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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y01
管理番号 1319246 
審判番号 取消2014-300330 
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-05-07 
確定日 2016-08-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4995374号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4995374号商標(以下「本件商標」という。)は、「SARMET」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年3月28日に登録出願、第1類「化学品,原料プラスチック」を指定商品として、同年10月13日に設定登録されたものである。
なお、本件審判請求の登録は、平成26年5月26日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが使用した事実はなく、また、同指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があったとは認められない旨述べた。
なお、請求人は、後記第3の被請求人の答弁に対し何ら弁駁していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由として、答弁の理由及び審尋に対する回答を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第22号証(枝番を含む。)を提出した。
なお、枝番すべてをいうときは、以下、枝番を省略して記載することがある。
1 答弁の理由
(1)被請求人と持株会社アルケマ(Arkema)及びアルケマ株式会社(Arkema K.K.)らの資本関係
ア 被請求人のアルケマ フランス(Arkema France)(以下「アルケマ フランス」という場合がある。)は、純粋持株会社のフランス法人のアルケマ(Arkema)(以下「持株会社アルケマ」という場合がある。)が100%保有するフランス法人である。被請求人は、持株会社アルケマを筆頭親会社として構成されるアルケマ(Arkema)グループ(以下「アルケマ・グループ」という。)の中核であり、持株会社と事業活動を兼務する事業持株会社である。持株会社アルケマ及び被請求人は、アジア、欧州、アメリカ、アフリカの各地域の拠点として、被請求人を含むフランス法人持株会社5社を保有しており、さらにその傘下に、日本法人のアルケマ株式会社(Arkema K.K.)(以下「日本法人アルケマ」という場合がある。)を含む多数の現地法人を保有している。
イ 乙第2号証は、持株会社アルケマ発行の「2013 REFERENCE DOCUMENT INCLUDING ANNUAL FINANCIAL REPORT/ARKEMA INNOVATIVE CHEMISTRY」と題する2013年度のアルケマ・グループ年次事業及び決算報告書の表裏表紙及び第255頁であり、同頁にアルケマ・グループの組織図が記載されている。組織図のトップに紫色で表示されているのがグループ筆頭の親会社持株会社アルケマである。持株会社アルケマは、自らは事業活動を行わない純粋持株会社である旨、フランス、アメリカ、アフリカ、アジア、欧州の各地域に、被請求人のアルケマ フランスを含むフランス法人の持株会社5社(当該組織図で濃紫色又は淡紫色で表示。左から右へ順にArkema Asie SAS、Arkema Europe、Arkema France、Arkema Ameriques SAS、Arkema Afrique)を保有し、これらを介して、当該各地域に多数のアルケマ・グループ会社を保有していること、また、被請求人アルケマ フランスは持株会社と事業活動を兼務する事業持株会社であることが記載されている。
上記のフランス法人5社の中で、組織図のほぼ中央に淡紫色で表示されているのが被請求人のアルケマ フランスであり、持株会社アルケマによって100%保有されていることが認められる。
また、当該フランス法人5社中、アメリカ大陸の拠点となるArkema Ameriques SAS(アルケマ アメリク エスアーエス)は、持株会社アルケマが99.46%、被請求人が0.54%を保有している。さらに、このArkema Ameriques SASが100%保有する米国法人アルケマ デラウェア インコーポレイテッド(Arkema Delaware Inc.)が100%出資する子会社が、本件商標の登録原簿に記載の前商標権者、米国法人のアルケマ インコーポレーテッド(Arkema Inc.)である。
