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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W2035 審判 一部申立て 登録を維持 W2035 審判 一部申立て 登録を維持 W2035 |
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管理番号 | 1325073 |
異議申立番号 | 異議2016-900219 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-05 |
確定日 | 2017-01-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5854949号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5854949号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5854949号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成27年8月31日に登録出願され、第20類「家具」及び第35類「家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む、第11類、第16類、第20類、第21類、第24類及び第35類に属する別掲2に示す商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同28年4月22日に登録査定、同年6月3日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由として引用する登録第5483345号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成23年9月28日に登録出願され、第20類「ソファ」を指定商品として、同24年3月15日に登録査定、同年3月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第20類「家具」及び第35類「家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。 1 本件商標について 本件商標は、円形の線枠の中に、同じ太さの線で、2本の水平線、3本の垂直線及び1本の斜線を漢字「匠」を模するように配した図形のみからなる。 本件商標は、その使用者(権利者)が「匠大塚株式会社」であることから、当該標章が漢字「匠」をデザイン化したものであることは、需要者において明らかである。 2 引用商標について 引用商標は、上部に円形図形を、下部に細ゴシック体様の欧文字列「TAKUMI SOFA」を配した図形・文字標章商標である。上部の円形図形は、黒色の背景円の内部に、白色の、同一太さの3本の水平線、3本の垂直線及び1本の斜線が漢字「匠」を模するように配されてなる。 こちらも、下段の文字列「TAKUMI SOFA」中の「TAKUMI」の部分より、当該図形が漢字「匠」をデザイン化したものであることは、需要者において明らかである。 3 商標法第4条第1項第11号該当性 (1)引用商標の特徴部分 引用商標は、下部に「TAKUMI SOFA」なる文字列を有するものの、上部の図形は該文字列とは完全に分離されており、それのみで独立して看取され得る。 そして、下段の文字列「TAKUMI SOFA」のうち、前半の「TAKUMI」は、その指定商品との関連より、本件商標及び引用商標の指定商品の需要者には、「匠」なる観念を強く想起させる。上段の図形は、正にその「匠」の漢字を水平・垂直・斜めの単純な線でデザイン化したものであり、下段の文字列中「SOFA」の部分が指定商品との関係で識別力がほとんど無いことから、引用商標を看取した需要者は、引用商標中の上段の図形部分を主として記憶に留める。 (2)本件商標と引用商標の構成 引用商標の上部の図形は、前記の通り、黒色の背景円の内部に白色の水平線3本・垂直線3本・斜線1本が配されてなるものであるが、その白黒を反転した場合には、本件商標と同じく、円形の線枠の中に同一太さの線で水平線3本・垂直線3本・斜線1本が配された図形となる(甲3)。 逆に、本件商標の白黒を反転した場合にも、引用商標の図形部分とほぼ同様の図形となる(甲4)。実際、本件商標の権利者は、本件商標をそのように反転した形態で使用している(甲5)。 (3)本件商標と引用商標の対比 甲第3号証を見ると明らかな通り、本件商標と引用商標は、その標章において極めて類似している。すなわち、共に「匠」の漢字1文字を水平線、垂直線、斜線で単純化し、円形枠の中に配したものである。当然ながら、共に漢字「匠」を模するものであるため、水平線、垂直線、斜線の数及び配置はほぼ同様である。それらの線の太さも両者ほぼ同じとなっている。 当然ながら、独立法人工業所有権情報・研修館による特許情報プラットフォームの商標出願・登録情報において本件商標と引用商標に付与された図形等分類コードはほぼ同じとなっている。 なお、本件商標には下の水平線が存在しないが、離隔観察する需要者にとっては、そのような微差はほとんど認識されることなく、記憶に留められることはない。 (4)結論 このように、本件商標と引用商標は外観において類似している上、その観念は共に「匠」であり、称呼も「タクミ」となることから、本件商標と引用商標は類似の商標と言わざるを得ない。 そして、本件商標と引用商標の指定商品は同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。 