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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W30
審判 一部申立て  登録を維持 W30
審判 一部申立て  登録を維持 W30
審判 一部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1321434 
異議申立番号 異議2016-900086 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-06 
確定日 2016-10-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第5817810号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5817810号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5817810号商標(以下「本件商標」という。)は、「ラボラトワールメルシー」の片仮名を標準文字で表してなり、平成27年7月28日に登録出願され、第29類「卵,食用油脂,乳製品,加工野菜及び加工果実,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと」、第30類「洋菓子,和菓子,パン,コーヒー,コーヒー豆」、第35類「卵及び加工卵の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ケーキ又は菓子を主とする飲食物の提供及びこれらに関する情報の提供,コーヒー・清涼飲料・果実飲料・茶又はアルコールを主とする飲食物の提供,スープを主とする飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同年11月19日に登録査定、同28年1月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の3件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第586886号商標(以下「引用商標1」という。)は、「メルシー」の片仮名を書してなり、昭和35年6月20日に登録出願され、第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同37年5月17日に設定登録され、その後、平成14年5月1日にその指定商品を第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
2 登録第2705767号商標(以下「引用商標2」という。)は、「MERCI」の欧文字を書してなり、平成2年12月25日に登録出願され、第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同7年3月31日に設定登録され、その後、同17年3月23日にその指定商品を第30類「菓子,パン」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
3 国際登録第320574号商標(以下「引用商標3」という。)は、「Merci」の欧文字を書してなり、2013年(平成25年)7月11日に国際商標登録出願(事後指定)、第30類「Chocolate, sugar confectionery.」を指定商品として、平成27年2月6日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品中、第30類「洋菓子,和菓子,パン,コーヒー,コーヒー豆」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)商品の抵触について
本件商標の指定商品中、第30類「洋菓子,和菓子,パン」は、引用商標の指定商品とそれぞれ抵触する。
(2)商標の抵触について
ア 基本的考え方
裁判所は、複数の構成部分を組み合わせた結合商標の類否について「商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されないが、他方、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものである」と判示する(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
以下、かかる判例に当てはめて本件商標と引用商標の類否を検討する。
イ 本件商標から生じる称呼及び観念について
本件商標は、カタカナで「ラボラトワールメルシー」と書してなる。
ここで「ラボラトワール」とは、語源がフランス語であるが、「実験室。研究所。」の意味がある他、洋菓子の分野では特に「(肉屋・菓子屋などの)仕事場。」の意味がある(甲5の1)。そのため、洋菓子店の商品を製造する作業場、厨房、セントラルキッチンを指す語として、この「ラボラトワール」がフランスのみならず、我が国でも広く使われている(甲5の2ないし甲5の8)。一方、「メルシー」はフランス語で「ありがとう」の意味である(甲6)。
したがって、本件商標中の「ラボラトワール」の語は「(肉屋・菓子屋などの)仕事場。」を意味し、実際に我が国でも広く「洋菓子店の商品を製造する作業場、厨房、セントラルキッチン」を表す語として使われており、指定商品「洋菓子,和菓子,パン」についてはその製造の場であって、識別力が無いか、あっても極めて弱いものといえる。
一方、「メルシー」の語はフランス語の成語として一般的とはいえ、「ありがとう」の意は食品には全く無関係な言葉である以上、その識別力を否定する理由は存在しない。
そうとすれば、そもそも本件商標は「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している」ものには該当しないし、「ラボラトワール」部分の識別力が極めて脆弱である以上、該部分から「出所識別標識としての称呼、観念が生じない」から、指定商品「洋菓子,和菓子,パン」との関係においては、「商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許される」とするのが相当である。
よって、本件商標からは「メルシー」単独の称呼と、「ありがとう」の観念が生じる。
ウ 対比
そこで、外観、称呼、観念の各要素を対比すると、本件商標はカタカナで「ラボラトワールメルシー」と書してなる。このうち、「メルシー」部分は、引用商標1と同一である。また、引用商標2及び引用商標3は何れも欧文字で「MERCI」「Merci」と書してなるので、本件商標の「メルシー」とは欧文字とカタカナの表記の違いでしかない。
