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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X45
管理番号 1323667 
審判番号 取消2015-300022 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-01-09 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5420824号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5420824号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成22年11月1日の登録出願、指定商品を第45類「結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,冠婚葬祭に関する相談又は企画,冠婚葬祭に関するマナー及び返礼の助言,婚礼(結婚披露宴を含む。)のための施設の提供,宴会のための施設の提供,宴会のための施設の提供に関する指導・助言及び情報の提供,宴会のための施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,結婚式・披露宴の企画・運営又は開催,葬儀・法事の執行,慰霊祭又は法要の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,葬儀・法要のための施設の提供,葬儀の生前企画,葬儀の生前予約,湯灌,遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復,墓地又は納骨堂の提供,衣服の貸与,祭壇の貸与,装身具の貸与」として、平成23年6月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判請求の登録日は、平成27年1月21日である。以下、本件審判請求の登録日前3年以内を「要証期間内」という。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、商標登録第5420824号の指定役務中、第45類「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

2 審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書における主張
(1)乙第1号証について
被請求人によれば、乙第1号証は、被請求人及び被請求人の親会社であるアルファクラブ武蔵野株式会社(以下「アルファクラブ社」という。)が、株式会社NEXUS(以下「NEXUS社」という。)に、広告用リーフレット及び広告用A4版チラシの制作を注文する旨の注文書の写しであって、該注文書は、商標法第2条第3項第8号の「取引書類」に該当すると主張する。
しかしながら、この「取引書類」は、広告用リーフレット及び広告用チラシの制作を注文する旨の注文書であるため、第35類「広告宣伝物の企画及び制作」又は第40類「印刷」という役務に係る取引書類であるとみるのが相当であるから、本件審判請求に係る第45類「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」という役務に係る取引書類には該当しないことは明白である。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
被請求人は、乙第2号証は、乙第1号証に記載のリーフレットであり、また、乙第3号証は、乙第1号証に記載のA4チラシであり、さらに、これらの引き渡し場所が被請求人の本社であるから、これらリーフレット及びA4版チラシが本社内で展示し、頒布していたことがわかると主張する。
しかしながら、本社内で展示又は頒布した点については、何ら立証書類が提出されておらず、また、仮に、本社内で社員向け啓蒙等の目的で展示又は頒布されていたとしても、「他人のために」には該当しないため、商標法上の役務の提供に係る広告物ということはできない。
(3)乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証について
乙第4号証は、「ご依頼日」以外の部分が全て黒塗りされており、実際にこの依頼書に記入した「他人」が存在するか否かは定かではない。この依頼書に基づきエンバーミング処置がされたのであれば、それに伴う請求書などの関連書類が発行され、相応の入金があったはずであるが、そうした客観性がある立証は一切されていない。
陳述要領書において新たに添付された「御遺体トリートメント依頼書」及び「EMBALMING REPORT」(乙23?乙31)にも、被請求人の名称等は記載されておらず、これらによっては、被請求人がエンバーミング処理又はエンバーミング処理に関する取引をしたことは証されていない。
(審決注:「エンバーミング」は、「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」を意味することについて、請求人及び被請求人の間で争いはないから、以下、「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」を「エンバーミング」という場合がある。)
(4)乙第5号証について
