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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W07
審判 全部申立て  登録を維持 W07
審判 全部申立て  登録を維持 W07
管理番号 1325069 
異議申立番号 異議2016-900184 
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-13 
確定日 2017-02-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第5837374号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5837374号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5837374号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成27年10月9日に登録出願され,第7類「動力付き手持ちドライバー」を指定商品として,同28年2月23日に登録査定,同年4月8日に設定登録されたものである。

第2 引用標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する標章は,別掲2のとおりの構成からなる標章(以下「引用標章1」という。)及び「007」の数字からなる標章(以下「引用標章2」という。)である。
以下,上記の引用標章1及び引用標章2をまとめて「引用標章」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同第43条の2第1号によって商標登録が取り消されるべきものである旨申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第37号証を提出した。
1 引用標章の著名性について
「007」は,スパイ小説家のイアン・フレミングによる長編「カジノ-ロワイヤル」の中で生み出された主人公であるイギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンドのコード名である(甲2)。このジェームズ・ボンドを主人公とした小説はシリーズ化され多数の作品が出版されている(甲3)。
また,当該小説シリーズが1962年に映画化されたのを契機として,ジェームズ・ボンドを主人公とした映画がこの54年間に24作品制作されている。これらの映画シリーズは世界中で公開され,それらすべての作品が極めて高い興行成績を残している(甲4,甲5)。
これらの一連の映画作品は,我が国においては,「007」の文字を含んだ邦題のもとで上映されている(甲4)。このため,この映画シリーズが「007シリーズ」として我が国において広く一般に愛好され人気を博していることは事実である。
「007シリーズ」の新作が公開される度に,多くの雑誌では「007シリーズ」の特集が組まれ,映画のプロモーションのために試写会をはじめとする様々なイベントが開催される。イベント会場等では「007」の文字とピストルをシルエット化した図形からなる標章が使用されることが多いが,雑誌記事などでは単に「007」とのみ記載されることもあり,「007」のみであっても,充分に一連の映画シリーズをただちに想起する程に著名なものとなっている(甲7ないし甲17)。
したがって,「007」は,遅くとも本件商標の出願時(2015年(平成27年)10月9日)において,これに接する者が,一連の映画シリーズをただちに想起する程に著名なものとなっていたこと,また現在においても引き続き著名なものである。
申立人は米国のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー社(以下「MGM社」という。)とともに前記一連の映画作品の著作権を共同所有しており,この映画に関する世界的な商品化権について単独で管理をしている企業である(甲20)。
申立人は日本を含め世界で「007」に関連する商標を登録し,「007」に表象された業務上の信用の維持に努めている(甲21)。その結果,「007」は著名性及び多大な顧客吸引力を形成した。
映画「007シリーズ」は,54年にわたり24作品が公開されているが,これは2?3年に一度は作品が継続的に公開されていることを意味する。その間,断続的ではあるが新作が公開されるたびに様々な企業とのタイアップキャンペーンが連綿と長期間にわたり実施されてきたことになる。すなわち,世界的に著名である「007」の名称及び標章は,長期間の使用により,強い顧客吸引力を獲得した商業的価値の高いものである。
2 本件商標と引用標章並びに両商標の類比