さらに、当該フランス法人5社中、アジア市場の拠点となるArkema Asie SAS(アルケマ アジ エスアーエス)は、アルケマが59.4%、被請求人が40.6%を保有し、このArkema Asie SASが100%出資する子会社が、国内で本件商標を使用している日本法人アルケマである(以上乙2)。
ウ 乙第3号証は、日本法人アルケマのウェブサイトに掲載された会社概要及び事業展開に関する情報ページである。同社が、世界各地の生産拠点で製造されたアルケマ製品の輸入・販売、用途開発、アジア・パシフィック地域のクライアント向けテクニカルサービスを行っていること、1974年2月19日に設立され、上記のフランス法人Arkema Asie SAS(アルケマ アジ エスアーエス)100%保有の子会社であること、東京本社(東京都千代田区内幸町2-2-2富国生命ビル15階)のほか、京都テクニカルセンター及び横浜事業所を有すること、横浜事業所の所在地が「神奈川県横浜市保土ヶ谷区神戸町134番地 横浜ビジネスパーク テクニカルセンター1階」であること等が記載されている。また、主な取扱製品として、化学品本部[ジペンジルトルエン、アクリル酸エステル(メチル、エチル、ブチル、2エチルヘキシル)、PMMA、フッ素化合物、各種フルオロカーボン、水加ヒドラジン及びその誘導体、各種有機硫黄化合物(各種メルカプタン、メタンスルフォン酸、チオグリコール酸及びエステル)、アミン類、各種溶剤、機能性添加剤(ナノストレングス、板ガラス用コーティング剤、ガラス瓶用コーティング剤、樹脂改質・強化剤)、活性炭、モレキュラーシーブ、製紙・塗料用添加剤、その他特殊添加剤、紫外線・熱硬化樹脂、フッ素樹脂(PVDF)、機能性ポリオレフィン]、スペシャリティボリアミド本部[ポリアミド11(ペレット及びパウダー)、ポリアミド12(ペレット及びパウダー)、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、キャスターオイル誘導体、ポリアミド共重合体、ポリアミドエラストマー]が記載されている。
(2)被請求人らの使用権
ア 本件商標は、米国法人のサートーマー・テクノロジー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Technology Company Inc.)(以下「原商標権者」という。)によって平成18(2006)年10月13日に設定登録された(乙1の2)。
イ 2010年12月3日に、原商標権者は、その関連会社で米国法人のSartomer Technology USA,LLC(サートーマー・テクノロジー・ユーエスエイ・エルエルシー)との間で、原商標権者が全世界で保有する「SARMET」等の商標権をSartomer Technology USA,LLCに譲渡する商標譲渡契約(TRADEMARK ASSIGNMENT)を締結した。乙第12号証は、米国特許商標庁のオンラインデータベースから取得した米国商標登録第3753366号「SARMET」(第1類)の登録書誌情報、並びに当該商標権移転登録の記録を示すTrademark Assignment Abstract of Title及び当該権利移転登録時に提出された権利移転に関する証明書を示す。上記当事者間の商標譲渡契約書(TRADEMARK ASSIGNMENT)が、Sartomer Technology Company Inc.(原商標権者)からSartomer Technology USA,LLCへの商標権譲渡の事実を示す証明書として米国特許商標庁に提出され、2010年12月14日に登録済みであることが認められる(乙12に示す「Trademark Assignment Abstract of Title」のAssignment1)。当該商標譲渡契約書の第3頁ないし第7頁に表示の「Scedule A」は、当該権利移転に係る全世界の商標登録及び出願を特定したものであり、第6頁に本件商標の登録書誌(商標「SARMET」、国名「JAPAN」、出願番号「200627275」、出願日「28-Mar-2006」、登録番号「4995374」、登録日「13-Oct-2006」)が記載されていることから、上記商標譲渡契約が日本における「SARMET」の商標権、すなわち本件商標を含むものであったことが明らかである。
ウ さらに、その後の2011年7月1日には、Sartomer Technology USA,LLC及びその関連会社Sartomer USA,LLC(以下、併せて「サートマー社」という。)と被請求人(Arkema France)との間で、サートマー社を譲渡人、被請求人を譲受人とする事業譲渡契約(ASSET PURCHASE AND ASSIGNMENT AGREEMENT)が締結され、サートマー社が全世界で保有する「SARMET」等の商標権並びに特許権その他の知的財産を被請求人に権利移転された。当該事業譲渡契約書(ASSET PURCHASE AND ASSIGNMENT AGREEMENT)は、上記の米国商標登録第3753366号「SARMET」(第1類)のSartomer Technology USA,LLCからArkema Franceへの商標権譲渡の事実を示す証明書として米国特許商標庁に提出され、2012年10月16日に登録済みである(乙12に示す「Trademark Assignment Abstract of Title」のAssignment2)。
