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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W42
審判 全部申立て  登録を維持 W42
管理番号 1327179 
異議申立番号 異議2016-685016 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-29 
確定日 2017-02-02 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1261534号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1261534号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件国際登録第1261534号商標(以下「本件商標」という。)は、「Linkedbook」の欧文字を書してなり、2015年(平成27年)1月30日に国際商標登録出願、第42類「Hosting websites that give users the ability to upload the book reviews;computer services,namely,creating virtual communities for users to participate in discussions and to engage in social and community networking;computer services,namely,hosting websites featuring technology that allows users to upload their online book reviews and to manage the social network accounts;file sharing services,namely,hosting websites featuring technology enabling users to upload and download electronic files.」を指定役務として、平成28年1月15日に登録査定、同年5月20日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下の2件である。
(1)申立人が提供するSNSサービスの名称として使用する商標は、「facebook」(「FACEBOOK」と表記される場合がある。)の文字からなるものである。
(2)米国の「LinkedIn Corporation」(申立人の主張によれば、同社は、「Microsoft社」に買収されたものであるが、以下「LinkedIn社」という。)が運営するビジネス特化型のSNSサービスの名称として使用する商標は、「LinkedIn」の文字からなるものである。
なお、これらを併せていうときは、以下「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
(1)本件商標について
本件商標は、欧文字「Linkedbook」を普通に用いられる書体にて横書きしたものであり、以下の第42類の役務を指定している。
「・・・すなわちユーザーが討論へ参加並びにソーシャルネットワーキング及びコミュニティネットワーキングへ参加するための仮想コミュニティの作成,コンピュータに関する役務の提供、すなわちユーザーがオンラインによる書評をアップロードできる及びソーシャルネットワークアカウントを管理できる技術を特徴とするウェブサイトのホスティング,・・・」(J-PlatPat和訳から抜粋)
(2)商標「facebook」が周知であることについて
申立人は「facebook」の名称でSNSサービスを提供している。
facebookは、インターネット上で提供されるコミュニティ型ウェブサイトであり、SNSサービスの雄として2004年のサービス開始後、急速にその利用者を増やし、2016年6月30日時点での月間利用者数は17億1,000万人に上っている。日本では2008年にサービス提供が開始され、2016年9月時点で2,600万人が当該サービスを利用するに至っている。なお、本件商標の国際登録日である平成27年(2015年)1月30日以前の情報としては、2014年11月時点で国内利用者数が2,400万人、2014年10月時点で海外における月間利用者数が13億5,000万人である(甲1?甲3)。
内閣府や経済産業省等、政府関係機関もfacebook公式アカウントを開設している等、商標「facebook」の著名性を示す証拠については事欠かない。
以上、商標「facebook」が第42類の役務との関係において、本件商標の国際登録日には既に日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。
(3)商標「LinkedIn」が周知であることについて
LinkedInは、米国のLinkedIn Corporationが運営するビジネス特化型のSNSサービスであり、自己紹介ページを通してユーザーがパートナー企業や取引先関係者等、様々なプロフェッショナルとつながりを構築できるところに特徴がある。
LinkedInは、2002年の創設後、順調に利用者を増やし、海外では2014年4月時点で3億人を突破、2015年10月時点では4億人の利用者を獲得するに至っている。日本では2015年2月時点で100万人以上の利用者があり、本件商標の国際登録日である平成27年(2015年)1月30日においても同程度の利用者があったことが推定される(甲4?甲6)。
最近ではパナソニック株式会社や楽天株式会社、三菱地所レジデンス株式会社などが採用活動にLinkedInを使用しており、特にパナソニック株式会社では北米の中途採用者の8割がLinkedIn経由となっている(甲7、甲8)。
また、2016年6月には米Microsoft社がLinkedInを262億ドル(約2.7兆円)で買収し、話題となった(甲9)。これは、Microsoft社のインターネットサービスにおいて唯一欠けていたSNSサービス事業を埋めるものであり、Microsoft社がLinkedInにそれだけの価値があることを認めていることの証左である。
このようにLinkedInは、ビジネス特化型のSNSサービスという独自領域を開拓した先駆者であり、プロフェッショナル・ネットワークの構築を希望する需要者(前述の企業採用担当者や海外取引の多い事業者、個人企業家や経営者等)の間では広く知られるに至っている。
このことは、LinkedInを代表的なSNSサービスの一つとして紹介する記事が多くあることから明らかである。また、甲第10号証は市場調査会社である英国のMillward Brown Optimor社(WPPグループ)が発行する「100/most valuable global brands 2014」であるが、その2頁目に、LinkedInがTwitter(短文投稿型のSNSサービス)と同時に世界ブランド・ランキングの100位以内に初登場したことが説明されている(具体的には78位。甲10)。当該ランキングによれば、2014年におけるLinkedInのブランド価値は12,407,000,000ドル(2014年の為替相場を1ドル=102円と仮定すれば、1,265,514,000,000円)となる。115頁目の説明によれば、「Technology」分野ではLinkedInのブランド価値は17位であり、当該順位はIntel(18位)やSony(19位)を上回っている。
