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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X07
管理番号 1319286 
審判番号 無効2015-890087 
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-10-27 
確定日 2016-08-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5118514号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5118514号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5118514号商標(以下「本件商標」という。)は,「CRISTANINI」の欧文字を標準文字で表してなり,平成19年8月2日に登録出願,第7類「解毒・消毒・殺菌・消臭用薬剤散布機(農業用のものを除く)」を指定商品として,同20年2月25日に登録査定,同年3月14日に設定登録されているものである。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第29号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人及び請求人商標について
請求人は,高圧水の噴射技術を利用した各種洗浄装置を製造販売することを業とするイタリアの法人である。
請求人は,1972年の創始以来,自らの製品を販売するに際して,請求人名称の要部である「CRISTANINI」の欧文字からなる商標(以下「請求人商標」という。)を,自らのハウスマークないし商号の要部として,同人の業務に係る商品の出所を表示するものとして使用している。
請求人の主力商品の一つである,CBRN(Chemical(化学),Biological(生物学),Radiological(放射性物質)and Nuclear(核))除染システムは,有毒化学物質や放射性物質の付着した物体(建物,乗物,地表など)の表面に対して,高圧の薬液を噴出することによって,汚染物を除去しようとするものである(甲2の2,甲21)。請求人のCBRN除染システムは,各種産業用に加えて,軍事・危機管理用にも採用されており,NATO軍にも利用された実績がある。
2 請求人による全世界における営業活動について
請求人は,自らの製品を,世界各国において,当該国所在の販売業者を通じて販売している。
請求人の2005年から2008年までの全世界における各年売上高は,年間約400万?940万ユーロ(約6?13億円)で推移している。
甲第3号証の1?12は,2005年から2008年までの間に,日本国外に所在する各国ディストリビューター向けに請求人が発行したインボイスの写しである。請求人の製品には大がかりな設備も含まれることから,取引単位あたりの金額は,比較的大きく,30万ユーロ(約4,200万円)台が中心である。
請求人は,2002年以降,世界各国で販促活動や出展活動を行ってきた(甲4)。
3 商標権者(被請求人)と請求人との関係について
請求人は,我が国の市場に対して,2007年より,被請求人を通じて,上記装置を販売してきた。
甲第5号証は,被請求人の企業情報であり,請求人は,被請求人の主要取引先として列挙されている。
甲第6号証ないし甲第15号証は,2005年から2007年にかけて被請求人と請求人との間で交わされた書簡(電子メール)の写しである。これらの電子メールのやり取りから推認される事実は,以下のとおりである。
2005年11月頃,被請求人の代表者であるNは,請求人に対して取引関係を築くことを提案し(甲6),同年12月14日,実際にイタリア国ヴェローナのリーヴォリ・ヴェロネーゼに所在する請求人の本社に訪問し,請求人の代表者であるアドルフォ・クリスタニーニ氏との間で,取引条件について打合せを行った(甲7)。
請求人は,被請求人に対して,2006年10月に当時有効な請求人の料金表を送付し(甲8),請求人は,Nに対して割引価格を提示している(甲9)。
2006年11月26日付で,被請求人より請求人に対して,請求人の商品である「Sanijet C921」を1台発注する正式な注文書が発行された(甲11)。当該注文に対して,請求人から被請求人に対するインボイスが送付されている(甲15)。
甲第16号証の1ないし4は,請求人から被請求人に対して,2007年,2009年及び2011年にかけて発行されたインボイスの写しである。
以上のとおり,被請求人は,請求人に対して,本件商標の出願前である2005年頃に取引を打診し,2007年から継続的に請求人との間で取引関係を継続してきたことがわかる。
