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審決分類 審判 全部無効 商4条1項14号 種苗法による登録名称と同一又は類似 無効としない X31
管理番号 1329186 
審判番号 無効2016-890009 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-02-12 
確定日 2017-05-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5643415号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5643415号(以下「本件商標」という。)は、「さくらももいちご」の文字を標準文字で表してなり、平成22年5月21日に登録出願、第31類「いちご」を指定商品として、平成25年12月17日登録査定、平成26年1月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その登録が商標法第4条第1項14号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
2 具体的理由
(1)請求人について
請求人は、本件審判請求に先立ち、本件商標について、既に異議申立てを行なっているところ(甲2)、当該登録異議の申立てについての審理が進んでおらず本件審判請求を行なった。また、請求人は、いちご品種「桜桃壱号(さくらももいちごう)」の育成者である(甲3)。
よって、請求人は、本件商標の登録の無効を請求する当事者適格を有する。
(2)いちご品種「桜桃壱号」について
いちご品種「桜桃壱号」は、請求人が品種改良により育成したいちごの新品種であり(甲3、以下「請求人品種」という。)、その名称及び称呼は「SAKURAMOMOICHIGO」(甲4)である。そして、その品種登録の出願日は、平成21年1月28日であり、種苗法第3条第2項の拡大先願の規定により、請求人品種は、当該出願時(平成21年1月28日)において公然と知られた品種に該当するに至ったものとみなされる。
なお、平成21年3月下旬頃より、請求人星野光輝が地元市場に桜桃壱号の果実を出荷する際には登録第5634509号商標を付し販売しているものであり(甲2、甲6)、また、桜桃壱号は、請求人がおって開発する予定である桜桃弐号、桜桃参号、・・・と続く一連の桜桃苺シリーズの最初の品種である。
(3)本件商標について
本件商標は、「サクラモモイチゴ」の称呼を生ずること及び桜と桃といった観念が生じることは明らかである。そして、苺の観念も生じるが、指定商品が「いちご」であるから、その要部は「さくらもも」の部分であるといえる。
一方、請求人品種は、「桜桃」の漢字と「壱号」の順番を表す漢字からなるものであり、登録されている読みから「サクラモモイチゴー」の称呼及び「桜と桃」といった観念を生ずる。
なお、海外にいちご品種を輸出する際のUPOV条約及び、国際栽培植物命名規約上の正式品種名称は「SAKURAMOMOICHIGO」となり、商標法第2条第3項2号により輸出の場合も商標の使用とみなされる。
してみれば、本件商標と請求人品種(品種登録第24423号)は、ともに「サクラモモ」、「サクラモモイチゴ(ー)」の称呼及び「桜と桃」といった観念を生ずることは明らかであるから、その称呼及び観念において同一又は類似である。加えて、本件商標の指定商品と請求人品種品の植物の種類はいちごであり、同一のものである。
また、品種名と同一又は類似の名称を商標登録によって保護することは、たとえ同一出願人であっても認められないのだから、他人であればなおさらである。
そして、登録された品種の名称が、普通名称化するというのは、UPOV条約に規定されている。
さらに、いちごの一種類として「桜桃壱号」が公知性を獲得し、普通名称化したのは、遅くとも請求人品種の登録出願時といえるから、本件商標の登録査定時には、いちごの一種類として「桜桃壱号」種が存在し、かつ、その品種名称である「桜桃壱号」は、公知であり、いちごの一種類を表す普通名称となっていたのであるから、商標法第4条第1項第14号に違反してなされたものであることは、明らかである。
したがって、両者の類似性は極めて高く、種苗法も商標法も先願主義によってなり、本件商標よりも、いちご品種「桜桃壱号」の方が出願は先である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第14号に該当するものである。
(4)他の条文との関係について
いちご品種「桜桃苺」は、本件商標の出願日以前の平成21年1月28日においては、公然と知られた品種に該当するに至っていたものであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第1号ないし第4号、同第6号、同法第4条第1項7号、同第10号、同第15号に該当するものであり、植物学上のいちご品種「桜桃壱号」の存在により、商標法第4条第1項第14号の他の条文の規定違反も導き出されるのであるから、当然本件商標の登録は無効なものとして取消されるべきものである。
