行為として行われなければならない。被請求人が提出した全資料には、東北電力との一度の取引に係るもの以外の取引については示されておらず、被請求人が業として反復継続性を伴って使用したことが立証されていない。また、乙第1号証及び乙第2号証によると、被請求人の主たる事業目的は安全靴、その他の安全や健康に関連する用具、機器等の製造販売であることからも、被請求人が「市場調査」や「コンサルティング」といった役務を「業として」提供していることについて疑義がある。
エ まとめ
以上のとおり、被請求人により提出された証拠からは、取消請求役務「商品に関する市場調査」について、要証期間内における本件商標の使用が立証されたとはいえない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を答弁書及び口頭審理陳述要領書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証から乙第26号証(枝番を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人について
被請求人は、昭和23年7月1日に設立された産業用安全衛生保護具(安全靴・革手袋等)の製造、加工及び販売並びにそれに付帯する事業等を目的とする、資本金4億9,000万円の株式会社である(乙1)。被請求人は、「安全靴、革手袋の大手メーカー」と評されており、その主要販売先は防衛省、総務省や大手民間企業であり、平成27年度の売上高は110億4,000万円である(乙2)。
被請求人は、「商品」である安全保護具に関して、日常業務として自社用に市場の需要動向に関する調査を行っている。また、自社用の調査で得られた情報を他社に対して本件商標を付して提供し、対価を得ている。被請求人は、平成26年10月31日、安全靴に関する自社用の調査の結果得られた市場情報を、東北電力に対して、作業員に好まれる安全靴の仕様等の提案書にまとめて提供した。被請求人は、この情報提供により東北電力から対価を得た。その際、提案書には本件商標を付していた(乙3、乙4)。
したがって、被請求人は、要証期間内に、日本国内において、「商品に関する市場調査」について、本件商標を使用した実績を有する。
(2)被請求人による本件商標の「使用」実績
ア 「商品に関する市場調査」の意義
商品及び役務の区分第35類に規定される「市場調査」とは、商品・役務の需要に関する市場動向を調査し、得られた情報を第三者に提供することを通じて、第三者の企業運営又は経営管理等を援助することをいう。 被請求人は、安全靴の需要に関する市場動向を調査し、その結果得られた情報を第三者に提供することを通じて、第三者の企業運営又は経営管理を援助している。この行為は区分第35類に規定される「市場調査」に該当する。
イ 自社用の市場調査の実施
(ア)被請求人において、自社用の市場調査が不可欠であること
被請求人は、自らが安全保護具の製造販売会社である。したがって、当然ながら、自社製品の販売促進や新製品の開発の基礎とするため、安全保護具の需要に関する市場動向を知る必要がある。
(イ)被請求人による自社用の市場調査の実態
被請求人は、市場動向を知るための組織として、社内に「セールス&マーケティング部」を有している(乙5)。同部署は、安全保護具を取り扱う量販店や卸などに対して、セールス活動を行いつつ、市場調査などのマーケティングを行なう部署である。被請求人では、セールス&マーケティング部を始めとして、営業本部、フットウェア事業部、グローブ・用品事業部、研究開発部、お客様相談室、各営業所が、日常から「お客様相談室による、相談内容の集約(乙6)、フットウェア事業部やグローブ・用品事業部による、商品購入者からのアンケートはがきの収集(乙7-1、乙7-2)、セールス&マーケティング部による、量販店に出向いてのユーザーからのヒアリング(乙6)、営業本部や各営業所による、ユーザーの声を集計するためのアンケートの実施(乙8)及び各部署が随時行う、インターネット上のユーザーの声の収集(乙9)。」のとおり、安全保護具の需要に関して自社用に市場動向の調査を行っている。
(ウ)市場調査の結果としての情報の蓄積
被請求人は、自社用の市場調査の結果、安全保護具の需要に関する市場動向について、以下のような情報を獲得し蓄積している。
a 加水分解
被請求人は、「ユーザーは、加水分解しない靴底の安全靴を求めている」という情報を得ている。
b カラーバリエーション
被請求人は、「ユーザーが多彩なカラーバリエーションを持つ安全靴を求めている」という情報を得ている。