乙第5号証は、乙第2号証に記載されているフリーダイヤルの申込書・設定書の総括表及びお客様控えの写しであって、該フリーダイヤル番号が乙第2号証のリーフレットに記載されている事実から、平成25年9月26日以降、本件商標が、「エンバーミング」について、被請求人によって使用されていることがうかがえると、被請求人は主張している。
しかしながら、乙第2号証のリーフレットが、いつどこで誰に対して展示又は頒布されたのか不明であり、また、同時期に作成されたと被請求人が主張する乙第3号証のA4版チラシには、別のフリーダイヤルの番号が掲載されているから、該フリーダイヤルが、本件商標のエンバーミングについての使用に関連して使用されていたか否かは定かではない。
(5)乙第6号証ないし乙第8号証について
乙第6号証ないし乙第8号証は、これら書面のどの記載部分から被請求人がエンバーミング事業を行っていることが明らかなのか、一切説明がされていない。また、いずれのページにも、本件商標は掲載されていないため、本件商標の使用を立証するものではない。
(6)乙第9号証について
乙第9号証は、「顔のない女」という放送番組のデータであるところ、該データからは、どのような撮影協力がされたのかは不明であり、またそもそも本件商標は掲載されていないため、本件商標の使用を立証するものではない。
(7)乙第10号証及び乙第11号証について
乙第10号証は、被請求人の代表取締役の名刺の写しであり、乙第11号証は、被請求人が資料配布等に用いているファイルであると、被請求人は主張するが、何れも、商標法第2条第3項各号にいう「使用」に該当する行為を立証するものではない。
(8)乙第12号証ないし乙第17号証について
乙第12号証ないし乙第17号証は、いずれのウェブページにも本件商標は掲載されておらず、本件商標の使用を立証するものではない。
(9)乙第18号証及び第38号証について
乙第18号証は、株式会社サイカンシステム(以下「サイカンシステム社」という。)からのエンバーミング依頼に対して、被請求人が発行した請求書の写しであると、被請求人は主張するが、かかる請求書は、被請求人において任意に発行することが可能であるところ、該請求書をサイカンシステム社が受領し、対応する金額を被請求人に支払った旨の立証が何らされていないから、乙第18号証は、客観性に欠ける。
被請求人は、陳述要領書において、「金額が塗りつぶされていない乙第18号証に係る請求書」として、新たに乙第38号証を提出した。
しかしながら、両書証を比較すると、乙第18号証は、全体として文字が擦れているのに対して、乙第38号証は比較的鮮明な写しとなっている点で相違する。実際、両書証を重ね合わせて光に透かして見て、例えば「請求書」の文字部分を合せてみると下部に位置する「振込先」として口座番号等が記載されている四角の囲いがずれ、「合計金額」の四角の囲いを合わせると、「請求書」の文字部分や「振込先」の文字部分の位置とずれてしまう。乙第38号証を95%、96%及び97%という微妙なサイズで縮小した(甲2?甲4)上で、乙第18号証と重ね合わせてみたが、乙第18号証は、いずれの縮小サイズとも一致することはなかった。
以上からすれば、乙第38号証は、乙第18号証とは別異に作成された書類であることは明白であるから、乙第38号証は、乙第18号証において黒塗りされていた数字を示すものとはなり得ない。
ちなみに、乙第18号証は、平成26年(2014年)12月31日付けの請求書であり、「当月エンバーミング件数」として126件と記載されている。そして、乙第23号証ないし乙第27号証は、何れもサイカンシステム社宛て依頼書であって、乙第18号証の請求書が発行された月に記載された依頼書であると推測可能である。
しかしながら、依頼書の右上には、「723」、「788」、「820」、「822」及び「852」という番号が記載されており、仮にこれが依頼書に付される通し番号だと推測して、乙第27号証(12月29日付け)の「852」から乙第23号証(12月2日付け)の「723」を引くと129という数字となり、乙第18号証に記載の「当月エンバーミング件数」の126件とはつじつまが合わないこととなる。
また、乙第18号証及び乙第38号証は、該取引についての関連資料の提出がされていないこととあいまって、著しく客観性に欠け、立証として甚だ不十分といわざるを得ない。
(10)乙第19号証ないし乙第22号証について
乙第19号証ないし乙第22号証は、エンバーミングが施された遺体を海外へ移送する際に必要となる書面の写しであると、被請求人は主張するが、これらは、被請求人が遺体を海外へ移送する際に必要となる書面を作成したことを示すのみであって、被請求人がエンバーミングを施したことを証するものではない。
乙第19号証の書面は、いわば事務手続きの代行に係る書面とみられ、こうした事務手続代行の役務は、第35類に属すべきものであり、取消請求対象の役務に係る使用とは無関係のものであることは明白である。
乙第20号証(梱包証明書)、乙第21号証(エンバーミング証明書)及び乙第22号証(非感染証明書)についても、こうした証明書が常にエンバーミングを行った者のみが発行する書類であることについては何ら裏付けがされていない。
いずれの書類も、被請求人が、本件取消請求対象となっている役務につき本件商標を使用したことを証するものではない。
(11)乙第45号証及び乙第46号証について
被請求人は、乙第45号証として、被請求人がサイカンシステム社宛てに発行した請求書の写し、及び乙第46号証として被請求人の通帳写しを提出し、これにより、「被請求人とサイカンシステム社との間に、本件取引があった」と主張している。
