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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W12
管理番号 1328073 
異議申立番号 異議2016-900348 
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-31 
確定日 2017-05-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第5870333号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5870333号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5870333号商標(以下「本件商標」という。)は、「LANDMASTER」の文字を標準文字で表してなり、平成28年2月1日に登録出願、第12類「車軸(陸上の乗物用の機械要素),制動装置(陸上の乗物用の機械要素),その他の陸上の乗物用の機械要素,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品」並びに第1類、第6類及び第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年6月28日に登録査定、同年7月29日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の(1)ないし(10)に示すとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第1371800号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、昭和46年6月28日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同54年2月22日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成21年2月12日に、その指定商品を第12類「船舶並びにその部品及び附属品(「エアクッション艇」を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第1371801号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和46年6月28日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同54年2月22日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成21年2月12日に、その指定商品を第12類「船舶並びにその部品及び附属品(「エアクッション艇」を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(3)登録第4078003号商標(以下「引用商標3」という。)は、「LAND ROVER」の文字を横書きしてなり、平成8年5月10日に登録出願、第9類「配電用又は制御用の機械器具,電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具,電気磁気測定器,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,救命用具,電気通信機械器具,遊園地用機械器具,乗物の故障の警告用の三角標識,鉄道用信号機,事故防護用手袋,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,消防艇,消防車,防火被服,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,レコード,手動計算機,電気計算機」を指定商品として、同9年10月31日に設定登録され、その後、同19年7月31日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(4)登録第4085102号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成8年5月9日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,自動二輪車並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械器具」を指定商品として、同9年11月21日に設定登録され、その後、同19年9月4日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(5)登録第4085104号商標(以下「引用商標5」という。)は、「LAND ROVER」の文字を横書きしてなり、平成8年5月10日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,自動二輪車並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械器具」を指定商品として、同9年11月21日に設定登録され、その後、同19年9月4日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(6)登録第4263666号商標(以下「引用商標6」という。)