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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X16
管理番号 1323578 
審判番号 取消2015-300598 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-08-13 
確定日 2016-12-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5366857号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5366857号商標の指定商品中、第16類「印刷物」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5366857号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成22年5月19日に登録出願、第16類「文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,紙類,印刷物」を指定商品として、同年11月5日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成27年8月26日であり、本件審判の請求の登録前3年以内(平成24年8月26日ないし同27年8月25日)を、以下「要証期間内」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁、口頭審理における陳述及び上申書による主張を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。

1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第16類「印刷物」について、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁
被請求人の答弁書における主張のうち、「3.商標『like-it』の使用について」における被請求人の主張は、提出された証拠に基づいても、本件商標を請求に係る指定商品「印刷物」に使用した事実は立証されていない。
乙第3号証は、被請求人の総合カタログが示されたホームページの抜粋であるが、ここに示された「製品ラインナップ」にも指定商品「印刷物」についての本件商標の使用の事実は見当たらない。
乙第4号証についても同様に、本件指定商品「印刷物」について本件商標を使用している事実は存在しない。
乙第5号証は、件外ライクイット株式会社が被請求人と人的関係が深いことを示しているにすぎない。

2 口頭審理陳述要領書における陳述
被請求人は、陳述要領書において、乙第18号証ないし乙第31号証を証拠として、本件商標を本件取消請求に係る指定商品の一部である「カタログ」に使用していると主張している。
しかしながら、被請求人が提出した証拠では、例えば「くつホルダー」や「キッチンツールケース」、「ゴミ箱」など、広く家庭用品に本件商標を使用している事実が見受けられるものの、本件商標を商品「カタログ」に使用している事実はない。そもそも、使用商標とその対象である商品の関係は、その対象たる商品について自他商品識別機能を発揮させる使用態様が問題となる。
ところが、被請求人が提出した証拠では、商品「くつホルダー」など、カタログに掲載された各商品について本件商標が自他商品識別機能を発揮することを目的として使用しているのであり、本件商標の使用の対象は商品「くつホルダー」を始めとする掲載商品である。
つまり、乙第18号証、乙第19号証のカタログは、そこに掲載された多数の商品を宣伝するための媒体であるにすぎず、「カタログ」そのものに本件商標が使用されているのではない。
よって、被請求人が新たに提出した証拠によっても、本件商標が本件請求に係る指定商品に使用している事実は立証できない。

3 上申書における主張
(1)請求人が乙第19号証の総合カタログの商品性を争っていないとの被請求人の主張は誤解である。
請求人は、カタログそのものは特許庁の「商品及び役務の区分」に基づく「類似商品・役務審査基準」において第16類「印刷物」に属するものであり、一般論として商品足り得るということは否定しない。
しかしながら、本件取消審判手続で争っている事実は、本件商標が取消請求に係る指定商品である「印刷物」に使用されているか否かである。
この点について、請求人は乙第19号証に示された総合カタログでは、本件商標が印刷物であるカタログに使用している事実を立証することができないと主張しているのである。
(2)被請求人が種々述べるところは、カタログそのものが一般的な商品に該当するから、これに本件商標が付されていることをもって十分であるということである。
しかしながら、当該商標の使用は、乙第19号証に係る総合カタログを他の商品と識別するために使用しているのではなく、当該総合カタログに掲載された、例えば「くつホルダー」や「キッチンツールケース」など、本件取消審判請求に係る指定商品以外の商品の宣伝広告を目的として使用されていることは明らかである。
この点について、被請求人は上申書において、「商品『カタログ』の品質を保証する機能を発揮するものである。」と主張しているが、商標の使用の概念を誤った主張にすぎない。
(3)上申書において、被請求人は、「カタログの対価は、商品の注文がされたときの商品の対価に含まれていると考えることができる。まったくの無償ではなく、間接的ではあるが対価は支払われているのである。」と主張している。
一般論として、ある商品を宣伝するために制作し、配布するカタログなどは当然その制作コストが発生している。しかし、このようなコストは初期経費、あるいは継続経費として計算され、販売の対象とする商品の原価に算入するものである。
つまり、対価とは、他人に財産・労力などを提供した報酬として受け取る財産上の利益を意味するものであって、単に経費を意味するものではない。
被請求人の主張であれば、被請求人が総合カタログに掲載して販売する各種商品には、総合カタログの付加価値(総合カタログが商品であり、その配布によって得ようとする利益)までも対価として算入していることになるが、通常の商取引ではありえない。
被請求人が主張するところの事実は、総合カタログの制作に際してはコスト(経費)が発生するが、これは各種商品の原価に算入しているということと推測する。であれば、このような経費は対価とは言わないことはいうまでもなく、被請求人の主張は失当である。
被請求人は、新たに乙第32号証ないし乙第39号証を提出しているが、本件請求の趣旨との関係において何を立証しようとしているのか不明である。よって、これらの証拠についての請求人の主張は必要ないと考える。
(4)まとめ
被請求人は、上申書及び新たに提出した証拠を総合しても、本件商標を請求に係る指定商品である「印刷物」に要証期間内に商標権者又は使用権者が使用した事実を立証していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由、口頭審理における陳述及び上申書による主張を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第39号証を提出した。
なお、被請求人は、答弁の理由において、「多分別ミニシール」についての本件商標の使用を主張したが、口頭審理において、該主張を撤回した。請求人は、これに同意した。

