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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W21
審判 全部申立て  登録を維持 W21
審判 全部申立て  登録を維持 W21
審判 全部申立て  登録を維持 W21
管理番号 1323713 
異議申立番号 異議2016-900135 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-30 
確定日 2016-12-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第5829476号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5829476号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5829476号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおり,「ガムキュット」の片仮名及び「GUM CYUTTO」の欧文字を二段に書してなり,平成27年9月29日に登録出願,同28年2月15日に登録査定がされ,第21類「歯茎マッサージブラシ」を指定商品として,同年2月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の8件の登録商標(以下,これらの商標をまとめて「引用商標」という。)であり,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第2234175号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和63年2月3日
設定登録日:平成2年5月31日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
2 登録第5201307号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成20年6月12日
設定登録日:平成21年1月30日
指定商品 :第3類,第5類,第10類,第21類及び第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
3 登録第5308710号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成21年7月3日
設定登録日:平成22年3月12日
指定商品 :第3類,第5類,第10類,第21類及び第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
4 登録第5477022号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲5とおり
登録出願日:平成23年4月21日
設定登録日:平成24年3月9日
指定商品 :第3類及び第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
5 登録第5493994号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲6のとおり
登録出願日:平成22年7月26日
設定登録日:平成24年5月18日
指定商品 :第3類,第5類,第10類,第21類及び第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
6 登録第5085072号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲7のとおり
登録出願日:平成18年2月20日
設定登録日:平成19年10月19日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
7 登録第2234176号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲8のとおり
登録出願日:昭和63年2月3日
設定登録日:平成2年5月31日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
8 登録第4908848号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲9のとおり
登録出願日:平成15年7月31日
設定登録日:平成17年11月18日
指定商品 :第3類,第10類,第29類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。なお,甲号証において,枝番号を有するもので,枝番号のすべてを引用する場合は,枝番号の記載を省略する。)及び参考資料1ないし参考資料10を提出した(以下「甲第○号証」の表示は,「甲○」と,「参考資料○」の表示は,「参○」と簡略する。)。
1 申立人について
サンスター株式会社は,1989年に,当時引用商標1等の商標権者であった米国法人「John O. Butler Company」(現Sunstar Americas,Inc.)から独占的通常実施権の許諾を受け,「G・U・M HOME DENTIST SERIES/ガム・ホームデンティストシリーズ」として,歯周病予防を目的とした歯磨き等のオーラルケア製品の製造販売を開始して以来,現在に至るまで,我が国において,引用商標に係る「G・U・M」及び「ガム」商標を付した歯磨き,洗口液,歯ブラシ等,各種オーラルケア製品(以下,「G・U・M製品」と称する。)を製造販売している(甲3,甲5)。
参1ないし参3に係る商標権及び引用商標に係る商標権は,現在では申立人が所有しており,サンスター株式会社は,申立人から独占的通常使用権の許諾を受けて,引用商標を使用している。申立人とサンスター株式会社(以下,両者を併せて「申立人ら」という。そのうち,「サンスター株式会社」を「使用権者サンスター」という。)は,いずれもサンスターグループに属する企業である。