本件商標は,「GUNDRIVE」という文字と,その下に描かれたやや斜めの楕円形で表された太字の「00」及び左向きの電動ドライバーを「7」に見立てた図形からなるが,後者からは「007」という文字を容易に看取することができる(甲1)。
本件商標の「GUNDRIVE」の部分は既成の言葉ではないが,同語は「GUN」と「DRIVE」に分離することができる。「GUN」には「ピストル」という意味があり,「DRIVE」には「勢いよく動かす,駆る」といった意味があることから,「GUNDRIVE」全体からは「ピストルを勢いよく動かす」といった意味合いが生ずる。電動ドライバーはスイッチの部分に指を当てて使用するが,電動ドライバーを構えた様はピストルを撃つ様に似ていることから(甲36),本件商標の「7」に見立てた電動ドライバーの図形は,「GUNDRIVE」という文字,「007」という文字を想起させるデザインと相俟って,「ピストル」を連想させるものといえる。
引用標章1は,「007」の文字とピストルをシルエット化した図形からなる。引用標章1は映画「007シリーズ」のDVDパッケージのみならず(甲37),映画「007シリーズ」の商品化事業に係る商品にも使用されている(甲9,甲22,甲24ないし甲35)。
本件商標においては,ピストルを意味する「GUN」を含む「GUNDRIVE」という文字と「007」という文字(「7」の部分からは「ピストル」が連想される)が同時に使用されており,両者の強い関連性から,映画「007シリーズ」を容易に想起させるものというべきである。したがって,本件商標全体からは映画「007シリーズ」の観念が生ずる。
本件商標「007」の部分と引用標章1を対比した場合,両商標からは「007」を看取できる。本件商標の「00」は「7」を表す電動ドライバーの図形(ピストルを連想させる)よりも小さく描かれているのに対し,引用標章1の「007」の文字は同じ大きさで描かれ,ピストルのシルエットは「7」の右側にある。両商標を仔細に比較すれば,両商標の外観が異なる点もあるが,人間の図形に関する記憶(ピストルのシルエットの位置など)は曖昧であることから,両商標の外観が類似するといわざるを得ない。また,両商標からはその構成文字に相応して「ゼロゼロセブン」という同一の称呼が生ずる。上述したように両商標からは映画「007シリーズ」の観念が生ずる。したがって,本件商標と引用標章1は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても同一又は類似の商標である。
本件商標と「007」の文字からなる引用標章2とは,外観はやや異なるが,称呼及び観念が同一又は類似の商標である。
3 商標法第4条第1項第15号が適用されるべき点について
本件商標は,申立人の著名な名称・標章である「007」の文字に加え,「GUNDRIVE」という文字及びピストルを連想させる電動ドライバーの図形などを含み,本件商標全体から映画「007シリーズ」を容易に想起させるものである(甲1)。
また,申立人は,様々な企業とタイアップを行っており,「007」の名称及び標章は,様々な商品に使用されている(甲9,甲22,甲24ないし甲35)から,本件商標が指定商品について使用されれば,これに接する取引者・需要者は,申立人の業務に商品であると誤認し,商品の出所について混同する蓋然性が極めて高い。
したがって,本件商標は,出願時より商標法第4条第1項第15号に該当するものであり,その登録は取り消されるべきである。
4 商標法第4条第1項第19号が適用されるべき点について
本件商標は,我が国をはじめ世界中で著名な「007」の文字を含んでおり,「007」と類似する商標である。
本件商標は,申立人の著名な名称・標章である「007」の文字に加え,「GUNDRIVE」という文字及びピストルを連想させる電動ドライバーの図形などを含むものであることから,商標権者が映画「007シリーズ」及び引用標章の存在を知らずに本件商標を採択したものとは考え難く,むしろ,本件商標は,映画「007シリーズ」及び引用標章を強く意識した上で,引用標章に化体した名声,信用,顧客吸引力にただ乗りして,その構成中に「007」を想起させる文字を採択し,不正の利益を得る目的,すなわち,不正の目的をもって出願されたとみるのが相当である。
したがって,本件商標は,出願時より商標法第4条第1項第19号に該当するものであり,その登録は取り消されるべきである。
5 商標法第4条第1項第7号が適用されるべき点について
本件商標は,我が国をはじめ世界中で著名である「007」を含むことから,映画「007シリーズ」を極めて強く意識し採択されたものであり,映画「007シリーズ」を容易に認識させるものである。
また,「007」の名称及び標章は映画「007シリーズ」を表すものとして著名であるだけでなく,強い顧客吸引力を獲得した非常に商業的価値の高いものである。このような名称及び標章と何らの関係を有しない者が,これを自己の商標の一部に採択使用することは,その著名が名称・標章に化体した名声や信用に故なく便乗するものといわざるを得ない。