1 答弁の理由
被請求人は、1984年以来、ほぼ毎年のようにグッドデザイン賞を受賞すると共に、なら・グッドデザイン賞を受賞し、大阪グッドデザイン選定に選定され、さらにアメリカ・シカゴにおいて優れた製品に与えられるデザイン賞を受賞していることからも明らかなとおり、常に斬新で優れたデザインの商品を提供し続けている。
被請求人は、商標「like-it」を全商品について使用するハウスマークとして使用しており(乙3、乙4)、昭和61年には、関連会社として商標「like-it」の称呼を商号に取り入れて「ライクイット株式会社」を設立し(乙5)、被請求人とともに商標「like-it」を使用している。被請求人の代表取締役であるAが、「ライクイット株式会社」の代表取締役も務めており、ライクイット株式会社は、本件商標「like-it」の商標権についての通常使用権者であり、被請求人において製造した商品について、被請求人とともに販売を担っている会社である。
このように、長年にわたって斬新な優れた商品を提供し、これらの商品に使用していることにより、商標「like-it」といえば、被請求人の商標として広く知られるに至っている。
そして、近時においては、バスケットなどの日用品や文房具などのプラスチック製品に限らず、周辺の商品についても企画し、製造販売をしており、広範囲に知られるに至っている。

2 口頭審理陳述要領書及び口頭審理陳述要領書(2)における陳述
(1)本件商標の使用
被請求人は、本件商標を商品カタログに使用している。
乙第18号証は、被請求人が顧客に配布すなわち無償譲渡している総合カタログの表紙である。被請求人の提供する商品は、毎年新規なデザインのものが加わるため、ファイル形式にして、新たなページを容易に加えたり、廃版になった商品のページを除いたりできるようになっている。
乙第19号証は、平成27年7月末に配布していた内容のカタログである。
乙第20号証は、総合カタログ用表紙の平成26年1月10日付け発注書である。1年間に平均800冊の総合カタログが使用されるので、4年分として3200部が発注され、製作された。
乙第21号証は、総合カタログ用表紙の印刷を発注している発注先である株式会社アートパッケージの2014年1月24日付けの納品書であり、乙第22号証は、納品後の2014年2月20日付けの請求書である。この請求書の金額の入金予定日(すなわち支払予定日)は、2014年3月10日である。
乙第23号証は、株式会社アートパッケージの平成26年3月10日付の領収書である。
乙第24号証は、総合カタログ用表紙の平成22年12月15日付け発注書である。このときは3000部が発注された。
乙第25号証は、発注先である株式会社アートパッケージの2010年12月27日付けの納品書であり、乙26号証は、納品後の2011年1月20日付けの請求書である。この請求書の金額の入金予定日(すなわち支払予定日)は、2011年2月10日である。
乙第27号証は、平成23年2月10日付けの領収書である。
これにより、少なくとも2010年から総合カタログ用表紙の発注が継続して行われ、総合カタログが継続して使用、配布されていることを立証する。
株式会社アートパッケージは、大阪府堺市東区に所在する印刷等を業とする会社である。被請求人は、総合カタログ用表紙だけでなく、他の商品の発注もしており、代金は月ごとにまとめて支払っている。
このカタログ用表紙には、本件商標「like-it」を表記すると共に、その下にアンダーラインを引き、アンダーラインの下に「Catalogue」と記載している(乙19)。
表紙の本件商標「like-it」は、商品「カタログ」の出所を示すと共に、カタログの内容に対する信頼、すなわち品質を保証する機能を発揮しているものである。
したがって、本件商標が商品「カタログ」に使用されていることが明らかである。
(2)総合カタログの使用履歴
乙第28号証ないし乙第31号証は、被請求人の総合カタログの使用履歴を示すものである。
乙第28号証は、被請求人の第55期(2012年8月?2013年7月)における総合カタログの使用履歴を日付及び配布先を記載すると共に月ごとの合計数を記載したものである。同様に乙29号証は、被請求人の第56期(2013年8月?2014年7月)における場合、同様に乙30号証は、被請求人の第57期(2014年8月?2015年7月)における場合、同様に乙31号証は、被請求人の第58期(2015年8月?2016年7月の内、2016年2月まで)における場合を記載したものである。
乙第28号証ないし乙第31号証の、使用目的の欄において「取引先」としているのは、取引先に配布(無償譲渡)した場合を示し、「研修」とあるのは、社内研修用に使用した場合を示し、「その他」とあるのは、社内等に設置しておく場合や社員が自分用に使用する場合など、取引先に配布する場合及び研修以外の場合を示している。
(3)カタログの商品性について
被請求人が本件商標を使用している商品カタログは、カタログという商品の特殊性から無償配布しているものであるが、その商品カタログには、被請求人が取り扱っている商品に関する情報が豊富に掲載されているものであり、その情報を欲する者にとって有用なものであり、取引に供されるものである。すなわち、商取引の目的物として流通性のあるものである。
そして、総合カタログ(乙19)の右上円内には、「like-it」の表記がされており、しかも、その下に「catalogue」と表記していることからも明らかなとおり、この「like-it」の商標は、商品カタログについて使用され、商品カタログの出所を表示する機能を発揮しているとともに、商品カタログの品質の保証機能を発揮しているものである。
したがって、商品カタログについて、商標「like-it」が使用されているものである。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標が商品「カタログ」に、要証期間内に継続して使用されていることは明らかである。