2 引用商標の周知・著名性について
(1)宣伝広告活動
使用権者サンスターは永年にわたり,多額の宣伝広告費を投じて,テレビ(甲13),ラジオ,雑誌(甲7?甲12),新聞(甲6)等の媒体で,コンスタントに「G・U・M製品」の宣伝広告を行ってきた。このような永年の宣伝広告と,「G・U・M製品」が高い品質を有していることから,「G・U・M製品」は,取引者,需要者の支持を集め,オーラルケア製品の分野では有数の市場シェアを誇るブランドとなっている。
(2)市場占有率
ア 歯磨き(デンタルペースト)
歯磨きの市場規模は,2012年で約711億円(販売額)であり,このうち歯周病予防をうたった歯磨きの市場規模は,2012年で約238億円であるところ,使用権者サンスターの「G・U・M」ブランドの歯磨きの2012年の販売実績は61億円(甲18)であるから,使用権者サンスターは歯周病予防の歯磨きに関する市場においては,約25%(4分の1)のシェアを有していた。
さらに,2013年及び2014年(見込)の歯周病予防を目的とした歯磨きにおける「G・U・M」のブランドシェアは,2013年(25.7%,第1位),2014年(見込)(24.7%,第1位)であり,両年とも,シェアが約13%台の第2位を大きく引き離している(甲19)。
また,使用権者サンスターの「G・U・M」ブランドは,「トイレタリーグッズマーケティング要覧2013」及び「オーラルケア関連市場マーケティング総覧2014」において,それぞれ「『ガム』(サンスター)は歯周病予防訴求の代表ブランド」(甲18)及び「歯周病予防歯磨の代表的なブランドとして流通および生活者からの認知度も高いサンスターの『GUM』がトップシェアを維持」(甲19)等と紹介されている。
加えて,歯磨き全体の中の使用権者サンスターに係る「G・U・M」ブランドのシェアは,2011年(8.2%,第4位),2012年(8.6%,第4位),2013年(9.5%,第3位),2014年(見込)(9.3%,第3位)である(甲18,甲19)。
このように,「歯周病予防」をうたった歯磨きに限定しない「歯磨き」全体の市場でも,使用権者サンスターの「G・U・M」ブランドの歯磨きは,10%近いシェアを有しており,全ての歯磨きの中で3番目に売れている歯磨きである。
イ 歯ブラシ
一般的に,歯ブラシは,各メーカーが複数ブランドから製品を出しているのが現状であり,多数のメーカーの多数ブランドの中で,「G・U・M」ブランドが第1位又は第2位のシェアを獲得していることからも(甲18,甲19),使用権者サンスターに係る「G・U・M」ブランドが,当該商品分野で取引者,需要者の高い支持を集めており,周知・著名であることがわかる。
ウ 洗口剤(洗口液・液体歯磨き)
「G・U・M」ブランドの洗口剤は,販売実績においても,シェア第2位のブランドを10億円以上引き離しており(甲18,甲19),当該商品分野で圧倒的な人気を誇っている。さらに,「洗口剤」に含まれる「液体歯磨き」というカテゴリーの商品に関する「G・U・M」ブランドのシェアは,2013年(41.2%,第1位),2014年(見込)(41.6%,第1位)であり,いずれも40%台のシェアを獲得しており,シェア第2位(16%前後)を大きく引き離している(甲19)。
エ デンタルフロス及び歯間ブラシ
2013年及び2014年(見込)の「G・U・M」ブランドのデンタルフロスのシェアはそれぞれ12.4%と12.3%であり,いずれも第3位である。また,2013年及び2014年(見込)の「G・U・M」ブランドの歯間ブラシのシェアはそれぞれ18.8%と18.1%であり,いずれも第2位である(甲19)。
オ 上記ア?エの各商品分野における「G・U・M製品」の高い市場占有率からも,これらオーラルケア製品について,引用商標が周知・著名性を獲得していることがわかる。
(3)雑誌や新聞への紹介記事
使用権者サンスターの「G・U・M製品」は,高い販売実績と市場占有率を誇っていることから,雑誌や新聞のオーラルケアに関する記事の中で,しばしば紹介・言及されている(甲20?甲23)。
このような「G・U・M製品」に関する記事からも,「G・U・M」ブランドが需要者から高い支持を受けており,引用商標がオーラルケア製品の分野において,周知・著名性を獲得していることがわかる。
(4)その他
申立人は,2010年に,第16類,第35類及び第44類の商品・役務に関し,引用商標2の防護標章登録を受けている(甲24)。このことも,引用商標2が,オーラルケアの商品分野において周知・著名性を獲得していることの証左である。
(5)小括
以上から,引用商標「G・U・M」「ガム」は,本件商標の出願日である平成27年9月29日以前に,第3類「歯磨き」及び第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ」等のオーラルケア製品の分野において,周知・著名であったことは明らかである。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
ア 「ガム/GUM」が強く支配的な印象を与える点について
上記2のとおり,引用商標「G・U・M」「ガム」は,本件商標の出願日である平成27年9月29日以前に,第3類「歯磨き」及び第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ」等のオーラルケア製品の分野において,周知・著名であったことは明らかであるから,本件商標中,「ガム/GUM」部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
イ 「キュット/CYUTTO」の語の識別力について