は、「LAND ROVER」の文字を横書きしてなり、平成8年5月10日に登録出願、第22類「登山用又はキャンプ用のテント,ターポリン,雨覆い,天幕,日覆い,綱類」を指定商品として、同11年4月16日に設定登録され、その後、同21年1月27日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(7)登録第4675541号商標(以下「引用商標7」という。)は、「LAND ROVER」の文字を標準文字で表してなり、2001年6月22日に「域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)」においてした商標の登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成13年12月13日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品として、同15年5月23日に設定登録され、その後、同25年4月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(8)登録第4690660号商標(以下「引用商標8」という。)は、「LAND ROVER」の文字を横書きしてなり、平成8年5月10日に登録出願、第6類「金属製金具,金庫,金属製貯金箱,金属製包装用容器,金属製のネームプレート・標札・看板,自動車用金属製バッジ及びエンブレム,自動車用金属製管,金属製管継ぎ手,金属製フランジ」を指定商品として、同15年7月11日に設定登録され、その後、同25年4月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(9)登録第4738641号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成8年5月9日に登録出願、第6類「金属製金具,金庫,金属製貯金箱,金属製包装用容器,金属製のネームプレート・標札・看板,自動車用金属製バッジ及びエンブレム,自動車用金属製管,金属製管継ぎ手,金属製フランジ」を指定商品として、同16年1月9日に設定登録され、その後、同25年12月24日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(10)登録第5080366号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、平成19年1月9日に登録出願、第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,チャイルドシート,その他の自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同年9月28日に設定登録されたものである。
以下、上記引用商標1ないし引用商標10をまとめて「引用商標」という場合がある。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品中、第12類に属する全指定商品について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
(1)「Land Rover(ランド・ローバー)」の著名性について
ア 「Land Rover」(以下、本項「3」において、「ランド・ローバー」という。)は、英国のRover Co.(ローバー社)により、昭和23年(1948年)に最初に製造されたオフロード向け車両の名称であり(甲12)、当時、ローバー社のオフロード車両を専門とする部門で製造が開始されたものである。ランド・ローバーは、第二次世界大戦中に使用された米国のジープに倣って造られた四輪駆動車(4WD)であり、特に、最初に製造された同車は、農夫たちがその土地(land)をどこまでもくまなく進む(rove)することができる、廉価で頑丈な乗り物を意図して設計され、販売開始から1年弱で同社の乗用車の売上げを追い越すほどのヒット商品となった(甲13及び甲14)。
イ ランド・ローバーは、4WDといえば軍用車両が常識であった時代に、これを民生用として改良、製造されたものであって、その後、多用途の4WDとして、「Land Rover SERIES I」(ランド・ローバー・シリーズI)などが発売された(甲15)。特に、国際的な評価を得た数少ない英国人カー・デザイナーであるDavid Bacheによって設計された「Land Rover 88-inch Hard Top」(「88-inch」とは、ホイールベース長が88インチという意味である。)は、質実剛健の機能美の傑作といわれ、極めて高く評価されている(甲14)。
そして、「Land Rover」は、その当時から引用商標1、引用商標2又は引用商標4にあるように、「Land」の文字をやや左上に、「Rover」の文字をやや右下に、それぞれ配し、各文字が独立して看取されるような独特の図案化を施したエンブレムを長年にわたり採択してきており、取引者、需要者になじみ深いものとなっている。
ウ 現在、ランド・ローバーは、「Range Rover」(レンジ・ローバー)を筆頭に、6つのラインで構成されており、その販売単価は、日本円にして一千数百万円を下らず、4WDとしては異例の高級車として、取引者、需要者の間で認識されている。
平成25年(2013年)の世界販売台数は、348,338台であり、販売単位を考慮すると、その人気の高さを十分にうかがい知ることができる。
また、インターネット上でも、「ほんとにいいクルマでした。ランドといえばこのカラー。ディスカバリーといえばこの顔、この形でした。見かけによらずハイテクマシーンです!」といったように、申立人のランド・ローバーを単に「ランド」と略称しているウェブサイトが確認される(甲16)。
エ ランド・ローバーの我が国での周知性は、例えば、不服2001-7765に係る平成15年5月20日審決においても認定されている(甲17)。