エ この事業譲渡契約締結に先立ち、アルケマ・グループの2010年12月13日付のプレスリリース(乙13)は、持株会社アルケマがトータル社(Total Petrochemicals & Refining USA,Inc.=原商標権者サートーマー・テクノロジー・カンパニー・インコーポレイテッドの事業承継人)(乙1の2、乙17)から特殊化学品事業の一部としてコーティング用樹脂事業(クレイ・バレイ社等)とフォトキュア樹脂関連事業(サートマー社)を買収する計画を発表し、上記の事業譲渡契約締結日と同日の2011年7月1日付のプレスリリース(乙14?乙16)で当該事業買収の完了を発表した。なお、上記の「トータル社」は、当該プレスリリースの日本語版及び抄訳では「トタル社」と表示されている。
オ これに続く2011年10月31日には、上記事業譲渡契約当事者(譲渡人)のサートマー社のうち、Sartomer Technology USA,LLCは、アルケマ・グループの米国法人アルケマ インコーポレイテッド(Arkema Inc.)(=本件商標の登録原簿における前商標権者、乙1の2)によって吸収合併された(乙18)。サートマー社のうち、Sartomer USA,LLCは、アルケマ・グループの一員として「SARTOMER」関連製品部門の事業を継続している。乙第4号証はSartomer USA,LLC作成の会社概要であり、「ARKEMA」グループの表示が認められる。乙第5号証は、アルケマ・グループの2013年度の決算の連結範囲を示す報告書であり、第229頁に表示のSartomer USA,LLCについて、グループ支配率100%、全部連結の決算がなされたことが記されている。なお、後述の乙第7号証ないし乙第11号証に示す製品は、Sartomer USA,LLCが米国で製造販売し、日本法人アルケマが輸入したものである。
カ 以上を換言すれば、原商標権者が日本を含む全世界で保有していた「SARMET」の商標権は、原商標権者からSartomer Technology USA,LLCへ譲渡され(2010年12月3日契約締結)、さらに、Sartomer Technology USA,LLCから被請求人のアルケマ フランスへ譲渡され(2011年7月1日契約締結)、以後、現在に至るまで被請求人が「SARMET」の商標権を保有している。
キ なお、日本における被請求人への「SARMET」の商標権移転登録においては、米国特許商標庁で権利移転登録に用いられた上記の商標譲渡契約書及び事業譲渡契約書が日本国内の権利移転登録申請の方式に合致せず、また、原商標権者及びSartomer Technology USA,LLCの双方がその後の吸収合併で消滅し、新たに譲渡証明書を発行できないことなどの事情で当該両契約書に基づく権利移転登録申請が困難であったことから、原商標権者の現承継人のトータル ペトロケミカルズ アンド リファイニング ユーエスエー インコーポレイテッド(Total Petrochemicals & Refining USA,Inc.)(乙17)から、同社のサートマー(Sartomer)社関連事業を買収したアルケマ・グループの米国法人アルケマ インコーポレイテッド(乙13?乙18)へ本件商標を譲渡し、さらに、アルケマ インコーポレイテッドから被請求人へ譲渡する形式で、最終的に被請求人への商標権移転登録を平成26年(2014年)12月18日に完了させた(乙1の2)。
ク 以上より、本件商標は、当事者間の商標譲渡契約等に基づき、2010年12月3日から2011年6月30日まではSartomer Technology USA,LLCが、また、2011年7月1日から現在に至るまでは被請求人が、日本国内で本件商標を指定商品に使用する権原を保有していたことが明らかである。また、日本法人アルケマは、先に詳述したとおり、被請求人とその持株会社アルケマ両社によって100%保有されるArkema Asie SASが100%出資し、被請求人と密接な資本関係を有するアルケマ・グループ日本法人であり、被請求人から日本国内で本件商標を使用する権利を許諾されている。
ケ したがって、被請求人及び日本法人アルケマは、本件審判請求の予告登録前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)に該当する2011年7月1日以降、2014年5月25日までの期間に日本国内で本件商標を指定商品に使用する権利を保有していたことが明らかである。
(3)被請求人らによる使用実績
