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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W41
管理番号 1324970 
審判番号 取消2016-300053 
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-01-28 
確定日 2017-01-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5525753号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5525753号商標の指定商品及び指定役務中、第41類「全指定役務」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5525753号商標(以下「本件商標」という。)は、「EROICA」の欧文字を横書きしてなり、平成24年2月21日に登録出願、第41類「スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催」並びに第12類及び第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年10月5日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成28年2月10日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品又は指定役務中、第41類「全指定役務」(以下「取消請求役務」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 弁駁の理由及び口頭審理における陳述
(1)乙第3号証ないし乙第5号証について
ア 参加同意書に記載された商標は、「エロイカミーティング」であって、本件商標とは非類似の商標である。
商標「EROICA」と、商標「エロイカミーティング」は、以下の理由により、非類似である。
称呼について、商標「EROICA」の称呼は、「エロイカ」であり、他方、商標「エロイカミーティング」の称呼は、「エロイカミーティング」である。両者は、「ミーティング」の有無により、明らかな差異があり、称呼が全く異なる。
観念について、「EROICA」は、イタリア語で「英雄、英雄的」の意味を有し、ベートーベンが作曲した「英雄」の別名でもある。他方、「エロイカミーティング」は、「英雄の会議、英雄的ミーティング」といった観念が生ずる。両者は、「ミーティング」の有無により、明らかな差異があり、観念が全く異なる。
外観について、商標「EROICA」は、全て英文字で構成されているが、商標「エロイカミーティング」は、全て片仮名で構成されている。両者は、英文字と片仮名の相違と「ミーティング」の有無により、明らかな差異があり、外観が全く異なる。
以上から、商標「EROICA」と商標「エロイカミーティング」は、称呼、観念及び外観のいずれの点においても、類似するものではない。
イ 被請求人は、「ミーティング」には識別性がないことから、「エロイカミーティング」の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用である旨主張している。
「エロイカミーティング」は、社会通念上同一とみなされた商標「エロイカ」に、さらに、「ミーティング」を付加している。しかも、その態様は、「エロイカ」部分が、特段、目立つものではなく、一連一体の使用である。
本審判では、「EROICA」の使用が要証事実であるから、少なくとも、「エロイカミーティング」の「エロイカ」部分を「“ ”」(ダブルクォーテーションマーク)で囲って、「“エロイカ”ミーティング」とするなど、「登録商標」を意識した使用態様でなければ、社会通念上同一とみなされる商標ではない(同旨、知財高裁平成21年(行ケ)第10385号同22年6月28日判決参照)。
そして、登録商標と社会通念上同一とみなされた商標に対し、更にその商標と社会通念上同一とみなされた商標も社会通念上同一とみなすならば、登録商標から大きく離れた商標の使用までが登録商標の使用とされることになり、登録商標と社会通念上同一とみなされた商標にのみ使用を認める商標法第50条第1項の規定を逸脱すると考える。
以上より、仮に被請求人が主張するように「ミーティング」部分の識別性がなかったとしても、「エロイカミーティング」は、本件商標「EROICA」に類似する商標として処理すべき範囲であり、決して社会通念上同一の範囲と認められるべきものではない。
(2)乙第5号証の1について
イベント参加者が同意したのは「エロイカミーティング」であるのに、写真には、「エロイカミーティング」でなく、オレンジのような色彩で「eroica 2014 5/25」と表示されている。前記のとおり、「エロイカミーティング」と「eroica」は、非類似の商標である。また、写真に写った参加者のTシャツ等に「eroica」が記載されているならともかく、写真に「eroica 2014 5/25」が記載されているだけでは、昨今のパソコン・印刷技術からすれば、後から、写真にこのような表示は可能である。よって、本件商標の使用を示す証拠としては、証拠力がないと理解される。