なお、Millward Brown Optimor社が発行する「100/most valuable global brands」は同じく英国のInterbrand社による「Best Global Brands」、米国のForbes社による「The World’s Most Valuable Brands」と並び、ブランド価値評価に関する最も権威ある評価のひとつであり(甲11)、日本でもマスコミにおいて頻繁に取り上げられているランキングである(甲12)。
このように、Linkedlnは2014年の時点で世界で最も価値のあるブランドのトップ100に数えられるほどの著名性を獲得していたのであり、日本でも2015年1月30日には100万人以上のユーザーがあったと推定されることを考慮すれば、商標「LinkedIn」は第42類の役務との関係において、本件商標の国際登録日には日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。
(4)Linkedbookとfacebook及びLinkedlnとの関係性について
facebook及びLinkedInは本件商標「Linkedbook」及びその国際登録名義人であるCHO,Chong Arm氏(韓国、ソウル)とは何ら関係がない。しかし、本件商標「Linkedbook」を冠したSNSサービスに接した需要者は、当該Linkedbookがあたかもfacebook及びLinkedInのSNSサービスと何らかの経済的、組織的な関連性があるかの如く誤解し、混同を生ずるおそれがある。
本件商標「Linkedbook」は「つなぐ」を意味する英単語「link」の過去形「Linked」と、「本」を意味する英単語「book」の結合からなる商標であり、「link」や「book」がいずれも需要者にとり周知の英単語であることに照らせば、「Linkedbook」に接した需要者は、これが「linked」と「book」を組み合わせたものであることを容易に、かつ即座に理解する。
そして、facebookやLinkedInは日本及び外国における代表的なSNSサービスとしてその周知性、信頼性は極めて高い。
ここで、「facebook」を構成する「face」や「book」の語はSNSサービスと何ら関係性を有さず、したがって当該各語の採用には高い独創性があるといえる。すなわち「book」の語はそれ単独でも申立人のSNSサービスを直接、一義的に訴求し得るのである。このことは、facebook以外に「book」の語を一部に採用するSNSサービス事業者がいないことからも明らかである(例えば、Twitter、Google+、LINE、Instagram、mixi等)。
また、「LinkedIn」を構成する「linked」の語も同様に、他のSNSサービス事業者は当該語をその一部にも採用しておらず、したがって需要者が「linked」の語からLinkedInのSNSサービスを直接、一義的に想到する可能性は高い。「linked」は「つなぐ」を意味する英単語「link」の過去形でありSNSサービスとの関係ではその交流関係を暗示させる語ではあるが、SNSサービスでは一般に交流関係を「NETWORK/ネットワーク」と表現しており、かかる交流関係を「linked」と表現することは、日本の需要者にとっては一般的ではないというべきである。したがって、SNSサービスとの関係では「linked」の語は一定の独創性を有するのであり、それ単独でLinkedInのSNSサービスへの訴求力を有することは明白である。なお、LinkedInはそのサービス提供に当たりロゴ化された「Linkedin」を使用しており、当該ロゴにおいて「Linked」と「in(ロゴ)」は前後半に分断されている。これに鑑みれば、需要者は「Linked」と「in(ロゴ)」を個々に識別力のある要部と認識するのであり、したがって、前半部分「Linked」のみからLinkedInのSNSサービスを連想させる可能性は高いといえる。
そうしてみれば、本件商標「Linkedbook」に接した需要者がこれを「Linked」と「book」の結合商標と理解、認識し、その個々要素からLinkedIn及びfacebookのSNSサービスを連想し、結果、LinkedbookはあたかもLinkedIn CorporationとFacebook,Inc.が共同出資して開始した新たなSNSサービスであるかのごとく誤信する可能性は非常に高い。先に紹介したMicrosoft社によるLinkedInの買収にもみられるように、近時ネットワーク産業では企業間の合併、買収が盛んに行なわれており、代表的なSNSサービス提供事業者同士が手を結ぶ可能性も十分にあり得るのであって、需要者がそのように誤信しても何ら不思議はない。
(5)本件商標の指定役務について
本件商標の指定役務と、商標「FACEBOOK」及び「LinkedIn」に係る登録商標の指定役務は、いずれも第42類においてきわめて近似する役務を指定している。
(6)商標法第4条第1項第15号について
以上のとおり、商標「FACEBOOK」及び商標「LinkedIn」は第42類のSNSサービスとの関係において、本件商標の国際登録日(平成27年(2015年)1月30日)には既に日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されていた。また、本件商標「Linkedbook」に接した需要者が「Linkedbook」からfacebookやLinkedInのSNSサービスを連想し、これらSNSサービス事業者と経済的又は組織的に何らかの関係があるかの如き印象を抱く可能性は高いことから、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれは高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第7号について
本件商標「Linkedbook」が、著名性が極めて高く利用者の多いfacebook及びLinkedInの商標の一部を抜き出し、結合させたものであることは明らかである。また、その指定役務が第42類のSNSサービスであることも合わせ考えれば、Linkedbookがfacebook及びLinkedInの名声、顧客吸引力に便乗し、不正の利益を得る目的を有することは明らかである。
SNSサービスの多様化、成熟化に伴い、facebookやLinkedInのサービス内容が接近しつつある現状を揶揄して、両者を結合させたロゴ商標「Linkedbook」をインターネット上に掲載している記事もあり(甲13)、本件商標がこのようなロゴ態様にて実際にSNSサービスを開始すれば、facebookやLinkedInのSNSサービスとの関係で混乱が生じることは明らかである。申立人は、本件登録がそのような商標の不正使用の正当化の根拠とされることを危惧している。