ア 乙第7号証の1は、被請求人の社内管理データからの抽出物であり、アルケマ・グループの製造販売に係る「SARMET」全製品の一覧を示す。製品の名称「Sarmet(R)CN2400」(審決注:「(R)」は、「R」の丸囲み記号。以下同じ。)「Sarmet(R)CN2401」「Sarmet(R)CN2402」「Sarmet(R)CN2403」「Sarmet(R)CN2404」、当該製品の一般名「Metallic Acrylate(Soluble Zinc Salt)」[アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)]、製造年などが記載されている。
イ また、乙第7号証の2は、被請求人の社内管理データからの抽出物であり、全世界における「SARMET」製品に関する2012年及び2013年における売上データを示す。2012年6月に製品(Item)「SARMET(R)CN2400_1577M」が、受注番号(Order Number)「539553」にて神奈川県(KANAGAWA)の日本法人アルケマの横浜事業所(ARKEMA KK YOKOHAMA OFFICE)あてに出荷されたことが認められる。「Current Year Vs Previous Year」(本年度対昨年度)及び「Year(1/1/2013 To 12/31/2013)」(2013年1月1日?2013年12月31日)との記載から、2012年度と対比させた2013年度の販売量を示すことが明らかである。「CY Lbs(本年度の販売量)」が「0」、「PY Lbs(昨年度の販売量)」が「1」、「CY Vs PY Lbs」(本年度対前年度)が「-1」と記載されていることから、2012年に1Lbs(1ポンド)の販売実績があったことを示す。
ウ 乙第8号証は、米国から日本への製品輸出に関して荷送人SARTOMER USA,LLCが2012年6月27日付で発行した「SARMET CN2400」製品の製品適合証明書を示す。製品(Product)欄に「SARMET(R)CN2400@」、製品記述(Product Description)欄に「Metallic Acrylate(Soluble Zinc Salt)」[アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)]、受注番号(Order)欄に「539553」、顧客発注番号(Customer PO#)欄に「ARK-0088/12-TS-12086」、出荷量(Quantity Shipped)欄に「1.00Lbs」(1ポンド)、顧客名(Customer Name)欄に「ARKEMA KK YOKOHAMA OFFICE」(アルケマ株式会社、横浜事業所)、住所(Address)欄に「TECH CTR 1,YOKOHAMA BUS.PARK,134 GODO-CHO,HODOGAYA-KU,YOKOHAMA-SHI,KANAGAWA 240-0005 JP(神奈川県横浜市保土ヶ谷区神戸町134番地 横浜ビジネスパーク テクニカルセンター1階)が記載され、品質管理責任者としてSARTOMER USA,LLCが記載されていること認められる。これらの内容は、後述の乙第11号証に示す米国から日本へ空輸された製品「SARMET CN2400 METALLIC ACRYLATE」に対応している。
エ 乙第9号証は、乙第8号証に示す米国から日本への製品輸出に関して荷送人SARTOMER USA,LLCが2012年6月27日付で発行した梱包明細書である。受注番号「539553」(顧客発注番号「ARK-0088/12-TS-12086」)に係る製品「Sarmet(R)CN2400」1パイント(0.45キログラム)が2012年6月27日に日本法人アルケマ横浜事業所宛て出荷されたこと、「Sarmet(R)CN2400@Metallic Acrylate(Soluble Zinc Salt)」の記載より、当該製品の一般名が「Metallic Acrylate(Soluble Zinc Salt)」すなわち「アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)」であることが認められる。
オ 乙第10号証は、乙第8号証及び乙第9号証に示す米国から日本への製品輸出(販売)に関して、荷送人SARTOMER USA,LLCが荷受人の日本法人アルケマの横浜事業所宛てに発行した2012年6月27日付インボイスを示す。日本法人アルケマ横浜事業所(同社の発注番号ARK-0088/12)からの発注に基づいて、SARTOMER USA,LLC(同社の受注番号539553B)が製品名「SARMET(R)CN2400」の[METALLIC ACRYLATE(SOLUBLE ZINC SALT)=アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)を航空貨物で出荷、販売したことが認められる。