しかしながら、被請求人提出の乙第12号証、乙第13号証及び乙第15号証によれば、乙第45号証の請求書の宛先として記載されているサイカンシステム社は、被請求人が属するアルファクラブグループに属する法人として記載されているから、単に同じグループ内で何らかの理由による金銭の移動があったことを証するものにすぎない。
一方、商標法上の役務は、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」であり。ここでいう「他人」は、自己以外の者を意味するから、同じグループ内に属する企業同士については、「他人」とはいい得ないことは明白である。
また、乙第6号証等によれば、被請求人が属するアルファクラブグループの葬祭事業内容には、「各種葬儀の施行」、「法事・法要に関するアドバイスおよび手配」、「仏壇・仏具・墓所・墓石・他用品の紹介」、「料理・返礼品の手配」、「生花等供物の手配」、「エンバーミングの施行」が列記されているが、ここに列記されている葬祭事業内容は、必ずしも「独立して商取引の目的たりうべきもの」には該当しない。
一般に、葬儀の流れは、納棺→通夜→告別式→火葬という手順で進められが、これらは全て同じ葬儀社によって、葬儀に係る一連の儀式として取り仕切られ、エンバーミングの施行は、このうち納棺に際して付随的に施されるものであるから、葬儀の施行とは別個独立して提供されるものには該当し得ない。言い換えれば、エンバーミングの施行は、アルファクラブグループが請け負う葬儀の施行に付随して提供されるものであるから、商標法上の役務である「独立して商取引の目的たりうべきもの」には該当しないものというべきである。
(12)乙第47号証ないし乙第51号証について
乙第47号証ないし乙第51号証は、何れも、エンバーミング依頼書の構成を説明するものにすぎず、これらによって、何ら取消請求対象の役務が提供されたことを示すものではない。
(13)乙第52号証ないし乙第55号証について
乙第52号証ないし乙第55号証は、乙第45号証に係る「当月エンバーミング件数」を裏付けるために提出されたものと推測されるが、上述のとおり、乙第45号証は、単に同じグループに属する企業間で金銭の移動があったことを示すにすぎないので、何ら取消請求対象の役務が提供されたことを示すものではない。
(14)まとめ
以上のとおり、被請求人提出の書類のいずれも、要証期間内に本件商標を指定役務「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」につき使用していたこと客観的に立証するものではない。
したがって、本件商標が商標権者、使用権者のいずれによっても、本件審判請求の取消対象役務中のいずれの指定役務についても使用されていないことは明らかであるから、本件商標は商標法第50条の規定により登録取消を免れないものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第55号証を提出した。
1 審判事件答弁書、平成27年4月23日付け上申書及び同年11月6日付け口頭審理陳述要領書における主張
本件商標は、第45類「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」について、要証期間内に日本国内において、被請求人及び使用権者により使用されている。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、要証期間内である平成26年12月1日付けの被請求人及び被請求人の関連会社(親会社)であるアルファクラブ社が、NEXUS社へ、広告用リーフレット及び広告用A4版チラシの制作を注文する旨の注文書の写しである。
該注文書には、本件商標並びに被請求人の名称及び住所が記載されている。また、リーフレット及びA4版チラシが「エンバーミング」に関するものであること、納期が要証期間内である平成26年12月10日であること及び引渡場所が被請求人本社であることがわかる。なお、該注文書は、商標法第2項第3項第8号の「取引書類」に該当する。
この事実から、本件商標がエンバーミングについて、要証期間内に、被請求人によって使用されていることは明らかである。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
乙第2号証及び乙第3号証は、乙第1号証のリーフレット及びA4版チラシであり、いずれにも本件商標並びに被請求人の名称及び住所が記載されており、該リーフレット及びA4版チラシの内容が、「エンバーミング」に関する広告であることは明らかである。また、乙第1号証の記載内容から、納期が平成26年12月10日であること、引渡場所が被請求人の本社であることから、同年12月10日の時点で、被請求人が、該リーフレット及びA4版チラシを本社内で展示し、頒布していたことがわかる。
よって、本件商標がエンバーミングについて、要証期間内に、被請求人によって使用されていることは明らかである。
(3)乙第5号証について
乙第5号証は、乙第2号証に記載されているフリーダイヤル(0120-81-3310)の申込書等であり、乙第5号証に記載されている申込年月日や工事希望年月日、上記(2)及び本フリーダイヤルが乙第2号証のリーフレットに記載されている事実から、平成25年9月26日以降、継続的に本件商標が、エンバーミングについて、被請求人によって使用されていることがうかがえる。
なお、代表契約者は「アルファクラブ社」となっているが、乙第12号証ないし乙第17号証から、被請求人とアルファクラブ社との関係は明らかで、アルファクラブ社が代表して契約し、被請求人も使用していることは明らかである。
