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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X05
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X05
管理番号 1329303 
審判番号 無効2010-680003 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-04-20 
確定日 2012-01-04 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第988585号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 国際登録第988585号商標の指定商品中、第5類「medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use.」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第988585号商標(以下「本件商標」という。)は、「BIOACTYS」の欧文字よりなり、2008(平成20年)10月29日に国際商標登録出願、第5類「Bone fillers;bioceramics;medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use;alloys of precious metals for dental purposes;injectable resorptive materials for medical,veterinary or pharmaceutical purposes;bio-organic materials for medical,veterinary or pharmaceutical purposes.」及び第10類「Prostheses;synthetic bone substitutes,synthesis biomaterials for surgical, medical,dental and veterinary purposes;orthopaedic articles,suture equipment;prostheses,artificial implants.」を指定商品として、平成21年9月1日に登録査定され、平成22年1月8日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は以下のとおりであり、いずれも有効に存続しているものである。
(1)商標登録第1285827号(以下「引用商標1」という。)
商標 ビオラクチス
指定商品(書換登録後) 第5類「薬剤」
登録出願日 昭和48年1月13日
設定登録日 昭和52年7月20日
(2)商標登録第1479881号(以下「引用商標2」という。)
商標 BIOLACTIS
指定商品(書換登録後) 第5類「薬剤」
登録出願日 昭和53年11月24日
設定登録日 昭和56年9月30日
なお、これらをまとめていうときは「引用商標」という。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第5類「Bone fillers; bioceramics;medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use;alloys of precious metals for dental purposes;injectable resorptive materials for medical,veterinary or pharmaceutical purposes; bio-organic materials for medical,veterinary or pharmaceutical purposes.」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標と引用商標の類似性
商標は、比較する商標の有する称呼、外観、観念のいずれかにおいて相紛らわしい場合に類似の商標であると判断されるものである。
まず、称呼についてであるが、本件商標は、「BIOACTYS」の欧文字よりなり、これよりは、「ビオアクティス」、「バイオアクティス」若しくは「ビオアクチス」、「バイオアクチス」の称呼を生じる。
一方、引用商標であるが、引用商標1は、「ビオラクチス」の片仮名よりなり、これよりは「ビオラクチス」の称呼を生ずる。
そして、引用商標2は、「BIOLACTIS」の欧文字よりなり、この表記のみから考えると「ビオラクチス」、「バイオラクチス」若しくは「ビオラクティス」、「バイオラクティス」の称呼を生ずるといえる。しかし、請求人は、引用商標2を「ビオラクチス」と称呼しており、その指定商品「乳酸菌製剤」(薬剤)において35年以上の長きにわたり、引用商標1及び2を使用し続けており、「ビオラクチス」の称呼は、当該商品に接する需要者及び取引者の間で広く知られたものとなっており、このような取引の実情を加味すると、引用商標2からは、引用商標1と同様に「ビオラクチス」の称呼が生ずるということができる。
本件商標と引用商標の称呼を比較するに、本件商標から生ずる「ビオアクチス」の称呼と引用商標から生ずる「ビオラクチス」の称呼は、いずれも6音の称呼であるところ、5音までもが共通し、中間音の「ア」と「ラ」の1音のみが相違するものであるが、母音「a」を共通する「ア」と「ラ」の音は、発声、音質等において非常に紛らわしい音であり、両称呼はいずれも平板に発音され、中間音の差異は目立つものでないから、両者は、相紛らわしく、称呼類似の商標といえる。
次に、外観であるが、本件商標「BIOACTYS」は、8文字中7文字までが引用商標2「BIOLACTIS」と共通し、異なる部分は、「L」の有無と「Y」と「I」の差異のみである。異なる部分はいずれも目立ちにくい中間の文字であり、取引者や需要者が、時と所を異にした場合に、両商標を見誤る可能性が高い。
最後に観念であるが、本件商標及び引用商標はいずれも特定の観念を持たない造語と認められ、観念上の類否は判断できない。しかし、造語であるがゆえに互いに観念について意識することはなく、まず最初に目にする外観性の類似が両者の識別を困難にし、加えて、称呼は漠然とした音の感じで捕らえることとなり、前記称呼上の差異は重視されない。
以上より、本件商標は引用商標と称呼及び外観において類似する商標といえる。
(2)指定商品の類似性