カ 乙第11号証は、三菱倉庫株式会社(国際輸送部航空貨物チーム、東京輸入販売担当)(MITSUBISHI LOGISTICS CORPORATHION,INT’L TRANSPORT DIV.AIR FREIGHT TEAM)のRIE TANIMOTO(タニモト リエ)氏が2012年7月2日に日本法人アルケマ宛てに送付した航空貨物到着案内書(PRE-ADVICE)及び航空貨物運送状(Air Waybill)を示す。当該航空貨物運送状は、MITSUBISHI LOGISTICS AMERICA CORP(米国三菱倉庫会社)が作成し、荷送人SARTOMER USA,LLCの代理人として2012年6月29日に署名されている。
荷送人(SHIPPER)がSARTOMER USA,LLC(所在地:502 THOMAS JONES WAY EXTON,PA 19341 U.S.A.)であり、荷受人(CONSIGNEE)の名称がARKEMA K.K.YOKOHAMA OFFICE(アルケマ株式会社、横浜事業所)、その住所がTECH CTR 1,YOKOHAMA BUS.PARK,134 GODO-CHO,HODOGAYA-KU,YOKOHAMA-SHI,KANAGAWA,240-0005,JP(神奈川県横浜市保土ヶ谷区神戸町134番地 横浜ビジネスパーク テクニカルセンター1階)であり、受注番号(ORD.#)「539553」及び発注番号(P.O.#)「ARK-0088/12」に係る製品「SARMET CN2400 METALLIC ACRYLATE」(SARMET CN2400アクリレート金属塩)が、米国のジョン・F・ケネディ国際空港から5X-0050 JFK NRT便(到着予定時刻9時46分)で輸出され、2012年7月1日に成田空港へ到着したことが認められる。
キ 乙第7号証ないし甲第11号証を総合すれば、アルケマ・グループの米国法人Sartomer USA,LLCが製造販売する製品名「SARMET CN2400」のアクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)がアルケマ・グループの日本法人アルケマの横浜事業所によって2012年7月1日に輸入されたことが明らかである。
ク また、乙第6号証は、アルケマ・グループの取り扱いに係る塗料及びコーティング関連分野の製品カタログ「PAINTS AND COATINGS/Delivering innovative products and services to coatings formulators worldwide/ARKEMA INNOVATIVE CHEMISTRY」を示す。第3頁に全製品のブランド名がそのアプリケーション(用途)別にリスト化されており、「Metal Coatings」(メタルコーティング)及び「Inks」(インク)用のカテゴリーに「Photocure resins」(フォトキュア樹脂、光硬化性樹脂)向け製品ブランドとして「Sarmet(R)」が記載されている。また、第6頁上段の「Sartomer Photocure resins」(Sartomerフォトキュア樹脂、光硬化性樹脂)向け製品欄には、「A worldwide supplier of acrylate and methacrylate monomers,oligomers and other specialty chemicals」(アクリル酸塩及びメタクリル酸塩モノマー、オリゴマー、その他の特殊化学品の世界的サプライヤー)との記載があり、これら各製品のブランド名を示す「Brand names」の欄に「Sarmet(R)」が記載されている。
当該製品カタログは、被請求人が2014年2月に作成し、以後、現在に至るまで、全世界で使用中のものであり、日本では日本法人アルケマを介して配布されている。当該製品カタログの作成時期は、最終頁の右端の「・・・/02.2014/Printed in France・・・」との記載より、2014年2月であることが明らかである(以上乙6)。
ケ さらに、当該製品カタログは電磁的方法でも提供されている。すなわち、アルケマ・グループのインターネットのウェブサイト(http://www.arkema.com/en/products/markets-overview/paint-coatings-and-adhesives/index.html)からは、当該製品カタログの電子データを直接ダウンロードすることができる(乙21)。
(4)被請求人らの取り扱いに係る製品
技術用語辞典で「Acrylate(アクリレート、アクリラート)」は「アクリル酸塩」「アクリル酸エステル」等と定義されている(乙19、乙20)。被請求人らの取り扱いに係る上記製品「METALLIC ACRYLATE(SOLUBLE ZINC SALT)」[アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)](乙8?乙11)及び「ACRYLATE」[アクリル酸塩又はアクリル酸エステル](乙6)は、特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準」(第8版)の第1類「化学品」の中の項目17「有機酸及びその塩類」ないし同18「エステル類」に分類される商品(乙22)であると考えられるが、いずれにせよ、これらの製品が本件商標の登録に係る指定商品「化学品」の概念に包含される商品であることは明らかである。