オ 以上のとおり、ランド・ローバーは、我が国において、本件商標の出願時(平成28年(2016年)2月1日)には、四輪駆動乗用車の名称として、取引者及び需要者の間で広く知られた周知著名性を獲得していたものであり、その登録査定時である平成28年(2016年)6月28日はもちろんこと、現在も、その周知著名性は継続している。
なお、ローバー社は、ランド・ローバーが「シリーズIII」まで製造されていた昭和53年(1978年)に、ランド・ローバー部門を子会社として再組織(ランドローバー社)し、その後、ランド・ローバー社は、数度の変遷を経て経営母体が変わり、平成12年(2000年)にフォードモーター社の傘下に入り、さらに、ジャガーカーズリミテッドと経営統合して、申立人がこれを経営管理している。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 称呼について
本件商標は、その構成文字に相応して、「ランドマスター」の称呼を生じるものである。
他方、引用商標は、いずれも「LAND ROVER(Land Rover)」の文字からなる商標であり、商標全体として、「ランドローバー」の称呼を生じるものである。
そして、本件商標から生じる「ランドマスター」の称呼と引用商標から生じる「ランドローバー」の称呼とを比較すると、両称呼の差異は、後半部における「マスター」と「ローバー」にあるが、差異音である「マ」と「ラ」は、有声子音に母音「a」を結合してなる近似音であり、これに「ス」と「ー(長音)」という共に弱く発音される音が続き、さらに、「ター」と「バー」という共に破裂音であって母音「a」を伴う近似した音が続くことから、両称呼は、全体として、似通った音となる。
さらに、称呼の後半部は、その前半部に比べて、明確さを欠く発音をもって比較的弱く発音されるのが通例であることからすれば、両称呼における上記差異は、一層薄れがちとなるのに対し、両称呼において共通する「ランド」は、称呼の識別上重要な要素を占める前半部にあり、明瞭に強く発音されるものである。
したがって、上記「ランドマスター」の称呼と「ランドローバー」の称呼とをそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が極めて近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがある。
イ 観念について
引用商標に係る「LAND ROVER(Land Rover)」の文字からなる商標は、既述のとおり、申立人の業務に係る自動車として広く知られたランド・ローバーの周知著名性を体現するものであるから、「(著名ブランドとしての)ランド・ローバー」の観念を生じるものである。
また、引用商標1、引用商標2又は引用商標4において、「LAND」の文字が、外観上、特徴的な部分として看取される場合があることや、ランド・ローバーが単に「ランド」と略称される場合がある(甲16)ことからすれば、「LAND」(ランド)単体でランド・ローバーを想起させる場合も少なくない。
さらに、「LAND」は、申立人のランド・ローバーを除けば、我が国において、自動車に関連するものとして、一般に多く用いられている語ではない。
そうすると、自動車について、「LAND」の文字を顕著に有する本件商標に接する取引者、需要者は、当該「LAND」の文字部分が強く印象付けられるといえ、そこから「ランド・ローバー」を容易に想起すると考えられる。
したがって、本件商標は、「(著名ブランドとしての)ランド・ローバー」に関連する商品との観念を生じる場合があり、この点において、観念上、引用商標と類似する場合があるといわざるを得ない。
ウ 外観について
本件商標は、特に、引用商標1、引用商標2又は引用商標4等との関係において、その構成中の特徴的部分である「LAND」の文字を共通にするものであるから、両商標は、外観構成上、近似したものである。
エ 小括
上記アないしウによれば、本件商標と引用商標とは、全体の称呼において相紛らわしいものであるほか、特徴的部分である「LAND」の文字を共通にする点において、類似性の程度が高いというべきものである。
(3)引用商標の独創性の程度
引用商標は、ランド・ローバーが英国で最初に製造、販売された昭和23年(1948年)当時はもとより、我が国で最も出願が早い引用商標1の出願時(昭和46年6月28日)においても、ランド・ローバーを知る者にとっては周知、著名な商標であり、また、それを知らない者にとっても、「Land Rover」は、我が国でなじみの少ない外国語であったことは明らかである。
したがって、引用商標は、独創性にあふれた極めて斬新なものである。
(4)商品間の関連性並びに取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、いずれも乗り物に関連した商品であり、特に、「自動車並びにその部品及び附属品」については、同一又は類似の商品である。
そして、引用商標が周知著名性を獲得した商品は、正に四輪駆動乗用車を始めとする自動車に関連する商品である。
また、上記商品を製造、販売する企業は取引者として、当該商品を購入する顧客は需要者として、いずれも本件商標の指定商品に係る取引者及び需要者と極めて高い共通性を有する。
したがって、本件商標と引用商標とは、商品間の関連性並びに取引者及び需要者の共通性が極めて高いものである。
(5)本件商標の指定商品に係る需要者において普通に払われる注意力その他取引の実情
既述のとおり、「land(LAND)」は、我が国において、自動車に関連するものとして、一般に多く用いられている語ではないから、多くの者にとって、「land(LAND)」の文字を顕著に有する本件商標は、当該文字部分からランド・ローバーを容易に想起させるものである。
したがって、本件商標は、その指定商品(自動車関連商品)の分野の需要者において普通に払われる注意力及び取引の実情に照らし、出所混同を生じさせるおそれのあるものである。