ところで,請求人が,本件商標に係る登録の存在を知ったことはごく最近のことである。その存在を知った後,請求人は,請求人代理人弁理士を通じて,被請求人に対して,本件商標に係る商標権の譲渡交渉を行っている。
しかしながら,被請求人は,請求人からの打診に対して真摯に回答しようとしないばかりでなく,本件が紛糾化することによって生じ得る請求人の不利益を何ら根拠無く指摘している(甲19)。請求人は,これ以上の合理的な交渉は不可能であると考え,本件無効審判請求を行うに至った。
4 請求人ないし請求人製品に関する日本国内におけるPR活動について
請求人ないし請求人製品は,被請求人を介して,ワークショップや見本市等のイベントを通じて,特に危機管理に関係する我が国の需要者・取引者に紹介,宣伝されている(甲20,甲21?甲27)。
甲第28号証及び甲第29号証は,「2013NEW 環境展/地球温暖化防止展」の出展者一覧と,同展示会に関するニュース記事である。被請求人が,同展示会に出展し,請求人製品を紹介したことがわかる。
このように,被請求人を通じて,請求人ないし請求人製品は,我が国における関連需要者に対して,広く,かつ継続的に紹介されている。甲第22号証に述べるとおり,除染システムを取り扱うことのできるメーカーが世界で3社に限られることからすれば,危機管理や災害対策の業界において,請求人が,高い注目を受け続けてきたことは容易に想像可能である。
5 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)請求人商標の周知・著名性について
上記のとおり,請求人は,請求人商標を,自らの業務に係る商品を示す商標として,高圧水技術を用いた洗浄機,特にCBRN除染システムについて,日本のみならず,全世界的に,長年に亘って使用している。
その結果,遅くとも本件商標の出願ないし登録時には,請求人商標は,請求人の業務に係る商品を示すものとして,関連する需要者及び取引者の間で,日本国内又は外国において広く知られるに至っていたというべきである。
被請求人の代表者であるNが述べるように,請求人は,同分野において3社しか存在しない業者のうち1社であることからすれば(甲22),本件商標の出願及び登録時点において,長年の営業活動や,展示会を通じたPR活動を通じて,防災や危機管理に関連する業界において,相当程度の知名度・名声を獲得していたことが推察される。
(2)請求人商標と本件商標の類似性について
請求人商標と本件商標とは,共に「CRISTANINI」の文字からなり,明らかに同一というべきである。
(3)不正の目的について
請求人と被請求人とは,本件商標が出願される前から取引関係があり,互いに知る間柄であった。
かかる状況において,被請求人は,「CRISTANINI」の商標が,請求人の商標として請求人が使用していたことを,その出願当時に詳しく知っていたことは想像に難くない。よって,被請求人は,請求人商標に何らよりどころとすることなく,偶然に本件商標を採択したとは考えられない。
したがって,被請求人は,本件商標の出願時点において,全国的に周知著名な請求人商標の存在を知りながら,その顧客吸引力にフリーライドする目的で,あるいは,請求人の我が国への市場進出を妨害し,または有利な条件での取引を引き出す目的で,請求人商標と同一の本件商標を登録出願し,登録を受けたというべきである。
他方,請求人は,被請求人が本件商標を登録出願することについて,これまで一切了知ないし承諾していない。
(4)小括
以上より,本件商標は,請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている請求人商標と同一であり,また,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
6 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)上記のとおり,被請求人は,請求人商標が,請求人の業務に係る商品を示す商標として使用されていることを知りながら,同じく「CRISTANINI」の文字からなる本件商標を,請求人商標の有する顧客吸引力にフリーライドする目的で,あるいは,請求人の日本における市場進出を妨害し,または有利な条件での取引を引き出す意図で,登録出願したものと推測することができる。かかる本件商標の独占使用を認めることは,社会公共の秩序を著しく混乱させるおそれがあり,取引秩序の維持を目的とする商標法の予定するところではなく,保護に値しないというべきである。
また,かかる使用によって,被請求人と請求人との関係が誤認され,請求人のこれまで築き上げてきた名声・信用が希釈化するおそれがあるばかりでなく,また,誤認した需要者及び取引者にまで損害が生じる可能性も否定できない。