(5)被請求人らの使用に係る商標
本件商標は、標準文字の英文字の大文字で「SARMET」と横書きしたものである(乙1の1)。乙第6号証に表示の製品ブランド名「Sarmet(R)」(以下「使用商標」という場合がある。)は、本件商標の上記構成文字を通常の活字体の英文字で、語頭の「S」のみを大文字で、それ以外を小文字で横書きし、右肩に登録表示記号「(R)」を付したものであるから、本件商標と実質的に同一である。乙第7号証ないし乙第11号証に表示の製品「SARMET CN2400 METALLIC ACRYLATE」「SARMET(R)CN2400」「Sarmet(R)CN2400」「SARMET(R)CN2400@」等は、本件商標と同一の構成文字からなる「SARMET」又は「Sarmet」の英文字、あるいは当該文字の右端に登録表示記号「(R)」を付したものに、製品の型式番号、種別、単位等として認識される「CN2400」、「CN2400@」といった文字を付記し、あるいはさらに製品の一般名として認識される「METALLIC ACRYLATE」を付記したものであるから、「SARMET」及び「Sarmet」の文字部分が商品出所識別標識として機能する商標部分として容易に認識理解される。
したがって、被請求人及び日本法人アルケマの使用に係る上記商標は、本件商標と社会通念上同一と認められるものであることが明らかである。
(6)小括
以上より、被請求人と密接な資本関係を有するアルケマ・グループの日本法人アルケマは、同じくアルケマ・グループ米国法人のSartomer USA,LLCから、2012年7月1日に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を製品名として用いたアクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)製品を輸入した。また、被請求人及び日本法人アルケマは、フォトキュア樹脂(光硬化性樹脂)の原材料として用いられるアクリル酸塩製品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を当該製品のブランド名として記載した製品カタログを2014年2月から現在に至るまで頒布しており、また、その当該製品カタログを電磁的方法により提供している。
先に詳述したとおり、被請求人は、2011年7月1日に本件商標の商標権を取得し、これ以降、事実上の商標権者であったから、本件商標を指定商品に使用する正当な権原を保有していた。また、日本法人アルケマは、被請求人から国内で本件商標の使用権を許諾されていた。
したがって、本件商標は、要証期間内に本件商標の使用権を保有していた日本法人アルケマによって、商品又は商品の包装に標章を付したものを輸入する行為(商標法第2条第3項第2号)により使用された。
また、本件商標は、要証期間内に本件商標の使用権を保有していた被請求人及び日本法人アルケマによって、商品に関する取引書類に標章を付して頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)により使用された。
以上、乙第1号証ないし乙第22号証より、本件商標の使用権者であった被請求人及び日本法人アルケマが、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用した化学品[アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)、アクリル酸塩]を本件審判請求の予告登録前3年以内に商標法第2条第3項第2号及び同項第8号に掲げる行為により日本国内において使用したことが明らかである。
(7)結語
本件商標は、本件商標の使用権者によって、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、本件審判請求に係る指定商品「第1類 化学品」に使用されていたものであるから、本件商標は商標法第50条第1項の規定に該当するものではなく、したがって、本件商標の登録は取り消されるべきものではない。
2 審尋に対する回答
以下の(1)及び(2)の2点について、回答する。
(1)乙第6号証の製品カタログが要証期間内に日本国内で頒布又は電磁的方法により提供されたことについて
乙第6号証の製品カタログは、被請求人が2014年2月に作成したものであり、裏表紙の右端のクレジット欄に「DIRCOM 4354E/02.2014/20 Printed in France」との記載が認められる。当該カタログの電子データは、この作成時以降、現在に至るまで継続してアルケマ・グループのウェブサイト(乙21)で閲覧及びダウンロード可能な状態に置かれているものである。
