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審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効としない W0709 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W0709 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W0709 審判 全部無効 観念類似 無効としない W0709 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W0709 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない W0709 |
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管理番号 | 1317207 |
審判番号 | 無効2015-890013 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2015-02-05 |
確定日 | 2016-07-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5615224号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5615224号商標(以下「本件商標」という。)は、「MOHNO MASTER」の欧文字を標準文字で表してなり、平成25年5月24日に登録出願、同年8月26日に登録査定、第7類「半導体製造用・精密機械用液体精密定量吐出装置並びにその部品及び付属品,化学機械器具,塗装機械器具,食品製造用に使用される液状・液体又は流体状の食品を注入・塗布・添加及び噴射するための装置,その他の食品加工用又は飲料加工用の機械器具,樹脂等の液体定量ポンプ,その他のポンプ」及び第9類「実験・研究用自動分注・吸引装置,理化学機械器具として使用されるたんぱく質・生物試料・特殊試薬・水溶液・溶媒・アルコール溶液・溶剤・液晶・インク・オイル・磁性流体等の非接触飛滴吐出装置,その他の理化学機械器具,電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具」を指定商品として、同年9月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する登録商標及び使用標章は、以下のとおりであり、登録商標の商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。(以下引用商標1ないし引用商標4をまとめていうときは「引用商標」という。) 1 登録第2375197号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ヘイシンモーノ」の片仮名を横書きしてなり、平成元年6月30日に登録出願、平成4年1月31日に設定登録されたものであり、その商標権は、第7類「化学機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,塗装機械器具,半導体製造装置,風水力機械器具」を含む第6類、第7類、第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とするものである。 2 登録第4666188号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ヘイシンモーノポンプ」の片仮名を書してなり、平成13年11月22日に登録出願、第7類「ポンプ,真空ポンプ」及び第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定商品及び指定役務として、平成15年4月25日に設定登録されたものである。 3 請求人の使用に係る商品「様々な液体の移送、充填、注入、塗布に携わるポンプ及び当該ポンプの仕組みを応用したディスペンサー」等に使用されている「モーノポンプ」の片仮名からなる標章(以下「引用商標3」という。)及び「MOHNO PUMP」の欧文字からなる標章(以下「引用商標4」という。)。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第218号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標の周知・著名性 ア 請求人について 請求人は、1968年の創業以来、様々な液体の移送、充填、注入、塗布に携わるポンプ及び当該ポンプの仕組みを応用したディスペンサーを製造、販売しており、同社の製品に付した商標「モーノポンプ」は遅くとも1973年から現在に至るまで長年の使用により、その関連分野においては一定の周知性を獲得している。 