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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない X33
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない X33
管理番号 1322389 
審判番号 無効2016-890017 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-03-08 
確定日 2016-11-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5460616号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5460616号商標(以下「本件商標」という。)は、「麦一石」の文字を縦書きしてなり、平成23年3月7日に登録出願、同年10月31日に登録査定、第33類「麦しょうちゅう」を指定商品として、同24年1月6日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標について
本件商標に対し、請求人が無効審判請求(無効2015-890016)を行ったところ、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決がなされた(甲2)。
(2)商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、「麦一石」の文字を手書き風の書体で縦書きした構成よりなるところ、前記審決において、本件商標の構成中「『一石』の漢字は、その前の漢字が米穀の一種である『麦』であることを勘案すると、『体積の単位。主として米穀をはかるのに用い、一石は10斗、約180リットル。』を意味する『石』の文字に漢数字の『一』を冠したものとして、『いっこく』と読む『一石』の意味が認識されるとみるのが相当である。」として、本件商標について「『10斗の麦』の観念を生じるものである。」との認定がなされた。
当該認定に従えば、本件商標は、「一石(10斗)の容量の麦」、すなわち、単に麦の容量を表したにすぎない商標に他ならないものである。
そうとすれば、これをその指定商品である「麦しょうちゅう」について使用しても、単に商品の原材料である麦の容量・商品の品質の表示にすぎないといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、前記のとおりのものであるから、前記品質に相応する商品以外の指定商品について使用するときは、商品の原材料・品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第3条第1項第3号について
被請求人も認めるとおり、また、甲第5号証に示す焼酎メーカーのウェブサイトに「日本では焼酎に限らず、液体や穀物類の体積を量る場合『石』という単位を用いることが、今でも普通に行われています。」との記載がみられるとおり、「一石」が米穀をはかるのに普通に用いられる単位である以上、「一石」に「麦」を付加すれば、例えば「麦1キログラム」、「米一合」、「水1リットル」等の表示が容量を理解させるのと同様、「麦一石」が全体として麦の容量を理解させるにとどまることは明白である。
この点は、「米一石」の表示について、古くは平安時代中期に編纂された律令の施行細則である「延喜式」(巻第四十)に記されている酒の醸造方法においても、原材料として「米一石」の表示がみられるとおり(甲3、甲4)、「○○一石」の表示は、古き時代より、酒造りの際に、酒の原材料の容量の表示として用いられてきたものである。
本件商標の「麦一石」も同様に、酒の原材料である麦の容量を理解させるものであって、自他商品識別力を有しないことは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第16号について
請求人が主張しているのは、「麦」を原材料とするか否かではなく、「麦一石」に相応する品質の商品以外の指定商品、すなわち、「一石(10斗)の容量の麦」と相違する品質の商品について使用するときは商品の原材料・品質について誤認を生ずるおそれがあるというものであり、本件商標の指定商品に当該商品が含まれていることは明らかである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨以下のように述べた。
1 商標法第3条第1項第3号について
(1)請求人が強調する審決の判断は、「商標法第4条第1項第11号について」の項で、引用商標との比較で「麦一石」商標を例えば単語要素ごとに観察すれば、「麦」と「一石」が認識されるが、構成全体から「ムギイッコク」の称呼、並びに「10斗の麦」の観念を生じるものであり、その構成全体が一体不可分のものとして把握、認識されるものであるとするところに力点があることを請求人は看過している。
つまり、本件商標は、「麦一石」の漢字を手書き風に縦書きしてなり、外観上、漢字3文字という簡潔な文字構成で、その漢字を同書、同大、同間隔をもってまとまりよく表している。そして、「本件商標は外観において、簡潔でまとまりのよい構成からなり、商標全体として『10斗の麦』の観念が看取され、称呼においても、全体より『ムギイッコク』の称呼をよどみなく一気に称呼し得るものであって、その構成全体が一体不可分のものとして把握、認識されるものであるから、『麦』の文字が指定商品の原材料を表す場合があるとしても殊更に、『一石』の文字部分を抽出し、該文字部分をもって取引に資されることはないとみるのが相当である。」として、商標全体の外観、称呼、観念上の一体的把握の自然さを認定しているものである。