(2)乙第8号証ないし乙第10号証に係る商品について、その商品又は商品の包装に本件商標が付されていたことについて
乙第8号証ないし乙第10号証に係る商品は、「SARMET CN2400」との製品名で特定されているアクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)である。現時点で当該商品又はその包装の写真を入手することは困難であるが、被請求人の提出した全証拠方法を総合すれば、要証期間内に本件商標と社会通念上同一の「SARMET CN2400」を製品名として付したアクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)が実際に被請求人又はその子会社によって製造販売され、日本国内に輸入されたことが明らかであると思料する。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証について
ア 乙第2号証は、持株会社アルケマ発行の「2013 REFERENCE DOCUMENT INCLUDING ANNUAL FINANCIAL REPORT/ARKEMA INNOVATIVE CHEMISTRY」と題する2013年度のアルケマ・グループ年次事業及び決算報告書の表裏表紙及び第255頁であり、同頁にアルケマ・グループの組織図が記載されている。グループ筆頭の親会社である持株会社アルケマ(フランス法人)は、自らは事業活動を行わない純粋持株会社である旨、フランス、アメリカ、アフリカ、アジア、欧州の各地域に、被請求人のアルケマ フランスを含むフランス法人の持株会社5社を保有し、これらを介して、当該各地域に多数のアルケマ・グループ会社を保有していること、また、被請求人は持株会社と事業活動を兼務する事業持株会社であることが記載されている。
イ 被請求人は、持株会社アルケマによって100%保有されている。
ウ アジア市場の拠点となるArkema Asie SAS(アルケマ アジ エスアーエス)は、持株会社アルケマが59.4%、被請求人が40.6%を保有し、このArkema Asie SASが100%出資する子会社が、日本法人アルケマである。
(2)乙第3号証について
ア 乙第3号証は、日本法人アルケマのウェブサイトに掲載された会社概要及び事業展開に関する情報ページであり、同社が、世界各地の生産拠点で製造されたアルケマ製品の輸入・販売、用途開発、アジア・パシフィック地域のクライアント向けテクニカルサービスを行っていること、1974年2月19日に設立され、Arkema Asie SAS(アルケマ アジ エスアーエス)100%保有の子会社であること、東京本社(東京都千代田区内幸町2)のほか、京都テクニカルセンター及び横浜事業所を有すること等が記載されている。
イ 主要取扱製品として、ジペンジルトルエン、アクリル酸エステル(メチル、エチル、ブチル、2エチルヘキシル)、PMMA、フッ素化合物、各種フルオロカーボン、水加ヒドラジン及びその誘導体、各種有機硫黄化合物(各種メルカプタン、メタンスルフォン酸、チオグリコール酸及びエステル)などの化学品が記載されている。
(3)乙第6号証について
ア 乙第6号証は、アルケマ・グループの取り扱いに係る塗料及びコーティング関連分野の製品カタログ「PAINTS AND COATINGS/Delivering innovative products and services to coatings formulators worldwide/ARKEMA INNOVATIVE CHEMISTRY」である。第3頁に全製品のブランド名がそのアプリケーション(用途)別にリスト化されており、「Metal Coatings」(メタルコーティング)及び「Inks」(インク)用のカテゴリーに「Photocure resins」(フォトキュア樹脂、光硬化性樹脂)向け製品ブランドとして「Sarmet(R)」が記載されている。
イ 第6頁上段の「Sartomer photocure resins」(Sartomerフォトキュア樹脂、光硬化性樹脂)向け製品欄には、「A worldwide supplier of acrylate and methacrylate monomers,oligomers and other specialty chemicals」(アクリル酸塩及びメタクリル酸塩モノマー、オリゴマー、その他の特殊化学品の世界的サプライヤー)との記載があり、これら各製品のブランド名を示す「Brand names」の欄に「Sarmet(R)」が記載されている。
ウ 11頁には、Asia/Headquarters(本部)として、「Arkema K.K.-Tokyo,Japan」と記載されている。
エ 最終頁の右端には、「・・・/02.2014/・・・Printed in France・・・」との記載がある。
(4)乙第7号証の1について
