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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 |
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管理番号 | 1328058 |
異議申立番号 | 異議2016-900370 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-11-25 |
確定日 | 2017-04-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5876394号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5876394号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5876394号商標(以下「本件商標」という。)は、「あんしやん」の平仮名を横書きしてなり、平成27年2月9日に登録出願、第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同28年8月3日に登録査定、同月26日に設定登録されたものである。 第2 使用標章 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由において引用する標章は、申立人の商品「焼酎」に使用する別掲に示すとおり「あんしゃん」の文字からなる使用標章1ないし使用標章3(以下、まとめて「使用標章」という。)である。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人及び申立人商品と使用標章について (1)申立人について 申立人は、福岡県筑後市に所在する法人であり、明治26年の創業以来、長きに渡り、焼酎の製造販売業を営んでいる(甲3)。 申立人は、本格麦焼酎のみならず、麦以外のにんじんやかぼちゃ等を使った焼酎や、地元の素材と果物を使った酒など、多数の商品を手掛けている(甲3、甲20)。 (2)申立人商品について 上申書(甲5、甲26)に記載のとおり、焼酎「あんしゃん」(以下「申立人商品」という。)は、昭和63年頃、当時地場最大手の老舗酒類問屋であった、福岡酒類販売株式会社と申立人とが共同開発したものである。以来、申立人が製造して、福岡酒類販売株式会社と共同して販売を行っていたが、平成26年に福岡酒類販売株式会社が倒産したことから(甲6)、現在は、申立人が単独で販売を行っている。 申立人商品については、昭和63年の販売開始から平成5年頃まで、集中的にテレビCM(甲7)を行い、そのうちの3年程度は1週間に30回程度のスポット広告を継続して行った。 また、併せて、テレビCMと同時期に大量の新聞広告を行い、年間20回程度の新聞広告掲載を継続して行った(甲8?甲18)。 平成2年頃より、八女酒販協同組合(福岡県八女市)の入り口には、使用標章2が掲示されている(甲19)。 上記のような積極的かつ大量な宣伝広告活動と、品質そのものの良さから、申立人商品は大変な人気を得ることに成功し、多いときには一升瓶に換算して、年間7万本もの商品を販売した実績がある。 申立人商品は、福岡国税局主催の鑑評会で第1回大賞を、その後も平成8年に優秀賞を受賞している(甲20)。 当該事実は、申立人商品の品質の高さを裏付けるものであり、申立人商品が周知・著名であることは明らかである。 (3)使用標章について 申立人は、申立人商品の販売開始以来、申立人商品に、使用標章を使用している(甲8?甲19、甲21、甲22)。 甲第23号証は、申立人商品のラベル印刷を依頼していた、株式会社増田信陽堂の得意先元帳の抜粋である。平成3年10月17日には、甲第22号証に係るラベルが13,100組も納品されている。 さらに、申立人商品は、積極的かつ大量な宣伝広告活動や、品質の高さから高い人気及び周知・著名性を得ている。 以上より、申立人商品の販売開始以来、当該商品に継続使用されている使用標章が、周知・著名性を獲得していることは明らかである。 ここで、商標「あんしやん」については、福岡酒類販売株式会社が昭和58年(1983年)5月13日に商標登録出願を行い、昭和60年(1985年)7月29日に商標登録第1793935号(以下「旧登録商標」という。)として登録され(甲24、甲25)、その後、更新が繰り返された。 申立人は、申立人商品の製造販売にあたり、旧登録商標について使用許諾を受け、独占的に使用していた。 その後、平成26年に福岡酒類販売株式会社が倒産したことに伴い、旧登録商標の更新手続きは行われることなく、平成27年(2015)7月29日に存続期間満了により消滅した(甲25)。 2 商標法第4条第1項第7号について 申立人商品と使用標章は、本件商標の登録出願日である平成27年2月9日時点で周知・著名性を獲得しており、使用標章には申立人の業務上の信用が蓄積していた。 本件商標権者は、申立人と同じく福岡県に所在する法人であり、また、福岡酒類販売株式会社の元経営者によって設立されたものである。よって、本件商標権者が、本件商標の登録出願時に、周知・著名商標であった使用標章の存在を知らなかったとは到底考え難い。 