また、被請求人は、最近のユーザーから、〈1〉多彩な色がある方が、危険な場所で作業するときに視認性が高まり、より安全である、〈2〉作業員同士が同種の安全靴を使用している場合、自分の安全靴がどれか区別がつかなくなってしまう、多彩な色がある方が区別がついて便利である、などの意見を、販売促進活動の過程で広く得ている。こうした調査により、被請求人は「多彩なカラーバリエーションを持つ安全靴に需要がある」との市場情報を獲得し、蓄積している。
ウ 自社用の市場調査の結果得られた情報の他社への提供
被請求人は、自社用に市場動向の調査を行っているところ、その結果得られた情報を、自社内で用いるにとどまらず、量販店や卸、また、多数の作業員や下請を有する事業者に提供することを通じて、そうした事業者の企業運営又は経営管理を援助することも行っている。
エ 東北電力についての実例
被請求人は、東北電力に対して、自社用に行った市場動向の調査の結果得られた情報を提供した。被請求人は、平成26年10月31日、東北電力の依頼により、安全靴に関して自社用の市場調査の結果得られた情報をもとに、それら情報を整理して、今現在、一般的に作業員に好まれる安全靴の仕様等について、提案書としてまとめて提出した。当該提案書には、本件商標を付していた。被請求人は、東北電力から、当該情報提供について対価を得た。東北電力は、同情報をもとに、自社および業務委託先(下請先)企業が作業員用に安全靴を発注する際の仕様として指定することで、より多くの作業員の好評を得ることができた。こうした効果は東北電力の企業運営又は経営管理を援助するのであった。
(ア)東北電力との契約締結
被請求人は、平成26年6月23日、東北電力との間で、「コンサルティング契約」を締結した(乙3)。ここで「被服仕様等」とは、東北電力が作業員に支給する作業服、安全帽、作業用手袋、安全靴等の仕様をいう。東北電力は、被請求人に対して、東北電力における安全靴等の仕様等の見直し作業を行うに際して、有益な情報の提供と助言を求めた(乙3)。ここでの有益な情報と助言とは、どのような安全靴等が作業員に人気があり、好まれているか、いま現在の市場動向についての情報と助言である。
(イ)東北電力が安全保護具の市場動向について情報提供と助言を受ける目的
a 多数の作業員が必要であること
電力会社の現場作業は、電力供給という公共の利益に関することである。それだけに、万一、作業員が不足すると、社会経済に重大な悪影響を及ぼす。東北電力にとって必要十分な数の作業員を集めることは、最大の懸案事項である。
b 作業員を集める上で、作業員が好む安全靴を支給等することが必須
東北電力は、労働安全衛生規則第558条に基づき、現場で作業に従事する作業員に対して、安全靴を着用させなければならない。作業員たちは、安全靴などの安全保護具について、〈1〉安全性、〈2〉操作性、〈3〉快適性、〈4〉デザイン性について、細かな選択眼を持っている。自分たちの身体、生命に関することであるため、選択も厳しく、また、少しでも快適に、かつ「かっこよく」作業したいとの意向から、操作性やデザインに関する好みは細かい。東北電力にとっては、いま現在、作業員たちが安全靴について、どのような嗜好を持ち、選択する傾向があるのかを知り、それに見合った安全靴を用意することは、労働力確保の観点から必要不可欠である。しかし、東北電力は、安全靴について、独自に市場調査を行ったことはなく、市場情報も有していない。東北電力が、被請求人に対して、市場調査の結果得られた情報に基づいて作業員が好む安全靴の仕様についての情報を提供するように依頼したのは、こうした理由である。
c 東北電力による作業員への安全靴の支給
東北電力は、自社の従業員に、有償又は無償で、安全靴を支給している。また、下請事業者で働く作業員のために、下請事業者に対して、有償又は無償で、安全靴を支給することも多い。さらに、東北電力が下請事業者に対して、作業員に使用させる安全靴の仕様を指定することもある。
d 役務の提供
被請求人は、上述のとおり、市場調査の結果得られた情報として、〈1〉安全確保機能、〈2〉使い勝手、〈3〉使用感、〈4〉デザインなどに関して、作業員がどのような安全靴を好むのかの情報を蓄積していた。被請求人は、平成26年10月31日、東北電力に対して、コンサルティング契約に基づき、かかる豊富な情報を利用して、安全靴等の仕様を記載した「デザイン画」(乙4)を作成し、提出した(乙15、乙16)。これは「商品に関する市場調査」という役務の提供に該当する。「デザイン画」(乙4)における市場調査の結果得られた情報の提供箇所は、〈1〉加水分解、〈2〉カラーバリエーションである。