(4)乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証について
ア 乙第4号証は、被請求人の親会社であるアルファクラブ社が運営する「さがみ典礼」宛の、エンバーミングの依頼書の写しである。該依頼書は、要証期間内である平成26年12月30日に依頼者により提出されたものであり、本件商標、及び、エンバーミングの処置事業者として被請求人の名称及び承認番号(IFSA承認番号0001)が記載されている。なお、該依頼書は、商標法第2項第3項第8号の「取引書類」に該当する。ちなみに、乙第12号証ないし乙第17号証から、被請求人とアルファクラブ社が関連会社であること、また、該依頼書に記載されている「アイエムエスジャパン株式会社」が被請求人であることは明確である。
イ 乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証は、エンバーミングの依頼書であり、このエンバーミング事業は、被請求人とアルファクラブ社又はサイカンシステム社が共同で行っているものであり、このエンバーミング事業に関しては、アルファクラブ社やサイカンシステム社は、いわゆる窓口の役割を担い、実際にエンバーミングを行っているのは、被請求人である。そのことは、被請求人の名称が「処理事業者」として大きく明記されていること、乙第32号証ないし乙第36号証の請求書から、乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証に係るエンバーミングに関する依頼書のフォームは、被請求人がNEXUS社に発注して作成したものであることからも明らかである。
以上の点から、乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証に係る依頼書は、アルファクラブ社(及びサイカンシステム社)の、商標法第2条第3項第8号の「取引書類」であるのみならず、被請求人の、同号の「取引書類」にも該当するものである。そして、乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証に係るエンバーミングに関する依頼書には、本件商標、被請求人の名称、要証期間内に属する年月日が明確に記されている。また、この依頼書に明記されている本件商標は、被請求人の「エンバーミング事業」について出所表示機能を有し、商標として機能していることは明らかである。
なお、平成25年(行ケ)第10123号審決取消請求事件の判決例(乙44)に鑑みても、乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証に係る依頼書は、商標法第2条第3項第8号の取引書類に該当することは明らかである。
ウ よって、乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証をもって、被請求人は、要証期間内に本件商標をエンバーミングについて使用していたことは証明されている。
ちなみに、乙第37号証から、サイカンシステム社が被請求人の関係会社であることは明らかで、被請求人は、アルファクラブ社及びサイカンシステム社に対し、本件商標の使用を指定役務の範囲内において使用することを許諾していることも明らかである。
(5)乙第6号証ないし乙第11号証について
乙第6号証ないし乙第9号証から、被請求人は、少なくとも平成13年から現在まで、「エンバーミング」事業を行っていることが明らかである。
本件商標が、平成22年11月1日に出願され、平成23年6月24日商標登録されている事実、平成13年から現在まで、「エンバーミング」事業を行っている事実、日常的に使用されている被請求人代表取締役の名刺(乙10)や資料配布用のファイル(乙11)にも本件商標、並びに、被請求人の名称及び住所が記載されている事実を併せて総合的に考察してみると、少なくとも、本件商標がエンバーミングについて、要証期間内に被請求人によって使用されていることは十分にうかがえる。
なお、乙第12号証ないし乙第17号証から、被請求人とアルファクラブ社と関係が明らかになり、また、乙第6号証及び乙第8号証からアルファクラブグループのエンバーミング事業を被請求人が行っていることが明らかな点から、被請求人とさがみ典礼との関係も明らかである。
(6)乙第18号証及び乙第38号証について
乙第18号証は、サイカンシステム社からのエンバーミングの依頼に対して、被請求人が発行した請求書の写しである。該請求書には、本件登録商標、並びに、被請求人の名称及び住所が記載されている。また、該請求書の件名には、「エンバーミング料金として」と記載されており、該請求書が「エンバーミング」に関するものであることがわかる。さらに、該請求書は、その日付から平成26年12月31日に発行されたことが明らかである。
乙第38号証は、金額が塗りつぶされていない乙第18号証に係る請求書である。
本件商標が明記されている請求書(乙18(乙38))、及び依頼書(乙23?乙27)には、被請求人の名称、要証期間に属する年月日も明記されていることから、被請求人が本件商標をエンバーミングについて使用していたことは明らかである。そして、該請求書は、該依頼書とあいまって、商標法第2条第3項第8号の被請求人の「取引書類」に該当することは明らかであり、また、逆に該依頼書も、該請求書とあいまって、商標法第2条第3項第8号に規定の被請求人の「取引書類」に該当することも明らかである。
