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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X12 |
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管理番号 | 1330226 |
審判番号 | 取消2015-300946 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2015-12-26 |
確定日 | 2017-06-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5499703号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5499703号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5499703号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成23年7月11日に登録出願、第12類「航空機・自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ,空気タイヤの外殻,空気タイヤ,自動車用タイヤ,空気タイヤ用チューブ,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用ソリッドタイヤ,チューブ修理用具,航空機・鉄道車両・自動車・二輪自動車・自転車用車輪,自動車」を指定商品として、同24年6月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成28年1月20日にされている。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが使用した事実がないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 弁駁の理由 (1)乙第1号証及び乙第2号証について 請求人は、乙第1号証及び同2号証を提出し、商標権者が製造、販売する「自動車用タイヤ」は日本を含む世界中の多くの国々で販売されている旨主張する。しかしながら、乙第1号証は、単なる会社紹介が掲載されたウェブページに過ぎず、また乙第2号証は、被請求人が自ら作成した被請求人の商品の市場分布図であって、現実に商品の取引が行われた事実を客観的に示す証拠とはいえないため、これにより、本件商標が商品「自動車用タイヤ」に使用されていたと認めることはできない。 (2)乙第3号証及び乙第4号証について ア 乙第3号証及び乙第4号証により、被請求人が、英語ニュースサイト「JAPANTODAY」に自社の紹介記事を掲載した事実は推認されるが、乙第3号証の記事は、「株式会社Tokyo Nihoon Rubber corpは国際市場向けにTOYOMOTOタイヤを販促する。TOYOMOTOにはUHP、PCR、SUV、LTR及びOTRが各種類タイヤあります。」(乙3訳文)等と記載されていることに鑑みると、乙第3号証は単なる会社の紹介記事であって、具体的な商品の販売に関する広告・宣伝に該当するものではない。 イ また、乙第3号証及び同4号証はいずれも英語で記載されたものであり、かつ英語ニュースサイト「JAPANTODAY」(Japantoday.com)は、株式会社ジープラス・メディア(甲3の1)が運営する海外に向けて日本に関する様々な情報を伝えることを目的とした英語ニュースサイトであることからすると(甲3の2)、乙第3号証、乙第4号証は、日本の取引者又は需要者を対象とした広告・宣伝とは認められない。 ウ さらに、乙第3号証にはその掲載日が記載されておらず、乙第3号証に係る記事が、本件審判請求登録前3年以内に発行されたものとも認められない。 エ 以上より、乙第3号証及び乙第4号証により、商標権者(被請求人)又は通常使用権者が、本件審判請求登録前3年以内に日本国内において、本件商標を商品「自動車用タイヤ」に使用した事実は認められないことは勿論のこと、我が国の需要者・取引者において、被請求人が自動車用タイヤメーカーとして知られるようになったとの事実は一切存しない。 (3)乙第5号証ないし乙第11号証について ア 被請求人提出の乙第5号証ないし乙第10号証は、全て被請求人のホームページの写しであるが、インターネットサイトのURLに関する検索サイト「aguse」(甲4の1)により当該証拠のURL(http://www.toyomototire.com/)を検索すると、当該ウェブページのサーバーの位置情報は中国を示していることから(甲4の2)、当該証拠に係るウェブページは中国のサーバーに設けられているものと推認することができる。 