上記内容を総合的に勘案すると、本件商標の登録は、本件商標権者が、旧登録商標の権利が消滅したことを奇貨として、高度の信用が蓄積した申立人の使用標章の名声にただ乗り等する目的で、剽窃的に行ったものであることは明らかであり、このような行為は、社会の一般的道徳観念に反するものである。 以上のとおり、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標である。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 商標法第4条第1項第10号について (1)使用標章1と使用標章2は、いずれも「あんしゃん」を筆文字風書体で縦書きしてなるものであり、使用標章3は、「あんしゃん」を太字で横書きしてなるものである。 使用標章は、申立人商品に使用されており、周知・著名であって、取引者・需要者の間に広く認識されている。 (2)本件商標と使用標章との対比 ア 称呼について 本件商標と使用標章は、「あんしやん」及び「あんしゃん」の平仮名を書してなるものであり、これらより「アンシヤン」及び「アンシャン」の称呼を生じる。 そこで、本件商標と使用標章から生じる称呼を比較すると、いずれの称呼も5音からなり、相違点は、第4音の「ヤ」が直音か拗音かであるという点のみである。 よって、本件商標と使用標章は、称呼上、相紛らわしいことは明らかである。 イ 外観について 本件商標と使用標章とは、縦書きと横書きの違いや、書体の違いはあるものの、いずれも平仮名5文字、「あ」と「ん」と「し」と「や\ゃ」と「ん」とからなるものである。 ここで、「や」と「ゃ」の大きさの違いは、その他の構成文字の同一性の中に埋没してしまうほどの些細なものであり、看者の視覚に訴えるものではない。よって、本件商標と使用標章とは、外観上、相紛らわしいことは明らかである。 ウ 観念について 「あんしゃん」とは、「兄」を意味する福岡県筑後地方の方言である。よって、使用標章からは「筑後地方の方言で兄」の観念が生じる。 一方、本件商標は、すべて直音であるものの、それを一息に読めば「アンシャン」に酷似する称呼が生じるため、本件商標からは「筑後地方の方言で兄」の観念が生じ得る。 よって、本件商標と使用標章とは、観念上、相紛らわしいことは明らかである。 エ 小括 以上のとおり、使用標章は、周知・著名の標章である。 また、本件商標と使用標章とは、称呼・外観・観念のいずれにおいても相紛らわしい類似の商標である。 さらに、本件商標の指定商品は、前記第1のとおりであるから、申立人が使用標章を使用する商品「焼酎」と同一又は類似する。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号について 申立人は、昭和63年頃より使用標章を、申立人商品に使用しているところ、当該申立人商品は、申立人の宣伝広告に係る努力や、品質の良さから人気を獲得し、周知・著名となっている。これらのことは、申立人商品が、平成3年の福岡国税局主催の鑑評会で度々賞を受賞していることからも明らかである(甲20)。 したがって、本件指定商品の分野の取引者・需要者は、使用標章と類似する本件商標が、申立人商品と同一・類似する本件異議申立に係る指定商品に使用された場合には、申立人若しくは申立人と経済的又は組織的に何らか関係がある者の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 当審の判断 1 使用標章の周知性について 申立人提出の証拠によれば、申立人は、焼酎の製造・販売を行う酒造会社であり、同人のウェブサイト(甲3)に掲載された会社概要の「沿革」に、「1991年(平成3年) 鑑評会 大賞 あんしゃん」の記載があること、申立人商品の広告が掲載された新聞(甲8?甲18)の発行日が、昭和60年であること、申立人商品についての「賞状」(甲20)が、平成3年及び同8年のものであることからすれば、申立人商品は、昭和60年から平成8年頃にかけて、製造・販売されていたものといえる。 しかしながら、甲第22号証のラベルに係る取引書類(甲23)によれば、平成3年10月17日に、13,100組作成されたことを示すにすぎず、甲第26号証によれば、使用標章を表示した申立人商品に関する我が国における取引実積については、多いときには一升瓶に換算して、年間7万本の商品を販売した旨述べるのみであり、市場占有率(シェア)については、これを証する書面の提出はない。 そして、昭和63年頃から平成5年頃に集中的にTVCM、新聞広告等を行った旨主張しているが、使用標章を表示した申立人商品に係る広告を掲載した、西日本スポーツ新聞、醸界タイムス、西日本新聞等(甲8?甲18)は、昭和60年8月4日付け朝日新聞を始め、昭和60年12月14日付け西日本新聞リビング北九州までの僅か4ヶ月程の掲載にすぎない。 また、広告宣伝のDVD(甲7)には、使用標章を付した申立人商品を宣伝している4種類の広告(動画)であることは確認できるとしても、当該広告を行った時期、回数等は具体的に示されていない。 さらに、甲第4号証の写真は、申立人商品に使用標章1が表示されていること、甲第19号証の写真は、八女酒販協同組合の建物の入り口に使用標章2が表示されていること、甲第21号証の写真は、申立人の配送用トラックに使用標章3が表示されていることを示すにすぎない。 上記からすれば、使用標章を付した申立人商品が、昭和60年から平成8年頃までは販売されていたとしても、その後、本件商標の登録出願日までの約18年間に販売された事実は不明であって、その商品の広告宣伝は、昭和60年の僅か4ヶ月程の新聞広告の掲載にすぎない。 