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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W07
審判 全部無効 観念類似 無効としない W07
審判 全部無効 外観類似 無効としない W07
管理番号 1322384 
審判番号 無効2016-890025 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-03-30 
確定日 2016-11-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5569718号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5569718号商標(以下「本件商標」という。)は、「ゼロミル」の文字を標準文字で表してなり、平成24年8月31日に登録出願、第7類「化学機械器具としての分散機,磨砕機,その他の化学機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,プラスチック加工機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,ゴム製品製造機械器具,土木機械器具,業務用攪はん混合機」を指定商品として、同25年2月25日に登録査定され、同年3月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第2165379号商標(以下「引用商標」という。)は、「XERO」の欧文字と「ゼロ」の片仮名を2段に横書きしてなり、昭和61年9月3日に登録出願、平成元年8月31日に設定登録されたものであり、その商標権は第7類、第9類及び第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、「ゼロミル」の片仮名からなるものである。ここで、「ミル」の部分は、英語の「mill」に由来する。「mill」は、「1(紙・鉄鋼・織物など特定の製品を作る)工場、製作所、製造所」、「2(製粉機を備えた)粉ひき場、製粉所、精米(麦)所;水車場、水車(風車)小屋」、「3 ひき臼、臼;粉砕機、製粉機;籾すり機、精米(麦)機;(コーヒー・胡椒・肉などの)ひき器」、「4(回転運動を利用した)工作機械」、「5(往復運動などを利用した)装置、機械類(断裁機、研磨機など);(果汁をとる)圧搾機」を意味する語句である(甲4)。これらの例示から、「mill」は、大規模な機械設備から単機能を果たす小規模の機械装置までを広く意味する語句であることが理解される。
この点、本件商標の指定商品である「化学機械器具としての分散機,磨砕機,その他の化学機械器具」及び「業務用攪はん混合機」は、「4(回転運動を利用した)工作機械」及び「5(往復運動などを利用した)装置、機械類(断裁機、研磨機など)」に含まれるものであり、その機能は「3 ひき臼、臼;粉砕機、製粉機;籾すり機、精米(麦)機;(コーヒー・胡椒・肉などの)ひき器」と共通する。また、同じく「食料加工用又は飲料加工用の機械器具」は、「5(果汁をとる)圧搾機」を典型例として含み、「プラスチック加工機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,ゴム製品製造機械器具,土木機械器具」は、「4(回転運動を利用した)工作機械」及び「5(往復運動などを利用した)装置、機械類(断裁機、研磨機など)」の具体例にあたる。
このように、本件商標の「ミル」の部分は、本件商標の指定商品を意味する一般名称であり、なんら自他商品識別力を発揮しない。そうすると、本件商標の要部は、「ゼロ」の部分であり、本件商標は、「ゼロ」の称呼、「0(数字のゼロ)、無」の観念を生ずる。
一方、引用商標は、「XERO」の欧文字と「ゼロ」の片仮名を2段に併記してなるものであるから、これより「ゼロ」の称呼、「0(数字のゼロ)、無」の観念を生ずる。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観が相違するとしても「ゼロ」の称呼、「0(数字のゼロ)、無」の観念を共通にする類似の商標である。
(2)指定商品について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中の第7類「化学機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,プラスチック加工機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,ゴム製品製造機械器具,土木機械器具,業務用攪はん混合機」とは、同一の商品である。
(3)結論
本件商標と引用商標とは、外観が相違するとしても「ゼロ」の称呼、「0(数字のゼロ)、無」の観念を共通にする類似の商標であり、その指定商品も同一の商品である。
3 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)本件商標と引用商標との称呼上の相違について
本件商標は、本件商標の指定商品の一般名称である「ミル」(甲4)と、「数字の0」を表す「ゼロ」を組み合わせた構成全体を常に一体不可分のものとしてみるべき特段の理由は見当たらないから、これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
また、「○○+ミル(MILL)」からなる商標においては、「ミル(MILL)」の部分を捨象して表示したり、「○○」部分を強調して表示するといった取引実状が存在する。
被請求人のカタログである甲第5号証の1をはじめ、同様の分野に属する商品のカタログにおいては、「○○」の語が独立して「型式」を構成するほど、商品の識別機能を単独で発揮している。
そして、この取引実状は、欧文字と片仮名文字の混在や文字間のスペース又はハイフンの挿入の有無に依存するものではなく、本件商標のように「○○+ミル」の片仮名文字を横書きに書してなる商標についても妥当するものである(甲6、7)。