4 取引の実情 申立人は、現在、引用商標を使用した店舗を京都・大阪・東京(南青山)で展開している(甲6?8)。これらの店舗では、国内でも珍しいオーダーメイドタイプのソファを取り扱っており、平成24年には、女性雑誌「STORY9月号」(光文社刊行)で「匠ソファショップ 大阪店」が紹介され(甲9)、以降、日本全国の顧客から商品の注文を受けている。したがって、現時点で、引用商標はソファのブランドとして一般需要者間に確立した評価を得ている。 申立人は今後も日本各地への店舗展開を進めていく予定であるが、本件商標が公に発表された平成28年4月20日以降、申立人の顧客からは、本件商標が引用商標に「似ている」との指摘が相次いでいる。 このような取引の実情を考慮するならば、前記本件商標と引用商標とが類似するとの判断はなおさら強いものとなる。 第4 当審の判断 申立人は、本件商標が、その指定商品及び指定役務中、第20類「家具」及び第35類「家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたと主張しているので、以下、本件商標と引用商標の類否について検討する。 1 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、円輪郭内の右側部分に、二本の線からなる左上部を頂点とする直角及び鈍角の図形を該円輪郭に接するように配置し(直角及び鈍角の図形は、右上部の円輪郭上で接している)、該鈍角図形内に、T字図形を2点を該円輪郭に接するように配置してなるものである。 このような構成からなる本件商標は、全体として一種の幾何図形と認識されるものと認められ、特定の文字を想起、認識させる構成とはいえず、また、その円輪郭の内部の図形も特定の文字を想起、認識させる構成ということはできないというべきである。 また、本件商標が、仮に漢字の「匠」をデザイン化されたものであるとしても、本件商標は、「匠」の漢字を構成する「はこがまえ」の下線部分を欠いているばかりでなく、その変形の程度は、漢字「匠」の基本的構成を脱した態様であるから、本件商標は、その構成から漢字の「匠」を連想、想起させることはなく、「タクミ」の称呼及び「匠」の観念が生じることはないというべきである。 してみれば、本件商標は、特定の称呼及び観念を生じることはなく、本件商標は専らその外観が呈する印象、態様をもって取引に資されるというべきである。 2 引用商標について 引用商標は、別掲3のとおり、上段部分に、黒塗りの円図形内に、白線で2本の平行線及び該平行線と交差するように1本の垂直線を左側に配置し、該平行線及び垂直線内に、右上がりの1本の斜線と短い1本の平行線を円輪郭部に接するように配置し、2本の垂直線を短い平行線と下部の長い平行線の間に配置した図形(以下「図形部分」という。)を表し、下段部分に、「TAKUMI SOFA」の欧文字を横書きしてなる(以下「文字部分」という。)ものであり、引用商標の図形部分と文字部分とは、これを一体のものとして把握すべき特段の事情は認められないから、それぞれの部分が独立して看取されるといえるものである。 そして、上段の図形部分は、取引者、需要者により上述の態様からなる一種の幾何図形として看取されるにとどまり、該図形部分から特定の称呼及び観念を生じることはないというのが相当である。 また、下段部分の「TAKUMI SOFA」の欧文字についてみるに、その構成中、「SOFA」の文字は、引用商標の指定商品である「ソファ」の英語表記であって、自他商品識別標識としての機能が弱いものであることから、下段の欧文字部分からは「タクミソファ」ないし「タクミ」の称呼が生じるものである。そして、「TAKUMI」の欧文字は、親しまれた外国語とはいえず、また、この欧文字に照応する「たくみ」の文字は、広辞苑第六版によれば、「たくむこと。かんがえ。てだて。くわだて。たくらみ。計略。」、「手先または器械で物を造る仕事。また、それを業とする人。細工師。特に、木工。こだくみ。」、「しごと。しわざ。また、『芸術』『技術』の雅語的表現。」、「てぎわのよいこと。できのよいこと。上手。技巧。」等の複数の意味を有することから、「TAKUMI」の欧文字からは、その観念を特定することはできず、引用商標中の下段部分は、特定の観念を生じるということはできないというべきである。 3 本件商標と引用商標との類否について (1)本件商標は、上記1のとおりの構成からなり、特定の称呼及び観念は生じないものである。 引用商標は、上記2のとおりの構成からなり、その構成中の文字部分から、「タクミソファ」及び「タクミ」の称呼が生じるものであるが、特定の観念は生じないものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、その構成において図形部分の構成の差異及び文字部分の有無の差異を有することから、外観上、明かに区別し得るものであり、称呼及び観念においても類似するとすべき点はないものである。 (2)次に、本件商標と引用商標中の図形部分について検討するに、本件商標と引用商標中の図形部分とは共に、特定の称呼及び観念は生じないことから、比較することはできない。 その外観については、本件商標は、上記1のとおり、円輪郭内の右側部分に、二本の線からなる左上部を頂点とする直角及び鈍角の図形を該円輪郭に接するように配置し(直角及び鈍角の図形は、右上部の円輪郭上で接している)、該鈍角図形内に、T字図形を2点を該円輪郭に接するように配置してなるものであり、その構成上、右側下部に重心を有する印象を呈するものである。 