称呼については、前記のとおり、本件商標よりは「メルシー」単独の称呼を生じ得るものであり、この称呼と引用商標から生じる「メルシー」の称呼は完全に一致する。
観念についても、本件商標よりは「メルシー」部分に応じて「ありがとう」単独の観念を生じるものであり、この観念と引用商標から生じる「ありがとう」の観念は完全に一致する。
したがって、本件商標と引用商標は、外観において類似し、称呼及び観念は完全に一致する。
(3)以上のとおり、本件商標と引用商標は類似する商標であり、本件商標の指定商品中、第30類「洋菓子,和菓子,パン」は引用商標の指定商品と同一・類似のものであるから、本件商標は、第30類のうち、「洋菓子,和菓子,パン」について商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の周知・著名性
ア 引用商標2及び引用商標3は、ドイツで1965年から使用が開始されて以降、1966年にオーストリア、1979年にオランダ、ベルギーなどへ欧州各国でも順次使用され、以来、永年に渡る使用を継続した結果、本件商標の登録出願時(2015年7月28日)及び登録査定時(2015年11月19日)において、既に申立人の製造販売する「チョコレート菓子、チョコレートキャンディ、プラリーヌ」に係る商標として外国の一般消費者の間で周知・著名となっていることは、申立人の請求に係る欧州共同体商標の異議申立事件において提出された各種証拠により、2014年11月13日、2010年8月18日及び2012年12月18日にOHIMの裁定委員会も認めていることである(甲8ないし甲11)。
イ 申立人の法律顧問・支配人Dr.Bernd Roessler氏の2015年6月9日付け宣誓供述書
甲第7号証として提出する申立人の法律顧問及び支配人であるDr.Bernd Roessler氏(2000年4月1日より現職)による2015年6月9日付の宣誓供述書において述べられているとおり、申立人は、ドイツ、英国、オーストリア、ポーランド、スウェーデン、スペイン、オランダ、ベルギー、チェコ、ハンガリー、スロベニア、スロバキア、クロアチアの13ヶ国に設立されたグループ子会社を通じて、EU全域に商標「Merci」のチョコレート及び菓子を販売しているホールディング会社である。EU圏外では、スイス、ロシア、シンガポール、米国及びカナダ他などに設立されたその他のグループ子会社を通じて「Merci」製品が販売されている。
そして、AC Nielsen及びIRI Information Resources Inc.の2社により実施された市場調査により明らかなように、オーストリア、ドイツ、クロアチア、オランダ、スロベニア、デンマーク、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、チェコ、スウェーデン、スペインの12ヶ国の市場における申立人のチョコレート製品「Merci」の市場占有率は、2010年以降、常に上位5位以内を維持しており、さらに各調査会社の報告によると、申立人のチョコレート製品「Merci」の2009年以降の認知度は、ドイツとオーストリアでは90%以上、その他の多くの国で80%以上の認知度を獲得するに至っている。
ウ 以上のとおり、引用商標2及び引用商標3は、申立人の業務にかかる商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時(2015年7月28日)及び登録査定時(2015年11月19日)において、外国における需要者の間で広く認識されていた。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、カタカナで「ラボラトワールメルシー」と書してなる。そして、「ラボラトワール」の語は、特に洋菓子の分野では「(肉屋・菓子屋などの)仕事場。」を意味し、実際に我が国でも広く「洋菓子店の商品を製造する作業場、厨房、セントラルキッチン」を表す語として使われている(甲5)。
そうとすれば、本件商標は、申立人の外国周知・著名商標に、製造の場を付加したに過ぎないものであって、引用商標に類似することは明白である。
(3)不正の目的について
引用商標2及び引用商標3が、本件商標の出願時において既に欧州全域で周知・著名であったことは前記のとおりである。そして、その周知・著名性の程度は、OHIMにおいても認定されているように極めて高いものであるから(甲7ないし甲12)、我が国で菓子の製造・販売に従事する当業者であれば引用商標2及び引用商標3が申立人の業務にかかる商品を表示する商標であることを認識していたと考えるのが自然である。
そうとすれば、それにもかかわらず商標権者において、引用商標2及び引用商標3と極めて類似する本件商標をあえて採用し、登録出願したのは、欧州全域で広く認識されている引用商標2及び引用商標3の名声に便乗する不正の目的をもってしたものと考えるのが自然である。
(4)商標法第4条第1項第19号についての小括
以上のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品として欧州全域において広く認識された引用商標2及び引用商標3と類似の商標であって、不正の目的をもって出願・登録されたものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「ラボラトワールメルシー」の文字からなるところ、その構成各文字は、同じ書体、同じ大きさで一体的に表されており、これから生じる「ラボラトワールメルシー」の称呼も、多少冗長であっても、無理なく一連に称呼できるものである。
そして、本件商標の構成中、「メルシー」の文字部分は、「ありがとう」の意味を有する仏語「merci」の読みとして我が国において親しまれているものである。
他方、「ラボラトワール」の文字部分は、仏語で「(肉屋・菓子屋などの)仕事場。」の意味を有する「laboratoire」の語の読みであるものの、我が国において該語が一般に親しまれているとはいい難いものであって、甲第5号証の2ないし8において、「ラボラトワール」の文字が「作業スペース」、「工房」、「研究所」程を表すものとして使用されているとしても、本件商標の指定商品の製造の場を表すものとして広く一般に使用されているとまではいうことができない。