イ また、当該ウェブページは全て中国語又は英語で記載されていることからすると、これが一般的な日本の需要者、取引者を対象としたものとは認められず、さらに、当該ウェブページは日本からもアクセス可能であり、日本の検索エンジンを利用して検索することもできるが、そのことはインターネットのウェブページである以上、当然のことであるから、当該ウェブページに本件商標が付された商品「自動車用タイヤ」が掲載されているからといって、これが日本国内における本件商標の使用に該当するものといえないことは明らかである。 ウ 次に、乙第11号証については、日本語と思しき言語で記載されているが、例えば乙第11号証における製品の概要の「主要な特性」の欄の記載をみると、「4つの支配の溝との二方向アークの設計は極度の水排水の、無騒音および低い圧延抵抗を保証する。それは高速サービスのよい証明する。考察はまた乾燥した、ぬれた条件のブレーキがかかり、角を付ける特性を改良するための設計そしてcraftmanshipの間に与えられる。都市旅行103はまた低燃費および低いtreadwearで商業サービスで特によく行う。」といった極めて不自然な日本語で記載されていることが認められる。 エ ここで、請求人が、乙第11号証に係るウェブサイトのURL(http://jp. made-in-china. com/)をインターネットで検索したところ、中国の製造業者と各国のバイヤーを仲介する「Made-in-China.com」(英語サイト)というインターネットサイト(http://jp.made-in-china.com/)が検索された(甲5の1)。しかるに、同サイトは、元々英語で記載されたウェブページをドイツ語、イタリヤ語、フランス語、日本語等に変換(自動翻訳)する機能を有するものであり、乙第11号証は、同サイト内のページ(英語で記載されている)を日本語に変換したものと完全に一致することが認められる(甲5の2)。そうすると、乙第11号証は、本来、英語で記載されていたページが日本語に変換されたものと考えるのが相当であり、日本の一般の取引者、需要者を対象としたウェブページとはいえないため、日本国内における本件商標の使用に該当しないものである。 オ そして、乙第5号証、乙第6号証及び乙第9号証のホームページの写しの打ち出し日付は「2016年4月17日」、乙第7号証のホームページの写しの打ち出し日付は「2016年4月15日」、また乙第10号証及び乙第11号証のホームページの打ち出し日付は「2016年4月12日」であって、いずれも本件審判の登録日より後の証拠であり、さらに乙第8号証の商品写真については、その作成日(撮影日)が不明であることに鑑みれば、これらの証拠により本件商標が本件審判請求登録前3年以内に使用されていた事実を認めることはできない。 カ さらに、乙第5号証ないし乙第11号証に記載された使用商標1(別掲)と本件商標を対比すると、その構成中の欧文字部分は「TOYOMOTO」で一致するが、左側に位置する図形部分に関して、本件商標は一人の人間(その体幹中央部分に5つの点線が表示されている)が両手・両足を大きく広げたような外観構成であるのに対し、使用商標1は「T」の文字を変形させ、その上に黒丸を付したような外観構成であって、本件商標と使用商標1は、その外観構成が著しく異なるものであるため、社会通念上同一の商標であると評価することはできない。 キ してみれば、乙第5号証ないし乙第11号証により、商標権者(被請求人)又は通常使用権者が、本件審判請求登録前3年以内に日本国内において、本件商標を商品「自動車用タイヤ」に付する行為(商標法第2条第3項第1号)並びに商品「自動車用タイヤ」に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為(同法第2条第3項第8号)を行っていたとは到底認めることができない。 (4)乙第12号証について ア 被請求人は、「Japan Toyomoto Tire Corp.」(中国)が「ワールドワイドトレード株式会社」(日本、宮崎)から商品「自動車用タイヤ」の注文を受けたことを示す取引書類(注文請書)として乙第12号証を提出した。しかしながら、当該注文請書は、単に注文の申し込みがあった事実を示す書類に過ぎず、これに基づき、実際に商品が注文者(ワールドワイドトレード株式会社)に譲渡された、すなわち現実に商品取引が行われたとの事実を認めることはできない。 