3 上申書における陳述
(1)カタログの商品性について
請求人は、総合カタログ(乙19)の商品性については特に争っていないが、念のため以下に付言する。
被請求人が本件商標を使用している商品「カタログ」は、カタログという商品の特殊性から、その商品「カタログ」の商品供給者は、被請求人及びライクイット株式会社である。そして、商品「カタログ」は、その中に情報として掲載されている個別商品を確認したり商品供給元に発注をしたりする際に使用されるのであり、この商品を確認したり発注したりする者(取引先)が需要者である。
本件「カタログ」は、この供給者から需要者に随時提供されているものであるから、商品を構成するものである。
なお、カタログの提供に際して、譲渡は無償であるが、商品供給者は、商品の注文あるいは発注を行う可能性のある者にカタログを供給しているのであり、カタログの対価は、商品の注文がされたときの商品の対価に含まれていると考えることができる。まったくの無償ではなく、間接的ではあるが対価は支払われているのである。
つまり、需要者である取引先(卸売業者あるいは小売業者)は、供給者である被請求人の商品を、廃版になったものを対象から除外するとともに新製品で出たものを加えるなど、的確に注文するためには、供給者のカタログを入手する必要があり、対価を支払ってでも入手しておく価値があるところ、需要者である取引先は、将来注文する可能性という利益(対価)をもって、供給者からカタログを定期的もしくは随時に提供を受けているのである。したがって、カタログは取引の目的物としての流通性を有しているといえる。
総合カタログ使用履歴証明書(乙28?乙31)において、注文が見込まれる見本市などに使用する場合に多数部を送付しているのは、商品の注文によって十分カタログの対価の回収も見込まれるからである。
また、取引先は、本件商標が付されたカタログを、取引先の顧客に見せて注文を得るだけでなく、必要に応じ、顧客に商品を十分に選択してもらうためにカタログを再譲渡することもある。そういう取引先には特に多数の部数を送付している。
例えば、2014年8月ないし2015年7月までの総合カタログ使用履歴証明書(乙30)についてみると、以下の例がある。
ア 2014年9月12日には、ワイヨット名古屋に20部を送付している。ワイヨット名古屋というのは、株式会社ワイ・ヨット名古屋店(住所、愛知県名古屋市中区…)である(乙32)。
イ 同年9月30日には、中山福に商談用として20部送付している。中山福というのは、中山福株式会社(住所、大阪市中央区…)である(乙33)。
ウ 同年11月21日には、梶原産業に展示会用として20部送付している。梶原産業というのは、梶原産業株式会社(住所、大阪府東大阪市…)である(乙34)。主要仕入先に「ライクイット(株)」の記載がある。
エ 同年12月15日には、ヒメプラ産業に20部送付している。ヒメプラ産業というのは、株式会社ヒメプラ(住所、兵庫県姫路市…)である(乙35)。
オ 同年12月25日には、アピデに10部送付している。アピデというのは、アピデ株式会社(住所、大阪市中央区…)である(乙36)。
カ 2015年1月27日には、菊屋 青森に10部送付している。菊屋 青森というのは、菊屋株式会社 青森支店(住所、青森県青森市…)である(乙37)。
キ 同年4月8日には、藤栄さっぽろに3部送付しており、同年5月29日には藤栄に見本市用として10部送付している。藤栄というのは、株式会社藤栄(住所、名古屋市中区…)のことであり、藤栄さっぽろというのは、株式会社藤栄 HW札幌支店(住所、北海道札幌市東区…)のことである(乙38)。