かかる商標を登録することは,指定商品について商標権者にその独占的使用を認めることとなり,公正な取引秩序を乱し,ひいては国際信義にも反するものといわざるを得ない。本件商標は,公序良俗を害するおそれがある商標に該当すると判断すべきものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するものであり,その登録は取り消されるべきである。
6 むすび
以上の理由から,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当し商標登録を受けることができないものである。

第4 当審の判断
1 引用標章の著名性について
申立人の提出に係る証拠及び主張によれば,以下のとおり認められる。
(1)申立人は,米国のMGM社とともに,イギリスの作家イアン・フレミングのスパイ小説を原作とするジェームズ・ボンド映画の著作権を共同所有しており,同映画に関する世界的な商品化権については単独で管理している米国企業である(甲2,甲20)。
(2)上記イアン・フレミングの長編スパイ小説の主人公である「ジェームズ・ボンド」は,イギリス秘密情報部の工作官であり,「007」のコードネームを持ち,この「ジェームズ・ボンド」を主人公にした小説はシリーズ化され,多数の作品が出版されている(甲2,甲3)。
(3)「ジェームズ・ボンド」を主人公にした小説シリーズは,1962年に映画化されたのを契機に,この54年間に24作品の映画が制作され,これらの映画作品は世界中で公開され,それらすべての作品が高い興行成績を残している(甲5)。この一連の映画作品は,我が国においては,「007」の文字を含んだ邦題のもとで,「007シリーズ」として上映されている(甲4)。
(4)映画「007シリーズ」の新作の公開時や同映画シリーズ誕生50周年記念時には,映画関連雑誌,週刊誌,ファッション誌等において,「007シリーズ」の特集が組まれ,記事中に引用標章が使用されている(甲7ないし甲17)。
(5)映画「007シリーズ」では,毎回作品が公開されるたびに登場する商品が話題になり,大規模なタイアップキャンペーンが行われ,多数の企業が自社ブランド商品を劇中で登場させたり,自社ブランド商品とのタイアップ商品を販売したりしており,そのタイアップにおいては,タイアップキャンペーン及びタイアップ商品に引用標章が使用されている(甲9,甲16,甲22ないし甲35)。
(6)映画「007シリーズ」の各DVDパッケージには,引用標章1が使用されている(甲37)。
(7)以上のことを総合勘案すると,引用標章は,申立人が著作権をMGM社と共同所有する著名な映画「007シリーズ」を想起させ,かつ,申立人が単独で管理する同映画シリーズに関する商品化事業に係る商品を表示する標章として,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,日本国内における需要者の間に広く認識されていたものということができる。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,上段に「GUNDRIVE」の欧文字とその下段に,やや斜め縦長の楕円形で肉太の線で描かれた2つの円図形と何らかの器具をシルエットで表した図形(これらの図形を合わせて,以下「器具図形等」という。)を配した構成からなるところ,上段の「GUNDRIVE」の文字と下段の器具図形等とは,上段と下段に分けて表示してなるものであるから,視覚上容易に分離して看取されるものであり,また,これらを常に一体不可分のものとしてのみ捉えなければならない特段の事情は認められず,それぞれが独立して自他商品の識別標識として機能を果たすものと認められる。
そして,器具図形等からは,特定の称呼及び観念は生じないものであり,また,「GUNDRIVE」の文字は,「銃器,銃,砲,大砲」等の意味を有する「GUN」の欧文字と「運転する,追う,駆ける」等を意味する「DRIVE」の欧文字(いずれも,株式会社研究社 「研究社 新英和大辞典 第六版」)を結合したものと認識されるところ,両文字とも我が国でなじみのある英単語であるとしても,その全体の構成文字から,具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから,本件商標は,特定の意味合いを生じない一種の造語というべきである。
してみれば,本件商標は,その構成文字全体が一体不可分のものとして認識され,その構成文字に相応して,「ガンドライブ」の称呼のみを生じるというべきであり,また,特定の観念は生じないものといわなければならない。
(2)引用標章
引用標章1は,別掲2のとおり,「00」の数字と「7」の数字の一部をピストルの握り手(ハンドル)に見立て,これを合わせてピストルとおぼしきシルエット図形からなり,また,引用標章2は,「007」の文字からなるところ,引用標章は,上記1のとおり,申立人が著作権をMGM社と共同所有する著名な映画「007シリーズ」を想起させるものであるから,これよりは,「ゼロゼロセブン」の称呼及び映画「007シリーズ」の観念が生ずるものである。