本件商標中,「ガム/GUM」部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるのに対し,本件商標の後半部「キュット」の語は,「引き締める動作が,強くまたは瞬間的になされるさま。」の意を有する語(甲25)として,我が国において広く一般的に使用されている既成語であるから,「きゅっと(キュッと)」の語は,「歯茎(を引き締める)」という語に好んで使用される語であり(甲27),従来から「歯磨き」の宣伝広告において,頻繁に使用され(甲28?甲30),歯茎が引き締まる様を表す語として,歯周病や歯槽膿漏予防の効果をうたうオーラルケア製品について使用されていることから,これらの商品との関係では,識別力に乏しい,あるいは識別力が弱い語と考えられる。
そして,本件商標の指定商品第21類「歯茎マッサージブラシ」は,本件商標権者の社長のインタビュー記事(甲31)によれば,歯周病予防を念頭に置いたオーラルケア製品と見受けられ,温熱と振動により歯肉のマッサージを行い,歯肉の血流を促進して引き締めることを意図した商品である。
そうすると,本件商標の片仮名の後半部「キュット」は,本件商標に係る指定商品との関係でも,記述的と考えられ,自他商品識別機能を発揮しないか,発揮するとしても極めて弱いと考えることが妥当である。
したがって,本件商標中「キュット/CYUTTO」の文字部分は,指定商品「歯茎マッサージブラシ」との関係では,自他商品識別機能を発揮しない部分,あるいは自他商品識別機能が極めて弱い付記的な部分と捉えるべきであり,当該部分からは出所識別標識としての称呼や観念が生じない,あるいは生じるとしても極めて弱いものである。
ウ 小括
以上から,本件商標「ガムキュット/GUMCYTTO」は,「ガム/GUM」部分が,取引者・需要者に対し,使用権者サンスターのオーラルケア製品の周知・著名な出所識別標識「G・U・M」「ガム」を連想させる語として強く支配的な印象を与えるとともに,それ以外の「キュット/CYUTTO」部分からは出所識別標識としての称呼,観念が生じない(あるいは,生じるとしても極めて弱い)から,本件商標の構成部分の一部「ガム/GUM」を要部として抽出し,この部分だけを引用商標と比較して商標の類否判断を行うことが認められる。
(2)引用商標について
引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8は,欧文字「G・U・M」からなる,あるいはこれを含む商標である。「G・U・M」の書体は,1989年から現在までの間に,マイナーチェンジされている。引用商標7は片仮名「ガム」からなる。
使用権者サンスター使用の引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8「G・U・M」は,1989年から現在までに,書体が若干変更されたものの,欧文字と中黒からなる「G・U・M」という基本形は変わっていない。また,製品パッケージ上にカラーで表示される場合には,引用商標2ないし引用商標5に表れるように,左縦線が曲線の緑地の略長方形の枠の中に,「G・U・M」を白字で書す態様にて使用されている。
使用権者サンスターの長期間の使用により,引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8「G・U・M」から「ガム」の称呼が生じることは,需要者間で広く認識されており,かかる称呼に基づいて引用商標は周知著名になっている。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標の要部「ガム/GUM」と引用商標は,「ガム」の称呼を共通にする。また,本件商標の要部「ガム/GUM」と,引用商標との外観は,「GUM」の欧文字,又は「ガム」の片仮名を共通にするから類似し,また,当該文字からは,使用権者サンスターの製造販売するオーラルケア商品を表示するものとして周知・著名な引用商標「G・U・M」「ガム」が容易に想起されるため,両者は観念においても共通する。
よって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念を共通にする類似の商標である。
(4)指定商品の類否について
本件商標の第21類の指定商品「歯茎マッサージブラシ」と引用商標1ないし引用商標7の指定商品である第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ」とは,いずれも歯や歯茎といった口内のケアを行う道具であり(甲31,甲34),歯周病予防等を目的としていることから,用途,効果(目的)及び需要者が一致すると考えられる。
さらに,歯茎マッサージブラシを製造販売するメーカーは,他のオーラルケア製品(歯磨き,歯ブラシ,歯間清掃具等)も製造販売している例が多いことから,両者は製造販売者も共通する(甲35)。
加えて,ドラッグストアやスーパー等においては,歯磨き,歯ブラシ,歯茎マッサージブラシ等は同一の棚にて販売されることが一般的であるから,これらの商品は販売場所のみならず陳列スペースも共通にするものである。
以上から,本件商標の指定商品「歯茎マッサージブラシ」は,引用商標1ないし引用商標7の指定商品「歯ブラシ,歯間ブラシ」と類似する。
(5)小括
以上から,本件商標は,その出願日前の商標登録出願に係る申立人の登録商標であり,使用権者サンスターが使用する引用商標に類似する商標であって,引用商標1ないし引用商標7の指定商品と類似する第21類の指定商品「歯茎マッサージブラシ」について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標が引用商標に類似すること
本件商標が引用商標と類似することについては,上記3に記載したとおり,外観,称呼及び観念上,相紛らわしい類似の商標であり,両者の類似性の程度は極めて高い。また,引用商標の周知・著名性に関しては,上記2で述べたとおりである。