ク 同年7月28日には、展示会用としてオクムラに20部送付している。オクムラというのは、オクムラ株式会社(住所、京都市下京区…)のことである(乙39)。主要仕入先に「吉川国工業所」と記載されている。
上記アないしクに記載の取引先は、いずれも卸売業者であり、これらの取引先は主に小売業者を相手として事業を行っているのであり、被請求人の本件総合カタログを小売業者にも見せたり渡したりしている。小売業者に再譲渡されるときは、小売業者がカタログについての最終の需要者となる。
このように、商品カタログは供給者から需要者へと流通しているのである。
(2)商標の商品「カタログ」への使用について
請求人は、本件総合カタログに付された商標「like-it」は、カタログに掲載された商品について自他商品識別機能を発揮するにすぎない、旨主張するが、この点につき反論する。
総合カタログ(乙19)の表紙の右上に記載された商標「like-it」は、商品「カタログ」が同一の会社、すなわち被請求人及びライクイット株式会社が作成して提供しているカタログであることを表示する機能、つまり、商品の出所の同一性を表示する機能を有するとともに、商品「カタログ」の情報が最新のものであること、商品「カタログ」によれば、商品購入機会の確実性を保持すること、などの商品「カタログ」の品質を保証する機能を発揮するものである。
すなわち、請求人が提供しているカタログは、毎年、廃版になったものを除くとともに新商品を加えて作成されているので、廃版及び新商品に関する最新の情報を提供しているのである。
そして、このカタログの情報に基づくことにより、取引先は、その取引先の顧客に安心して商品の説明を行うことができるとともに、顧客からの注文を受けた際に安心して発注し、あるいは、取引先自体が、自社で仕入れて販売するための商品を安心して発注することができるのであって、さらには、商品「カタログ」について自他商品識別機能を発揮しているのであり、商標として使用されているものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商品「カタログ」に使用されている。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第18号証は、「内側にとじ具の付いたバインダー」(以下「バインダー」という。)と認められるところ、紺色のバインダーの表表紙の右上部に白色の円を配し、その中に大きく表した「like-it(R)」(「(R)」は丸付きのRである。以下同じ。)の文字と、「Catalogue」の文字が紺色で表示され、裏表紙に、商標権者の名称「株式会社 吉川国工業所」と住所などの連絡先及び「ライクイット株式会社」の名称と住所などの連絡先が記載されている。
(2)乙第19号証は、総合カタログであり、「バインダー」(乙18)に、商品に関する写真や情報が印刷されたカタログ(以下「各商品カタログ」という。)を複数枚綴じたものである。
乙第19号証の各商品カタログの1枚目ないし5枚目は、「くつホルダー」、「キッチンツールケース」、「カードケース」、「ダストボックス」等に関するカタログであり、それぞれの商品の写真の掲載と、商品説明、「カラー」、「サイズ」、「材質」、「参考上代」等の記載がある。そのほとんどの表面の右上に黒地の長方形が配され、「like-it(R)」の文字が白抜きで表示され、表面又は裏面の下部に「like-it(R)」の文字と、「株式会社吉川国工業所」の名称及び住所などの連絡先が記載されている。これらの表面又は裏面の下部右には、「2015.07」の記載があり、これより2015年(平成27年)7月に作成されたものと認められる。