(2)小括
以上より,本件商標の登録出願は,その経緯において社会的相当性を欠くものであって,また,本件商標の指定商品についての本件商標の使用は,社会公共の利益に反するというべきである。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
7 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人商標の周知・著名性
上記のとおり,請求人は,請求人商標を,自らの業務に係る商品を示す商標として,高圧水技術を用いた洗浄機,特にCBRN除染システムについて,長年に亘って使用してきた。
特に,我が国における関連需要者の一である被請求人が請求人に2005年当時から取引開始を持ちかけたように,請求人の存在は,我が国の当時の関連需要者間で一定の知名度を博していたことが推認される。
遅くとも本件商標の出願日である2007年(平成19年)8月2日には,請求人商標は,請求人の業務に係る商品を示すものとして,少なくとも危機管理に関連する需要者及び取引者の間で,広く知られているというべきであり,その周知・著名性は,本件商標の登録時に至るまで維持されていたというべきである。
(2)請求人商標が創造標章ないしハウスマークであるか
上記のとおり,請求人商標は,当該業界において,ありふれて採択されていない,請求人によって独自に創作,採択された商標であって,請求人のハウスマークとして,長年に亘り使用されているものである。
(3)商品間の関連性について
上記のとおり,請求人商標は,高圧水の噴射技術を利用した各種洗浄装置,特に,CBRN除染システムについて使用されている。他方,本件商標に係る指定商品は,「解毒・消毒・殺菌・消臭用薬剤散布機」である。まさに,請求人のCBRN除染システムは,消毒用に薬液を噴射する装置であり,この指定商品に密接に関連しているということができる。
よって,請求人商標が実際に使用される商品と,本件商標に係る指定商品とは,同一であるか,または極めて密接に関連しているというべきである。
(4)本件商標と請求人商標の類似度について
上記のとおり,本件商標と,請求人商標とは,「CRISTANINI」の文字を有する点において共通し,実質的に同一であって,極めて高い類似度を有する。
請求人商標の高い独自性,知名度に加えて,被請求人が本件商標の出願当時に取引関係にあったことを考慮すれば,本件商標が,上記指定商品に使用された場合,関連する取引者,需要者において,本件商標を付した商品が,請求人の許諾を受けた者によって製造販売されているではないか,という誤認を生じさせるおそれがある。
(5)小括
以上のように,(ア)請求人商標は,請求人の業務に係る商品を示すものとして,関連需要者・取引者の間で,広く知られ,かつ高い関心,評価を受けていること,(イ)請求人商標は,請求人により独自に採択されたハウスマークであって,独占的に用いられてきたものであること,(ウ)両商標の類似度は極めて高いこと,(エ)互いの商品は重複ないし密接に関連し,本件商標に係る指定商品について,請求人はすでに取り扱っているか,あるいは今後,自ら又はライセンシー等を通じて取り扱うことが容易に想像可能な程に関連していること,などを考慮すれば,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接した需要者及び取引者は,請求人又は同人と資本関係又は業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれは十分にあるというべきである。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
なお,本件審判請求は,本件商標の登録日から5年を経過した後になされるものであるが,上述のとおり,被請求人は,請求人商標が,請求人によって使用されていることを詳しく知っていながら,本件商標の登録出願を行ったことは明らかであり,不正の目的で商標登録を受けたと認められるべきである。
8 結語
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから,無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
上記の請求人の主張に対して被請求人は,何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 請求人商標の周知・著名性について
(1)請求人提出の証拠及び同人の主張から,次の事実を認めることができる。