イ また、仮に前記取引が実際に行われたとしても、乙第12号証によると、4本のタイヤの注文に関する取引額は「0ドル」と明記されており、前記取引はごく少数の自動車用タイヤが無償で譲渡されたものに過ぎないため、前記取引に係る行為について、商標法上の商品に関して本格的な商標の使用が行われたものと評価することはできない。 ウ 次に、乙第12号証に示された取引の形態は、中国に所在する「Japan Toyomoto Tire Corp.」が「ワールドワイドトレード株式会社」宛てに日本(鹿児島)に向けて商品を発送するというものであるが、商標法第2条第3項第8号における取引書類に商標が付されたというためには、当該取引における譲渡行為が日本国内で行われる必要があるというべきであって、日本国外に所在する者が日本国外に所在する商品について日本国内に所在する者との間で譲渡契約を締結し、当該商品を日本国外から日本国内へ発送したとしても、それは日本国外に所在する者による日本国内における譲渡に該当するものとはいえないと考えるのが相当である(知財高裁平成17年(行ケ)第10817号事件参照)。 エ これを本件についてみると、上記のとおり、乙第12号証は、中国に所在する法人である「Japan Toyomoto Tire Corp.」が商品「自動車用タイヤ」を日本国に所在する「ワールドワイドトレード株式会社」に対して譲渡することを示す取引書類であると推認できるが、当該「Japan Toyomoto Tire Corp.」の行為は、日本国外に所在する者による日本国内における譲渡に該当しないことは明らかである。 オ さらに、乙第12号証に表示された使用商標2は、上記使用商標1と同一の外観構成からなるものであるため、使用商標2についても、使用商標1と同様に本件商標と社会通念上同一であると認めることはできない。 カ したがって、乙第12号証により、商標権者(被請求人)及び通常使用権者が、日本国内において、商品「自動車用タイヤ」に関する取引書類に本件商標を付する行為(商標法2条第3項第8号)を行っていたとは認められない。 (5)乙第14号証について ア 被請求人によると、乙第14号証は世界中の顧客に向けたカタログである旨主張するが、乙第14号証は英語で記載されていることからすると、これが一般的な日本の需要者、取引者を対象としたものではないと考えるのが相当である。 イ また、乙第14号証の作成日、配布地、配布方法、発行部数等の詳細は明らかでなく、これが本件審判請求登録前3年以内に日本国内において、日本の一般の取引者、需要者に向けて実際に頒布された事実も認められない。 ウ さらに、乙第14号証に表示された使用商標2は、上記使用商標1と同一の外観構成からなるものであるため、使用商標2も使用商標1と同様に本件商標と社会通念上同一であるとは認められない。 エ したがって、乙第14号証に基づき、商標権者(被請求人)又は通常使用権者が、本件審判請求登録前3年以内に日本国内において、商品「自動車用タイヤ」に関する取引書類(カタログ)に本件商標を付する行為(商標法第2条第3項第8号)を行っていた事実を認めることはできない。 (6)結論 上述のとおり、被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第15号証のいずれの証拠においても、本件審判の請求登録前3年以内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の指定商品中、商品「自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ」について本件商標を使用したとの事実の立証がなされていないため、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。 (1)商標権者等について 被請求人である商標権者は、自動車用タイヤ等の製造、販売を目的として、1985年4月25日に設立された会社であり(乙1)、商標権者が製造する自動車用タイヤは、日本を含む世界中の多くの国々において販売されている(乙2)。 また、商標権者は、2015年1月15日から同年7月14日までの6ケ月間、英語ニュースサイト「JAPANTODAY」に自社の宣伝・広告を掲載しており、「JAPANTODAY」は海外だけでなく、日本に在住する外国人及び日本人にも広く閲覧されることから、我が国の需要者・取引者においても、商標権者は自動車用タイヤのメーカーとして知られるようになっている(乙3、乙4)。 また、「Japan Toyomoto Tire Corp.」は、マーケティング及び販売を専門とする関連会社であり、商標権者から本件商標の使用について使用許諾を受けている立場、すなわち、本件商標の通常使用権者(以下、商標権者及び通常使用権者を合わせて「商標権者等」という。)