(6)特許庁の審査基準
「LAND」の文字を顕著に有する本件商標は、ランド・ローバーを容易に想起させるものであり、商標法第4条第1項第15号に係る審査基準にいう「他人の著名な商標と他の文字又は図形を結合した商標」に当たるといえるから、その外観構成がまとまりよく一体に表されていると否とにかかわらず、申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標と判断されるべきである。
(7)まとめ
以上のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品であることを表す周知著名な商標であり、かかる周知著名性は、申立人らの長年の企業活動によって獲得したものである。
そして、本件商標と引用商標とは、高い類似性を有することに加え、引用商標が独創性を有すること、本件商標の指定商品が、引用商標が周知著名性を獲得した商品と同一であって、極めて強い関連性を有すること、さらに、特許庁の審査基準に鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が、あたかも申立人が取り扱う業務に係る商品であるかのように認識され、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、その指定商品中、第12類に属する全ての指定商品について、商標法第4条第1個第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである。

4 当審の判断
(1)「Land Rover」及び「ランドローバー」の語の著名性について
ア 申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)甲第12号証は、申立人の日本向けウェブサイトの写し(全5葉、2016年(平成28年)6月10日紙出力)であって、その1葉目の左上には、別掲3又は別掲4に示す商標と同様の構成からなる標章が表示されており、また、当該標章が付された自動車のフロントグリルと思しき画像が掲載されている。
そして、上記ウェブサイトには、専ら申立人の製造、販売に係る自動車の1車種である「レンジローバー(RANGE ROVER)」が、「1970年当時、レンジローバーは世界初のラグジュアリーSUVであり、以後45年にわたり業界をリードし続けてきました。史上最も期待感にあふれ洗練されたランドローバーとされる最新モデル。」といった記載とともに紹介されている。
(イ)甲第13号証及び甲第14号証は、それぞれ、「英和ブランド名辞典」(2011年(平成23年)8月31日、株式会社研究社発行)及び「英和商品名辞典」(1990年、株式会社研究社発行)の写しであって、これらの辞典には、「Land-Rover ランドローヴァー [ローバー]」の見出しの下、Jeepに似た、より大型の汎用四輪駆動乗用車であること、1948年(昭和23年)にもともとの英国のメーカーRover Co.によって製造された最初の同車は、農夫達がその土地(land)をどこまでもくまなく行く(rove)ことのできる、廉価で頑丈な乗り物を意図して設計されたこと、などの記載がある。
(ウ)甲第15号証は、「オートカー・ジャパン」という月刊誌の2014年10月号(2014年(平成26年)10月1日発行)の写しであって、「英国車の今が全て分かる-英国車大研究」の見出しに係る特集記事の一部として、「Land Rover」及び「ランドローバー」の表示があるほか、「JAGUAR LAND ROVER AUTOMOTIVE PLC」、「設立:2008年/本社:英国コヴェントリー」及び「2013年世界販売台数:348,338台(ランドローバー)」といった企業情報、「LAND ROVER SERIES I(ランドローバー・シリーズI)」に係る説明としての「ローバーから多用途4WDとして最初の『ランドローバー』が発売されたのは1948年。最終のシリーズIIIは1985年まで製造された。」の記載などとともに、「ランドローバー現行モデル」として、「FREELANDAER 2」、「RANGEROVER SPORT」、「RANGE ROVER EVOQUE」、「DISCOVERY」及び「RANGE ROVER」と称する車種の画像が掲載されている。
(エ)甲第16号証は、「みんカラ」と称する自動車に関するSNSサイトの写し(出力日不明)であって、2011年(平成23年)9月21日から2013年(平成25年)3月31日までの間に「ランドローバー ディスカバリー」と称する自動車を所有していた者による「愛車プロフィール」として、「ほんとにいいクルマでした。ランドといえばこのカラー。ディスカバリーといえばこの顔、この形でした。見かけによらずハイテクマシーンです!」の記載とともに、当該自動車の画像が掲載されている。
イ 上記アにおいて認定した事実によれば、本件申立てに係る「LAND ROVER(Land Rover)」の語又はその読みの片仮名表記「ランドローバー」の語は、1948年(昭和23年)に英国で発売され、1985年(昭和60年)まで製造された四輪駆動自動車の車種名として使用されたこと、また、近年においては、「RANGE ROVER」や「DISCOVERY」などといった車種名の自動車製造者の表示として使用されていることはうかがえるが、当該「LAND ROVER(Land Rover)」及び「ランドローバー」の語が、我が国において、具体的にいつから、どのような規模で、どのような方法により使用されているかは明らかでない。