乙第7号証の1は、被請求人の製造販売に係る「SARMET」全製品の一覧であり、製品の名称「Sarmet(R)CN2400」、「Sarmet(R)CN2401」、「Sarmet(R)CN2402」、「Sarmet(R)CN2403」、「Sarmet(R)CN2404」、当該製品の一般名「Metallic Acrylate(Soluble Zinc Salt)」[アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)]、製造年などが記載されている。
2 上記1によれば、次のことが認められる。
(1)アルケマ・グループ筆頭の親会社である持株会社アルケマ(Arkema、フランス法人)は、自らは事業活動を行わない純粋持株会社であり、被請求人のアルケマ フランスは、持株会社アルケマの100%子会社である。
そして、日本法人アルケマは、アジア市場の拠点となるArkema Asie SAS(アルケマ アジ エスアーエス、アルケマが59.4%、被請求人が40.6%を保有)の100%子会社である。
そうすると、日本法人アルケマは、本件商標に係る通常使用権者とみて差し支えない。
(2)乙第6号証は、被請求人が2014年2月に発行した製品カタログであり、取扱い製品の表示として「Sarmet(R)」の記載があり、この製品は、乙第7号証の1によれば、「Metallic Acrylate(Soluble Zinc Salt)」[アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)]と認められる。また、乙第6号証の11頁には、Asia/Headquarters(本部)として、「Arkema K.K.-Tokyo,Japan」と記載されていることからすれば、日本法人アルケマも乙第6号証に掲載された製品の取扱者であると認められる。
3 判断
(1)使用商標について
乙第6号証の取扱い製品の表示「Sarmet(R)」(使用商標)と本件商標「SARMET」とは、「(R)」の有無に差異があるが、これは一般に登録商標を示す表示であるから、商標の態様に影響を及ぼすものではなく、また、大文字と小文字の差異はあるものの、構成文字の綴りを同一にするものであるから、使用商標は、社会通念上同一と認められる商標である。
(2)商標使用者について
乙第6号証の製品カタログは、被請求人が発行したものであるが、日本法人アルケマが該カタログを日本国内で使用していることについて当事者間に争いはなく、また、日本法人アルケマは、本件商標の通常使用権者でもあり、上記2(2)のとおり、乙第6号証に掲載された製品の取扱者であると認められるから、使用商標の使用者は、被請求人及び日本法人アルケマといって差し支えない。
(3)使用商品について
使用商品は、「Metallic Acrylate(Soluble Zinc Salt)」[アクリレート金属塩(可溶性亜鉛塩)](乙6、乙7)であるところ、技術用語辞典で「Acrylate(アクリレート、アクリラート)」は「アクリル酸塩」、「アクリル酸エステル」等と定義されている(乙19、乙20)ことからすれば、使用商品は、「化学品」の範ちゅうに属する商品といえ、これを否定する証拠は見いだせない。
(4)使用時期について
使用商標が付された製品カタログは、2014年(平成26年)2月に発行されているから、発行から要証期間内(平成26年5月25日まで)に頒布されたことは十分に推認できる。
(5)小括
以上のことからすれば、被請求人及び日本法人アルケマは、本件審判の請求の登録前3年以内に、我が国において、その請求に係る指定商品中「化学品」について、商品に関する広告に本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を付して頒布した(商標法第2条第3項第8号)というべきである。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件審判の請求に係る指定商品中「化学品」について本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2016-03-22 
結審通知日 2016-03-25 
審決日 2016-04-08 
出願番号 商願2006-27275(T2006-27275) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y01)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 大森 健司
原田 信彦
登録日 2006-10-13 
登録番号 商標登録第4995374号(T4995374) 
商標の称呼 サーメット、サルメット 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 
代理人 佐久間 剛 

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