(7)乙第19号証ないし乙第22号証(及びそれらの和訳文である乙第39号証ないし乙第42号証)について
ア 乙第19号証は、エンバーミングが施された遺体を海外へ輸送する際に必要となる各書面のいわゆるカバーページであり、梱包証明書、国際輸送のためのエンバーミング証明書、非感染証明書、死亡届/死亡診断書(死体検案書)の日本語の原本、及び、死亡届/死亡診断書(死体検案書)の英訳を添付する書面である。そして、乙第19号証には、被請求人の住所、電話番号、ファクシミリ番号及び名称が明記され、最上段には本件登録商標が明記され、最下段には、被請求人従業員であって、国際輸送手続の部署責任者であるTの記名及び署名が存する。Tは、乙第19号証及び乙第43号証の名刺の写しから、被請求人の従業員であり、被請求人の従業員として署名していることは明らかである。
イ 乙第20号証は、乙第19号証に添付された梱包証明書の写しである。この梱包証明書は、遺体を海外へ輸送する際に必要となる書面であり、エンバーミングを施した遺体のみが、棺に納められていること、輸送用コンテナには該棺のみが納められていることを証明する書類で、エンバーミングを施した者(会社)が発行する書類である。そのため、乙第20号証に係る梱包証明書は、エンバーミングに関する書類であることは明らかである。そして、乙第20号証には、Tの記名及び署名が存し、また、文中には、被請求人の名称及び年月日が記載されている。
ウ 乙第21号証は、乙第19号証に添付された国際輸送のためのエンバーミング証明書の写しである。この国際輸送のためのエンバーミング証明書は、エンバーミングを施した遺体を海外へ輸送する際に必要となる証明書であり、施したエンバーミングの内容を証明・保証する書類で、エンバーミングを施した者(会社)が発行する書類である。乙第21号証には、被請求人の名称及び被請求人がエンバーミングを行った旨、被請求人従業員のエンバーマーであるSの記名及び署名、書類作成年月日が記載され、本件登録商標が明記されている。エンバーマーであるSは、乙第21号証及び乙第43号証の名刺の写しから、被請求人の従業員であり、被請求人の従業員として署名していることは明らかである。
エ 乙第22号証は、乙第19号証に添付された非感染症証明書の写しである。この非感染症証明書は、エンバーミングを施した遺体を海外へ輸送する際に必要となる証明書であり、エンバーミングの対象となった故人が感染症を有していないことを証明する書類で、エンバーミングを施した者(会社)が死亡診断書や主治医による死亡宣告、該故人の近親者や友人から得た情報に基づいて発行する書類である。
乙第22号証には、被請求人の名称及び被請求人が死亡診断書や主治医による死亡宣告、当該故人の近親者や友人から得た情報に基づいて供述した旨、Tの記名及び署名、書類作成年月日が記載され、本件登録商標が明記されている。
オ 乙第19号証ないし乙第22号証は、それらの記載内容から、被請求人がエンバーミングを適切に行ったことを対外的に証明、保証する書類であり、商標の使用に該当する書類、すなわち、商標法第2条第3項第8号の被請求人の「取引書類」であることは明らかであり、また、エンバーミングの提供に当たり、その提供を受ける者(エンバーミングの依頼者)が、エンバーミングが適正に行われたことを証明するのに直接的に必要となる書面であることから、これらの書面に本件商標を付す行為は、商標法第2条第3項第3号の使用にも該当する。そして、これらの書面に記載された年月日から、いずれも要証期間内に作成された書面であることは明らかである。
カ エンバーミングを施した遺体の国外輸送について
被請求人が属するアルファクラブグループにおける遺体の国外輸送手続は、エンバーミングを含め、被請求人が行っている。
外国人が日本国内において亡くなり、遺体を本国へ返す場合、各大使館における手続、航空便の手配などに必要な書類の多くは英語で作成する。現段階で、英語の知識に長け、エンバーミングを行なえる従業員は、被請求人に属しているため、国外輸送に関する一連の手続は、エンバーミングを含めて被請求人が行っている。また、各大使館は東京に集中しており、遺体も成田国際空港からの輸送が大多数であるため、東京に近い埼玉県に存する被請求人が国外輸送の全手続を行うことにはメリットがあり、何ら不自然なことはない。
このような理由から、被請求人が属するアルファクラブグループにおいては、被請求人がエンバーミングを含めた遺体の国外輸送手続を行っている。
キ 以上のとおり、被請求人がエンバーミングに関し、本件商標を要証期間内に使用していたことは、乙第19号証ないし乙第22号証から明らかである。

2 平成27年12月18日付け及び同28年2月8日付け上申書における主張
(1)乙第45号証及び乙第46号証について
被請求人がサイカンシステム社に発行した、乙第18号証(乙38)に係る請求書の写しを、乙第45号証として提出する。この乙第45号証は、サイカンシステム社が保管する、正に乙第18号証(乙38)の原本の写しである。乙第45号証の内容は、当然に乙第18号証(乙38)と同内容である。
乙第45号証及び既提出のエンバーミングに関する依頼書(乙23?乙27)から、要証期間内である平成26年12月に、実際にエンバーミングの依頼があり、被請求人によりエンバーミングが行われたことは明らかであるが、さらに、この事実を確固たるものとするため、実際にサイカンシステム社から被請求人に、乙第45号証に係るエンバーミングに関する費用の振込があったことを、乙第46号証をもって証明する。