e 本件商標の使用
「デザイン画」(乙4)は、安全靴等に関する市場調査の結果得られた情報に基づいて作成されており、「商品に関する市場調査」という役務における成果物である。被請求人は、該「デザイン画」について、全ページの右上に、本件商標と同一の字体の標章「Simon」を付した。これは、本件商標の使用に該当する。
また、被請求人の社員は、市場調査の提供先に対して、本件商標と同一の字体の標章「Simon」が付された名刺(乙17)を交付している。これは、「商品に関する市場調査」という役務の提供に付随するもので、本件商標の使用に該当する。
f 東北電力による対価の支払について
東北電力は、当初、コンサルティング契約において、委託料を38,400円(税別)と定めていた(乙3)。その後、度重なるサンプル作製、「デザイン画」の変更、技術仕様変更の提案などの経緯があったため、東北電力は、平成26年12月26日、委託料の金額を増額した。これは被請求人による市場調査の結果得られた情報の提供を高く評価したものである。被請求人は、同日、東北電力に対して、完了届兼委託業務確認報告書(乙16)を提出し、委託料の支払を請求した。被請求人は、平成27年1月23日に「商品に関する市場調査」という役務の対価として、東北電力から対価を受領した。
g 東北電力による自らの経済活動に資するための活用
東北電力は、取引先である株式会社中北電機(以下「中北電機」という。)に対して、「デザイン画」(乙4)記載の仕様を有する安全靴を発注するように指定した。中北電機は、被請求人に対して、「デザイン画」記載の仕様を有する安全靴等を発注した(乙14)。これは、東北電力が、被請求人から提供を受けた情報を、自らの東北電力の企業運営又は経営管理に活用したものである。
オ 結論
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に、日本国内において、取消請求役務について、本件商標を「使用」した実績を有する。
2 口頭審理陳述要領書(平成29年1月16日付け)
(1)合議体の暫定的な見解について
ア コンサルティング契約(乙3)の目的
コンサルティング契約は、東北電力が、安全靴等の仕様見直しを検討するにあたり、安全靴等に関して専門知識を有する被請求人が、安全靴等の仕様に関する助言を提供すること(以下「本件情報提供」という。)を目的とする(乙3)。仕様に関する助言においては、市場を構成する需要者が、いかなる仕様の安全靴を求めているか、すなわち、市場調査の結果に関する情報提供が極めて重要となる。被請求人には、上記情報に関する知見があった。また、被請求人は、「時代を読み取るリサーチ」、「マーケティング」「作業現場、販売現場からのフィードバック」を実施し、「お客様の声」すなわち需要者のニーズを把握し、需要者が従来の安全靴に有していた不満について情報を収集していた(乙19、乙20)。
イ 「見直し案メーカー確認資料」の記載
被請求人は、平成27年1月9日、東北電力に対し、「見直し案メーカー確認資料」を送付した(乙21、乙22)。被請求人は、コンサルティング契約(乙3)に基づき、東北電力に対し、被請求人の市場調査の結果として、安全靴を利用する現場の需要者が、「歩行時の疲労、蒸れ、靴底の剥離による転倒、スリップ、夜間作業時の視認性、着用時の疲労」の不満を有していることを説明し、安全靴の仕様について助言した。
ウ 当社担当者による説明
東北電力に対する説明は、被請求人の担当者であるO氏(以下「被請求人担当者」という。)が行った。被請求人担当者は、東北電力に対し、本件商標と同一の字体の標章「Simon」が付された名刺(乙23)及び被請求人が市場調査を行っていることが明記された会社案内(乙19)を交付している(乙18)。被請求人担当者は、平成26年7月25日、東北電力に対し〈1〉「デザイン画」(乙4)、〈2〉「プレゼン資料」(乙24)に基づき、被請求人が行った商品に関する市場調査の結果として、軽量化/加水分解、カラーバリエーション、静電靴の表示等の説明を行い、安全靴等の仕様に関する助言を行った(乙18)。
エ 小括
