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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1320421 
異議申立番号 異議2015-685037 
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-09 
確定日 2016-07-20 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1188763号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1188763号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1188763号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、2013年8月5日にRepublic of Koreaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2013年(平成25年)9月16日に国際商標登録出願、平成27年7月21日に登録査定、第32類「Beer;malt beer;non-alcoholic beverages;non-alcoholic cocktails;soft drinks;synthetic beer;black beer [toasted-malt beer].」、第33類「Fruit wine;alcoholic beverages containing fruit;rum [alcoholic beverage];liqueurs;makgeoli [traditional Korean rice wine];Japanese liquor flavored with Asian plum extracts;soju [Korean distilled spirits];rice alcohol;alcoholic beverages,except beer;whiskey;ginseng liquor;spirits [beverages];gin;sake;cocktails;unstrained rice wine [tag-ju];wine.」及び第41類「Musical performances;operation of science halls;education information;news reporters services;providing leisure facilities;presentation of musical performances;providing sporting competitions;organizing of sporting competitions;organization of sports competitions;organization of sporting events;providing and operating of amusement facilities;music performances.」を指定商品及び指定役務として、同年10月9日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標について、商標法第4条第1項第16号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号により、その指定商品中、第33類「liqueurs(except Scotch whisky-based liqueurs);alcoholic beverages,except beer(except Scotch whisky-based alcoholic beverages,except beer);whiskey(except Scotch whiskey);spirits [beverages](except Scotch whisky-based spirits [beverages]);cocktails(except Scotch whisky-based cocktails).」(以下「申立商品」という。)についての登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを引用するときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 申立人について
申立人である「ザ スコッチ ウイスキー アソシエイション」(The Scotch Whisky Association/スコッチ・ウィスキー協会)は、1940年に英国で設立されたスコッチ・ウィスキー産業を代表する非営利団体であり、世界的なスコッチ・ウィスキーの品位及び品質の保持や、模倣品の対策等を目的として、スコットランド国内外を問わず積極的な監視活動を行なっている(甲2)。
申立人は、公益保護にも関わるといえる自己の任務が適切に果たされているかを確認するため、その業務の一環として、世界各国の商標出願・商標登録の状況について適宜監視を行なっている。そして、出願・登録されている商標について、スコッチ・ウィスキーの品位・品質に誤解を生じさせるおそれが強いと判断するものが発見された場合には、指定商品や使用対象商品を適切に制限するよう出願人や権利者に交渉を申し入れ、必要に応じて異議申立て等を行ない、登録の取消を求めるといった活動を鋭意遂行している。
2 商標法第4条第1項第16号について
(1)本件商標について
本件商標は、上段に大きく略太ゴシック調で「THE MACKISS」の欧文字を表し、やや離れた下段に、該文字部分全体の約4割の大きさで小さく「COMPANY」の欧文字を表してなる構成である。
そして、本件商標は、最も大きく書された「THE MACKISS」の欧文字部分をもって取引に資する場合がほとんどであると考えられる。
(2)「MACKISS」の文字に含まれる「MAC」について
ジョージ・F・ブラック著「The Surnames of Scotland スコットランドの姓名、その起源、意味、歴史」(スコットランド人名事典)の「MAC」の項目によれば、「MAC」とはゲール語起源のスコットランドの姓に見られる接頭語であり、「息子」を意味し、しばしば「Mc」又は「M’」と略される(甲4)。この「MAC」がスコットランド系の姓に特有の接頭語であることについては、日本で発行されている一般的な辞書にも載録されている(甲5)。