乙第46号証は、被請求人の通帳の写しであり、乙第45号証に係る金額の振り込みが平成27年1月26日にあったことが確認できる。
被請求人とサイカンシステム社との間に、本件取引があったことは明らかである。
そして、乙第45号証の請求書は、依頼書(乙23?乙27)、通帳の写し(乙46)とあいまって、商標法第2条第3項第8号の被請求人の「取引書類」に該当することは明らかである。
以上のとおり、乙第45号証(乙18、乙38)、乙第23号証ないし乙第27号証及び乙第46号証から、要証期間内に、被請求人が本件商標を「エンバーミング」について使用していたことは明らかである。
(2)乙第47号証ないし乙第51号証について
乙第47号証ないし乙第51号証は、乙第4号証及び乙第23号証ないし乙第31号証にかかるエンバーミングの依頼書(未使用分)を撮影した写真であり、それらをもって、エンバーミングの依頼書の構成の説明をする。
該依頼書は、3枚綴りの複写式の用紙であり、1枚目がサイカンシステム社又はアルファクラブ社の控、2枚目が依頼人の控(「ご依頼者様控」)、3枚目が被請求人の控(「自社控」)となる(先般の口頭審理の際は、1枚目と2枚目を逆に説明してしまったかもしれない。)。この点は、乙第49号証ないし乙第51号証から明確である。
そして、乙第48号証にあるとおり、3枚目のみ、その裏面に「ご遺体トリートメント依頼書」、「EMBALMING REPORT」が印刷されている。
ちなみに、乙第4号証には、乙第23号証ないし乙第31号証にあるサイン等がないが、これは単に保管方法の相違、担当者の相違にすぎない。
なお、乙第47号証ないし乙第51号証に係る依頼書は、アルファクラブ社宛の依頼書であるが、サイカンシステム社宛の依頼書も同じ様式である。
(3)乙第52号証ないし乙第55号証について
乙第52号証ないし乙第55号証は、平成26年12月に被請求人が行ったエンバーミングの内、サイカンシステム社ヘの依頼分の、センター毎の一覧表の写しである。乙第52号証ないし乙第55号証から、平成26年12月に、サイカンシステム社経由のエンバーミングの依頼が、126件であることは明確で、乙第45号証に係る「当月エンバーミング件数」と一致する。
(4)乙第23号証ないし乙第27号証の通し番号について
乙第23号証ないし乙第27号証の上部に記載されている「通し番号」は、被請求人が運営するエンバーミングを行うための「センター(施設)」毎に付される番号である。また、このセンター毎に付される番号には、サイカンシステム社宛の依頼とアルファクラブ社宛の依頼が混在している。そのため、請求人が上記第2、2(9)で主張する計算(852-723)は意味をなさない。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、「同じグループ内の他企業同士は、商標法上の『他人』には該当しない。」旨主張しているが、同じグループ内の企業であっても、商標法上は他人の扱いであり、請求人によるこの主張は、失当である。
イ 請求人は、「『エンバーミングの施行』が、『仏壇・仏具・墓所・墓石・他用品の紹介』や一般的な葬儀の流れを例に挙げ、独立して商取引の目的たり得るべきものには該当せず、商標法上の役務には該当しない。」旨主張しているが、「エンバーミングの施行」は、葬儀の有無にかかわらず行われているものであり、このことは、例えば、被請求人提出の乙第19号証ないし乙第22号証の遺体の海外輸送に関する書類からも明らかである。

3 まとめ
以上の理由及び既提出の証拠から、要証期間内に、被請求人が本件商標を「エンバーミング(遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復)」について使用していたことは明らかであるから、本件審判請求には理由がない。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第25号証は、エンバーミングの依頼書であるところ、乙第25号証の1葉目には、右側の上部に「自社控」、「#820」(数字は手書き)及び「依頼書」の記載があり、その下に「株式会社サイカンシステム サイカン典礼 御中」の記載とその右に「S」の押印があり、また、「ご依頼日:2014年12月24日」(数字は手書き)の記載、「左記の『IFSA エンバーミングについての説明書』の内容についての説明を受け、同意しましたので、エンバーミング処置を依頼します。」の記載があり、「お名前(自書)」、「ご住所」及び「電話番号」の記載欄の記載内容は黒塗りされている。そして、下部に「処置事業者(IFSA承認番号0001)」及び「心に残るお別れを・・・エンバーミング」の記載があり、別掲2のとおりの商標(以下「使用商標」という。)が表示され、その右側に「アイエムエスジャパン株式会社」の記載がある。
また、左側には、上部に「IFSA エンバーミングについてのご説明書」の記載があり、その下に、「1.目的」、「2.処置の内容」、「3.留意事項」に関する説明、及び「4.自主基準」として「エンバーミング処置はIFSA自主基準に則り、適正に実施します。」、「IFSA認定の技術者により適正な環境で実施します。」等の記載があり、下部に「エンバーミングの処置に関することは、下記宛お問い合わせください。一般社団法人 日本遺体衛生保全協会(IFSA)」の記載がある。
乙第25号証の2葉目には、左側に「御遺体トリートメント依頼書」の記載があり、複数の項目に手書きで丸印などが記載されており、また、右側上段に「EMBALMING REPORT」、「CASE NO:820」(数字は手書き。)及び「DATE:12/24」(数字は手書き。)の記載があり、「Embalmer name」の欄に「S」の押印があり、その他複数の項目に手書きで丸印などが記載されている。