本件商標の指定商品は、いずれも医薬品に関連する商品全般であり、例えば、第5類「medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use.」(浴剤,医療用化学薬剤及び医学用化学剤)を含むが,これらは、引用商標1及び2の指定商品「薬剤」と共通する。
(3)以上、本件商標と引用商標1及び2は、称呼及び外観が類似し、同一または類似の商品に使用されるものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)引用商標の著名性
ア 請求人の株式会社ヤクルト本社は、我が国において極めて著名な乳酸菌飲料「ヤクルト」を製造販売するメーカーであり、食品事業、化粧品事業、医薬品事業の3つの事業を主に展開している。医薬品事業は、近畿ヤクルト製造株式会社を請求人が子会社化し、1975年に医薬品部門を設置しこれにより、本社での医薬品事業を開始したが、(医療用)乳酸菌製剤の「ビオラクチス、BIOLACTIS」(以下「請求人商品」という。)を開始当初から製造販売している。
カプセル剤の「ビオラクチス カプセル(BIOLACTIS CAPSULE)」は、1975年1月1日より販売開始され(2004年8月31日販売中止)、その後、散剤の「ビオラクチス 散(BIOLACTIS POWDER)」(以下、これらをいずれも片仮名表記部分で表記する。)が1990年9月10日より販売開始され、現在まで販売が継続されている(甲第16号証?甲第18号証)。
請求人商品は、乳酸菌製剤のパイオニアと呼べるものであり、35年の長きにわたり継続して販売している事実からは、これが、医師、薬剤師等の医療関係者のほか、これを処方された患者といった、取引者、需要者の間で一定の評価を得ていることが理解されるのであり、引用商標がそうした人々に広く知られてることは間違いない。
また、「ビオラクチス 散」の効果・効能の一つとしては、膀胱発癌抑制作用があって,これは医学論文でも取り上げられており、臨床のみではなく、医学研究の分野でも引用商標が知られていることは想像に難くない(甲第19号証)。
イ 引用商標の周知性を判断する上では、その販売規模や売上高(数量・金額)も一つの使用となるが,それを示す資料として、請求人作成の「ビオラクチス 販売先一覧」(甲第20号証の1?3)及び「品目別売上高・売上原価明細」(甲第21号証の1?8)を提出する。
まず、「ビオラクチス 販売先一覧」を見ると、市場の8?9割を占有する医薬品卸業界大手4社のメディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品のほか、東北が拠点のバイタルネットや名古屋の中北薬品、シーエス薬品、四国の四国産業、長崎の宮崎温仙堂商店などが記載されており、全国各地の医薬品卸に請求人商品が販売されいていることがわかる。したがって、請求人商品は、北から南まで日本全国の医療機関において処方され、販売されていることが理解されるのである。
次に、「品目別売上高・売上原価明細」をみると、2002年、2003年には、カプセル剤及び散剤合計で請求人商品は、1億円を超える純売上高を計上し、2004年にカプセル剤の販売を中止した後は、散剤のみで6500万円前後の純売上高をコンスタントに計上している(2005年?2008年)。いずれも決して小さくない数字であり、医療用乳酸菌製剤の分野において、請求人商品は確固たる地位を築いていることがうかがえる。
また、売上数量に注目すると、例えば、2003年は11,352,000カプセル、散剤が7,685,400gであるが、成人の用法・用量がカプセル剤が「1日3カプセル×3回」、散剤が「1日1g×3回」であり、一度の診療で5日分処方されると考えると、76.4万人分にもなる。直近の2008年について見てみると、散剤12,689,300gであり、約84.6万人分となる。
すなわち、請求人商品は、毎年80万人前後もの多数の人に処分可能な数量が販売されているのであり、この数量からも、請求人商品(引用商標)が取引者、需要者の間で広く知られていることが理解できる。
ウ 次に、請求人商品が継続して広く製造販売されていることを示す証拠として、「ビオラクチス 散」及び「ビオラクチス カプセル」のパンフレット(甲第22号証の1?3)、「ヤクルト本社医薬品事業 製品要覧」(2005?2009)(甲第23号証の1?5)、「添付文書集」(2005?2009)(甲第24号証の1?5)を提出する。これらよりは、請求人が、請求人商品を継続して販売していることが理解できる。
エ 以上の各種資料、統計等から明らかなように、引用商標は、請求人の乳酸菌製剤(請求人商品)の商標として、その取引者、需要者に広く知られているところとなっていることは間違いない。
(2)商標の紛らわしさ
前記1で述べたとおり、引用商標と本件商標は、称呼が非常に近似し、外観も相紛らわしいことから混同を生ずるおそれがある点は十分に理解される。
(3)商品「薬剤」の特殊事情
本件商標の指定商品は、いずれも医薬品に関連する商品全般であるが、「薬剤」も含まれている。もし薬剤に本件商標が使用された場合には、引用商標との間に混同を生ずるおそれは非常に高いが、人の生命にかかわる薬剤という商品の特殊事情からも、そうした混同を生ずるおそれは未然に排除されてしかるべきである。
実際のところ、類似した名称の薬同士を取り違えることによる死亡事故が起きている(甲第25号証)。このような薬剤の取り違い事件は複数起こっており、「アマリール」×「アルマール」、「タキソール」×「タキソテール」、「ノルバスク」×「ノルバデックス」、「アロテック」×「アレロック」、「ウテメリン」×「メテナリン」などの取り違えが報告されている。このような取り違えのミスが、医師、看護師や薬剤師など、医薬品に精通しているはずの医療関係者の間で実際に起こっていることを考慮すると、本件商標が薬剤の名称として使用された場合、引用商標と混同を生ずる可能性は非常に高いといわざるを得ない。
医療現場において混乱が生ずるのは必定であり、例えば、これが同じ剤型の薬剤であったとしたら、医療関係者よりはるかに知識の乏しい患者や患者の家族が、実際の取引の現場で本件商標と引用商標を見誤る可能性はますます高くなる。
薬剤など人間の生命に影響のある商品については、安全性の確保、需要者保護の観点から、類似の範囲を広く確保する社会的な要請があるといえるのである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る「乳酸菌製剤」を表示するものとして需要者の間に広く知られた引用商標と、商標の相紛らわしさ、商品の特殊事情等にかんがみると、出所の混同を生ずるおそれがあるのは必定である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 むすび
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。