(3)乙第7号証について
乙第7号証には、「2012、11、15」の記載があり、2012年(平成24年)11月15日の印刷物であることがわかる。
よって、該印刷物は、本件審判の請求の登録前3年(平成25年2月10日から同28年2月9日までの期間。以下「要証期間」という。)外のものである。
なお、「青山キラー通り商店会」のホームページ(平成28年5月22日に請求人代理人が紙打ち出し)では、過去のイベントに関する情報を掲載しているが、「エロイカ」又は「エロイカミーティング」についての記載を発見できなかった(甲1)。
したがって、そもそも実施されたのかも含め、実施時期が不明である。
(4)乙第8号証及び乙第9号証について
ア 使用されている商標が、「eroica」と非類似の「エロイカミーティング」である。
よって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の要件をみたしていない。
また、企画・提案のみでは、商標の「使用」に該当しない。
イ 被請求人は、「キラー通り商店会の議事録は、キラー通り商店会の会員であれば閲覧が可能な書面であり、議事録であることのみをもって全面的に証拠能力が否認されるものではない」旨主張する。
この点、乙18号証の2のホームページ(http://www.kilakila.info/joinus/)は、青山キラー通り商店会の会員募集のものであり、商店を利用する需要者等が入会するような会ではない。
(5)乙第10号証について
当該資料は、渋谷区商店会連合会・外苑ブロック関係という内部的、かつ、限定された関係者に、2014年8月7日に「たった一度」、災害シミュレーションイベント「エロイカ」が示されただけである。このような資料に記載されただけでは、役務の提供を受ける需要者との間で、「商標」を介しての関係が何ら発生しておらず、商標法第2条第3項に規定するいずれの「使用」にも該当しない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第20号証を提出した。
1 答弁の理由及び口頭審理における陳述
(1)商標権者について
商標権者である「有限会社モル・ティム」は、「自転車、人力車等及びそれらの部品・附属品のデザイン、製造、修理、卸、販売、輸出入」や「イベント等の企画、構成、演出、運営」などの事業を目的として、平成18年4月24日に設立された会社であり、本店所在地は、「東京都渋谷区神宮前三丁目36番26号」、代表者は「田宮守」である(乙1)。
商標権者は、各種自転車及び部品等の販売、修理を行う店舗として「HIP HIP SHAKE」を運営しており、当該店舗の所在地は、商標権者と同じ「東京都渋谷区神宮前3-36-26」である(乙2)。
(2)本件商標の使用について
ア サイクリングイベント(乙3ないし乙5、乙16及び乙17)
(ア)乙第3号証及び乙第4号証は、商標権者が運営する店舗「HIP HIP SHAKE(ヒップヒップシェイク)」が企画・開催したサイクリングイベント「エロイカミーティング」の参加同意書である。
該参加同意書は、イベント参加者が署名したものであり、参加同意書に記載されている日付「2014年5月25日(乙3)」及び「2015年5月4日(乙4)」は、イベント参加者が署名した日付であり、かつ、イベントが開催された日付でもある。
乙第5号証の1は、「2014年5月25日」に開催されたイベントの模様を撮影した写真の写しであり、乙第5号証の2は、該イベントで走行したロードマップである。
すると、乙第3号証ないし乙第5号証によれば、要証期間である「2014年5月25日」及び「2015年5月4日」に、商標権者が運営する店舗「HIP HIP SHAKE(ヒップヒップシェイク)」が、「エロイカミーティング」というイベント名のサイクリングイベントを企画・開催したことがわかる。
そして、乙第3号証及び乙第4号証に記載されているイベントの名称(使用商標)は、「エロイカミーティング」であるところ、このうち「ミーティング」の部分は、「比較的少人数の集会や会合」を意味する語句であり、乙第6号証に示すように、イベント名を「○○○ミーティング」と称して使用されている実情からすれば、当該部分は、役務の内容、質を表示するにすぎず、自他役務の識別標識としての機能を果たすものではない。
そうすると、使用商標の「エロイカミーティング」のうち、自他役務の識別標識としての機能を果たすのは「エロイカ」の文字部分であり、この文字は、本件商標「EROICA」と同一の称呼及びイタリア語で「英雄、英雄的」といった同一の観念を生ずるものであるから、乙第3号証及び乙第4号証の使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標である。
以上より、乙第3号証ないし乙第5号証によれば、要証期間において、商標権者が、本件商標に係る指定役務「スポーツの興行の企画・運営又は開催」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していた事実が確認できるものである。