商標の類否に関わらず、このような模倣の意図が明らかな登録を認めることは国際信義に反する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 本件商標と引用商標の類似性
(ア)本件商標について
本件商標は、「Linkedbook」の欧文字からなるところ、これは、一般によく知られている英語の「結びつけるもの、きずな、(鎖の)輪」等の意味を有する「link」(「プログレッシブ英和中辞典 第4版」株式会社小学館)の過去形「Linked」と、「本」の意味を有する「book」との結合からなる商標と理解されるものであり、これより生じると認められる「リンクドブック」の称呼は、よどみなく称呼され得るものである。
さらに、本件商標を構成する文字は、同書、同大にまとまりよく一体に表されており、かつ、該「Linked」と「book」の文字部分に軽重の差もないことからすれば、本件商標は、特定の意味合いを想起させない一体不可分の造語を表したものと理解されるというのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成文字に相応して「リンクドブック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標及びその周知性について
引用商標は、「facebook(FACEBOOK)」及び「LinkedIn」の欧文字からなるところ、これらは、「フェースブック」及び「リンクドイン」の称呼を生じるものであり、また、それぞれの文字構成は、同書、同大にまとまりよく一体に表されており、造語として理解されるものである。
そして、該「facebook(FACEBOOK)」については、申立人が提供するSNSサービスの名称(商標)として著名であることは、一般に知られているところである。
そうすれば、「facebook(FACEBOOK)」の商標からは、その構成文字に相応して「フェースブック」の称呼を生じ、「(SNSサービスの名称として著名な)facebook」の観念を生じるというのが相当である。
また、該「LinkedIn」については、提出された証拠において、LinkedIn社が提供するSNSサービスの名称の使用事実として、我が国におけるそのSNSサービスに係る収益(利用額)、利用者数などのサービスの提供及び広告の実績等が提出されておらず、その使用実績等が明らかでないから、これが同社のサービスの名称を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすれば、「LinkedIn」の商標からは、その構成文字に相応して「リンクドイン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
なお、該「facebook(FACEBOOK)」及び「LinkedIn」がそれぞれ「book」及び「Linked」と略称され、それのみで周知性を有しているとの事情もその証拠からは見あたらない。
(ウ)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、それぞれ前記(ア)及び(イ)のとおりの構成よりなるものであって、両者は、外観上、明らかに相違するものである。
称呼においては、本件商標は、「リンクドブック」の称呼を生じるのに対し、引用商標は、「フェースブック」及び「リンクドイン」の称呼を生じるものであるから、両者は、一部分の音が共通であるとしても、全体を構成する音の配列や相違音によって、称呼上、明確に聴別されるものである。
観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標である「facebook(FACEBOOK)」の商標からは、「(SNSサービスの名称として著名な)facebook」の観念を生じ、また、「LinkedIn」の商標からは、特定の観念を生じないものであるから、両商標は、観念上、比較することができないものであって相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに相紛れるおそれのないものであるから、両商標は、非類似の別異の商標というべきである。
イ 出所の混同について
上記アのとおり、申立人の使用に係る「facebook」の商標が本件商標の国際登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者に広く認識されていたとしても、「LinkedIn」の商標は我が国の需要者に広く認識されておらず、かつ、本件商標と引用商標とはその構成文字によって明らかに別異のものとして認識、把握されるものである。
そして、「facebook(FACEBOOK)」及び「LinkedIn」がそれぞれ「book」及び「Linked」として周知性を有していないことからすれば、本件商標の構成中、これらの文字部分に着目し、申立人及びLinkedIn社(以下「申立人等」という。)を連想することはないといえるから、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、該役務が申立人等又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
上記アのとおり、本件商標と引用商標とは明らかに別異のものであるから、たとえ、申立人の使用に係る「facebook」の商標が、我が国において、需要者に広く認識されていたものであるとしても、「book」のみの周知性は認められず、「LinkedIn」の商標については、その構成中の「Linked」の文字も含めて周知性は認められないものであるから、本件商標を商標権者が使用することがこれらに化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りしたものとはいえず、かつ、引用商標の信用にフリーライドしようとするものであるとする証左はないから、社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものともいえず、本件商標は、不正の目的をもって出願されたものとはいうことができない。
そうとすれば、本件商標について商標権者がその使用をしても、取引秩序を乱すものとはいえず、国際信義に反するものでもないから、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-01-30 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W42)
T 1 651・ 22- Y (W42)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦崎 直之 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 中束 としえ
井出 英一郎
登録日 2015-01-30 
権利者 CHO, Chong Arm
商標の称呼 リンクトブック、リンクドブック 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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