これに対して、引用商標中の図形部分は、上記2のとおり、黒塗りの円図形内に、白線で2本の平行線及び該平行線と交差するように1本の垂直線を左側に配置し、該平行線及び垂直線内に、右上がりの1本の斜線と短い1本の平行線を円輪郭部に接するように配置し、2本の垂直線を短い平行線と下部の長い平行線の間に配置してなるものであり、黒塗りの円図形の内部の図形は、円図形の中央部分に配置されていることで、左右上下のバランスにおいて安定した印象を呈するものである。 そして、本件商標と引用商標の図形部分の各背景は、本件商標が白抜きの円輪郭であるのに対し、引用商標の図形部分が黒塗りの円図形であることから、この点においても、両者は、互いに異なる印象を与えるものである。 そうすると、本件商標と引用商標の図形部分とは、称呼及び観念において比較することができず、外観において顕著な差異を有するものといわざるを得ず、両者を離隔的に観察しても、互いに紛らわしいということはできないというのが相当である。 (3)してみれば、本件商標と引用商標とは称呼及び観念において類似するとはいえず、また、外観においても類似しないから、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、両者は類似する商標ということはできない。 4 申立人の主張 (1)申立人は、本件商標と引用商標の図形部分の白と黒とを互いに反転させた図形を示して(甲3、甲4)、両者の類否について述べている。 しかしながら、商標登録異議申立制度は、登録出願に係る商標について、商標法所定の登録要件により商標登録を許容するか否かについてなされた商標登録出願の審査(商標法第15条)の適否を審理し、ひいては商標登録処分の瑕疵を是正するためのものであるから、その申立ての審理の対象となる登録商標は、登録出願に係る商標、すなわち、登録出願の願書に記載した商標に基づいて定められるべきである。そして、登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならないと規定されている(商標法第27条第1項)。 そうすると、本件商標及び引用商標が、それぞれ、別掲1及び別掲3のとおりの構成のものとして願書に記載されている以上、それらをもって、本件商標と引用商標の類否について判断を行うべきであるから、申立人の主張は、これを採用することはできない。 (2)申立人は、顧客からの両商標が「似ている」との指摘がある旨を述べ、これを取引の実情として考慮すべきと主張しているが、両商標が類似しない商標であることは上記3のとおりである。 5 小括 したがって、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、申立てに係る第20類「家具」及び第35類「家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 6 まとめ 以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、申立てに係る第20類「家具」及び第35類「家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当するとは認められないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標)![]() 別掲2(本件商標に係る指定商品及び指定役務) 第11類「電球類及び照明用器具」 第16類「絵画,掛け軸,書画,絵画印刷物,印刷物,文房具類,写真,写真立て」 第20類「家具,屋内用ブラインド,すだれ,装飾用ビーズカーテン,日よけ,つい立て,びょうぶ,ベンチ,額縁,クッション,座布団,まくら,マットレス,帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。)」 第21類「陶器製食器,食器類,陶器製置物,陶器製花瓶,花瓶,水盤」 第24類「カーテン,カーテン用織物,織物(「畳べり地」を除く。),布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,シャワーカーテン」 第35類「電球類及び照明用器具の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,絵画及び掛け軸の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,陶器製の置物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,陶器製の食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,陶器製の花器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,カーテンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 別掲3(引用商標) ![]() |
異議決定日 | 2017-01-16 |
出願番号 | 商願2015-83778(T2015-83778) |
審決分類 |
T
1
652・
263-
Y
(W2035)
T 1 652・ 262- Y (W2035) T 1 652・ 261- Y (W2035) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田崎 麻理恵 |
特許庁審判長 |
今田 三男 |
特許庁審判官 |
藤田 和美 田中 幸一 |
登録日 | 2016-06-03 |
登録番号 | 商標登録第5854949号(T5854949) |
権利者 | 匠大塚株式会社 |
商標の称呼 | タクミ、ショー |
代理人 | 特許業務法人京都国際特許事務所 |