また、申立人は、引用商標1(別掲1)、引用商標2(別掲2)及び引用商標4(別掲3)について、それらの標章からなるエンブレムは、長年にわたり採択しており、取引者、需要者になじみ深いものとなっている旨主張するが、申立人の提出に係る甲各号証においては、上記ア(ア)に係る申立人の日本向けウェブサイト(甲12)上に、別掲3又は別掲4に示す商標と同様の構成からなる標章の表示が見いだせるにすぎず、申立人の主張に係る長年にわたるエンブレムの使用の事実は明らかでないから、にわかにその主張を認めることはできない。
その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、「Land Rover」及び「ランドローバー」の語が、本件商標の登録出願時(平成28年2月1日)及び登録査定時(同年6月28日)において、我が国の取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足る事実は見いだせない。
したがって、「Land Rover」及び「ランドローバー」の語が、我が国において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に著名性を獲得していたとは認められない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「LANDMASTER」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、辞書類に載録されている既成の語ではなく、また、特定の意味合いを生じる語として知られているとも認められない。
また、上記文字は、同じ書体及び大きさをもって、等間隔に表されているため、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取されるものであり、さらに、その構成全体から生じると認められる「ランドマスター」の称呼も、よどみなく一連に称呼できるものである。
そうすると、本件商標は、これに接する者をして、特定の意味合いを想起させることのない一連一体の造語を表してなるものと看取されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、「ランドマスター」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1は、別掲1に示すとおり、二重線による略横長楕円形内に、中抜き文字で表された「LAND」及び「ROVER」の各文字を二段に配置(両文字は、「LAND」の文字中の「D」の文字と「ROVER」の文字中の「R」の文字とが概ね上下に位置するようにずらして配され、さらに、両文字のそれぞれ中ほどを横方向に貫通するかのように視認される、全体として「Z」の文字様の形態からなる図形が付加されている。)してなるところ、その構成態様によれば、引用商標1は、その構成中の「LAND」及び「ROVER」の各文字が一連のものとして看取され得るものといえる。
そして、上記(1)において述べたところによれば、「LAND」及び「ROVER」の文字からなる一連の語は、「英国のメーカーRover Co.によって1948年(昭和23年)に最初のものが製造された大型の汎用四輪駆動乗用車」といった意味を有する語として辞書類に掲載されているものの、我が国の取引者、需要者において、そのような意味を有する語として一般に知られているとまではいい難いものである。
そうすると、引用商標1は、図形(二重線による略横長楕円形)と「LAND」及び「ROVER」の文字からなる一連の語とを結合してなるものであり、その構成中の図形部分はもとより、その構成全体及びその構成中の文字部分についても、特定の意味合いを想起させることはないとみるのが相当である。
したがって、引用商標1は、「ランドローバー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2は、別掲2に示すとおり、黒色で表された「LAND」及び「ROVER」の各文字を二段に配置(両文字は、「LAND」の文字中の「D」の文字と「ROVER」の文字中の「R」の文字とが概ね上下に位置するようにずらして配されている。)し、さらに、当該「LAND」の文字の右側及び「ROVER」の文字の左側のそれぞれに配されたハイフン状の黒色の横短線を黒色の細斜線で接続してなる、全体として「Z」の文字様の形態からなる図形を付加してなるものであるところ、その構成態様によれば、引用商標2は、その構成中の「LAND」及び「ROVER」の各文字が一連のものとして看取され得るものといえる。
そして、「LAND」及び「ROVER」の文字からなる一連の語は、引用商標1における場合と同様、特定の意味合いを想起させることはないとみるのが相当である。
したがって、引用商標2は、「ランドローバー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(ウ)引用商標3、引用商標5、引用商標6及び引用商標8は、前記2の(3)、(5)、(6)及び(8)のとおり、いずれも「LAND ROVER」の文字を横書きしてなるものであり、また、引用商標7は、前記2(7)のとおり、「LAND ROVER」の文字を標準文字で表してなるところ、これらに共通する「LAND ROVER」の文字からなる一連の語は、引用商標1における場合と同様、特定の意味合いを想起させることはないとみるのが相当である。
したがって、引用商標3及び引用商標5ないし引用商標8は、「ランドローバー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(エ)引用商標4及び引用商標9は、いずれも別掲3に示すとおり、黒色の横長楕円形内に白抜き細線による横長楕円形を配し、その内側に白抜きで表された「LAND」及び「ROVER」の各文字を二段に配置(両文字は、「LAND」の文字中の「AND」の文字と「ROVER」の文字中の「ROV」の文字とが概ね上下に位置するようにずらして配されている。)し、さらに、当該「LAND」の文字の右側及び「ROVER」の文字の左側のそれぞれに白抜きで表されたくさび形の図形を付加してなるものであるところ、その構成態様によれば、引用商標4及び引用商標9は、その構成中の「LAND」及び「ROVER」の各文字が一連のものとして看取され得るものといえる。