さらに、本件審判請求を退けるためには、商標法各条項に当てはめて、その登録性を正当化しなければならないが、その行為自体が、条約違反であるから、特許庁は、請求人品種にかかる育成者権の保護の不履行(本件商標の登録維持)を正当化する根拠として商標法を用いることは許されない。

第2 被請求人の主張の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 被請求人の具体的主張
(1)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第14号に違反してなされたものと主張し、具体的には、種苗法上の「請求人品種」と類似すると述べる。
しかしながら、請求人の主張する請求人品種の品種登録を受けた日は、甲第3号証の2によれば、平成27年8月27日であるところ、本件商標の登録査定時においては請求人品種は登録されていないことになり、商標法第4条第1項第14号該当性の判断時は査定時が基準となるから、本件審判請求は理由がない。
また、請求人は種苗法と商標法とを混同し、両者の間で先後願が判断されるとの錯誤に立脚して本請求を行っているものと思われ、その前提において誤っている。さらに、商標法第4条第1項第14号により、植物新品種の名称を品種登録しつつ、これと同一又は類似の名称を商標登録によっても保護することは、たとえ同一出願人であっても認められないから、請求人らが請求人品種を登録した時点で、請求人らによる「桜桃苺」の商標登録は認められないこととなる。
(2)請求人が請求人品種の品種登録を申請した日(平成21年1月28日)、また、同年11月24日には、「桜桃苺」をロゴ化した登録第5634509号商標の登録出願も行っている(甲2の2)。一方、被請求人らが「さくらももいちご商品」の販売を開始したのは、それより前の平成20年である。
これらの事実から、請求人が、被請求人らの新製品「さくらももいちご商品」の存在を知った上で、これが「ももいちご」のみの名称では商標登録されていないことを奇貨として、これを冒認したものであることが強く推認される。事実、請求人らが「桃苺」のような被請求人らの商標と相紛らわしい商標登録出願を行う時点で「ももいちご商品」の存在を知っていたこと、及び先願主義下では早い者勝ちであることを理解した上でこれらの出願を行ったことは、請求人自身が認めている(乙6)。
(3)以上のとおり、本件審判請求は成り立たない。

第3 当審の判断
1 利害関係について
請求人は、本件商標はその登録が商標法第4条第1項第14号に該当することを理由として本件審判請求をしたものであるところ、上記条項は種苗法に係る規定であり、請求人が、本件商標と類似するとしている種苗法に係る品種登録第24423号の品種登録者であると主張していることからすると(甲3、甲4)、請求人は、上記条項を理由として本件商標の登録を無効にすることについて法律上の利害関係を何ら有しないものとはいえず、本件商標登録の無効の審判を請求する請求人適格を有するということができる。
2 商標法第4条第1項第14号について
商標法第4条第1項第14号は、「種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品・・・について使用するもの」は商標登録を受けることができないという、商標の登録阻却要件に関する規定であって、その要件に該当する商標は、商標登録を拒絶すべき旨を定めたものといえるところ、このような要件に該当するか否かの判断時は、商標法第4条第1項各号所定の商標登録を受けることができない商標にあたるかどうかの判断の基準時の例外を定めた同条第3項に、同条第1項第14号は含まれていないことからすると、同条第1項第14号に関しては、同条第3項の適用を受けることなく、当該商標登録出願の手続に係る行政処分時である査定時を基準として判断されるべきものである。
そうすると、本件商標の登録出願が商標法第4条第1項第14号に該当するものと判断されるのは、本件商標の登録査定時において、本件商標と同一又は類似する種苗法第18条第1項の規定による品種登録が存在し、本件商標の指定商品が当該品種登録の種苗又はこれと類似の商品に該当する場合である。
これを、請求人品種と本件商標についてみると、請求人品種「桜桃壱号」は、平成27年8月27日に種苗法第18条第1項の規定により品種登録されたものであるところ(甲3の2)、本件商標は、その商標登録原簿の記載によれば、平成25年12月17日に登録査定されたものと認められることから、請求人品種は、本件商標の登録査定時において、商標法第4条第1項第14号に規定する「種苗法第18条第1項の規定による品種登録」に該当しないものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第14号に定める要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第14号に該当するということはできないものである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、種苗法も商標法も先願主義によってなり、本件商標よりも、請求人品種の出願が先であり、いちごの種類として「桜桃壱号」が公知性を獲得し、普通名称化したのは、遅くとも請求人品種の登録出願時(平成21年1月28日)といえるから、本件商標の登録査定時には、いちごの種類として「桜桃壱号」が存在し、かつ、公知であり、いちごの種類を表す普通名称となっていたから、商標法第4条第1項第14号に違反してなされたものである旨主張する。