イ 請求人のポンプ及びディスペンサーについて 請求人が引用商標を使用する商品は、一軸偏心ねじポンプ本体に加えて、当該ポンプの仕組みを応用したディスペンサーであり(甲9)、様々な液体の移送、充填、注入、塗布に優れた特性を発揮するため、食品、化学、電機、自動車、製紙、土木建築、上下水など多種多様な分野における産業機械器具に利用されている(甲10)。 この一軸偏心ねじポンプ及びディスペンサーを製造販売するのは世界でも数社に限られ、国内では、請求人の製品が市場シェア90%を誇る(甲11)。 ウ 請求人の使用商標について (ア)請求人は、遅くとも1973年から現在に至るまで、「モーノポンプ」の他、「ヘイシンモーノ」、「モーノ」などからなる商標を一軸偏心ねじポンプ本体及びその関連商品に継続して使用した結果、需要者、取引者は、「モーノポンプ」と聞けば、請求人の一軸偏心ねじポンプ又は当該ポンプの仕組みを応用したディスペンサーを直ちに想起するほどに、当該商標は日本全国に広く認知されている。 請求人に関する1973年当時からの新聞記事等により(甲12?甲65)、請求人が自社の一軸偏心ねじポンプ及びその関連製品のシリーズ名称として「モーノ」の語を一貫して使用してきたことがわかる。 また、請求人は、「モーノ」に対応する欧文字として「mohno」を自社のドメインネームとして使用しており(甲66、甲67)、自社の輸送用トラックにも「MOHNO」の語を使用して、当該商標の取引者、需要者への浸透を図ってきた(甲5)。 (イ)請求人は、本件商標の出願日前の1989年度から継続して一定の販売高を維持しつつ強力な商品販売力を有してきたが、これに加えて、新聞及び有名雑誌等を媒体とした広告宣伝を1971年から継続して約40年間行ってきた。 (ウ)引用商標を付した一軸偏心ねじポンプ及びディスペンサーは、雑誌、新聞、TV、WEB等、また、一部の書籍に紹介され、日経BP社が発行する「日経ものづくり」や「日経Automotive Technology」など商標権者や請求人の業界の専門雑誌には、請求人の商品に関する広告が長年に亘り掲載されている(甲68?甲109)。 エ 「MOHNO」の造語性について 引用商標中の「モーノ」の語は、請求人が自らの商品に応用する技術の原理を開発したフランス人であるモアノ博士(Rene J.L.Moineau)の名に由来する。モアノ博士の姓は「Moineau」と綴るところ、請求人は上記博士の姓を「MOHNO」と表し、長年の間、自社の製品名として使用してきた。すなわち、請求人は、モアノ博士が発明した一軸偏心ねじ型構造に係る一軸偏心ねじポンプの技術をドイツのNETZSCH社より導入し、同社が使用していた「MOHNO PUMP」の商標につき1973年4月27日にライセンスを受け、我が国で使用してきたものであり、現在でもその契約は継続している(甲122、甲123)。 また、当該「MOHNO」は、英和辞書に掲載されていない語であり(甲124)、技術名称として一般に使用されているものでもなく、請求人により案出された造語といえる(甲125?甲127)。 そして、事実上、我が国において一軸偏心ねじポンプ及びディスペンサーの製造販売は、過去47年の間、請求人がほぼ独占的に行ってきて、その市場シェアが約90%もあり、さらにこれらの商品について「モーノポンプ」なる名称を使用してきたという状況を考慮すれば(甲142?甲147)、「モーノポンプ」は請求人の製造にかかる一軸偏心ねじポンプ及びディスペンサーを示す請求人ら固有の商標であり、既に広く知られているものといえる。 オ 小括 上述した事実から、「MOHNO PUMP」、「モーノポンプ」、「MOHNO」及び「モーノ」は、我が国において、本件商標の出願前より請求人の業務に係る商品に広く使用され、その結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の商標としてわが国の需要者等の間で極めて広く知られていることは明らかである。 (2)本件商標と引用商標の出所混同の可能性 ア 本件商標の一部を構成する「MOHNO」の語は、請求人が案出した造語であって、我が国で請求人のみが長年、一軸偏心ねじポンプ及び当該ポンプの仕組みを応用したディスペンサーに使用してきた結果、その分野の取引者、需要者においては、多大な信用と名声が化体した請求人の商標とその文字構成が同一である。 イ 請求人の商標を構成する「MOHNO」が全国的に周知であること、それが創造標章であること、また、本件商標の指定商品は、請求人が製造、販売する商品に含まれ、相互に関連性を有する。 ウ 取引者、需要者の共通性 商標権者と請求人の扱う商品は、ポンプを組み込んだディスペンサーという点で共通しており、その取引者、需要者の範囲も一致している(甲149)。 