ア 請求人は,1972年(昭和47年)にイタリアにおいて設立された除染システムメーカーであり(甲2の8,甲22),遅くとも2005年(平成17年)頃には,カタログ及び請求書に請求人の会社名である「CRISTANINI」の商標(以下「請求人使用商標」という。)を付してCBRN除染システムを構成する装置である「SANIJET C.921」及びその付属品並びに乗り物,人,航空機用の除染薬剤「BX24」,「BX29」及び「BX40」等を販売していること(甲2の2,甲3の1,甲3の2)。
イ 請求人の除染システムは,有毒化学物質や放射性物質の付着した物体(建物,乗物,地表など)の表面に対して,高圧の薬液を噴出することによって,汚染物を除去する特殊な機器であって,水を供給するポンプ等から構成されるコントローラ,薬剤を放出するガン,それらをつなぐホース等の付属品で構成され(以下「請求人商品」という。),それに使用する薬剤とともに販売されていること(甲2の2,甲21,甲25)。
ウ 甲第4号証は,請求人の2002年(平成14年)以降に世界各国で販売活動や出展活動を行った履歴であるところ,請求人は,本件商標の登録出願日(2007年(平成19年)8月2日)前の2002年(平成14年)2月から2007年(平成19年)7月にかけて,16か国のヨーロッパ諸国の防衛省,内務省及び軍関係の機関等と25回の会議を行い,そのほか,同じくヨーロッパ諸国において,博覧会,シンポジウム及び国際会議を35回実施したこと,その後もヨーロッパ諸国を中心に,2014年(平成26年)12月までに,総計737回の会議,博覧会等を実施したこと。
(2)以上よりすると,請求人は,1972年(昭和47年)に設立された除染システムメーカーで,遅くとも2005年(平成17年)には,請求人使用商標を使用して除染システムの販売を行った。そして,請求人の除染システムが有毒化学物質や放射性物質等の汚染物を除去する特殊な機器であって,当該機器を使用するのは,主に国(軍,防衛省)等の限られた機関であることを考慮すると,請求人は,ヨーロッパ諸国において当該機関に対して会議等を相当数実施したのであるから,請求人使用商標は,本件商標の登録出願の時(2007年(平成19年)8月2日)ないし査定時(2008年(平成20年)2月25日)において,請求人の業務に係る請求人商品を表示するものとして,少なくともヨーロッパ諸国における需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。
2 本件商標と請求人使用商標との類否
本件商標は,上記第1のとおり「CRISTANINI」の欧文字からなり,当該文字に相応し「クリスタニーニ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
一方,請求人使用商標は,上記1(1)のとおり,「CRISTANINI」の欧文字からなり,当該文字に相応し「クリスタニーニ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
そこで,本件商標と請求人使用商標を比較すると,両者は,外観においてはその綴りを共通にし,称呼においては「クリスタニーニ」の称呼を共通にするものであって,観念においては区別することができないものであるから,両者は極めて類似するものというべきである。
3 本件商標の指定商品と請求人製品の関係
本件商標の指定商品は,上記第1のとおり,解毒・消毒・殺菌・消臭を目的とする薬剤散布機であって,他方,請求人製品は,有毒化学物質や放射性物質の付着した物体の表面の汚染物を除去することを目的とした機器及び付属品であるから,両者は,いずれも有毒・有害物質の排除・除去のために化学的処理を行う装置であり,その需要者にはともに,解毒・消毒等の効果について深い関心を寄せる者(主として危機管理部門に係る者)が含まれるといえるから,需要者を共通にすることが多いものと認められる。そうすると,両者は,その品質・用途及び需要者を共通にする関連性の高い商品であるというのが相当である。
4 不正の目的
(1)請求人提出の証拠及び同人の主張から,次の事実が認められる。
ア 被請求人の代表取締役であるNは,2005年(平成17年)12月14日にイタリア国ヴェローナのリーヴォリ・ヴェロネーゼに所在する被請求人の工場を訪問していること(甲6,甲7)。
イ その後,請求人と被請求人は,2006年(平成18年)10月から2007(平成19年)年3月にかけて,メールによって,請求人カタログ(甲2の2)に掲載されている「SANIJET C.921」に係る商談を開始し(甲8?甲15),実際に2007年(平成19年)3月から2011年(平成23年)4月にかけて,請求人カタログ(甲2の2)に掲載されている各種の商品が,被請求人に納品されていること(甲16(枝番号を含む))。