(イ)商標権者が運営する店舗「HIP HIP SHAKE」は、1970年代から1980年代後半にかけてイタリアで製作された競技用の自転車(ヴィンテージロードバイクやイタリアンロードバイクと呼ばれる)を専門に扱っており、25年以上の長きにわたり蓄積されたその経験と豊富な知識は、自転車業界において良く知られている。また、商標権者の代表者である「田宮守」は、業界における指南役の一人としても認識されている(乙11ないし乙15)。
サイクリングイベント「エロイカミーティング」は、「HIP HIP SHAKE」を訪れるイタリアンロードバイクの愛好家らの集いとして始まったものであり、また、イベントの主旨が、正しく「レースメンテナンス」が施された「安全なロードバイク」での走行であることなどから、大々的に参加者を募集するような宣伝や広告は行っておらず、イベントの開催日時等は、店頭などにおいて口頭で告知されているのが実情である。
ロードバイク(競技用自転車)での走行については、車との接触事故、自転車からの落車、自転車の盗難等のアクシデントも発生し得ることから、イベントの実施に際しては、参加同意書(乙3及び乙4)への署名を求めており、これら参加同意書には、「交通ルール」「落車」といった記載が確認でき、また、上記のとおり「ヒップヒップシェイク」は競技用自転車の専門店であることからも、「エロイカミーティング」が自転車の走行会(サイクリングイベント)であることが容易に推認し得る。
乙第16号証及び乙第17号証は、サイクリングイベント「エロイカミーティング」の参加者からの確認書である。
以上によれば、「エロイカミーティング」とは、「競技用自転車によるサイクリングイベント」であること、すなわち、「サイクリング会の企画・運営又は開催」に係る役務であることが把握できる。
イ 自転車による防災イベント(乙7ないし乙10、乙18及び乙19)
(ア)乙第7号証は、商標権者「有限会社モル・ティム」が制作、頒布した自転車による防災イベント「EROICA」のイベント企画概要書であり、災害時の避難経路、避難場所、設備を自転車で巡りながら、青山キラー通り近隣の店や旧所、名跡を紹介することにより、青山キラー通りの災害時への取り組みを理解してもらうとともに、多くの人に青山キラー通りの良さを知ってもらうといった該イベントの企画の目的が記載されており、該イベント企画概要書のContentsII.イベント概要(Outline)には、「イベント開催概要」の項目の下、タイトルの欄に「EROICA」、主催の欄に「青山キラー通り商店会」、開催時期の欄に「前夜祭本番」、企画の欄に「有限会社モル・ティム」が記載されている。
そして、乙第7号証において、自転車による防災イベントのタイトル(商標)として使用されている「EROICA」は、本件商標とその構成文字を同じくすることから、乙第7号証の使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標である。
乙第8号証は、青山キラー通り商店会の役員会議事録(平成26年4月10日)であり、出席者に記載されている「田宮」は、商標権者「有限会社モル・ティム」の代表者である「田宮守」であって、該役員会議事録には、議題として「10.災害シュミレーションにおける自転車イベント・エロイカミーティング」が記載されている。
なお、「田宮守」は、商標権者の代表者であることから(乙1)、商標権者と「田宮守」との間で黙示の使用許諾があったとみることができる。したがって、「田宮守」は本件商標の通常使用権者といえるものである。
乙第9号証は、青山キラー通り商店会の定例役員会議事録(2014年8月7日)であり、出席者に記載されている「田宮」は、商標権者の代表者(本件商標の通常使用権者)である「田宮守」であり、該定例役員会議事録には、議題として、「災害シュミレーションイベント」の項目の下、「自転車による災害時のシュミレーションを考えるイベント『災害シュミレーション・エロイカミーティング』を10月19日又は26日に開催予定(田宮氏より報告)」との記載がある。
乙第8号証及び乙第9号証に記載されている「災害シュミレーションにおける自転車イベント・エロイカミーティング」は、乙第7号証の防災イベント「EROICA」をベースとして企画されたイベントである。
すると、乙第8号証及び乙第9号証によれば、要証期間である「平成26年4月10日」及び「2014年(平成26年)8月7日」の時点において、本件商標の通常使用権者である「田宮守」が、「災害シュミレーション・エロイカミーティング」という自転車によるイベントを企画していたことがわかる。
そして、乙第8号証及び乙第9号証において、災害シュミレーションにおける自転車イベントのタイトル(商標)として使用されている「エロイカミーティング」は、上述したように、本件商標と社会通念上同一の商標である。
なお、平成24年10月19日又は同26日に開催を予定していた「エロイカミーティング」は、該イベントの集合場所として検討・申請していた「明治公園」の突然の工事・封鎖により、中止となっている。
乙第10号証は、当時、青山キラー通り商店会のイベント実行委員長であった商標権者の代表者(本件商標の通常使用権者)である「田宮守」が、渋谷区商店会連合会・外苑ブロック関係各位宛てに送った「災害シミュレーションイベント エロイカ」の提案書であり、該提案書には、「災害シミュレーションイベント エロイカ」の企画目的等が記載されており、左上には、該提案書が頒布された日付「2014年8月7日」が記載されている。