エ アンケート調査結果 請求人は、「モーノポンプ」が請求人固有の商標であると認識されていることを裏付けるものとして、アンケート調査を実施した(甲153)。 (3)まとめ 以上により、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして著名かつ請求人ら案出に係る「MOHNO」なる語を含み、また、商標権者と請求人の扱う商品は、相互に関連性を有し、その取引者及び需要者の範囲が一致するものであるから、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 2 商標法第4条第1項第19号について (1)本件商標と引用商標の類似性 引用商標は、本件商標の出願日前から請求人に係る商標として周知著名性を獲得しているといえる。また、本件商標からは、「MOHNO」が造語であって周知著名であり、後述のように、「MASTER」に自他商品識別力がないことから、「モーノマスター」の称呼以外に「モーノ」の称呼をも生じるものである。 したがって、「モーノ」なる称呼が生じる引用商標と本件商標は類似するものであり、また、指定商品も類似する。 (2)不正の目的について 商標権者のディスペンサーが低?中粘度域の流体吐出に強みを持つのに対し、請求人のディスペンサーは全ての粘度域、特に高粘度域の流体吐出に強みを持つというように、これまで市場は棲み分けられていたが、商標権者は、2013年6月以降、請求人が出展していない展示会で、一軸偏心ねじポンプ式のディスペンサーに本件商標を付して出展したものであり、同じディスペンサー分野の業務にあるものとして、請求人の採択してきた著名な商標が存在することを十分知り得る立場にあったものと推測できる。 一軸偏心ねじポンプの主要メーカーは世界でほぼ6社に集約されているところ、ここに参入しようとした商標権者が、ポンプ及びディスペンサーについて「モーノ」という称呼をはじめ外観も紛らわしい類似の商標である「MOHNO MASTER」を採択した背景には、請求人が築き上げた信用にただ乗りしようとする不正の意図が容易に推認される。 上記6社中、請求人以外の5社は、「モーノポンプ」なる語は使用しておらず、自社の製品にそれぞれ「Mono」、「EZstrip」、「NEMO」、「Moyno」(甲154?甲157)などの固有の商標を使用している。 (3)商標権者による本件商標の使用例 商標権者は、キャッチコピーの上でも請求人と同様の文章を多用し、展示会ブース等においては、「モーノ式ディスペンサー」のように、「モーノ式」という語を用いて自社の製品を説明しているが(甲158?甲160)、そもそも「モーノ式」という語は、技術用語として一般に浸透しているものでも機械器具の型式を示したものでもなく、「モーノ」の周知性にただ乗りしようとする行為である。 (4)小括 上記の事実に鑑みれば、引用商標と同じ綴りからなり、請求人らの案出にかかる造語である「MOHNO」の文字を用いて、称呼上紛らわしい商標を採択、出願した商標権者には、引用商標の有する周知著名性へのフリーライドの意図、出所表示機能の稀釈化の意図という不正の意図があったと考えざるを得ない。そして、商標権者も引用商標の周知性は十分認識し得る立場にあったことは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 3 商標法第4条第1項第10号について 引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表すものとして、一定の周知性を獲得している。 また、本件商標からは、「MOHNO」が造語であって周知著名であり、後述のように、「MASTER」に自他商品識別力がないことから、「モーノマスター」の称呼以外に「モーノ」なる称呼をも生じるものである。 そうとすれば、同様に「モーノ」なる称呼が生じる引用商標と本件商標は、類似するものであり、また、指定商品も類似する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 4 商標法第4条第1項第11号について (1)称呼上の類似 本件商標は、「MOHNO MASTER」の標準文字からなるところ、「MASTER」の語は、「優れた、最上の」という誇称の意味を有する平易な英単語であり、商標として採択されやすい語であって(甲162)、一方、語頭の「MOHNO」の文字は、特段の意味を有しない造語といえるものであり、該文字が強い印象を与えるものであって、当該部分が出所識別機能を有する特徴のある部分というべきである。 そうすると、もっとも看者の目を惹く語頭の「MOHNO」の文字をもって取引に資される場合もあることは経験則の教えるところであり、本件商標からは「モーノマスター」又は「モーノ」の称呼が生じ得る。 