以上のように、本件商標のかかる構成においては、「ミル」の文字部分を捨象し、「ゼロ」の文字部分のみが着目されて取引に資されているという実状が存在するといえるので、本件商標は、「ゼロ」の部分が自他商品の出所識別標識としての機能を有する。
よって、本件商標は、「ゼロ」の文字部分に相応して「ゼロ」の称呼を生ずるものであり、本件商標と引用商標は、同一の称呼を生ずる。
(2)本件商標と引用商標との観念上の相違について
本件商標は、「ゼロ」の部分が自他商品の出所識別標識としての機能を有するため、「ゼロ」の文字に相応して「数字の0、無」の観念を生じる。
よって、本件商標と引用商標は、同一の観念を生じる。
(3)本件商標と引用商標との外観上の相違について
本件商標は、「ゼロミル」の片仮名文字を横書きしてなり、特別特殊な態様で表してなるものではなく、普通に用いられる書体からなるものである。
一方、引用商標は、「XERO」の欧文字と「ゼロ」の片仮名文字を2段に併記してなり、特別特殊な態様で表してなるものではなく、普通に用いられる書体からなるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、商標全体の外観が類似するとはいえないものであるとしても、その称呼及び観念の共通性を凌駕する程までに、外観の印象が強いということはできない。
(4)まとめ
以上を総合して考慮すれば、本件商標と引用商標とは、称呼を共通にし、観念を同じくするから、商標全体の外観の相違をもって、これらの共通性を凌駕するということはできず、両商標は、類似するものというのが相当であり、両商標を同一又は類似の商品に使用した場合には、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(5)「○○+ミル(MILL)」と「○○」の特許庁における類否判断について
結合商標類否判断にあたっては、取引実状に基いて、個々の商標について、いわゆる分離観察すべきであるか否かを精緻に検討することが肝要である。
したがって、本件商標と引用商標との類否判断は、両商標について個別具体的に行えば足り、過去の登録例の判断に拘束されることなく検討されるべきものである。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 本件商標と引用商標の称呼上の相違について
請求人は、本件商標の構成要素中「ミル」は指定商品を意味する一般名称であり自他商品識別力を有しないから、本件商標の要部は「ゼロ」にあり、本件商標からは「ゼロ」の称呼が生じると主張している。
しかしながら、以下の理由により本件商標から生じる称呼は「ゼロミル」であり、「ゼロ」の略称は生じないと思料する。
本件商標の構成各文字は片仮名という同一文字種で同書、同大、等間隔でまとまりよく一体的に表されている。また、構成文字全体から生じる「ゼロミル」の称呼も語呂良く、よどみなく一連に称呼し得る。さらに、称呼の音数も4音と短く、一気に称呼し得るものである。いかに取引業界が簡易迅速を尊ぶといっても、わずか4音という極めて短く語呂も良い称呼をわざわざ略称することは不自然である。
このように外観上まとまりよく、かつ、称呼も語呂が良く、音数も極めて短い本件商標をあえて「ゼロ」と「ミル」に分断し、「ゼロ」と略称する理由はなく、むしろ、本件商標からその構成文字に相応して「ゼロミル」の称呼のみが生じると言うべきである。
一方、引用商標からは構成文字に相応して「ゼロ」の称呼が生じることは明らかであり、「ゼロミル」の称呼のみが生じる本件商標と「ゼロ」の称呼が生じる引用商標とは、称呼上非類似であることは明らかである。
2 本件商標と引用商標の観念上の相違について
請求人は、本件商標からは「0(数字のゼロ)、無」の観念を生じ、引用商標からも同じ観念が生じるので両商標は観念上類似すると主張している。
しかしながら、商標からどのような観念が生じるかは商標全体から判断されるものであるところ、本件商標の構成要素である「ゼロ」と「ミル」は、それぞれからは「数字の0」、「粉ひき機」等の意味合いが生じるとしても、商標全体としては一つのまとまった意味を特に有しない造語であり、商標全体から特定の観念を生じるものではない。一方、引用商標からは片仮名「ゼロ」に相応して「数字の0」という観念を生じる。
したがって、本件商標と引用商標は観念上も互いに非類似である。
3 本件商標と引用商標の外観上の相違について
本件商標と引用商標とは、構成文字や態様が顕著に異なり、外観上互いに非類似であることは明らかである。
4 「○○+ミル(MILL)」と「○○」の特許庁における類否判断
請求人は、本件商標の指定商品中、特に化学機械器具又は業務用攪はん混合機等との関係で、「ミル」に識別力が無くその部分が省略されて称呼が生じると主張しているが、特許庁ではそのような判断はされていない。例えば、化学機械器具あるいはそれと類似すると特許庁で判断されている商品(類似群コード:09A06)を指定する商標登録のうち、「○○+ミル(MILL)」からなる商標と、その前半部分の「○○」からなる商標とが、互いに非類似と判断されて併存登録されている(乙1?乙12)。
これら併存登録は、「ミル(MILL)」が上述の商品との関係においても省略されることなく、「○○+ミル(MILL)」の構成文字からなる商標全体で一つの称呼を生じるものであり、その結果、「○○」とは非類似と特許庁が判断していることを示す例であり、本件商標と引用商標も同様の判断がされてしかるべきである。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標とは称呼上、観念上及び外観上のいずれも相紛れることのない互いに非類似の商標であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「ゼロミル」の文字を標準文字で表してなり、その構成文字は、同書、同大、等間隔で、まとまりよく一体に表され、これから生じる「ゼロミル」の称呼も4音と短く、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、たとえ、その構成中「ミル」の文字が、「ひき臼、臼、粉砕機、製粉機、籾すり機、精米(麦)機、(コーヒー・胡椒・肉などの)ひき器、(回転運動を利用した)工作機械、(往復運動などを利用した)装置、機械類(断裁機、研磨機など)、(果汁をとる)圧搾機」などの意味を有するとしても、かかる構成及び称呼においては、該文字部分が指定商品の一般名称はもとより、品質、機能などを表示したものとして認識されることなく、むしろ、「ゼロミル」の構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが自然である。