(3)本件商標と引用標章の類否
本件商標と引用標章とを比較するに,外観においては,両者の構成は上記したとおりであるから,時と所を異にして離隔的に観察した場合においても,外観上,明確に区別し得るものである。
また,上記のとおり,本件商標からは,「ガンドライブ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものであるのに対し,引用標章からは,「ゼロゼロセブン」の称呼及び映画「007シリーズ」の観念が生ずるものであるから,本件商標と引用標章とは,称呼においては,全く語調,語感が異なり互いに聴き誤るおそれはなく,称呼上,明確に聴別することができるものであり,観念においては,上記のとおり,本件商標からは,特定の観念は生じず,引用標章からは,映画「007シリーズ」の観念が生ずるものであるから,両者は,観念上,相紛れるおそれがないものである。
そうすると,本件商標と引用標章とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
なお,申立人は,本件商標の構成中,やや斜めの楕円形で表された太字の「00」及び左向きの電動ドライバーを「7」に見立てた図形からは,「007」という文字を容易に看取することができる旨を主張しているが,器具図形等からは,上記(1)のとおり,特定の称呼及び観念は生じないものであり,本件商標は,前記第1のとおり,第7類「動力付き手持ちドライバー」を指定商品とするものであって,該商品は,スパイ小説やスパイ映画とは,生産部門,販売部門,用途,需要者層等が大きく異なり,何らの関連性をも有さないものである。
してみると,本件商標をその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者は,それから,直ちに引用標章ないしは申立人を連想,想起するようなことはなく,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人は,本件商標は我が国をはじめ世界中で著名な「007」の文字を含んでおり,不正の目的をもって出願されたものである旨を主張するが,引用標章が申立人に係る事業(映画)を表す標章として日本国内又は外国において需要者の間に広く認識されているものであるとしても,本件商標と引用標章とが,互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であることは,上記2(3)のとおりである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号所定の他の要件について検討するまでもなく,同号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は,引用標章と何らの関係を有しない者が,これを自己の商標の一部に採択使用することは,その著名な名称・標章に化体した名声や信用に故なく便乗するものであり,公正な取引秩序を乱し,ひいては国際信義にも反するものである旨を主張するが,本件商標と引用標章とは,上記のとおり,互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であるばかりでなく,申立人の提出に係る証拠を総合してみても,本件商標をその指定商品に使用することが,社会公共の利益,一般的道徳観念に反するものとはいえず,また,国際信義に反するものともいえない。
さらに,本件商標が,きょう激,卑わい若しくは差別的な文字又は図形からなるものといえないことは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用標章1)



異議決定日 2017-01-26 
出願番号 商願2015-102755(T2015-102755) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W07)
T 1 651・ 222- Y (W07)
T 1 651・ 271- Y (W07)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太野垣 卓箕輪 秀人 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 榎本 政実
平澤 芳行
登録日 2016-04-08 
登録番号 商標登録第5837374号(T5837374) 
権利者 株式会社タタコーポレーション
商標の称呼 ガンドライブゼロゼロセブン、ガンドライブゼロゼロシチ、ガンドライブゼロゼロナナ、ガンドライブダブルオーセブン、ガンドライブ 
代理人 熊谷 美和子 
代理人 山崎 行造 

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