該提案書に記載されている「災害シミュレーションイベント エロイカ」は、乙第7号証の青山キラー通り商店会におけるイベント「EROICA」を、渋谷区、東京都全体、千葉、埼玉、神奈川へと拡げいずれは全国への広がりを目的として企画されたものであり、乙第7号証の防災イベント「EROICA」をベースとして企画されたものである。
すると、乙第10号証によれば、要証期間内である「2014年8月7日」の時点において、本件商標の通常使用権者である「田宮守」が、「災害シミュレーションエロイカ」という自転車によるイベントを企画し、渋谷区商店会連合会・外苑ブロック関係各位に提案していたことがわかる。
そして、乙第10号証において、災害シミュレーションにおける自転車イベントのタイトル(商標)として使用されている「エロイカ」は、本件商標の「EROICA」と同一の称呼及びイタリア語で「英雄、英雄的」といった同一の観念を生ずるものであることから、本件商標と社会通念上同一の商標である。
また、乙第7号証ないし乙第10号証に記載されている「自転車による防災イベント」は、「映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競争」の興行以外の「興行」といえるものである。
以上より、乙第7号証ないし乙第10号証によれば、要証期間において、商標権者及び通常使用権者が、本件商標に係る指定役務「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していた事実が確認できるものである。
(イ)乙第7号証は、商標権者が制作、頒布した自転車によるイベント「EROICA」の企画概要書であり、該企画概要書に示される制作日時は要証期間外のものであるが、乙第8号証ないし乙第10号証に示される「エロイカミーティング」ないし「エロイカ」は、全て該イベント企画概要書によって提案された自転車によるイベント「エロイカ(EROICA)」に基づくものである。
キラー通り商店会の議事録は、キラー通り商店会の会員であれば閲覧が可能な書面であり、議事録であることのみを以て全面的に証拠能力が否認されるものではないと考える。
また、乙第8号証及び乙第9号証に示されるように、当初、自転車イベント「エロイカミーティング」は平成26年10月に開催が予定されており、イベントの開催に向けて準備が進められていたことを示す資料として、当時、企画・検討されていたコース案を提出する(乙19)。
乙第19号証の「東京・渋谷・エロイカ ライド&コース(案)」は、商標権者の依頼により、2014年2月1日に、渋谷区所在のスポーツイベントプロモーション会社である株式会社クランクによって作成された自転車イベント「エロイカ」用のサイクリングコース案である。
該コース案は、「明治公園」をスタート地点/ゴール地点としており、乙第7号証のイベント企画概要書によって提案されているように、災害時の帰宅困難者の受入施設や避難場所を巡りながら、渋谷の多彩な街並みを再発見できるコースが示されている。
また、コース案の左下には、青山キラー通り商店会を含む様々な商店会の名称が記載されており、これらの商店会にも自転車イベント「エロイカ」の企画・提案がなされていた事実も理解し得る。
以上によれば、商標権者が提供する役務の名称として、「エロイカ」ないし「エロイカミーティング」の使用が理解できるものであり、被請求人が、本件商標をその取消請求役務に使用した事実を認め得る。
ウ 「エロイカミーティング」の使用による本件商標の使用について
乙第3号証、乙第4号証、乙第8号証、乙第9号証などに記載されているイベントの名称は、「エロイカミーティング」であるところ、このうち「ミーティング」部分は、「集会や会合」を意味する英単語であるが、自転車の業界においては、「競技会」や「走行会」等を意味する語句として広く用いられており、従来から、自転車による各種イベントを「○○○ミーティング」と称して普通に使用されている。
乙第20号証によれば、各種様々な「○○○ミーティング」の名の下に、自転車による「ロードレース(競技会)」や「サイクリング(走行会)」等のイベントが行われていることが理解できる。したがって、「ミーティング」の語は、本件商標の使用役務である「サイクリングイベント」や「自転車によるイベント」の内容や質を表す語であることが確認できる。
上記のとおり、乙各号証においては、商標権者が提供する役務に係る関係書類に、本件商標(及び本件商標と社会通念上同一の商標)が使用されている事実が確認できるものであり、被請求人は、本件商標の使用について、商標法第2条第3項第8号の使用を主張するものである。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その商標権者及び通常使用権者によって、要証期間内に日本国内において、取消請求役務について使用されていたことが明らかである。

第4 当審の判断
1 本件審判の請求について
商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消しの審判にあっては、その第2項において、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