一方、引用商標1は、「ヘイシンモーノ」の文字からなるところ、「ヘイシン」の文字は請求人の略称を表すことから、「ヘイシンモーノ」のほか「ヘイシン」又は「モーノ」の称呼が生じる。 また、引用商標2は、「ヘイシンモーノポンプ」の文字からなるところ、「ポンプ」はその指定商品を直接的に表すため、「ヘイシンモーノポンプ」のほか「ヘイシンモーノ」、「ヘイシン」及び「モーノ」の称呼が生じる。 よって、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、「モーノ」の称呼を共通にする。 (2)観念上の類似 本件商標は、「MOHNO」の文字をもって取引に資される場合も多く、該文字は、請求人のものとして需要者、取引者の間で周知となっているため、本件商標からは、請求人の商品を想起させ、引用商標の出所識別機能を有する特徴部分である「MOHNO」とは、観念が共通しており、これら商標は、観念上紛らわしく、需要者に同様の印象を与えるものである。 よって、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、観念において互いに類似するものである。 (3)外観上の類似 本件商標からは、もっとも看者の目を惹く「MOHNO」の文字をもって取引される場合もあり、これは、引用商標1及び引用商標2の出所識別機能を有する特徴部分と同一である。 よって、両商標は、外観上紛らわしく、需要者に同様の印象を与えるものである。 (4)指定商品の類似 本件商標の指定商品は、いずれも引用商標1の指定商品中、第7類「化学機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,塗装機械器具,半導体製造装置,風水力機械器具」に含まれるか、あるいはこれらの商品と、少なくとも生産部門、販売部門、需要者において共通するものである。 また、本件商標の指定商品中「樹脂等の液体定量ポンプ,その他のポンプ」は、引用商標2の指定商品「ポンプ,真空ポンプ」と同一である。 よって、本件商標の指定商品は、引用商標1及び引用商標2の指定商品と抵触するものである。 (5)取引の実情 請求人が国内シェア90%を誇る一軸偏心ねじポンプ及びディスペンサーの業界においては、それらの商品に、一部の文字が共通する商標を使用し、その一部の文字が周知著名である場合には、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれが十分にある。 請求人のものとして周知著名な「MOHNO」の語を語頭に配した「MOHNO MASTER」をディスペンサーに使用することは、あたかも請求人自身の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあることはいうまでもない。 (6)まとめ 以上により、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、称呼・観念・外観上互いに類似する商標であり、また、両商標の指定商品は、同一又は類似の関係にある。 したがって、上記取引の実情も考慮すれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 5 その他、被請求人の答弁に対して 我が国においては、「MOHNO PUMP」及び「MOHNO」商標に関して、請求人が正当な使用者であることに疑いはなく(甲122、甲123)、「モーノポンプ」がライセンスを受けたブランドであることは、販売当初から請求人のカタログで謳われていた(甲163)。 また、「MOHNO PUMP」及び「モーノポンプ」が、発明者の名前に由来するものであったとしても、商標として機能し得るものであり、官公庁作成の仕様書において、一軸偏心ねじポンプを表すものとして、「モーノポンプ」の語が使用されていないし(甲164?166)、JISやISOにも掲載されていない(甲125、甲126)。また、「油圧技術便覧」「流体輸送」「ポンプハンドブック」などの技術用語辞典や機械装置辞典の類において、「モーノポンプ」が一軸偏心ねじポンプを指すとの記載は見いだせない(甲145?甲147)。 さらに、被請求人が挙げる「油空圧便覧」「新版油空圧便覧」はいずれも、請求人が、わが国において一軸偏心ねじポンプの製造、販売を開始した1973年よりも後に出版されたものであるから、「モーノ式ポンプ」という表記は、請求人の商標である「モーノ」を参照して作成、執筆されていると考えられるものであり、我が国において一軸偏心ねじポンプの普及が請求人により行われ、独占的かつ継続的に使用されてきた結果、高い市場占有率にあったから、特許公報等においては、「モーノポンプ」の語が多く採用されたにすぎない。 