商品及び役務の区分第35類に規定される「商品に関する市場調査」とは、商品・役務の需要に関する市場動向を調査し、その結果得られた情報を第三者に提供することを通じて、第三者の企業運営又は経営管理を援助することをいう。被請求人は、軽量化/加水分解、カラーバリエーション、静電靴の表示等の安全保護具について市場で何が求められているかの調査を行っている。被請求人は、そうした調査結果を、社内イントラや勉強会において社内で共有している(乙18)。「デザイン画」(乙4)、見直し案メーカー確認資料(乙21)、プレゼン資料(乙24)及び陳述書(乙18)に記載のとおり、被請求人は、東北電力に対し、本件情報提供を行った。これは、東北電力の企業運営、経営管理を援助するものであった。東北電力は、本件情報提供を基に、自社および業務委託先(下請先)企業が作業員用に安全靴を発注する際の仕様を検討した。
したがって、本件情報提供は「商品に関する市場調査」に該当する。
(2)被請求人が行う市場調査は、商標法上の役務である。
本件情報提供は、コンサルティング契約(乙3)に基づき、東北電力のために行った。したがって、「他人のために行う労務又は便益」に該当する。また、本件情報提供は、委託料38,400円(消費税別)との対価が発生している(乙3、乙25)。したがって、「独立して商取引の目的たりうべきもの」に該当する。以上から、本件情報提供は、商標法上の役務と認められる。ちなみに、一つの労務又は便益が、一方において「自社製品のため」でありつつ、同時に他方において「他人のため」であることはありうる。
(3)弁駁書の主張について
請求人は、東北電力からの「委託業務は、被請求人が安全靴等を東北電力(若しくはその取引先)に販売する前段階を画すものであり、その後に商品の販売が伴うことから、付随的に行われる業務であると評価でき、それ自体が独立した取引の対象となっていない」と主張するが、被請求人が行った本件情報提供は、市場において独立して取引の対象であった。契約書(乙3)記載の委託業務に、商品の販売は含まれていない。東北電力が当然に被請求人に安全保護具の発注義務を負うものではない。結果的に、東北電力の意向に従い、中北電機が、被請求人に「デザイン画」(乙4)記載の仕様を有する安全靴等を発注したにすぎない。被請求人による情報の提供は、委託料38,400円(消費税別)との対価が伴う独立した役務である(乙3)。これは、被請求人と東北電力という独立した当事者が、協議のうえで、「委託料」を明記した契約書を締結していることから明らかである。東北電力は、実際に被請求人に発注するか否かに関わらず、被請求人による本件情報提供そのものに独立の経済的価値があることを認めている。単に「自社製品のため」のみであるとすれば、東北電力が対価を支払うはずがない。したがって、付随的に行われる業務とはいえない。
なお、請求人は、「当社の委託料38,400円(税別)が、増額された」ことから、「東北電力による対価の支払いは、『市場調査』に対するものではない」、と主張するが、委託料の増額が度重なるデザインサンプル作製等を理由としていたとしても、当初の委託料が、東北電力における安全靴等の仕様等の見直し作業を行うに際して、有益な情報と助言を行う対価であることに変わりはない(乙3)。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙第3号証について
乙第3号証は、被請求人と東北電力との間で平成26年6月23日に締結された「被服仕様等見直しに関わるコンサルティングおよび試作品作成業務委託契約書」及び「委託仕様書」である。
2葉目に、「(委託内容)第2条 この契約において、受注者が受託する業務の内容は別添委託仕様書(以下「委託仕様書」という。)のとおりとする。」及び「(着手および完了の期日)第4条 この業務の着手および完了の期日は、次のとおりとする。/着手期日 平成26年6月25日/完了期日 平成26年9月30日」の記載がある。
また、5葉目の下部の左側に「平成26年6月23日」の記載、右側に「発注者」として、「仙台市青葉区本町一丁目7番1号/東北電力株式会社/人事部長名」の記載及び押印、「受注者」として、「東京都中央区日本橋茅場町3丁目3番1号/株式会社シモン/代表取締役社長名」の記載及び押印がある。
そして、6葉目に、「委託仕様書」の記載の下に「1.委託業務名」として、「被服仕様等見直しに関わるコンサルティングおよび試作品作成業務」、「2.業務目的」として、「被服仕様見直しを検討するにあたり、専門知識を有する製作会社より当社へ助言や作成したデザイン画および試作品を提供することで、被服仕様見直し検討の円滑化を図ることを目的とする。」、「4.委託期間」として、「委託契約締結日から平成26年9月30日までとする。」、「5.委託業務の内容」として、「(1)当社が実施する各種検討会への参加および仕様に関わるコンサルティング」、「(2)デザイン画の作成および納入」、「(3)試作品の作成および納入」及び「(4)発注から納入までの工程および参考見積の作成」の記載がある。