本件審判は、本件商標の指定商品及び指定役務中の第41類「全指定役務」(取消請求役務)についての登録の取消しを請求されたものであり、これに対し、被請求人は、取消請求役務中の「スポーツの興行の企画・運営又は開催」の範ちゅうに属する「サイクリングイベント」及び「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の範ちゅうに属する「自転車による防災イベント」について本件商標を使用しているから、本件審判の請求は成り立たない旨答弁し、乙各号証を提出している。
2 本件商標の使用について、被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標権者等について
登記簿謄本(現在事項全部証明書)の写し(乙1)によれば、商標権者(被請求人)は、本店を「東京都渋谷区神宮前三丁目36番26号」に置く平成18年4月24日に成立した法人であり、その目的を「1.自転車、人力車等及びそれらの部品・附属品のデザイン、製造、修理、卸、販売、輸出入 ・・・3.イベント等の企画、構成、演出、運営 ・・・」などとし、「役員に関する事項」の欄に「取締役 田宮守」の記載がある。
また、「HIP HIP SHAKE」(ヒップヒップシェイク)のホームページの写し(乙2)によれば、商標権者が運営する「各種自転車と部品・付属品・用品の販売、修理及び輸出入業務」を事業内容とする店舗が商標権者本店と同所に存在することが認められる。
(2)「サイクリングイベント」に係る本件商標の使用に関する証拠について
ア 2014年5月25日に実施されたとするサイクリングイベント「エロイカミーティング」の参加同意書の写し(乙3)には、2枚それぞれに、「エロイカミーティング参加同意書」の表題の下、「ヒップヒップシェイク 殿」、「私は、『エロイカミーティング』参加にあたり、下記の内容について同意します。/記/1 参加者は本イベント中、交通ルールを遵守し安全な行動を取る事。/2 本イベント参加の為の往復の道のり、イベント中に発生した落車、事故、盗難、破損等について、全く自己責任において処理し主催者に責任を問わない事。/3 本イベントで知り会った第三者との間に紛争、トラブル等が発生した場合、その一切の解決について、自己の責任と費用で解決する事。/以上」、「2014年5月25日」と印刷され、住所、氏名欄に住所の記載及び署名がされている。
また、上記に関して、「有限会社モル・ティム/ヒップヒップシェイク/田宮 守 様」宛て「平成28年8月」付けの「エロイカミーティング参加同意書について」と題する「私は、以下の事項について間違いないことを確認致します。/記/1.自転車のよるサイクリングイベント『エロイカミーティング』が下記の概要で行われたこと。/開催日時:2014年5月25日/集合場所:外苑前(青山2丁目:いちょう並木)/・・・/コース:外苑前?千駄ヶ谷?北参道?明治通り?・・・恵比寿・・・青山通り?皇居?青山通り?外苑前解散/主催者:有限会社モル・ティム(ヒップヒップシェイク)/2.上記サイクリングイベント『エロイカミーティング』の参加にあたり、乙3号証『エロイカミーティング参加同意書』の内容に同意し、署名したこと。/3.上記サイクリングイベント『エロイカミーティング』に参加したこと。/以上」を内容とする署名入りの確認書が4枚(4名分)提出されている(乙16)。
イ 2015年5月4日に実施されたとするサイクリングイベント「エロイカミーティング」の参加同意書の写し(乙4)には、8枚それぞれに、「2015年5月4日」と印刷されていること及び個人情報の取扱についての記載があること以外は乙第3号証とほぼ同様に印刷され、住所、氏名欄に住所の記載及び署名がされている。
また、上記に関して、「有限会社モル・ティム/ヒップヒップシェイク/田宮 守 様」宛て「平成28年8月」付けの「イベント参加同意書について」と題する「開催日時:2014年5月4日」のほか、集合場所、スタート/ゴール、コースの記載が相違する以外は乙第16号証と同様に印刷されたものを内容とする署名入りの確認書が3枚(3名分)提出されている(乙17)。
ウ 乙第5号証の1は「2014年5月25日」に開催されたイベントの模様を撮影した写真の写し、乙第5号証の2は該イベントで走行したロードマップであるとするものであり、前者は4枚の写真映像であって、人物等が写されており、それぞれ下段部分に「eroica 2014 5/25」の文字等が表されている。そして、後者のマップの青く塗られた道路は、乙第16号証に記載されたコースと符合している。
(3)「自転車による防災イベント」に係る本件商標の使用に関する証拠について
ア 乙第7号証は、防災イベント「EROICA」のイベント企画概要書とするものであり、1葉目には、赤色円内に白地で「EROICA 日本を走ろう。」、「Vol.4」、「2012、11、15」及び「企画 有限会社 モル・ティム」の記載、並びに、6葉目には、「イベント開催概要」として、「◆タイトル『EROICA』」の記載がある。
イ 乙第8号証は、「青山キラー通り商店会 役員会議事録」の表題の下、「平成26年4月10日(木)19:00?」及び出席者名等の記載の後に、10項目の議事が記載されており、10番目の議題として「災害シュミレーションにおける自転車イベント・エロイカミーティング」の記載がある。