さらに、本件商標は、その構成中「ゼロ」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足る事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、その構成中「ゼロ」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討することが許されないものといわなければならない。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体をもって、「ゼロミル」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない一体不可分のものとして認識、把握されるものといわなければならない。
2 引用商標
引用商標は、上記第2のとおり「XERO」と「ゼロ」の文字からなるものであるから、該文字に相応し「ゼロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
なお、請求人及び被請求人は、引用商標は「数字の0(ゼロ)」などの観念が生じる旨主張しているが、引用商標の構成中下段の片仮名「ゼロ」は上段の欧文字「XERO」の読みを特定したものとみるのが相当であって、該欧文字「XERO」は特定の意味を有しない造語であるから、引用商標は、上記のとおり特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。よって、請求人及び被請求人のかかる主張は採用できない。
3 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者の外観は上記のとおりであって、その構成態様が明らかに異なり相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「ゼロミル」と引用商標から生じる「ゼロ」の称呼を比較すると、両者は、4音と2音という構成音数の差異、語尾における「ミル」の有無の差異を有するから、明らかに聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両商標はいずれも特定の観念を生じないものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
4 請求人の主張について
請求人は、甲第5号証ないし甲第11号証として、被請求人を始めとする各企業が構成中に「ミル」又は「MILL」を含む商標を使用した商品カタログを提示し、「ミル」又は「MILL」以外の構成部分が商品の型式表示として採用されているから、商品の識別機能を単独で発揮している旨述べ、また、被請求人が本件商標と併用して、間にスペース等を置いた「ZERO」及び「MILL」の表示を使用していることや「ミル」又は「MILL」を共通にする他の商品表示を採用していることから、「ゼロ」の文字部分が商品の識別機能を単独で発揮し本件商標から「ゼロ」の称呼が生じる旨述べている。
しかしながら、商品の型式等を表示するためにどのような文字や表示を採択するかは、それぞれの企業の事情によるものであって、そのことをもって本件商標を構成する「ゼロ」の文字部分が、商品の出所識別標識としての機能が強く支配的であるとか、それ単独で商取引に資される表示であるとはいえないし、その具体的な根拠も示されていないものであるから、請求人の主張は採用することができない。
また、本件商標は、他の文字や構成要素と併記されているものではなく、同書、同大、等間隔で、まとまりよく一体に表された「ゼロミル」の文字のみからなるものであって、その構成文字全体をもって、「ゼロミル」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない一体不可分のものとして認識、把握されることは、前記1のとおりであるから、この点についても、請求人の主張は採用することができない。
その他、両商標が類似するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-09-01 
結審通知日 2016-09-07 
審決日 2016-09-28 
出願番号 商願2012-70675(T2012-70675) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (W07)
T 1 11・ 261- Y (W07)
T 1 11・ 262- Y (W07)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 亮一 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 小松 里美
今田 三男
登録日 2013-03-29 
登録番号 商標登録第5569718号(T5569718) 
商標の称呼 ゼロミル 
代理人 田中 達也 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 吉田 稔 
代理人 並川 鉄也 
代理人 鈴木 泰光 
代理人 臼井 尚 
代理人 小谷 悦司 

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