したがって、「モーノポンプ」が普通名称であるという被請求人の主張には理由がない。 6 結語 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第202号証を提出している。 1 引用商標について 引用商標1「ヘイシンモーノ」について、商標としての使用実績は提出された証拠からすると殆どない。 社名の略称を含む引用商標2「ヘイシンモーノポンプ」は、請求人の商標としての使用実績が認められるものであり、訴外異議の決定(乙176)によれば、この商標中の自他商品識別力ある構成部分は請求人の略称である「ヘイシン」のみである。 引用商標3、引用商標4としている標章「モーノポンプ」、「MOHNO PUMP」は、「一軸偏心ねじポンプ」を表わす技術名称、一般名称、普通名称と認められるもので、少なくとも日本では特定人の独占適応性を備えた標章として、商標法及び不正競争防止法上の保護は受けられない表示である。 また、「Mohno Pump」、「モーノポンプ」なる表示は一軸偏心ねじポンプの普通名称であるから、基本的に分離されず一体に称呼認識されるので「MOHNO」や「モーノ」のみが抽出されて、そこから自他商品識別力ある称呼「モーノ」が生じる余地はない。 2 甲第12号証から甲第65号証について 引用商標1「ヘイシンモーノ」と同じ文字列を表示している標章もあるが、広告の殆どでは「ヘイシン」は隅丸矩形の輪郭で囲まれ強調されて、「ヘイシン」が強調されている。 「モーノ」については、使用商標の構成態様の一部で用いられていることは認められるが、独立した形で表記されておらず、「ヘイシン」と共に一体となって識別力を発揮しているといえる。 そこで、上記の甲号証では、引用商標「ヘイシンモーノ」や「モーノ」商標(標章)が周知性を獲得するほど盛大に使用しているとはとてもいえない。 これらの甲号証で提出された広告等は平成10年(1998年)までのもので、今から16年以上前のものである等から、「ヘイシンモーノ」(引用商標1)が現在でも全国に広く認知されているとする根拠に欠ける。 まして、「モーノ」単独での使用実績はない。 3 甲第68号証から甲第109号証について 請求人が、引用商標を付した一軸偏心ねじポンプ及びディスペンサーは、その優れた性能から常に雑誌、新聞、TV、WEBで取り上げられてきたとし、雑誌や新聞記事等を提出している中に(甲68?甲108)、多くの「モーノポンプ」の表記が認められるが、請求人の商品等表示(商標)であるというよりも製品(商品)の一般名称、普通名称として扱われている。 4 日本では「モーノポンプ」は普通名称であることについて (1)油空圧便覧 オーム社発行の油空圧便覧では、日本油空圧協会編纂昭和50年(1975年)及び(社)日本油空圧学会編纂平成元年(1989年)のいずれの版でも「一軸ねじポンプの代表的なものにモーノ式ポンプ」があるとの記載がある(乙1、乙2)。 してみると「モーノ式ポンプ」は40年近く前から技術用語であったといえる。 (2)特許関係資料でのモーノポンプ等の使われ方 「モーノポンプ」を特許関連公報で検索すると、2177件(乙14?乙81)あり、特許関係資料で広範かつ一般的に使用されていることは、該文字が普通名称であり、商標ではないことを強く推測させる。 (3)小括 特許関係公報等から、技術文献としての明細書では「一軸偏心ねじポンプ」や英語の発音を表した「プログレッシブキャビティポンプ」という機能構造を繋げた冗長な表現よりも、簡略化しながらも発明者名を残した「モーノポンプ」が大勢を占めていることが看取される。 5 商標法第4条第1項第15号について (1)請求人は、「モーノポンプ」、「MOHNO PUMP」の表示が、製品の一般名称でなく識別力ある商品等表示(商標)であることを自らの取引者、需要者に明示し理解を求めるため、トレードネーム、トレードマークとして他人に対して主張する標示「TM」標記等を付けたり、別途脚注や注釈をもって周知を図りつつ使用している事実も数多く提出した証拠中には皆無であり、同業他社、自らの取引先及び関連する学会で「MOHNO PUMP」、「モーノポンプ」を、一般名称、普通名称として使用しているのを止めさせるべくクレームをつけたりしている証拠の提出もない。 (2)請求人は、自らの行為により「モーノポンプ」の普通名称化を強力に推し進めながら、商品「モーノポンプ」の寡占状態から、自らの商標といえるのではないかと思い直し、かかる主張をなしているようで到底容認し難い。 「MOHNO PUMP」、「モーノポンプ」は、「一軸偏心ねじ式ポンプ」を表わす一般用語、技術名称として普通名称化している。 「MOHNO PUMP」、「モーノポンプ」を継続的に盛大に使用しても、自他商品識別力を備えることはなく、一体として呼称認識されるので、その構成部分の「mohno」、「モーノ」が抽出されて識別力を備えた特定人の商品の出所を脳裡に浮かべさせる商標となるということは考えられない。 