(2)乙第43号証の下段は、S氏の名刺であるところ、「アイエムエスジャパン株式会社」、「IFSA認定 スーパーバイザー」及び「エンバーマー」の記載がある。
(3)乙第47号証ないし乙第51号証は、エンバーミングの依頼書で未使用分を撮影した写真の写しである。
これらから、エンバーミングの依頼書は、3枚綴りの複写式の用紙であり(乙47)、3枚目のみ、その裏面に「ご遺体トリートメント依頼書」、「EMBALMING REPORT」が印刷されていることが把握できる(乙48)。
また、2枚目には、「ご依頼者様控」の記載(乙50)、3枚目には「自社控」の記載(乙51)がある。
なお、乙第47号証ないし乙第51号証に係る依頼書は、アルファクラブ社宛の依頼書であるが、被請求人は、サイカンシステム社宛の依頼書も同じ様式である旨述べている。
(4)乙第33号証は、平成25年8月31日付けのNEXUS社から「アイエムエスジャパン株式会社 御中」と記載された請求書であるところ、「件名 エンバーミング依頼書」の記載があり、「摘要」の欄に、「A3サイズ 1/1色 複写3枚綴り 3000枚」及び「サイカン典礼版印刷費」の記載がある。
そして、該印刷費は、下記(5)のとおり、サイカンシステム社のホームページ(乙37)の「事業概要」の「葬祭事業」の項に、「『サイカン典礼』ブランドのご葬儀を提供しております。」の記載があり、また、乙第25号証のエンバーミング依頼書に「株式会社サイカンシステム サイカン典礼 御中」と印刷されていることから、宛先が「サイカンシステム サイカン典礼」の依頼書、すなわち、乙第25号証の依頼書の印刷費と認められる。
(5)乙第37号証は、サイカンシステム社のホームページであるところ、1葉目に、「事業概要」の「葬祭事業」として、「『サイカン典礼』ブランドのご葬儀を提供しております。埼玉県内に10の直営斎場を運営いたしております。」の記載があり、3葉目に「グループ会社」として、「アイエムエスジャパン株式会社」の記載がある。
(6)乙第45号証は、平成26年12月31日付けの被請求人からサイカンシステム社宛の請求書であるところ、左上に使用商標が表示され、「エンバーミング料金として、下記の通り、ご請求申し上げます。」の記載と「当月エンバーミング件数」の欄に「126件」及び「合計金額 7,484,400円」の記載があり、また、乙第46号証は、被請求人の普通預金通帳であるところ、「27??1-26」の「お取引内容」に「振込 カ)サイカンシステム」、「お預かり金額」に「7,484,400」の記載があることからすると、被請求人は、平成26年12月分のエンバーミング126件に関して、平成26年12月31日付けでサイカンシステム社に料金の請求をし、平成27年1月26日にサイカンシステム社は該料金を支払ったことが認められる。
(7)乙第52号証ないし乙第55号証は、被請求人の主張によると、平成26年12月に被請求人が行ったエンバーミングのうち、サイカンシステム社への依頼分の一覧表であるところ、上部には、「エンバーミング請求明細書」、「サイカン」、「平成26年12月出棺ベース」の記載があり、「出棺日」、「施行日」、「施行者名」及び「依頼書」の項目に記載があり、例えば、乙第52号証の「施工日」が「24」の蘭には、「施工者名」の項に「S」、「依頼書」の項に「820」の記載がある。そして、乙第52号証ないし乙第55号証の件数を合計すると126件である。

2 上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断することができる。
(1)エンバーミングの依頼者は、平成26年12月24日に、エンバーミング依頼書にエンバーミングに関する依頼内容を記載し、サイカンシステム社宛てに、エンバーミングを依頼した(乙25)。該依頼書には、エンバーミングの説明書として、エンバーミングは、IFSAの基準に則り、IFSA認定の技術者により行われることが記載され、また、エンバーミング処理事業者として、使用商標とIFSA承認を得ている被請求人の名称が表示されている。
また、該依頼書の裏面には、「御遺体トリートメント依頼書」及び「EMBALMING REPORT」が印刷されているところ、「EMBALMING REPORT」には、S氏の押印があるから、S氏によって、「御遺体トリートメント依頼書」及び「EMBALMING REPORT」が作成されたと推認できる。
S氏は、被請求人の従業員、かつ、エンバーマーであるといえる(S氏の名刺(乙43))。
そして、該依頼書は、3枚綴りの複写式の用紙であり(乙47)、依頼書には、「株式会社サイカンシステム サイカン典礼 御中」の記載があることから、1枚目は、依頼先であるサイカンシステム社用であり、また、2枚目には「ご依頼者様控」の記載がある(乙50)ことから依頼者用控えであり、さらに、3枚目には「自社控」の記載がある(乙51)ところ、エンバーミング依頼書の印刷費が被請求人宛てに請求されていること(乙33)からすれば、被請求人がエンバーミング依頼書を作成したといえるから、「自社」の表示がある3枚目は、被請求人用(控え)とみるのが自然である。
そうすると、乙第25号証のエンバーミング依頼書は、「自社控」の表示があることから、平成26年12月24日付けのエンバーミングの依頼に関する被請求人の控えであり、また、同内容の2枚目が依頼者の控えとして、依頼者に渡されたとみて差し支えない。