そうすると、提出された証拠からは、使用標章が本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。 2 本件商標と使用標章との類否について (1)本件商標は、「あんしやん」の文字を書してなるところ、これからは「アンシヤン」の称呼を生じ、該文字は辞書等に掲載されている語ではないことから、特定の意味合いを有しない一種の造語と認められ、特定の観念を生じないものである。 他方、使用標章は、「あんしゃん」の文字よりなるところ、これからは、「アンシャン」の称呼を生じるものである。 そして、申立人は、「あんしゃん」の文字は、福岡県筑後地方の方言で「兄」の意味を指称する語である旨主張するが、該語は必ずしも広く一般に親しまれた方言ともいえず、仮に、前記意味合いを把握、理解する者がいるにしても、それは地域的、限定的な者とみるのが自然である。 そうすると、使用標章は、多くの場合、特定の観念を有し得ない一種の造語として認識されるものとみるのが相当であるから、特定の観念を生じないものである。 (2)そこで、本件商標と使用標章とを対比すると、両商標は、構成する文字の大きさにおいて、「ん」及び「や」の文字部分に差異を有するとしても、構成文字を同じくするものであるから、外観において相紛れるおそれがある。 次に、称呼において、本件商標から生じる「アンシヤン」の称呼と使用標章から生じる「アンシャン」の称呼とは、比較的聴取し難い中間に位置する清音「シヤ」と拗音「シャ」の音の差異を有するにすぎないものであるから、称呼において相紛れるおそれがある。 また、観念においては、いずれも特定の観念を有するものとはいえないから、観念上比較することはできない。 したがって、本件商標と使用標章とは、外観及び称呼を同じくする類似の商標というべきである。 そして、本件登録異議の申立てに係る指定商品中の「焼酎」と使用標章に係る申立人商品は「焼酎」であり、同一の商品といえるものである。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 申立人は、「使用標章は、申立人の業務上の信用が蓄積していたものであり、商標権者は、旧登録商標の商標権者の代表者であって、本件商標の登録出願時に使用標章の存在を知らなかったとは到底考えられず、旧登録商標の権利が消滅したことを奇貨として、使用標章の名声にただ乗りする目的で、剽窃的に行ったものであるから、社会の一般道徳観念に反する」旨主張している。 しかしながら、上記1のとおり、使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであるから、使用標章の名声にただ乗りする目的があったとはいえない。 また、本件商標は、その構成自体が矯激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではないし、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者がこれをその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し又は社会の一般的道徳観念に反するものとすべき具体的証左は見当たらない。 そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきものではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第10号該当性について 上記2のとおり、本件商標と使用標章が類似するものであって、本件登録異議の申立てに係る指定商品中の「焼酎」と、使用標章が使用された「焼酎」が同一であるとしても、上記1のとおり、使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号該当性について 本件商標と使用標章とは、類似する商標であるとしても、上記1のとおり、使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして、需要者の間で広く認識されていたものと認められないものである。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者をして、使用標章を想起又は連想することはなく、該商品が申立人又は同人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 6 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2017-04-07 |
出願番号 | 商願2015-11516(T2015-11516) |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(W33)
T 1 651・ 22- Y (W33) T 1 651・ 271- Y (W33) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 内田 直樹、蛭川 一治 |
特許庁審判長 |
大森 健司 |
特許庁審判官 |
田中 亨子 原田 信彦 |
登録日 | 2016-08-26 |
登録番号 | 商標登録第5876394号(T5876394) |
権利者 | 神代酒販株式会社 |
商標の称呼 | アンシヤン |
代理人 | 市川 泰央 |
代理人 | 藤井 重男 |
代理人 | 松尾 憲一郎 |
代理人 | 山野 有希子 |