6枚目ないし31枚目は、それぞれ「ゴミ箱」、「収納ケース」、「タオルバーシェルフ」等の商品に関するカタログであり、それぞれの商品の写真の掲載と、商品説明、「カラー」、「サイズ」、「材質」、「参考上代」等の記載がある。そのほとんどの表面の右上に黒地の長方形が配され、「like-it(R)」の文字が白抜きで表示され、そのほとんどの表面又は裏面に「like-it(R)」の文字と、「株式会社吉川国工業所」又は「株式会社ライクイット」の名称及び住所などの連絡先が記載されている。これらの表面又は裏面の下部右には、「2015.03」、「2015.01」、「2014.07」、「2014.01」、「2013.06」の記載があり、これより、2015年(平成27年)3月、2015年(平成27年)1月、2014年(平成26年)7月、2014年(平成26年)1月、2013年(平成25年)6月に作成されたものと認められる。
32枚目以降は、1997年(平成9年)10月ないし2012年(平成24年)5月に作成された各商品カタログと認められる。
以上のことから、総合カタログは、作成時期の異なる、「くつホルダー」、「キッチンツールケース」、「ゴミ箱」等の商品に関する写真や情報が印刷された各商品カタログを複数枚バインダーに綴じたいわゆる加除式のカタログといえるものである。また、総合カタログには、「印刷物」に相応する商品に関するカタログは綴じられていない。
(3)乙第20号証及び乙第27号証は、バインダー(乙18)に関する商標権者と株式会社アートパッケージ間の発注書、納品書、請求書及び領収書である。平成26年1月10日付けの「発注書」には、「株式会社アートパッケージ御中」、「株式会社吉川国工業所」の記載、「品名・仕様」の欄には、「総合カタログ用表紙 ファイル帳(紺)」の記載、「数量」の欄には「3,200」の記載がある(乙20)。
(4)乙第28号証ないし乙第31号証は、被請求人が作成した、2016年3月18日付けの「総合カタログ使用履歴証明書」である。
乙第30号証の1葉目には、「2014年8月1日?2015年7月31日まで(第57期)の間における当社総合カタログの、主に顧客への配布(無償譲渡)を目的とする使用履歴は本書に添付のとおり相違ありません。」とあり、2葉目及び3葉目は、配布の日付、目的、数量、詳細等がまとめられたリストが添付されている。当該リストの「使用目的」の欄には、「取引先」、「展示会」、「営業所在庫」、「その他」の記載があり、当該欄が「取引先」又は「展示会」のものについては、「詳細」の欄に「ワイヨット名古屋」、「梶原見本市用」、「オクムラ見本市」等の記載がある。
乙第28号証は、平成24年8月1日ないし平成25年7月31日、乙第29号証は、平成25年8月1日ないし平成26年7月31日、乙第31号証は、平成27年8月1日ないし平成28年2月末日の「総合カタログ使用履歴証明書」であり、いずれにも、乙第30号証と同様に、1葉目に、当該期間における総合カタログの主に顧客への配布(無償譲渡)を目的とする使用履歴である旨の記載があり、2葉目以降には、配布の日付、目的、数量、詳細等が記載されたリストが添付されている。
(5)乙第32号証ないし乙第39号証は、株式会社ワイ・ヨット(愛知県名古屋市所在)等の各企業のウェブサイトの会社概要(写し)であり、「梶原産業株式会社」の「主要仕入れ先」の欄に「ライクイット(株)」の記載(乙34)、「オクムラ株式会社」の「主な仕入れ先」の欄に「吉川国工業所」の記載(乙39)がある。