(2)乙第4号証について
乙第4号証は、被請求人が、平成26年7月16日に作成した「デザイン画」とされるものである。
1葉目には、上段の見出し部分の、左側に「東北電力株式会社様」、中央には「安全靴 提案1」、右端には、白色の正方形の中に青色で「S」とおぼしき欧文字が表示され、その右に白色で筆記体風の「Simon」(以下、筆記体風の文字態様のものを「使用商標」という場合がある。)の文字が表示されている。
そして、中央には、「安全靴」と思しき写真を横から写したものと、靴底を写したものを配し、それらの写真を周り囲むように、「靴底から静電気を逃がす」、「ワイドACM樹脂先芯」、「液体の浸透を防ぐ設計」、「加水分解しないミッドソール」、「ゆりかごの様な快適さ」、「夜間の業務でも安心」、「ソフトな履き心地」及び「耐滑性に優れた靴底」の見出しの下に、それぞれに対応した簡単な説明が記載され、これらの下方に、「SX3層底FSOLE/HYBRID SOLE」のタイトルの下に「[靴底の主な特長]」として、「優れた耐滑性と、スムーズで安定した歩行を両立する画期的な靴底。」の記載、該特長に対して、その右側に「優れたグリップ力」、「耐滑性」、「安定感」、「柔軟な靴底」及び「耐油・耐薬品性・高温耐熱性」等の見出しの下、それぞれ、写真とともに、説明が記載されている。
そして、最下部に、「主な仕様」として、「●規格:JIS8103 ED-P/C3/革製/SEF合格 ●サイズ(EEE):23.5?28・29・30cm」等の記載がある。
また、2葉目以降には、1葉目と同様のレイアウトで「安全靴」、「編上靴(一般用)」、「編上靴(送電)」、「編上靴(登山用)」、「ゴム半長靴」及び「防寒ゴム半長靴」についての提案書が、全部で21枚ある。
(3)乙第6号証、乙第7号証、乙第8号証、乙第11号証及び乙第12号証について
ア 乙第6号証は、被請求人が、平成26年2月17日に作成した「お客様相談室 2月分 集計【回覧】」である。
4葉目には、「お客様相談室月次集計」、「相談室 問合せ内容」、「66期1月度」、「2014/2/14」及び「お客様相談室」の記載があり、この下の表には、「受付日」、「相談者名」、「相談内容」及び「対応内容」等が一覧表として記載されている。
イ 乙第7号証は、商品購入者からの「アンケートはがき」である。
これには、「1.お客様のご年齢について教えてください。」、「2.お客様の業種について教えてください。」、「3.シモンライトを購入したのは何回目ですか。」、「4.今回、シモンライトの購入にあたって重視したポイントは何ですか(複数回答可)」及び「5.その他ご意見・ご要望をお聞かせください。」の質問が記載されている。
ウ 乙第8号証は、被請求人の営業本部や各営業所による、ユーザーの声を集計するための「安全靴試履きアンケート」及び「安全靴体感アンケート」である。
これらのアンケートの最下位の行に「*このアンケートにご回答いただいた内容は、弊社の社内目的以外には使用いたしません。また第三者に開示されることはありません。」の記載がある。
エ 乙第11号証及び乙第12号は、「お客様相談室受付票」及び「集計表」である。
(4)乙第16号証について
乙第16号証は、被請求人が平成26年12月26日に作成した「完了届兼委託業務確認報告書」(以下「完了届兼報告書」という場合がある。)である。
これには、上部中央に、「完了届兼委託業務確認報告書」、左上に、「東北電力株式会社 殿」、右上に「平成26年12月26日」及び「※受託者住所 〒983-0043/仙台市宮城野区萩野町1-12-4/氏名 株式会社シモン仙台営業所」の記載があり、社印及び所長印が押印されている。
そして、「下記受託業務は平成26年12月26日に完了しましたのでお届けします。」の記載があり、「※受託件名」の項に、「被服仕様等見直しに関わるコンサルティングおよび試作品作成業務」、「※期間」の項に、「原契約/着手/平成26年6月25日/完了/平成26年9月30日」、「実施/着手/平成26年6月25日/完了/平成26年12月26日」の記載がある。
(5)乙第18号証について
乙第18号証は、被請求人が平成29年1月13日に作成した「陳述書」である。
これには、上部に「陳述書」、その右側に「平成29年1月13日」、その下に、被請求人担当者であるO氏の署名及び捺印がある。