ウ 被請求人は,2007年(平成19年)10月に開催された「危機管理産業展2007」,2011年(平成23年)10月に開催された「危機管理産業展2011」,2012年(平成24年)10月に開催された「危機管理産業展2012」及び2013年(平成25年)5月に開催された「N-EXPO2013 環境展」に出展し,請求人の商品を展示したこと(甲20,甲24?甲29)。
エ 2011年(平成23年)1月27日に開催された「生物・化学テロ防護国際ワークショップ」において,被請求人の代表者であるNが行った「除染の現状」と題する講演の中で,請求人をイタリアの除染システムメーカーとして紹介していること(甲22,甲23)。
オ その後,請求人の本件商標に関する譲渡の申し入れ(2015年4月17日付,同年5月11日付)(甲17,甲18)に対して,被請求人は,「商標権に関するお申し出は受け取っています。・・・商道徳上の問題があることは想定内であり,・・・もし係争に発展するならば,クリスタニーニ社は失うものは決定的です。・・・この業界は小さな世界なので,弊社と係争中だとわかれば,代理店になってくれる会社は現れることはあり得ないし,・・・永久に門戸は閉ざされるかも知れません。」との内容のFAXを請求人に送付していること(同月12日付)(甲19)。
(2)以上からすると,被請求人は,2005年(平成17年)に請求人工場を訪れ,その後,商談を開始し,2007年3月には請求人商品を受領しているから,本件商標の登録出願日(2007年(平成19年)8月2日)には,請求人及び請求人商品の存在を認識していたものであり,被請求人が本件商標を登録出願することについて請求人の許諾を得ずに本件商標を請求人商品と関連する商品を指定商品として登録出願したことが認められる。その後,被請求人は,日本国内の展示会等において,請求人商品の紹介を行っている。そして,請求人の本件商標の譲渡に関する申し入れに対して,被請求人は,本件商標を取得したことについて,商道徳上の問題があることを認識しており,しかも,請求人が被請求人を代理店としない場合については,むしろ,請求人が不利益を被る旨を請求人に通知したことが認められる。
以上の事実に加え,「CRISTANINI」の文字が,特定の意味を有する既成の語ではなく造語であることからすれば,被請求人は,請求人使用商標と極めて類似する商標を,偶然,採択したとはいい難く,むしろ,本件商標の出願当時,請求人使用商標の存在を認識したうえで,請求人使用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として,請求人使用商標と極めて類似する本件商標を登録出願したものと判断するのが相当である。
また,本件商標の指定商品は,前記のとおり,請求人商品と関連性の高い商品であること,及び請求人の本件商標の譲渡に関する申し入れに関して,係争による請求人不利益の発生の可能性を通知したことをあわせてみると,被請求人は,請求人使用商標のヨーロッパ諸国における周知性ただ乗り(フリーライド)し不正の利益を得る目的や請求人の国内参入を阻止し,あるいは,代理店契約を強制する目的で本件商標を登録出願し登録を受けたものといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,その登録出願の時ないし査定時において請求人の業務に係る商品を表示するものとしてヨーロッパ諸国における需要者の間に広く認識されている請求人使用商標と類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするものといわなければならない。
5 むすび
以上のとおりであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから,その余の請求の理由について判断するまでもなく,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-06-20 
結審通知日 2016-06-23 
審決日 2016-07-20 
出願番号 商願2007-85710(T2007-85710) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (X07)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土井 敬子 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 早川 文宏
平澤 芳行
登録日 2008-03-14 
登録番号 商標登録第5118514号(T5118514) 
商標の称呼 クリスタニーニ 
代理人 鮫島 睦 
代理人 勝見 元博 

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