である。 (2)使用の事実について ア 乙第5号証ないし乙第11号証 乙第5号証及び乙第6号証は、商標権者等のサイトのウェブページの写しであり、乙第7号証は、乙第6号証に表示された自動車用タイヤを拡大した画像の写しである。乙第5号証ないし乙第7号証に表示された自動車用タイヤのサイドウォールには、両腕を横に広げ、両足が外側を向いた身体部の上に、黒丸で表した頭部を配して人の形を模した図形部分と、その右横に「TOYOMOTO」文字を配し、その下に横線と「JAPAN」の文字を配した文字部分とからなる商標(以下「使用商標1」という。)が付されている。 また、乙第8号証は、使用商標1が付された自動車用タイヤを撮影した写真の写しである。この自動車用タイヤのサイドウォールには、右下部分に「TRANS 226」の品番が表示され、右横部分に「12.00R24」のサイズが表示されており、この品番、サイズは、商標権者等のサイトに掲載された自動車用タイヤの品番、サイズと一致する(乙9)。 すると、乙第5号証ないし乙第9号証によれば、商標権者等が製造、販売する自動車用タイヤに使用商標1が付されていた事実が証明される。 乙第10号証は、商標権者等を紹介した記事が掲載されたウェブページの写しである。この乙第10号証には、商標権者等へのインタビューの内容と共に、使用商標1が付された自動車用タイヤが掲載されており、記事の冒頭部には、記事の掲載日として「2014-12-8」の日付が表示されている。 すると、乙第5号証ないし乙第10号証によれば、少なくとも2014年12月8日から現在まで、商標権者等は、使用商標1を付した自動車用タイヤを製造、販売している事実が推認される。 乙第11号証は、商標権者等が製造する自動車用タイヤが掲載された販売ウェブサイトのウェブページの写し及び掲載された自動車用タイヤを拡大した画像の写しである。当該販売サイトには、左上に通常使用権である「Japan Toyomoto Tire Corp.」の名称が表示されており、自動車用タイヤのサイドウォールには、使用商標1が付されている。 当該販売ウェブサイトは、日本語で表示されているように、我が国の需要者・取引者が閲覧するサイトであり、気になる商品を見つけた需要者・取引者が当該販売ウェブサイトを介してサプライヤーに問い合わせて商品を購入するものである。 すると、乙第11号証によれば、商品の販売のためにウェブサイトに使用商標1を付した商品を掲載していた事実が証明される。 以上より、乙第5号証ないし乙第11号証によれば、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「本件要証期間内」という。)に、日本国内において、商標権者等が自己の業務に係る商品「自転車用タイヤ」に使用商標1を付していた事実及び商品の販売のためにウェブサイトに使用商標1を付した商品「自転車用タイヤ」を掲載していた事実が確認できるものであり、商標権者の上記行為は、商標法第2条第3項第1号に規定する「商品に標章を付する行為」、及び商標法第2条第3項第8号に規定する「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 イ 乙第12号証ないし乙第14号証 乙第12号証は、通常使用権者である「Japan Toyomoto Tire Corp.」が「WORLD WIDE TRADE CO.,LTD.」宛てに発行したプロフォーマインボイスの写しである。 該プロフォーマインボイスの「1.Description of goods」の欄には、「Sizes and specs」に、「195/65R15 CITYTOUR 112」の品番、サイズが記載されており、この品番、サイズは、商標権者等のサイトに掲載された自動車用タイヤの品番、サイズと一致する(乙13)。 また、右上の「Date」の項目には、「Dec29,2014」の日付が表示されており、左上には、両腕を横に広げ、両足が外側を向いた身体部を赤色に着色し、その上に黒色の頭部を配して人の形を模した図形部分と、その右横に「TOYOMOTO」文字を配し、その下に横線と「JAPAN」の文字を配した文字部分とからなる商標(以下「使用商標2」という。)が表示されている。 なお、プロフォーマインボイスは、売り手が発行する「注文請書」に相当するものであり、商標法第2条第3項第8号の「取引書類」に該当する。 乙第14号証は、商標権者等が発行したカタログの写しである。 該カタログは、世界中の顧客に向けて発行されたカタログであるため、基本的に英語で作成されているが、該カタログの中に日本語が記載されているように、該カタログは日本の顧客にも頒布されたものである。 