さらに,使用権者サンスターは,「G・U・M」ブランドのシリーズとして,1997年の「ガムケア」(甲5の7),2006年の「ガムアドバンス」(甲5の15),2011年の「ガムアドバンスケア」(甲5の21)等,「G・U・M/ガム」に他の語を結合した商標を使用してきた。このような実情に鑑みれば,同様に「GUM/ガム」の後ろに他の語,特に識別力の弱い語を結合してなる本件商標は,あたかも使用権者サンスターに係る新しい「G・U・M」ブランドのシリーズ名であるかのごとく,需要者等が誤認を生ずるおそれが高い。
(2)商品の関連性について
本件商標の指定商品である第21類「歯茎マッサージブラシ」と,引用商標が周知・著名となっている各種オーラルケア製品,具体的には,第3類「歯磨き(引用商標2ないし引用商標5及び引用商標8)や,第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ」(引用商標1ないし引用商標7)とは,歯や歯茎といった口内をケアし,歯周病を予防するという目的及び用途が共通するほか,需要者,販売場所,製造販売者等も共通することから,両者の関連性は極めて高い。
(3)その他
本件商標や引用商標が使用されるオーラルケア製品は,日常的に消費される比較的安価な価格帯のものであり,出所識別標識に対する需要者の注意力は高いとはいえないという事情がある。
(4)小括
以上の事情を総合的に判断すると,本件商標が第21類の指定商品「歯茎マッサージブラシ」に使用された場合,需要者等は,本件商標中,強く支配的な印象を与える「ガム/GUM」の文字に着目して,当該商品が使用権者サンスターの製造販売するオーラルケア製品である,あるいは申立人らと緊密な営業上の関係,又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると,誤信されるおそれがあり,本件商標は,「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当するから,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから,本件商標の登録は取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の著名性について
申立人の提出に係る証拠によれば,引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8における「G・U・m」の文字は,1989年の使用開始以来,商品「歯磨き」を含むオーラルケア製品に使用され,使用権者サンスターにより新聞,雑誌やテレビなどのマスコミにおいて多岐広範囲にわたる宣伝広告が継続的に行われ,その結果,当該オーラルケア製品は,1989年の発売以来売上を伸ばし続け,最近の年間の売上額では200億円を超える売上げがあり,その市場占有率も,洗口液が国内1位,歯ブラシが国内2位など,上位を維持しており,その状況が雑誌や新聞において紹介記事にされていること(甲3,甲5?甲14,甲17?甲19)などを総合して考察するならば,引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8は,「G・U・m」からなる構成態様をもって,申立人らの業務に係る商品を表示する商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,商品「歯磨き」を含むオーラルケア製品の取引者,需要者の間において周知著名になっていたということができる。
しかしながら,引用商標7における「ガム」の文字については,商品説明書(甲3)及び使用権者サンスターの製品カタログ(甲5の7?甲25)に使用し,また,新聞記事(甲23)においてその使用が散見されるところ,「ガム」の文字は,上記商品説明書及び製品カタログおいて,例えば商標の「G・U・m」を顕著に表示した商品の写真とともに「ガム デンタルペースト」及び「ガム デンタルハブラシ」のように商品名の語頭に使用され,また,新聞記事においても,商標の「G・U・m」とともに使用され,いずれも商標の「G・U・m」の読みを表すものとして使用されているにすぎないから,これらによっては,引用商標7における「ガム」の文字が,申立人らの業務に係る商品を表示する商標として本件商標の登録出願の時に需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。その他,引用商標における「ガム」の文字が単独で使用され,申立人らの業務に係る商品を表示する商標として本件商標の登録出願の時に需要者の間に広く認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は,別掲1のとおり,「ガムキュット」の片仮名とその下に小さく「GUM CYUTTO」の欧文字とを二段に横書きしてなるところ,その片仮名部分と欧文字部分は,それぞれ同書,同大でまとまりよく一連に書された構成からなるものであって,片仮名部分が欧文字部分の読みを表したものと無理なく認識し得ること,本件商標の「GUM」は「チューイングガム」等を意味する既成語であり,「キュット」と称呼する「CYUTTO」は特定の意味合いを有する語として知られていないことからすれば,片仮名部分と欧文字部分は,それぞれ一体のものとして認識されるものであり,特定の観念を生じないとみるのが相当である。そうすると,本願商標は,片仮名部分と欧文字部分が,それぞれ一種の造語として認識,把握されるものであり,また,これより生じると認められる「ガムキュット」の称呼も5音という簡潔な音構成であり,格別冗長なものでなく,よどみなく一連に称呼することができるものである。
そして,かかる構成においては,本件商標を「ガム」及び「GUM」の文字部分と「キュット」及び「CTUTTO」の文字部分とに分離して看取されるとすべき理由は見いだし得ない。
この点に関し,申立人は,本件商標の構成中の「ガム」及び「GUM」の文字部分が,引用商標に係る「G・U・m」及び「ガム」を連想させる語として強く支配的な印象を与えるとともに,「キュット」及び「CYUTTO」の文字部分が識別機能を有しないことから,「ガム」及び「GUM」の文字部分が要部として抽出される旨主張している。