そして、「当社が行っている市場調査」、「コンサルティング契約(乙3)締結の経緯」、「東北電力様のご担当者に行った助言」及び「助言後の経緯」などが記載されている。
(6)乙第19号証について
乙第19号証は、被請求人が平成25年11月頃に作成した「会社案内」である。
そして、該会社案内の表紙の上部に使用商標が記載され、8頁には、上部に「マーケティング」の見出しの下、「作業現場、販売現場からのフィードバック。ニーズを叶える商品は、現場の声から生まれます。」の項において、「お客様の声は、安全靴・グローブの分野はもちろん、様々なセフティフィールドへフィードバックされています。こうして産みだされる信頼の証、シモンブランド製品は高い安全性と優れたデザインで世界の市場をリードしています。」の記載があり、下部、「研究開発」の見出しの下、「さらなる安全、さらなる快適。そしてさらなる革新を追求。」の項において、「シモンは、さらなる安全性と快適性の実現を目指し、・・・各種データの分析に基づいて、商品設計や素材の選定を緻密に実施。」の記載があり、最後の頁に、使用商標の表示と「株式会社シモン」の記載がある。
(7)乙第21号証について
乙第21号証は、被請求人が平成27年1月9日に作成した「見直し案メーカー確認資料」であるとされ、コンサルティング契約に基づき作成された資料であり、該資料により安全靴の仕様について助言をしたものである。
(8)乙第24号証について
乙第24号証は、被請求人が平成26年7月24日に作成した「プレゼン資料」であるとされ、コンサルティング契約に基づき作成された資料であり、該資料によりカラーバリエーションによって部署を識別して管理することが可能であることの助言をしたものである。
(9)乙第25号証について
乙第25号証は、被請求人が作成した2014年6月17日付けの「見積書」である。
1葉目には、表紙に「御見積書」の記載、右上に「2014年6月17日」、左上に「東北電力株式会社/人財部人財サポートセンター 御中」の記載があり、右下に、使用商標の表示とともに、「株式会社シモン仙台営業所」の記載がある。
また、2葉目には、上部に「見積書」の記載、右側に被請求人の住所及び「株式会社シモン仙台営業所」の記載があり、左側には、「店所名」として「人財部 人財サポートセンター」、その下に「委託件名」として「被服仕様見直しに関わるコンサルティングおよび試作品作成業務」の記載があり、「デザイン画作成」、「企画書類の作成(コンサルティング業務を含む)」及び「諸経費」に対応した見積りが記載されている。
(10)乙第26号証について
乙第26号証は、被請求人が作成した2014年12月22日付けの「見積書」である。
1葉目には、表紙に「御見積書」の記載、右上に「2014年12月22日」、左上に、「東北電力株式会社/人財部人財サポートセンター 御中」の記載があり、右下に、使用商標の表示とともに、「株式会社シモン仙台営業所」の記載がある。
また、2葉目には、上部に「見積書」の記載、右側に被請求人の住所及び「株式会社シモン仙台営業所」の記載があり、左側には、「店所名」として「人財部 人財サポートセンター」、その下に「委託件名」として「被服仕様見直しに関わるコンサルティングおよび試作品作成業務」の記載があり、「デザイン画作成」、「デザイン画再作成」、「企画書類の作成」、「試作品作成」、「試作品再作成」及び「諸経費」に対応した見積りが記載されている。
2 上記1からすれば、次のとおり判断できる。
(1)使用商標及び使用商標の使用者について
乙第19号証の「会社案内」の2葉目には、被請求の名称と使用商標の表示があり、乙第25号証及び乙第26号証の「御見積書」の表紙には、筆記体風の「Simon」の文字からなる使用商標が表示され、請求人の名称が記載されていることからすれば、使用商標を使用しているのは、被請求人であるといえる。
(2)本件商標と使用商標との社会通念上同一について
本件商標と使用商標とは、共に筆記体風の「Simon」の文字からなり、「シモン」の称呼を生じるものであるから、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用商標の使用時期について
乙第3号証の「コンサルティング契約書」の第4条には、「着手期日 平成26年6月25日」及び「完了期日 平成26年9月30日」と記載され、5葉目には、契約締結日と推察される「平成26年6月23日」の記載がある。
また、乙第4号証の「デザイン画」は、「コンサルティング契約書」(乙3)に基づき作成されたものである。