該カタログには、商標権者等の会社紹介と共に、商標権者等が製造する自動車用タイヤが表示されており、各ページには使用商標2が表示されている。 以上より、乙第12号証ないし乙第14号証によれば、本件要証期間内に、通常使用権者が、自己の業務に係る商品「自動車用タイヤ」の注文請書に使用商標2を表示していた事実、及び商標権者等が自己の業務に係る商品「自動車用タイヤ」のカタログに使用商標2を表示していた事実が確認できるものであり、通常使用権者の上記行為は、商標法第2条第3項第8号に規定する「商品に関する取引書類(注文請書及びカタログ)に標章を付して頒布する行為」に該当する。 (3)本件商標と使用商標1及び使用商標2の同一性について ア 使用商標1について 本件商標は、両腕を横に広げ、両足が外側を向いた身体部の上に、黒丸で表した頭部を配して人の形を模した図形部分と、その右横に「TOYOMOTO」の文字を配してなるところ、本件商標と使用商標1とは、図形部分の態様や「JAPAN」の文字と横線の有無において相違が見受けられる。 しかしながら、実際の商標の使用においては、商標を付する対象に応じて適宜に変更を加えて使用されるのが通常であり、本件商標の図形部分が使用商標1のように変更されているのは、本件商標を自動車用タイヤのサイドウォールに設ける場合、図形部分(身体部)の細かな外観を表現することができず、多少簡略化せざるを得ないことから、本件商標の図形部分を使用商標1の態様に変更したものであり、商標を付す商品の性質から行われた変更といえるものである。 また、本件商標と使用商標1の図形部分は、いずれも両腕を横に広げ、両足が外側を向いた人の形を把握させるものであり、該図形部分における相違は、本件商標の構成の基本を変更するものではなく、本件商標の有する識別性に影響を与えない範囲にとどまっているといえるものである。 しかも、本件商標と使用商標1とは、全体(図形部分と文字部分)の配置態様に加えて、文字部分の態様(「TOYOMOTO」の文字が右側にやや傾斜させたゴシック体をもって横書きしてなる態様)において共通することから、本件商標の図形部分における相違が両商標の印象に与える影響は微少であり、商標全体から受ける印象に格別の差異を感じさせるものとはいえない。 そして、使用商標1における「JAPAN」の文字は、商品の生産地又は販売地等を表したと理解されるものであり、また、「TOYOMOTO」の文字の下に配された横線も、自他商品の識別標識としての機能を果たすものではないことから、使用商標1の「JAPAN」の文字と横線を加えた変更は、本件商標の識別性に何ら影響を与えるものでない。 したがって、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 イ 使用商標2について 使用商標2は、使用商標1と同一の構成からならなる商標の図形部分に色彩を付したものである。 乙第15号証は、展示会の模様を撮影した写真の写しであり、乙第15号証には、本件商標の図形部分に色彩を付した商標が表示されているが、この乙第15号証に表示された商標から明らかなように、本件商標の図形部分に色彩を付したとしても、それが商標の識別性に何ら影響を与えるものではないのは明らかである。 したがって、使用商標2は、上記した使用商標1と同様の理由により、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 (4)まとめ 以上のように、本件商標は、本件商標の商標権者等によって、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品「自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ」について使用されていたことが明らかである。 第4 当審の判断 1 被請求人が提出した証拠について (1)乙第1号証ないし乙第4号証について ア 乙第1号証は、商標権者等の会社紹介が掲載されたウェブページの写しであり、2016年4月12日にプリントアウトされたものである。このページは、全て英語で書されており、「COMPANY PROFILE」(会社プロフィール)の項には、「Mother Company」(親会社)として「Kabusiki Kaisha Tokyo Nihoon Rubber Corp.」、「Marketing/Sales」(マーケティング/販売)として「Japan Toyomoto Tire Corp.」の記載がある。 