ウ 乙第9号証は、「青山キラー通り商店会 定例役員会 議事録」の表題の下、「日時:2014年8月7日木曜日 18時半から21時」及び出席者名等の記載の後に、13項目の議事が記載されており、11番目の議事として「災害シュミレーションイベント /自転車による災害時のシュミレーションを考えるイベント『災害シュミレーション・エロイカミーティング』を10月19日又は26日に開催予定」の記載がある。
エ 乙第10号証は、「エロイカ提案書」の写しとするものであり、「渋谷区商店会連合会・外苑ブロック関係各位」、「2014年8月7日」、「災害シミュレーションイベント エロイカ提案書」及び「青山キラー通り商店会のイベント実行委員長 田宮守」の記載の下、「エロイカミーティングの趣旨/2011年3月11日東日本大震災発生。/これを踏まえ災害シミュレーションイベント エロイカが必要であると考える。」、「●他のレクリエーションイベントではない、災害シミュレーションイベントエロイカは、キラー通りから渋谷区、東京都全体、千葉、埼玉、神奈川へと拡げいずれ全国への広がりを目標とするものである。」等の記載がある。
オ 乙第18号証の1は、キラー通り商店会会長から「有限会社モル・ティム/ヒップヒップシェイク/田宮 守 様」宛て平成28年8月5日付けの「キラー通り商店会『役員会議事録』及び『エロイカ』について」と題する確認書であり、「当商店会は、以下の事項について間違いないことを確認致します。/記/1.乙第8号証及び乙第9号証に記載のとおり、平成26年4月10日及び2014年(平成26年)8月7日の役員会において、自転車によるサイクリングイベント(防災シミュレーション)「エロイカ」の開催予定などについて、有限会社モル・ティムの田宮氏より報告がなされ、役員会で検討されたこと。/2.上記イベント『エロイカ』は、有限会社モル・ティムが提案する『自転車による災害時の避難路・避難場所の確認や渋谷区の街並みの再発見』等の内容(乙第7号証)が盛り込まれた企画であること。/3.乙第10号証に記載のとおり、上記サイクリングイベント(防災シミュレーション)『エロイカ』の企画は、キラー通り商店会、渋谷区商店会連合会・外苑ブロックを介して、渋谷区にも提案されており、現在も当該イベントの開催に向けて各方面と協議が続けられていること。」と記載されている。
カ 乙第19号証の1は、商標権者の依頼により2014年2月1日に株式会社クランクによって作成されたサイクリングイベント「エロイカ」用のサイクリングコース案とするものであり、「東京・渋谷・エロイカ ライド&コース(案)」の表題の下、千駄ヶ谷、表参道、恵比寿などが示されたコースの地図等が表され、左下には「資料/渋谷商店会 外苑ブロック」、左上には「TOKYO/SHIBUYA L‘Eroica RIDE 2014・05」、右上には「2014/02/01 #01版」が表示されている。そして、乙第19号証の3は、株式会社クランクのプランニングディレクターから「有限会社モル・ティム/ヒップヒップシェイク/田宮 守 様」宛て「平成28年8月」付けの「『エロイカ』ライド&コース(案)について」と題する確認書であり、「当社は、以下の事項について間違いないことを確認致します。/記/1.平成25年10月に、有限会社モル・ティムの田宮氏より、自転車によるサイクリングイベント『エロイカ』に関し、サイクリングコースの作成を依頼されたこと。/2.上記サイクリングイベント『エロイカ』のコース案の作成については、有限会社モル・ティムが提案する『災害時の避難路・避難場所の確認』や『渋谷区の街並みの再発見』等の企画(乙第7号証)が盛り込まれていること。/3.添付の平成26年(2014年)2月1日付『東京・渋谷・エロイカ ライド&コース(案)』は、上記依頼により当社が作成し、有限会社モル・ティムに納品した書面の真正な写しであること。」と記載されている。
3 以上の事実を総合すれば、以下のとおり判断することができる。
(1)「サイクリングイベント」に係る本件商標の使用について
ア 上記2(1)及び(2)によれば、商標権者が運営する店舗「HIP HIP SHAKE(ヒップヒップシェイク)」が、「エロイカミーティング」というイベント名称であるサイクリングイベントを企画し、要証期間内である平成26年5月25日及び同27年5月4日に開催したことは推認できる。
イ しかしながら、商標法上における役務とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいうところ、興行によるサイクリングイベントを行う場合は、イベントの主催者が参加者に対し、募集要領、参加規約、申込方法、参加費、制限時間等を周知するのが一般的であるが、請求人からは、そのような証拠は提出されていない。
そして、被請求人は、サイクリングイベント「エロイカミーティング」について「大々的に参加者を募集するような宣伝や広告は行っておらず、イベントの開催日時等は、店頭などにおいて口頭で告知されている。」と説明していることからも、該サイクリングイベントは、「各種自転車と部品・付属品・用品の販売、修理及び輸出入業務」を事業内容とする店舗「HIP HIP SHAKE(ヒップヒップシェイク)」の常連客を対象とした店舗の業務の付随的な行事としてのサイクリングツアーといえるものである。