2 上記1で認定した事実及び被請求人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)商標権者は、平成26年1月にバインダーを作成し、そのバインダーの表表紙には、「like-it(R)」の文字と「Catalogue」の文字が付されている(乙18、乙20?27)。
(2)総合カタログは、加除式のものであり、バインダーに、平成9年10月ないし同27年7月作成の商品「くつホルダー」、「キッチンツールケース」、「ゴミ箱」等の各商品カタログが綴じられている。また、平成25年6月ないし同27年7月作成の各商品カタログには、そのほとんどに黒地の長方形内に「like-it(R)」の文字が白抜きで表示されたもの又は「like-it(R)」の文字と、「株式会社吉川国工業所」又は「株式会社ライクイット」の名称及び住所などの連絡先が記載されている(乙19)。
(3)総合カタログは、商標権者の管理の下、要証期間内である平成24年8月ないし同27年8月に、主に取引先、展示会等において無償譲渡された(乙28?乙31、乙32?39)。
そして、総合カタログのバインダーに付された「like-it(R)」の表示及び各商品カタログに付された「like-it(R)」の表示は、本件商標と社会通念上同一のものである。

3 「総合カタログ」に係る本件商標の使用が商品「印刷物」についての使用に該当するか否かについて
商標法第50条の適用上、「商品」というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず、また、「商品についての登録商標の使用」があったというためには、当該商品の識別表示として同法2条3項、4項所定の行為がされることを要すると解される(東京高裁 平成12年(行ケ)第109号、平成13年2月28日判決)。
これを「総合カタログ」についてみると、(a)総合カタログに綴じられた各商品カタログには、商標権者及びライクイット株式会社の取り扱いに係る「くつホルダー」、「キッチンツールケース」、「ゴミ箱」等について、業者間で主に用いられる「参考上代」の語の記載があること、(b)総合カタログは、商標権者の管理の下、随時、主に取引先、展示会等に無償で譲渡されるものであること、(c)被請求人が、「このカタログの情報に基づくことにより、取引先は、その取引先の顧客に安心して商品の説明を行うことができるとともに、顧客からの注文を受けた際に安心して発注し、あるいは、取引先自体が、自社で仕入れて販売するための商品を安心して発注することができる」と述べていることを総合的に考慮すれば、「総合カタログ」は、それに掲載されている「くつホルダー」等の商標権者及びライクイット株式会社の取り扱いに係る商品を取引先を通じて販売するための広告宣伝を目的とするものであって、商標権者の管理を離れ、市場において独立して商取引の対象として流通に供されている物ということはできない。よって、「総合カタログ」は、商標法上の商品ということはできない。
また、本件においては、商標権者の管理の下、総合カタログ中の「くつホルダー」等の商品の識別表示として、本件商標と社会通念上同一といえる商標がバインダー及び各商品カタログに付されて頒布されていたというべきものである。
なお、被請求人は、総合カタログの譲渡は無償であるが、その対価は、カタログに掲載されている商品の対価に含まれていると考えることができるから、まったくの無償ではない旨を述べているが、被請求人のいう「対価」とは、総合カタログ中の個々の商品の原価に算入されている、総合カタログの制作費用(コスト)をいうものと思われるが、そうであるとしても、上記のとおり、総合カタログは市場において独立して商取引の対象として流通に供されている物とはいえないから、総合カタログの譲渡により「対価」を得ているということはできない。
加えて、総合カタログ中には、「印刷物」に相応する商品は掲載されていない。
したがって、本件商標は、請求に係る指定商品中の「印刷物」について使用したということはできない。

4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品「印刷物」について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。また、被請求人は、その指定商品について本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、その指定商品中「印刷物」について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標



審理終結日 2016-09-30 
結審通知日 2016-10-05 
審決日 2016-10-27 
出願番号 商願2010-39190(T2010-39190) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X16)
最終処分 成立  
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 大森 健司
大橋 洋子
登録日 2010-11-05 
登録番号 商標登録第5366857号(T5366857) 
商標の称呼 ライクイット、ライクアイテイ 
代理人 濱田 俊明 
代理人 福島 三雄 

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