(2)本件商標の商品識別機能について考えると、本件商標は、その一連一体性より「麦」の部分と「一石」の部分を分断把握する特段の理由はないから商標「麦一石」から「ムギイッコク」の称呼を生じ、「10斗の麦」の観念の他に、さらに先頭に「麦」の文字が置かれた態様から、例えば「麦、その名は一石」あるいは、「麦一石の存在」、「麦一石の重み」などの意味合いを生じ得る。そして、商品「麦しょうちゅう」について商標「一石」を使用するのであれば、それはまさに商品の原材料である麦の容量を示すものといえるが、「麦一石」では、容量表示「一石」の前にさらに「麦」の文字が付加されたものであって、称呼も一連になされるものであれば、単なる「一石」と異なって麦の容量表示以外の何かが含まれていると直感して異質の物を含むと認識するはずであるから、「麦一石」の表示は、単に商品の品質を表したものとはいえない。よって、十分に自他の商品の識別機能を発揮し得るものである。
(3)「一石」あるいは「一斗」の文字が麦の容量を意味するものとして、「一石」のみの商標であれば本号該当というべきかもしれないものの、本件商標はあくまで「麦一石」であって、構成全体の一体不可分性とあいまって単なる「一石」と異なり、自他の商品識別力を有するものである。ちなみに、商標「麦一石」は、麦を原材料とする麦しょうちゅうの需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであって、商標法第3条第1項第3号以外の識別力を否定する条項にも該当しないものである。
2 商標法第4条第1項第16号について
本件商標の指定商品は、「麦しょうちゅう」であって、それ以外の指定商品自体が本件指定商品中に含まれていないから、商標法第4条第1項第16号に該当する旨の主張は成り立たない。また、上述のとおり本件商標が自他の商品識別力を有するものである以上、商品の品質の誤認を生ずるおそれはない。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「麦一石」の文字を縦書きしてなり、第33類「麦しょうちゅう」を指定商品とするものである。
そして、本件商標の構成中の「一石」の文字は、その前の文字が「麦」であることからすると、「体積の単位。主として米穀をはかるのに用い、一石は10斗、約180リットル。」を意味する「石」の文字に漢数字の「一」を冠したものと看取され、「一石(10斗)」の意味合いを認識させるとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、「麦が一石(10斗)。一石(10斗)の麦」の意味合いが生じるものである。
しかしながら、たとえ本件商標が上記の意味合いを表すものであるとしても、麦しょうちゅうに関して、その商品の原材料である麦の使用量を特定する記述が一般的に表示されている事実は見受けられないし、10斗の麦が麦しょうちゅうとの関係においてどのような相関関係や意味合いを示すのかを直ちに理解させるものといえる事実も見受けられない。
そうすると、これをその指定商品に使用したとき、その商品が「10斗の容量の麦」から製造されたものであるといったように、商品の品質、原材料を表しているものとして取引者、需要者に認識されていたとはいい難いものであり、本件商標の登録査定時に、その指定商品を取り扱う業界において、商品の品質を表示するものとして、普通に使用されていたと認めるに足りる証拠の提出はなく、かつ、職権による調査をもってもそのような証左を見いだせない。
してみれば、本件商標は、その登録査定時において、商品「麦しょうちゅう」の品質又は原材料を具体的に表示するものとして直ちに理解され認識されていたとはいい難く、商品の品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
なお、請求人は、「一石」が米穀をはかるのに普通に用いられる単位(甲5)であるから、「麦一石」が全体として麦の容量を理解させるとして、平安時代中期に編纂された律令の施行細則における「米一石」の記載も挙げ(甲3及び甲4)、本件商標が自他商品識別力を有しない旨主張する。
しかしながら、上記書証は、古来、「一石」が穀物の単位として使用されてきたこと(甲5)や、一定の酒を製造するのに、「米一石」に対し使用する麹や水の量を記述したもの(甲3及び甲4)であり、これらをもって、「麦一石」の文字のみからなる本件商標が、本件指定商品の原材料や品質を直接的に表示するものであるということはできない。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、その登録査定時において、その商品の品質又は原材料を表示する標章のみからなる商標とはいえないとみるのが相当であるから、本件商標をその指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-09-06 
結審通知日 2016-09-09 
審決日 2016-09-29 
出願番号 商願2011-20183(T2011-20183) 
審決分類 T 1 11・ 272- Y (X33)
T 1 11・ 13- Y (X33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 裕子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 板谷 玲子
田中 亨子
登録日 2012-01-06 
登録番号 商標登録第5460616号(T5460616) 
商標の称呼 ムギイッコク、イッコク、イチコク、イッセキ 
代理人 穴見 健策 
代理人 高宮 章 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

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