そうすると、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものと認識、把握されるとみるのが自然であり、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものといえるから、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、それぞれ、前記第2のとおり、引用商標1は、「メルシー」の片仮名を書したものであり、引用商標2は、「MERCI」の欧文字を書したものであり、引用商標3は、「Merci」の欧文字を書してなるものであるところ、「merci」の文字は、「ありがとう」の意味を有する仏語であり、その読みである「メルシー」の文字とともに、我が国において親しまれているものであるから、いずれからも、「メルシー」の称呼及び「ありがとう」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標と引用商標1とを比較すると、外観については、本件商標は、「ラボラトワールメルシー」の片仮名を表してなるのに対し、引用商標は「メルシー」の片仮名を書してなるものであるから、両者は、「ラボラトワール」の文字の有無において明確な差異を有し、外観上相紛れるおそれはない。
そして、称呼については、本件商標から生じる「ラボラトワールメルシー」の称呼と、引用商標1から生じる「メルシー」の称呼とは、語頭における「ラボラトワール」の音の有無において明らかな差異を有するから、明瞭に聴別できるものである。
また、観念については、本件商標は特定の観念を生じないものであるから、引用商標1と比較することができず、両者は、観念上類似するとはいえないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
イ 本件商標と引用商標2及び引用商標3とを比較すると、外観については、本件商標は、「ラボラトワールメルシー」の片仮名を表してなるのに対し、引用商標2は、「MERCI」の欧文字を書してなり、引用商標3は、「Merci」の欧文字を書してなるものであるから、両者は、構成文字及び態様において明確に相違するものであり、外観上相紛れるおそれはない。
そして、称呼については、本件商標から生じる「ラボラトワールメルシー」の称呼と、引用商標2及び引用商標3から生じる「メルシー」の称呼とは、語頭における「ラボラトワール」の音の有無において明らかな差異を有するから、明瞭に聴別できるものである。
また、観念については、本件商標は特定の観念を生じないものであるから、引用商標2及び引用商標3と比較することができず、両者は、観念上類似するとはいえないものである。
そうすると、本件商標と引用商標2及び3とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)申立人の業務に係る商標「Merci」(「MERCI」表示を含む。)の周知性について
甲第7号証ないし甲第12号証に基づく申立人の主張によれば、申立人は、商品「チョコレート及び菓子」をヨーロッパ地域において販売している者であり、1965年に「Merci」を冠したチョコレート製品の販売をドイツで開始した。そして、商標「Merci」(「MERCI」表示を含む。以下、これらをまとめて「申立人使用商標」という。)は、2010年(平成22年)、2012年(平成24年)及び2014年(平成26年)のOHIM(域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠))の異議決定において、申立人の業務に係る商品「チョコレート菓子」等を表示するものとして、主にドイツを中心とするヨーロッパ地域における需要者の間に広く知られた商標であるとの判断がなされている。
そうすると、申立人使用商標は、本件商標の登録出願時前には、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、主にドイツを中心とするヨーロッパ地域における需要者の間においては広く知られた商標ということができる。
(2)本件商標と申立人使用商標との類否について
本件商標は、「ラボラトワールメルシー」の片仮名からなり、申立人使用商標は、「Merci」及び「MERCI」の欧文字からなるものであるから、両商標は、前記1(3)イと同様の理由により、外観、称呼及び観念のいずれからみても、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
(3)不正の目的について
申立人の提出に係る証拠を総合してみても、本件商標の商標権者が申立人に対し、本件商標を高価で買い取らせることを行っているとか、その名声を毀損させる目的で出願した等、不正の目的をもって出願したことを裏付けるような具体的な事実を見いだすことはできないから、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものということはできない。
(4)小活
前記(1)ないし(3)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人使用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、外国における需要者の間に広く知られた商標といえるとしても、本件商標と申立人使用商標とは非類似の商標であって、また、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものとはいうことができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、第30類「洋菓子,和菓子,パン,コーヒー,コーヒー豆」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-10-12 
出願番号 商願2015-71967(T2015-71967) 
審決分類 T 1 652・ 222- Y (W30)
T 1 652・ 263- Y (W30)
T 1 652・ 262- Y (W30)
T 1 652・ 261- Y (W30)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 田中 亨子
大橋 洋子
登録日 2016-01-08 
登録番号 商標登録第5817810号(T5817810) 
権利者 有限会社メルシー
商標の称呼 ラボラトワールメルシー 
代理人 山崎 和香子 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 

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