さらに、乙第25号証及び乙第26号証の「御見積書」の表紙には、それぞれ、「2014年(平成26年)6月17日」、「2014年(平成26年)12月22日」の記載がある。
以上のとおり、これらの日付は、要証期間内(平成25年4月28日から同28年4月27日)であり、「コンサルティング契約書」(乙3)の成果物とされる「デザイン画」(乙4)及び取引書類である「見積書」(乙25、乙26)には、使用商標が表示されていることから、被請求人は、使用商標を要証期間内に使用したものと認めることができる。
(4)使用役務について
ア 「コンサルティング契約書」(乙3)に添付された「委託仕様書」に、「業務目的」として「被服仕様見直しを検討するにあたり専門知識を有する製作会社より当社へ助言や作成したデザイン画および試作品を提供することで、被服仕様見直し検討の円滑化を図ることを目的とする。」や委託業務の内容に、「(1)当社が実施する各種検討会への参加および使用に関わるコンサルティング」、「(2)デザイン画の作成および納入」、「(3)試作品の作成および納入」及び「(4)発注から納入までの工程および参考見積の作成」とあり、これらの記載から、該コンサルティング契約では、専門知識を有する製作会社の助言、デザイン画の作成及び試作品の提供を行うことが業務目的とされていることは認められるが、取消請求役務に関する委託業務は確認できない。
イ 「デザイン画」(乙4)には、提案された靴の写真とともに安全靴等の性能、品質、材料、構造及び規格等が記載されているが、その記載内容からは、被請求人が、取消請求役務を行っていることが確認できない。
ウ 「完了届兼報告書」(乙16)によれば、受託業務である「被服仕様見直しに関わるコンサルティングおよび試作品作成業務」が平成26年12年26日付けで終了したことは認められるが、その記載内容からは、被請求人が、取消請求役務を行っていることが確認できない。
エ 「会社案内」(乙19)には、「シモンブランド製品は高い安全性と優れたデザインで世界の市場をリードしています。」、「シモンは、さらなる安全性と快適性の実現を目指し、常にワンランク上の商品づくりを追求しています。」などの記載があり、被請求人が、自社の製品に対して、「商品開発」、「高い安全性」、「優れたデザイン」を目指す企業であることはうかがい知ることができるが、その記載内容からは、被請求人が、取消請求役務を行っていることが確認できない。
オ 「見直し案メーカー確認資料」(乙21)は、コンサルティング契約に基づき作成された資料であり、該資料により安全靴の仕様について助言をしたとされるが、この証拠からは、被請求人が、取消請求役務を行っていたことが確認できない。
カ 「プレゼン資料」(乙24)は、カラーバリエーションによって部署を識別して管理することが可能であることの助言をしたものとされるが、この証拠からは、被請求人が、取消請求役務を行っていることが確認できない。
キ 「見積書」(乙25、乙26)からは、「デザイン画」を作成し、企画書類を作成し、試作品を作成したこと及びこれらに伴う諸経費がかかったことは認められるが、被請求人が、取消請求役務を行っていることが確認できない。
ク その他、被請求人が提出した証拠においては、被請求人が、取消請求役務を行っている事実は見いだせない。
ケ してみれば、被請求人は、要証期間内に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していた事実は認められるが、取消請求役務を行っていることは認められない。
そして、被請求人が行っている役務とは、「コンサルティング契約書」(乙3)によれば、「被服仕様見直しを検討するにあたり専門知識を有する制作会社より当社へ助言や作成したデザイン画および試作品を提供することで、被服仕様見直し検討の円滑化を図ることを目的とする」と業務目的が記載され、「デザイン画」(乙4)には、安全靴等の色、形、性能、品質、材料、構造及び規格等が記載されていることからすると、「安全靴等の仕様についての助言及びデザインの考案」であるとみるのが相当である。
つまり、被請求人は、「商品に関する市場調査」を提供しているのではなく、「安全靴等の仕様についての助言(コンサルティング)及びデザインの考案」を提供しているとみるのが相当である。
3 被請求人の主張について