そして、「LAND」及び「ROVER」の文字からなる一連の語は、引用商標1における場合と同様、特定の意味合いを想起させることはないとみるのが相当である。
したがって、引用商標4及び引用商標9は、「ランドローバー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(オ)引用商標10は、別掲4に示すとおり、輪郭部を白色の細線様としてなる黒色の横長楕円形内に白抜き細線による横長楕円形を配し、その内側に白抜きで表された「LAND」及び「ROVER」の各文字を二段に配置(両文字は、「LAND」の文字中の「AND」の文字と「ROVER」の文字中の「ROV」の文字とが概ね上下に位置するようにずらして配されている。)し、さらに、当該「LAND」の文字の右側及び「ROVER」の文字の左側のそれぞれに白抜きで表されたくさび形の図形を付加してなるものであるところ、その構成態様によれば、引用商標10は、その構成中の「LAND」及び「ROVER」の各文字が一連のものとして看取され得るものといえる。
そして、「LAND」及び「ROVER」の文字からなる一連の語は、引用商標1における場合と同様、特定の意味合いを想起させることはないとみるのが相当である。
したがって、引用商標10は、「ランドローバー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との対比
(ア)外観
本件商標は、上記アのとおり、「LANDMASTER」の文字を標準文字で表してなるのに対し、引用商標3及び引用商標5ないし引用商標8は、上記イ(ウ)のとおり、「LAND ROVER」の文字を横書きしてなる又は標準文字で表してなるところ、両商標は、「LAND」の文字は同じくするものの、これに続く「MASTER」の文字と「ROVER」の文字とにおいて顕著な差異を有するものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。
また、本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4、引用商標9及び引用商標10とを比較すると、後者においては、上記イの(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)のとおり、「LAND」及び「ROVER」の各文字が二段に配置されている上、「MASTER」の文字と「ROVER」の文字との間に顕著な差異があり、さらに、図形の有無という差異があることからすれば、両商標は、外観上、相紛れるおそれはない。
(イ)称呼
本件商標は、上記アのとおり、「ランドマスター」の称呼を生じるのに対し、引用商標は、上記イのとおり、「ランドローバー」の称呼を生じるところ、両称呼は、音構成の後半において、「マスター」と「ローバー」という明らかな差異があるから、称呼上、相紛れるおそれはない。
(ウ)観念
本件商標と引用商標とは、上記ア及びイのとおり、いずれも特定の観念を生じないものであって、観念において比較することができないものであるから、観念上、相紛れるおそれはない。
(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
「Land Rover」及び「ランドローバー」の語は、上記(1)において述べたとおり、本件商標の登録出願時(平成28年2月1日)及び登録査定時(同年6月28日)において、我が国の取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたとは認められないものである。
また、本件商標と「LAND ROVER」の文字からなる又は当該文字と実質的に同じつづりの文字を構成中に有してなる引用商標とは、上記(2)において述べたとおり、非類似の商標というべきものであり、十分に区別し得る別異の商標として認識されるとみるのが相当である。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、当該商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 (別掲)
1 引用商標1(登録第1371800号商標)


2 引用商標2(登録第1381801号商標)


3 引用商標4及び引用商標9(登録第4085102号商標及び登録第4738641号商標)


4 引用商標10(登録第5080366号商標)


異議決定日 2017-05-01 
出願番号 商願2016-10802(T2016-10802) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W12)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 松浦 裕紀子
田中 敬規
登録日 2016-07-29 
登録番号 商標登録第5870333号(T5870333) 
権利者 株式会社ランドマスター・ジャパン
商標の称呼 ランドマスター 
復代理人 右馬埜 大地 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 石塚 勝久 
代理人 田中 克郎 
復代理人 石田 昌彦 

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