甲第6号証の1の「クランとタータン」の項目によれば、スコットランドには18世紀中ごろまでクラン(Clan)と呼ばれる氏族共同体が存在した。これは、同一の祖先から出て、同一の血統に属し、一定地域内に居住し、同一の姓を名乗り、共通の利害関係を有する共同体であった。これを象徴するのが、種々の色と幅の線の交差が織りなす格子模様「タータン」と、「名字」なのである。そして、この名字の語頭につく「MAC」こそが、故郷を離れ異国の地にあってもスコットランドに起源を持つ氏族の一つに所属していることを示す証であり、彼ら氏族にとって重要な意味を持つ語とされている。
ちなみに、甲第6号証の2の「名字のはなし Surnames」の項目によれば、上記クランは構成員数の規模によってランク分けされ、構成員が多く最も強大とされるランク1のクランに「MAC」とつく名字は多く、そのような名字であれば、先祖の誰かがスコットランド出身と考えて間違いない旨の記載がある。このことからも、「MAC」を語頭に有する名字がスコットランドを象徴する姓であり、スコットランドときわめて結びつきの強い語であることがわかる。
(3)スコッチ・ウィスキーとその取引の実情
ア スコッチ・ウィスキーは、アメリカン・ウィスキーやカナディアン・ウィスキーなどと並んで世界5大ウィスキーのーつと数えられており、我が国においても多くの愛好者を有し、長年支持されているものである。
「スコッチ・ウィスキー」の定義は、英国の2009年立法スコッチ・ウィスキー規則によって細かく定められているが、該規則の第3条(1)において、「スコッチ・ウィスキー」と称するには、「スコットランドにおいて製造されたウィスキーであること」が必要とされている(甲7)。
イ 現在、スコッチ・ウィスキーには数多くの銘柄が存在している。前述のように「スコッチ・ウィスキー」とは、必ず「スコットランドにおいて製造されたウィスキー」を意味することから、間違いなくスコットランド産であることや、スコットランド産であることを強く訴求する目的で、該商品名には、スコットランドに所縁の深い文字(すなわち、スコットランドを象徴する名字等)や図形が多数採用されている。
ウ 甲第8号証は、「MAC」を語頭に有する商品名を冠したスコッチ・ウィスキーの商品ラベルの写しを各種集めたものであるが、ここに挙げただけでも、「MACAWBER」、「McANDREWS」、「Mackay’s」、「THE REAL MACKENZIE」、「MacGregor」、「McDONALD’S」、「MACFARLANE」、「MACNAIR’S」、「THE MACKINNON」、「THE MACALLAN」や「MacCUTCHEON」等、数多く存在していることが一目瞭然である。
これは、「MAC」を語頭に有する名字がスコットランドに所縁の深い文字であるからこそ、スコットランドにおいてのみ製造されたウィスキーであることを求められるスコッチ・ウィスキーの商品名として採用されている、という背景事情が大いに理解できる証左である。
加えて、「MAC」を語頭に有する上記商品名は、間違いなく「SCOTCH WHISKY(スコッチ・ウィスキー)」、「PRODUCT OF SCOTLAND(スコットランド産)」あるいは「BOTTLED IN SCOTLAND(スコットランドにおいて瓶詰)」等の文字と併せてラベルに表示されている事実にも注目すべきである(甲8)。
エ 上記に挙げた「MAC」を語頭に有するスコッチ・ウィスキーの中で、我が国において特に親しまれている銘柄として「THE MACALLAN(ザ・マッカラン)」が挙げられる。
「THE MACALLAN」は、我が国の飲料販売最大手サントリーホールディングス株式会社が、国内の流通・販売を手掛けており、種々の宣伝広告活動がなされている(甲9)。
そして、「THE MACALLAN」については、「世界の酒類辞典」において、特集が組まれ、11種類に及ぶシリーズ製品が掲載されているほか、インターネットによれば、日本国内で最も売れている定番のウィスキーの中で「ザ・マッカラン 12年」が第2位であるとされ、「ウィスキー嗜好者であれば誰でも聞いた事がある」との記載があり、また、「楽天市場」において、「スコッチ・ウィスキー」にジャンルを絞って「ザ・マッカラン」と検索すると、全784件もの商品がヒットする(甲10?甲12)。
これらの証拠によれば、本件商標の査定時においても継続して「THE MACALLAN(ザ・マッカラン)」はスコッチ・ウィスキーの商品名として、我が国のアルコール飲料の需要者・取引者に広く知られていることが理解できる。
オ 甲第13号証は、ワイン、ビール、リキュールから焼酎まで網羅している我が国において権威ある名酒事典である。
これによれば、前述の「THE MACALLAN」はもちろん、「MacArthur’s」、「The Original MACKINLAY」や「WHYTEMACKAY」など、「MAC」を語頭に有する商品名の多種多様なスコッチ・ウィスキーが、商社等によって我が国に輸入されている事実が窺える。
カ 「MAC」を語頭に有する名字と、スコッチ・ウィスキーの結びつきが強いことを示すさらなる例として、イギリス発祥の「WhiskyMac(ウィスキー・マック)」という名前のついたカクテルが我が国含め世界中で知られていることが挙げられ、該カクテルのベースは必ず「スコッチ・ウィスキー」であるとレシピ等で紹介されている(甲14)。
キ 我が国には、スコッチ・ウィスキーを取り扱う多数の取引者のみならず、多数の愛好者も存在している。例えば、「スコッチ文化研究所」なる会員組織の団体や、世界10ヶ国3万人の有料会員を擁する「THE SCOTCH MALT WHISKY SOCIETY」の日本支部が1993年に設立されている(甲16)。
(4)商品の品質の誤認を生じるおそれ