イ 乙第2号証は、「商標権者等の商品の市場分布図が掲載されたウェブページの写し」として提出された証拠であるところ、該証拠には、「TOYOMOTO MARKET AND DISTRIBUTION ZONE」の表題の下、世界地図が描かれ、各国に「TOYOMOTO」の文字が表されており、その下には、「日期:2013年10月」と表示されているが、これが商標権者等の商品の市場分布図であることを確認できる説明文等は付されていない。 ウ 乙第3号証は、英語ニュースサイト「JAPANTODAY」の抜粋(写し)と認められるところ、2015年2月9日付け及び同年1月20日付けの記事が掲載されているページにそれぞれ「商標権者は、国際市場向けにTOYOMOTOタイヤを販促する。」旨の広告文が記載されている。 そして、乙第4号証は、JapanToday-www.JapanToday.comの運営会社である株式会社ジープラスメディアと商標権者との間で交わされた広告合意書(契約書を含む。)及び請求書の写しであり、2015年1月20日及び同年2月9日に、英語ニュースサイト「JAPANTODAY」に「Toyomototire」を表題とする英語の広告文を掲載したことが推認できる。 (2)乙第5号証ないし乙第11号証について ア 乙第5号証、乙第6号証及び乙第9号証は、「Japan Toyomoto Tire Corp.」のウェブページの写しであって、いずれも2016年4月17日にプリントアウトされたものである。また、これらのページは、全て英語で書されており、画像としては「自動車用タイヤ」が掲載されている。そして、各ウェブページ中の画像である「自動車用タイヤ」の側面には、円状図形と2つの線状図形を組み合わせた人の形をモチーフとしたと思しき幾何図形とその横に「TOYOMOTO」の欧文字を配し、「TOYOM」部分の下には黒線、「OTO」部分の下には「JAPAN」の文字が小さく書されている標章(使用商標1)が付されている。 イ 乙第7号証は、乙第6号証に掲載された「自動車用タイヤ」を拡大した画像、乙第8号証も「自動車用タイヤ」を拡大した画像であり、どちらにも使用商標1が付されている。 ウ 乙第10号証は、商標権者等を紹介した記事が掲載されたウェブページの写しである。この記事は、全て中国語又は英語で書されており、使用商標1が付された「自動車用タイヤ」の画像も掲載されている。この記事の本文の冒頭に「On December 4,2014, ・・・ for interviews.」と記載されており、被請求人の主張を合わせみれば、2014年12月4日に行われたインタビューを掲載したものと推認できる。 エ 乙第11号証は、商標権者等が製造する自動車用タイヤが掲載された販売ウェブサイトのウェブページの写しであって、2016年4月12日にプリントアウトされたものである。これには、左上部に「Japan Toyomoto Tire Corp」と記載され、その下のタイヤの画像の右側に「Toyomotoのタイヤ」と書されている。また、拡大された画像からは、使用商標1が付されていることが確認できる。 (3)乙第12号証ないし乙第14号証について ア 乙第12号証は、プロフォーマインボイスの写しであるところ、円状図形と赤色で着色した2つの線状図形を組み合わせた人の形をモチーフとしたと思しき幾何図形とその横に「TOYOMOTO」の欧文字を配し、「TOYOM」部分の下には赤線、「OTO」部分の下には「JAPAN」の文字が小さく書されている標章(使用商標2)が認められる。右上部には、発行日として2014年12月29日とある。販売先として「Japan Toyomoto Tire Corp.」、客先として「ワールドワイドトレード株式会社」、荷物詳細の「Goods and Brand」欄には「Toyomoto Tires」、「Sizes and Specs」欄には「195/65R15 CITYTOUR 112」の記載がある。 イ 乙第13号証は、「Japan Toyomoto Tire Corp.」のウェブページの写しであって、2016年4月17日にプリントアウトされたものである。このページは、全て英語で書されており、「自動車用タイヤ」の画像が掲載されている。「自動車用タイヤ」の画像の下の表には、「PATTERN NO.」の欄に「CITYTOUR 112」、「SIZE」の欄に「195/65R15」の記載がある。 ウ 乙第14号証は、商標権者等が発行したカタログの写しである。このカタログの各頁には、使用商標2が表示されている。しかしながら、このカタログの作成日は不明であり、頒布の事実も確認できない。 (4)乙第15号証について 乙第15号証は、展示会の模様を撮影した写真の写しとするものであるところ、その写真には、本件商標の図形部分を赤く着色した図形とその横に「TOYOMOTO」の欧文字を配し、欧文字「TOYOM」部分の下には赤線、「OTO」部分の下には「JAPAN」の文字が小さく書されている標章と「JAPAN TOYOMOTO TIRE CORP.」の文字が表示されたブースとともに、「自動車用タイヤ」が多数展示されている。しかしながら、これがいつ、どこで、いずれの者により開催された展示会なのかは明らかでない。 2 上記1の認定事実を総合してみれば、以下のように判断することができる。 (1)本件商標権者である被請求人は、1985年に設立された自動車用タイヤの製造販売を目的とする会社であり、「Japan Toyomoto Tire Corp.」は、被請求人のマーケティング及び販売部門を担う関連会社である(乙1)ことから、本件商標の使用について通常使用権者であるとみて差し支えないものである。 (2)通常使用権者のウェブページには、使用商標1が付された「自動車用タイヤ」が掲載されていたことが認められる(乙5、乙6、乙9)。また、商標権者等を紹介したインタビューが2014年12月4日に行われ、その記事には、上記通常使用権者のウェブページに掲載されたものと同一の使用商標1が付された「自動車用タイヤ」の画像が掲載されている(乙10)ことから、本件要証期間内である2014年12月4日に通常使用権者は、使用商標1を「自動車用タイヤ」に使用したものと推認できる。 (3)通常使用権者は、2014年12月29日には、使用商標2を付したインボイスを用いて商品「自動車用タイヤ」の取引をしたこと(乙12)、インボイスに記載された商品のサイズ等が一致する「自動車用タイヤ」が通常使用権者のウェブサイトに掲載されていたこと(乙13)が確認できるものの、両証拠を併せても、インボイスに記載された顧客である「ワールドワイドトレード株式会社」が、実際に日本国内でインボイスに記載された商品について譲渡又は引渡しをした事実は確認できない。 また、乙第13号証は、全て英語で書されており、我が国の需要者、取引者を対象として掲載されているとは認められず、さらに、本件要証期間以降である2016年4月17日にプリントアウトされたものであることから、この証拠によって、インボイスに表された使用商標2を付した「自動車用タイヤ」が、通常使用権者により、日本国内において譲渡又は引渡しされたことを証明したと認めることはできない。 (4)本件商標と使用商標1及び使用商標2の同一性について 本件商標は、別掲1のとおり、黒丸で表した頭部の下に両腕をバーベル様に描き、胴体と思しき部分には縦に白丸を5つ並べ、両足は外側を向けている人の形をモチーフにした図形とその右横に「TOYOMOTO」の欧文字を配した構成からなるところ、使用商標1及び使用商標2は、別掲2及び別掲3のとおり、円状図形と2つの線状図形を組み合わせた人の形をモチーフとしたと思しき幾何図形と「TOYOMOTO」の文字又は該文字等を配した構成からなるものであって、本件商標と使用商標1及び使用商標2は、「TOYOMOTO」の欧文字部分は共通するものの、図形部分は、人の形をモチーフにした点においては共通するともいい得るが、その抽象化の度合いにおいて著しく相異し、その印象が明らかに異なることから、本件商標とは、社会通念上同一のものということはできない。 (5)小括 以上によれば、商標権者等が、日本国内において、本件要証期間内に本件商標(社会通念上同一のものを含む。)を商品「自動車用タイヤ」に使用したものと認めることはできない。 3 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品についての登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 1(本件商標) 2(使用商標1) 3(使用商標2)(色彩は原本参照) |
審理終結日 | 2017-04-25 |
結審通知日 | 2017-05-01 |
審決日 | 2017-05-12 |
出願番号 | 商願2011-48508(T2011-48508) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(X12)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小松 孝 |
特許庁審判長 |
今田 三男 |
特許庁審判官 |
小松 里美 酒井 福造 |
登録日 | 2012-06-08 |
登録番号 | 商標登録第5499703号(T5499703) |
商標の称呼 | トヨモト |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 柴田 雅仁 |