そうすると、「エロイカミーティング」という名称で実施されたサイクリングイベントは、該イベントを商標法上における役務であると認めることはできないものであり、そうである以上、取消請求役務中の「スポーツの興行の企画・運営又は開催」の範ちゅうに属する役務であるということもできない。
ウ また、「エロイカミーティング」という名称についてみるに、本件商標は、前記第1のとおり、「EROICA」の欧文字を横書きしてなるものであるから、「エロイカ」の称呼が生じ、イタリア語の「英雄、英雄的」の観念が生じるといえるのに対し、サイクリングイベントの名称である「エロイカミーティング」は、該文字から「エロイカミーティング」の称呼が生じ、「英雄の会議」ほどの観念が生じるものである。
そうすると、「エロイカミーティング」という名称は、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる商標ということはできないから、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできないものである。
この点について、被請求人は、乙第6号証及び乙第20号証を提出して、イベントの名称の「エロイカミーティング」のうち、「ミーティング」の部分は、「集会や会合」を意味する英単語であるが、自転車の業界においては、「競技会」や「走行会」等を意味する語句として広く用いられており、自転車による各種イベントを「○○○ミーティング」と称して普通に使用されているから、「ミーティング」の語は、「サイクリングイベント」や「自転車によるイベント」の内容や質を表す語であり、本件商標においては、自他役務の識別標識としての機能を果たすのは「エロイカ」の文字部分である旨述べている。
しかしながら、本件審判は、先願に係る他人の登録商標の類否を問題とするのではなく、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたかが問題とされるのである。
そして、乙第20号証のサイクリングイベント名の「きらら浜サイクリングミーティング」、「リトルワールドサイクリングミーティング」、「日の出ヒルクライムミーティング」等は、いずれも、その構成文字全体をもって、当該サイクリングイベント名を表すものと認められる。また、サイクリングイベント名のうち「ミーティング」の文字部分を取捨して、前半の文字部分のみをもって、その取引者、需要者に認識されていることを裏付ける証拠の提出はない。
したがって、被請求人の主張は、採用することができない。
エ 以上によれば、サイクリングイベントにおける「エロイカミーティング」という名称の使用は、本件商標の使用をしたと認めることはできない。
なお、イベントの模様を撮影した写真の写し(乙5の1)において、「eroica 2014 5/25」の文字が表示されており、「eroica」の文字部分について本件商標と社会通念上同一の商標であると形式上みることができるが、該イベントが商標法上における役務であると認めることはできないものである以上、上記判断を左右するものではない。
(2)「自転車による防災イベント」に係る本件商標の使用について
ア 上記2(1)及び(3)によれば、(a)平成26年4月10日及び同年8月7日に開催された青山キラー通り商店会の役員会において、自転車によるサイクリングイベント(防災シミュレーション)「エロイカミーティング」の開催(平成26年10月19日又は同月26日に開催予定)などについて、商標権者の代表者である田宮守氏より報告があったこと、及び(b)「青山キラー通り商店会 イベント実行委員長 田宮守」が2014(平成26)年8月7日付けで「渋谷区商店会連合会・外苑ブロック関係各位」宛てに「災害シミュレーションイベント エロイカ提案書」なる表題の提案を行ったことは推認できる。そして、上記(a)及び(b)が開催、実施された平成26年4月10日及び同年8月7日は、要証期間内の日付である。
イ しかしながら、商標法上における役務とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいうところ、上記アの(a)及び(b)の行為について、キラー通り商店会会長から「有限会社モル・ティム/ヒップヒップシェイク/田宮 守 様」宛て提出された平成28年8月5日付けの「キラー通り商店会『役員会議事録』及び『エロイカ』について」と題する確認書(乙18の1)において、「イベント『エロイカ』は、商標権者が提案する『自転車による災害時の避難路・避難場所の確認や渋谷区の街並みの再発見』等の内容(乙7)が盛り込まれた企画である。また、乙第10号証に記載のとおり、上記サイクリングイベント(防災シミュレーション)『エロイカ』の企画は、キラー通り商店会、渋谷区商店会連合会・外苑ブロックを介して、渋谷区にも提案されており、現在も当該イベントの開催に向けて各方面と協議が続けられている。」旨述べていること、及び請求人が提出したそのほかの証拠を併せみても、請求人が主張する「自転車による防災イベント」に使用する「エロイカミーティング」ないし「エロイカ」の標章が、誰が誰のために行う役務であるのか把握することができない。