第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、「BIOACTYS」の欧文字よりなるから、これよりは「ビオアクティス(ビオアクチス)」、及び「バイオアクティス(バイオアクチス)」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと認められる。なお、「ティ」の音と「チ」の音とは、酷似する音であるため、以下の称呼の比較において、「ティ」の音は、「チ」と表す。
一方、引用商標1は、「ビオラクチス」の片仮名よりなるから、これよりは「ビオラクチス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと認められる。
引用商標2は、「BIOLACTIS」の欧文字よりなるから、これよりは「ビオラクチス」、「バイオラクチス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと認められる。
そこで、本件商標と引用商標1及び2の類否についてみるに、本件商標から生ずる「ビオアクチス」と引用商標1及び2から生ずる「ビオラクチス」は、第3音において「ア」と「ラ」の音の差異を有するが、後者の「ラ」(ra)が、前者の「ア」(a)を母音として帯同し、互いに音感において近似する音であり、他の5音を共通にするものであるから、これを一連に称呼するときは、互いに紛らわしいものと認められる。
同様に、本件商標から生ずる「バイオラクチス」の称呼と引用商標1及び2から生ずる「バイオアクチス」の称呼とは、称呼上類似する。
さらに、本件商標と引用商標1及び2とは、外観上、差異を有するものの、いずれも外観上の顕著な特徴を有するものではなく、観念においては、両者はいずれも特定の観念を生じない造語と認められるから、比較すべきもないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1及び2とは、いずれも称呼において類似するものであり、外観において相違し、観念において比較することができないものであるとしても、互いに相紛れるおそれがある類似の商標と認められる。
また、本件商標の指定商品中、「medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use.」は、引用商標1及び2の指定商品「薬剤」と同一または類似する商品であると認められるが、本件商標の上記商品以外の指定商品は、引用商標1及び2の指定商品と同一または類似する商品とは認められない。
したがって、本件商標は、その指定商品中、「medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use.」について、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
提出された甲各号証によれば、申立人は、1975年(昭和50年)1月より、引用商標1及び2と同一構成よりなる「ビオラクチス」「BIOLACTIS」の商標(以下、これらを「ビオラクチス商標」という。)を表示した乳酸菌製剤(請求人商品)の製造販売を開始し(甲第16号証)、現在まで継続して販売されているものであることは認められる。しかし、その売上高は、2001年度が約9839万円、2002年度が約10449万円、2003年度が約10602万円であり、2004年以降は、2009年まで約6500万円程度の金額で推移していることが認められ(甲第20号証の1?3、甲第21号証の1?8)、この売上高は、請求人の薬剤、医療用商品の売上高が、例えば、2008年が約352億3500万円であること(甲第21号証の8)や薬剤業界における各種薬剤の売上高から見ると、それほど多いものとはいえないし、販売数量については、販売したものがすべて処方されたと見ても2008年は約84.6万人分であり、通常、同一患者が継続して処方されることも多いことからすると、それほど多いものとはいえない。さらに、請求人商品のパンフレット(甲第17号証、甲第18号証、甲第22号証の1?3)や請求人の医薬品事業の製品要覧(甲第23号証の1?5)、商品添付用の添付文書集(甲第24号証の1?5)などが提出されているが、これらの頒布数などは不明であり、そのほか、雑誌等による広告宣伝に係る証拠の提出はない。
以上によれば、ビオラクチス商標は、本件商品に使用する請求人の商標として一定程度知られているといえるとしても、取引者、需要者の間に広く知られていたものとは認められない。
そうとすると、本件商標とビオラクチス商標が上記1のとおり類似性を有するものであるとしても、ビオラクチス商標は、それを使用する薬剤の分野においても需要者の間に広く知られているものではなく、本件商標の「medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use.」以外の指定商品は、医療に関係する商品であるとしても、薬剤とはその用途、需要者において異なるものであるから、本件商標をその指定商品中、「medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use.」以外の商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者をしてビオラクチス商標を想起させるとはいえないものであって、その商品が請求人または同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれのないものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「medicated bath preparations,chemical preparations for medical or pharmaceutical use.」については、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を無効にすべきものである。
しかしながら、本件商標は、上記以外の指定商品については、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-08-01 
結審通知日 2011-08-05 
審決日 2011-08-25 
審決分類 T 1 12・ 271- ZC (X05)
T 1 12・ 262- ZC (X05)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 瀧本 佐代子
大島 康浩
登録日 2008-10-29 
商標の称呼 バイオアクティス、ビオアクティス、アクティス 
代理人 小谷 武 
代理人 奥村 陽子 
代理人 木村 吉宏 

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