しかしながら、種苗法は、「新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与する」(種苗法第1条)ことを目的としているのに対して、商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」(商標法第1条)ことを目的としているものであるから、両者の目的は明らかに相違するものである。
そして、種苗法第22条において業として譲渡等するときの登録品種の名称の使用義務を規定していることから、登録品種の名称をその品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用する商標を商標登録の対象から除外し、当該名称についての特定の者に独占的使用権を生じることの防止を趣旨とする商標法第4条第1項第14号のほかに、商標法に種苗法にかかる規定はない。
そうすると、我が国の商標法において、種苗法にかかる請求人品種の登録出願を本件商標の先願と認めることはできない。また、上述のとおり、本件商標の登録出願が商標法第4条第1項第14号に該当するか否かの判断時期である、その登録査定時において、請求人品種は、種苗法第18条第1項の規定による品種登録がされていなかったことは明らかである。
(2)さらに、請求人は、請求人品種はいちご(種苗)の販売時に表示しなければならない品種名であること、請求人品種の流通名である「桜桃苺」が周知である等を述べて、本件商標が商標法第3条第1項第1号ないし第4号、同第6号、同法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号等に該当し、本件商標は当然無効であるとも主張する。
そこで、請求人は、本件審判請求の理由を、本件商標が商標法第4条第1項第14号に該当するとしているものであるが、本件商標は当然無効であるとして具体的な理由を挙げている、上記条項について、念のため、判断する。
品種登録された種苗の名称は、上述のとおり、商標法第4条第1項第14号に該当するものであり、一般に普通名称化すると考えられるので、種苗法による登録が消滅した後においても、同様に登録商標の対象から除外されると解されているところ、請求人品種は、その登録日である平成27年8月27日以降において、当該条項に該当するものであり、それ以前の本件商標の登録査定時において、請求人及び被請求人が提出した証拠により、本件商標が、いちごの普通名称、品質等を表すものとして一般に認識されていて識別力がないというべきであること、また、請求人品種又は「桜桃苺」が、商品の出所を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとする事情は見当たらないものである。
また、上述のとおり、種苗法と商標法の目的は明らかに相違するものであり、かつ、商標法第4条第1項第14号の趣旨に照らせば、請求人品種の存在により、本件商標の登録が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるというべき事情はないというべきである。
したがって、本件商標が、その登録査定時において、商標法第3条第1項第1号ないし第4号、同第6号、同法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号に該当するものとは認められない。
(3)よって、請求人の上記主張は、いずれも失当であり、採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第14号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-03-02 
結審通知日 2017-03-08 
審決日 2017-03-29 
出願番号 商願2010-40014(T2010-40014) 
審決分類 T 1 11・ 21- Y (X31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大渕 敏雄内田 直樹田崎 麻理恵 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 堀内 仁子
小林 裕子
登録日 2014-01-17 
登録番号 商標登録第5643415号(T5643415) 
商標の称呼 サクラモモイチゴ、サクラモモ 
代理人 豊栖 康弘 
代理人 豊栖 康司 

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