ウ この点について、請求人は、本件商標の通常使用権者である「田宮守」氏が、「エロイカ」ないし「エロイカミーティング」という自転車による防災シュミレーションイベントを、青山キラー通り商店会役員会や渋谷区商店会連合会・外苑ブロック宛て提案書において提案したものであり、そのイベントの企画、開催が「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の範ちゅうに入る役務である旨主張している。
そして、請求人は、上記の自転車による防災イベントは、乙第7号証の「イベント企画概要書」に基づくものであるとするところ、該証拠には、1葉目に「『家に、帰ろう。』/どうやって帰る?こんな時、あんな時。/自転車で辿る、災害時避難経路・避難場所。」、「イベント企画概要書」、「Vol.4/2012、11、15」、「企画/有限会社 モル・ティム」及び「『EROICA 日本を走ろう。』」、2葉目に「私は地元、青山キラー通り商店会では唯一の自転車屋として、日々仕事に励んで参ります・・・有名な自転車タウン青山キラー通り発信でこのエリアに相応しく、社会的にも貢献度の高い活動が出来るのでは?との思いで自転車によるイベント『EROICA』を企画提案致します・・・」、4葉目に「Contents」が記載されており、5葉目に「始めに」が「青山キラー通り商店会 会長」名で表され、6葉目の「イベント概要(Outline)」には、「イベント開催概要」として、「タイトル『EROICA』/サブタイトル『家に帰ろう』・・・」、「主催 青山キラー通り商店会」、「企画 有限会社 モル・ティム」等が記載されている。該証拠は、要証期間外である2012年(平成24年)11月15日の作成に係るものであると認められるところ、該証拠が上記の青山キラー通り商店会役員会や渋谷区商店会連合会・外苑ブロック宛て提案書において、実際に使用されたか否かも含めてどのような形で利用されたのかは不明であり、また、明確にはされていない。また、乙第7号証ないし乙第10号証及び乙第18号証の1における商標権者、田宮守、青山キラー通り商店会の立場が不明確であり、「自転車による防災イベント」に係る「エロイカミーティング」ないし「エロイカ」の標章の使用が、請求人のいう通常使用権者としての「田宮守」であると特定することができない。
さらに、商標の使用について、商標法第2条第3項第8号において「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」と規定されているところ、商店会役員会議事録や関係者に宛てた提案書は、会議の内容を記録したもの、イベントの趣旨をまとめたものであって、関係者が限定された内部文書であるから、役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に該当しないものであり、これをもって、取消請求に係る役務が提供されたことを証するものと認めることはできない。その他、商標法第2条第3項第3号ないし同項第7号のいずれにも該当するものでない。
そうすると、「エロイカミーティング」ないし「エロイカ」という名称で実施されたとする「自転車による防災イベント」は、該イベントを商標法上における役務であると認めることはできないものであり、そうである以上、取消請求役務中の「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の範ちゅうに属する役務であるということもできない。
エ なお、上記の使用標章中の「エロイカミーティング」については、上記(1)ウで認定、判断したと同様に、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできないものである。
(3)その他、本件商標が、本件商標権者又は通常使用権者によって、取消請求役務について、商標法第2条第3項に規定する標章の使用をされた事実を示す証拠はない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、取消請求役務のいずれかについて、本件商標の使用をしていることを証明したということができない。
また、被請求人は、取消請求役務について、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中の第41類「全指定役務」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2016-12-08 
出願番号 商願2012-15866(T2012-15866) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 赤星 直昭宮川 元 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 平澤 芳行
中束 としえ
登録日 2012-10-05 
登録番号 商標登録第5525753号(T5525753) 
商標の称呼 エロイカ 
代理人 柴田 雅仁 
代理人 辻田 朋子 
代理人 久野 恭兵 
代理人 樋口 頼子 
代理人 高橋 剛一 

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