(2)上記1(6)及び(7)からすれば、被請求人は、サイカンシステム社から依頼された平成26年12月分のエンバーミング126件に関して、サイカンシステム社に料金の請求をし(乙45)、サイカンシステム社は該料金を支払った(乙46)こと、そして、該請求書の明細には、例えば、乙第52号証の「施工日」が「24」の蘭には、「施工者名」の項に「S」、「依頼書」の項に「820」の記載があるところ、これらは、平成26年12月24日付けのエンバーミング依頼書(乙25)の記載内容と一致していることからすると、被請求人は、サイカンシステム社からの依頼により、平成26年12月24日付けの「エンバーミング依頼書」に基づいてエンバーミングを行ったといえる。
(3)被請求人は、「エンバーミング事業は、被請求人とアルファクラブ社又はサイカンシステム社が共同で行っているものであり、このエンバーミング事業に関しては、アルファクラブ社やサイカンシステム社は、窓口の役割を担い、実際にエンバーミングを行っているのは、被請求人である。エンバーミング依頼書は、被請求人の『取引書類』にも該当する。」旨主張している。
これについてみると、エンバーミング依頼者は、上記(1)のとおり、平成26年12月24日にエンバーミングをサイカンシステム社宛てに依頼し、被請求人は、上記(2)のとおり、サイカンシステム社からの依頼により、平成26年12月24日付けの「エンバーミング依頼書」に基づいてエンバーミングを行ったと認められる。また、上記(1)のとおり、エンバーミング依頼書は、被請求人が印刷を発注して作成したものであり、エンバーミング依頼書には、エンバーミングがIFSAの基準に基づいて行われることや処置事業者がIFSAの承認を得ている被請求人であることが大きく表示され、被請求人の従業員であり、かつ、エンバーマーとして、S氏が「EMBALMING REPORT」の作成に関わっていること、さらに、上記1(5)のとおり、サイカンシステム社の関連会社として被請求人が掲載されていることなどを総合して考察すると、エンバーミング事業は、サイカンシステム社と被請求人が共同して行っており、サイカンシステム社は、被請求人が行うエンバーミングの受付窓口としてエンバーミング依頼書を受け付け、エンバーミング依頼者に控えを渡した、すなわち、被請求人は、サイカンシステム社を通じてエンバーミングに関する取引書類をエンバーミング依頼者に頒布したということができる。
(4)上記1(1)のとおり、エンバーミング依頼書には、使用商標が表示されているところ、使用商標は別掲2のとおり、楕円形内に多少図案化した「IMS」の文字を配してなるものであり、これは、別掲1の構成態様からなる本件商標と色彩が相違するものの、同一の構成態様からなるといえるものである。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(5)本件商標は、エンバーミングに関する取引書類に使用されたといえるところ、エンバーミングは本件商標の指定役務中の「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」と同義である(この点に関して、被請求人及び請求人において争いはない。)から、本件商標を請求に係る役務「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」に使用したこと、明らかである。
(6)上記(1)のとおり、乙第25号証のエンバーミング依頼書がエンバーミング依頼者に頒布されたのは、平成26年12月24日であり、要証期間内である。
(7)まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に本件商標と社会通念上同一の商標を「エンバーミング(遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復)」に関する取引書類に付して頒布したといえる。
そして、被請求人による上記行為は、「役務に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものである。

3 むすび
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者が本件審判の請求に係る指定役務について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定役務、第45類「遺体の殺菌・消毒・洗浄・防腐処理又は遺体の損傷の修復」について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標(色彩は原本を参照されたい。)




別掲2 使用商標



審理終結日 2016-07-14 
結審通知日 2016-07-19 
審決日 2016-08-23 
出願番号 商願2010-85072(T2010-85072) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X45)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 原田 信彦
土井 敬子
登録日 2011-06-24 
登録番号 商標登録第5420824号(T5420824) 
商標の称呼 アイエムエス、イムス 
代理人 齋藤 貴広 
代理人 齋藤 晴男 
代理人 村田 実 
代理人 神林 恵美子 

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