以上のように、(ア)スコッチ・ウィスキーは、英国のスコッチ・ウィスキー規則によって産地、品質、原材料等が厳然と定義されているのであり、スコットランド産以外のスコッチ・ウィスキーは存在しないこと、(イ)「MAC」を語頭に有する名字はスコットランドにおいて由緒正しい歴史があり、該語はスコットランドに所縁の深いものであること、(ウ)スコッチ・ウィスキーの商品名にはスコットランドに所縁のあるものや、スコットランドを象徴するものが採択されており、現に「MAC」とつく名字の人物名を、商品名として採用しているスコッチ・ウィスキーが多数存在していること、(エ)そのような中でも「THE MACALLAN」は我が国でも特に広く知られていること、(オ)有名なカクテルの名称及びそのレシピにも、「MAC」の語とスコッチ・ウィスキーの結びつきが強いことを示す事実があること等を総じてかんがみれば、本件商標が付された申立商品に接した需要者・取引者は、該商品があたかも「Scotch whisky-based liqueurs(スコッチ・ウィスキーをベースにしたリキュール);Scotch whisky-based alcoholic beverages,except beer(スコッチ・ウィスキーをベースにしたアルコール飲料(ビールを除く。));Scotch whiskey(スコッチ・ウィスキー);Scotch whisky-based spirits [beverages](スコッチ・ウィスキーをベースにしたスピリッツ(飲料));Scotch whisky-based cocktails(スコッチ・ウィスキーをベースにしたカクテル).」であるかの如く商品の品質について誤認するおそれがある。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、申立商品について、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
第3 当審の判断
1 申立人の提出に係る証拠等によれば、以下のとおりである。
申立人は、「スコッチ・ウィスキー」の品位及び品質の保持することや、不正競争行為を排除すること等を目的とする英国の団体である(甲2)。
「MAC」の文字は、「The Surnames of Scotland」(和文抄訳)によれば、ゲール語起源のスコットランドの名前に見受けられるゲール語の接頭語で、「息子」のような意味を有するものであり(甲4)、「スコッチ・ウィスキー」の定義は、「The Scotch Whisky Regulations 2009」(和文抄訳)によれば、スコットランドで生産されたウィスキーを意味する(甲7)。
そして、「スコッチ・ウィスキー」のラベルには、「MAC」、「Mac」、「Mc」の文字を商品名に冠したものが複数あり、「スコッチ・ウィスキー」の「The MACALLAN(ザ・マッカラン)」は、我が国において、広告され、「世界の酒類事典 Autumn,2014」に掲載されており、「MAC」、「Mac」の文字を商品名に冠した「スコッチ・ウィスキー」が「世界の名酒事典’94年版」に掲載されている(甲8?10、13)。
また、「スコッチ・ウィスキー」をベースとした「ウイスキー・マック(WHISKY MAC)」というカクテルがある(甲14の1)。
しかしながら、申立人の証拠からは、「MAC」の文字が、本件商標の登録査定時において、「英国スコットランド産のウィスキー」又は「英国スコットランド産のウィスキーをベースとしたこと」を表すものとして使用されている事実は見いだすことができず、また、取引者、需要者に、「英国スコットランド産のウィスキー」又は「英国スコットランド産のウィスキーをベースとしたこと」を表すものと理解させるというべき事情も見あたらない。
また、当審において職権により調査するも、「MAC」の文字が、「英国スコットランド産のウィスキー」又は「英国スコットランド産のウィスキーをベースとしたこと」を表すものとして、我が国の取引者、需要者に認識されているとすべき実情も見いだせない。
そうすると、「MAC」の文字は、英国スコットランド産のウィスキー又は英国スコットランド産のウィスキーをベースとしたことを表すものということができない。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、別掲のとおり、上段に「THE MACKISS」の欧文字を大きく、下段に「COMPANY」の欧文字をやや小さく、2段に書してなるところ、その構成中、「MACKISS」の文字部分に「MAC」の文字が含まれているとしても、上記1のとおり、「MAC」の文字は、英国スコットランド産のウィスキー又は英国スコットランド産のウィスキーをベースとしたことを表すものといえないことからすれば、本件商標を申立商品について使用をしても、それが英国スコットランド産のウィスキー又は英国スコットランド産のウィスキーをベースとしたものであるかのように、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の指定商品中、登録異議の申立てに係る第33類「liqueurs(except Scotch whisky-based liqueurs);alcoholic beverages,except beer(except Scotch whisky-based alcoholic beverages,except beer);whiskey(except Scotch whiskey);spirits [beverages](except Scotch whisky-based spirits [beverages]);cocktails(except Scotch whisky-based cocktails).」についての登録は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別記】

異議決定日 2016-07-14 
審決分類 T 1 652・ 272- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浦崎 直之小田 昌子 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 田中 亨子
大橋 洋子
登録日 2013-09-16 
権利者 THE MACKISS COMPANY INC.
商標の称呼 ザマッキスカンパニー、ザマッキッスカンパニー、ザマックキスカンパニー、ザマックキッスカンパニー、ザマッキス、ザマッキッス、ザマックキス、ザマックキッス、マッキス、マッキッス、マックキス、マックキッス 
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 

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