しかしながら,「きゅっと」の語が「引き締める動作が,強くまたは瞬間的になされるさま」を意味するものとして知られ(甲25),また,「キュッと」及び「キューッと」の文字が「歯茎を引き締める」といった意味合いで使用される場合があるとしても(甲28?甲30),本件商標は,上記のとおり,片仮名部分と欧文字部分は,それぞれ一体のものとして認識されるものであり,特定の観念を生じないとみるのが相当であって,全体として一種の造語として認識,把握されるものである。さらに,本件指定商品との関係において,提出された証拠をもっては,「キュット」及び「CYUTTO」の文字が商品の品質,用途等を表示するために普通に用いられている事実も認められないし,上記1のとおり,申立人らの業務に係る商品を表示する商標として周知著名になっている引用商標は,「G・U・m」からなる構成態様からなるものであり,しかも,本件商標の「GUM」文字部分は,「チューイングガム」等を意味する既成語であるから,当該文字部分から直ちに引用商標を想起するということもできない。また,他に本件商標から上記文字部分を捨象して考察しなければならない理由も見出すこともできない。
そうすると,本件商標は,「ガムキュット」の片仮名及び「GUM CYUTTO」の欧文字が一体不可分のものとして認識,把握されるとみるのが相当であるから,申立人の主張は採用することができない。
したがって,本件商標は,片仮名部分と欧文字部分がそれぞれ一体不可分のものであり,「ガムキュット」の一連の称呼のみを生じ,親しまれた既成の観念を有しない一種の造語からなるものとして認識,把握されるというのが自然である。
(2)引用商標
引用商標は,別掲2ないし別掲9に示したとおりの構成からなるところ,引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8は,「G・U・m」の欧文字を顕著に含むものであり,その構成文字部分に相応して「ガム」の称呼を生じ,特定の観念を生じない造語よりなるものと認められる。
また,引用商標7は,「ガム」の片仮名からなるものであり,その構成文字に相応して,「ガム」の称呼を生じ,「ガム(チューインガムの略)」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを対比するに,本件商標と引用商標とは,それぞれの構成に照らし,外観においては,判然と区別し得る差異を有するものである。
次に,称呼においては,本件商標から生じる「ガムキュット」の称呼と引用商標から生じる「ガム」の称呼とは,構成音数が異なるばかりでなく,語尾の「キュット」の有無という顕著な差異により,それぞれを一連に称呼するときは,全体の語調,語感が著しく相違し,明瞭に区別することができるものである。
さらに,観念においては,本件商標は,親しまれた既成の観念を有しないものであるから,本件商標と引用商標とを比較することはできない。
してみれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(4)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であるから,その指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当するということはできない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1の引用商標の周知性を考慮したとしても,本件商標は,上記2のとおり,片仮名部分と欧文字部分がそれぞれ一体不可分のものと認識されるものであって,引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そうすると,本件商標と引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異のものであるから,引用商標(引用商標7を除く。)が申立人らの業務に係る商品を表示する商標として取引者,需要者間に広く認識されているとしても,本件商標をその指定商品について使用した場合に,これに接する取引者,需要者が引用商標ないしは申立人らを連想,想起するようなことはないというべきである。
してみれば,本件商標は,申立人らと経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく,その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標2)(色彩については原本参照)


別掲4(引用商標3)(色彩については原本参照)


別掲5(引用商標4)(色彩については原本参照)


別掲6(引用商標5)(色彩については原本参照)


別掲7(引用商標6)


別掲8(引用商標7)


別掲9(引用商標8)


異議決定日 2016-12-08 
出願番号 商願2015-93822(T2015-93822) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W21)
T 1 651・ 271- Y (W21)
T 1 651・ 263- Y (W21)
T 1 651・ 261- Y (W21)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 謙司 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 田村 正明
早川 文宏
登録日 2016-02-26 
登録番号 商標登録第5829476号(T5829476) 
権利者 株式会社大木工藝
商標の称呼 ガムキュット、ガムチュット、キュット、チュット 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 
代理人 牧野 利秋 
代理人 磯田 直也 
代理人 青木 博通 
代理人 富所 英子 

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