被請求人は、「被請求人は、軽量化/加水分解、カラーバリエーション、静電靴の表示等の安全保護具について市場で何が求められているかの調査を行っており、その調査結果を、社内イントラや勉強会において社内で共有している。『デザイン画』、『見直し案メーカー確認資料』、『プレゼン資料』及び『陳述書』に記載のとおり、被請求人は、東北電力に対し、本件情報提供を行った。東北電力は、本件情報提供を基に、自社および業務委託先(下請先)企業が作業員用に安全靴を発注する際の仕様を検討した。したがって、本件情報提供は『商品に関する市場調査』に該当する。」旨主張する。
確かに、被請求人は、「お客様相談室 2月分 集計【回覧】」(乙6)、商品購入者からの「アンケートはがき」(乙7)、ユーザーの声を集計するための「安全靴試履きアンケート、安全靴体感アンケート」(乙8)、「お客様相談室受付票」(乙11)及び「集計表」(乙12)にあるように、お客様相談室に寄せられた「相談内容」と「対応内容」を集計し、商品購入者から、はがきでアンケートをとり、被請求人の各営業所等のユーザーの声を集計するなどの市場調査を行っていることは認められる。
しかしながら、商品購入者からの「アンケートはがき」(乙7)は、被請求人の商品購入に関するアンケートであり、ユーザーの声を集計するための「安全靴試履きアンケート、安全靴体感アンケート」(乙8)には、「社内目的以外は使用しない、第三者に開示しない」とあるように、被請求人の市場調査は、自社内で使用するものであり、取消請求役務である「商品に関する市場調査」には該当しない。
そして、上記2(4)のとおり、「コンサルティング契約書」(乙3)の委託仕様書の「業務目的」には、「被服仕様見直しを検討するにあたり、専門知識を有する製作会社より当社へ助言や作成したデザイン画および試作品を提供することで、被服仕様見直し検討の円滑化を図ることを目的とする。」と記載されおり、これからは、専門知識を有する会社から助言や作成したデザインを提供してもらうことを目的とするものであり、「商品に関する市場調査」に係る委託内容とは認められない。
また、コンサルティング契約の成果物とされる「デザイン画」(乙4)には、安全靴等のデザイン(形、色)、性能、品質、材質、構造及び規格等が記載されているが、これが「商品に関する市場調査」に係る調査結果が記載されているとは認められない。
さらに、「陳述書」(乙18)には、平成26年7月25日に被請求人担当者が、東北電力に対して、「デザイン画」(乙4)及び「プレゼン資料」(乙24)を用いてプレゼンを行ったとされるが、「デザイン画」(乙4)には、上記のとおり、「安全靴等に関する市場調査」についての記載がなく、「プレゼン資料」(乙24)にも、具体的な「商品に関する市場調査」に係る調査結果が記載されているとは認められない。
加えて、上記のプレゼン時に被請求人は、「見直し案メーカー確認資料」(乙21)及び「プレゼン資料」(乙24)を使用して、「安全靴の仕様に関する助言を行った」及び「カラーバリエーションによって、部署を認識して管理することが可能である助言を行った」と主張しているが、これらは安全靴の仕様やカラーバリエーションの助言であって、「商品に関する市場調査」に係る調査報告とはいえない。
その他、「商品に関する市場調査」の役務の報告内容として、当然に想定される、調査の目的、調査方法等が明記されている証拠の提出もない。
以上のことから、被請求人が「商品に関する市場調査」の役務を提供していたものとは認められない。
したがって、被請求人の上記主張は、採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求役務について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、取消請求役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)



審決日 2017-05-24 
出願番号 商願平4-318829 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (035)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 榎本 政実
木住野 勝也
登録日 1997-03-12 
登録番号 商標登録第3271986号(T3271986) 
商標の称呼 シモン、サイモン 
代理人 中島 茂 
代理人 桶野 清香 
代理人 原 正雄 
代理人 鹿毛 俊輔 
代理人 桶野 育司 

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