ポンプ及びポンプを用いた機器の関係では「MOHNO」や「モーノ」は発明者の名前或いは発明の構造である「一軸偏心ねじ式」を表す用語として受け取られるので、特定人の商品を想起させる識別力に乏しく、せいぜい「モーノポンプ」を暗示させるだけと認められる。 したがって、本件商標をその指定商品に使用しても請求人の商品と出所の混同を生じるおそれはない。 6 商標法第4条第1項第19号、同第10号及び同第11号について 本件商標は、比較的識別力の弱い「MOHNO」及び「MASTER」を一連に組み合わせることにより一体として識別力を発揮する商標となると認められる。 そこで、「MOHNO」、「モーノ」が抽出されて識別力を担うことはないと認められる。 一方、商標権者は、各種用途の「液体精密吐出装置」のメーカーとして数十年の実績を誇り、これまで提供してきた製品に「?MASTER」商標を数多採用してきたものである(乙148)。 請求人は、自らの使用商標から「モーノ」、「MOHNO」も自他商品識別力を担う表示であることを前提としてこれらの条項に該当するとするが、その誤りは前述のとおりである。 7 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、本件請求は理由がない。 なお、本件無効審判は、請求人の一軸偏心ねじポンプの日本における寡占状態を背景に、本来誰でも自由に使える普通名称、技術名称ともいえる表示「MOHNO PUMP」「モーノポンプ」を使用したにすぎないにもかかわらず、請求人の表示として周知著名性を獲得したとし、普通名称であることが明らかである「ポンプ」、「PUMP」を除いた発明者に由来する「MOHNO」、「モーノ」について他人の使用を排除し、製品としての一軸偏心ねじポンプ及びそれを用いた製品の独占状態を維持継続しようとするものである。 第5 当審の判断 1 請求人及び被請求人から提出された証拠及びそれらの主張によれば、以下の事実が認められる。 (1)請求人の引用商標、「MOHNO」及び「モーノ」の使用について ア 請求人は、その商品カタログにおいて、引用商標、「MOHNO」及び「モーノ」の表示を以下のように使用している。 昭和48年頃から昭和55年頃まで使用したとされる総合カタログにおいて、「HEISHIN MOHNO PUMP」の文字が記載されているほか、隅丸矩形内に表示された「ヘイシン」(以下「枠付き文字」という。)と「モーノポンプ」からなる表示(以下「使用商標1」という。)が記載されている(甲163、乙194、乙195)。また、昭和56年から平成元年頃使用されていたとされる総合カタログには、使用商標1及び枠付き文字の下段に「モーノポンプ」の文字を配した表示(以下「使用商標2」という。)(乙196、乙197)、平成元年以降使用されたとする総合カタログには(乙198?乙200)、使用商標1及び引用商標2が、それぞれ表示されており、平成23年(2011年)頃使用されていた「食品業界向け」カタログには、引用商標2が表示され、商品説明中に通常の書体で「モーノポンプが様々な液を定量的に移送できる特徴を生かし・・・」のように記載されているものであり(甲4)、さらに、同時期の「自動車業界向け」カタログにも引用商標2が表示されている(甲161)。 イ 請求人が雑誌及び新聞等においてした広告宣伝には、昭和48年8月7日付けの日刊工業新聞(甲12)及び昭和62年2月25日付けの神戸新聞(甲18)には、「モーノポンプ」の表示が認められるが、それ以外の広告には、使用商標1又は使用商標2(甲22、甲25、甲26、甲31、甲33、甲41、甲47、甲51?甲54、甲61)、枠付き文字と「モーノ」(ロボ又はFAに「フィリングシステム」等表示が続くもの、二段書きのものを含む。)(甲20、甲22、甲24、甲28?甲30、甲32、甲36、甲40、甲44、甲45、甲48?甲50、甲56、甲58、甲59)、「モーノ」と「ロボ又はFAに「フィリングシステム」等表示が続くもの」(甲21、甲22、甲28、甲34、甲46、甲54、甲60?甲62)、「ヘイシンモーノ」(甲22)の表示が認められる。また、1987年頃の初代とする展示車には、矩形内に表示された「HEISHIN」の下部に「MOHNO PUMP」が表示されていること(乙5、乙114)及び請求人のドメイン名中の「mohno-pump」が使用されている(乙66、乙67)。 ウ 雑誌等における請求人の紹介記事において、その事業内容について「ヘイシンモーノポンプ」、「ヘイシンモノポンプ」の設計から製造、販売」「ヘイシンブランド」と表示されている(甲68、甲73、甲74、甲75、甲77、甲78、甲81)。 (2)一方で、請求人は、「モーノポンプ」について、昭和48年頃から昭和55年頃使用していた商品カタログにおいて、「モーノポンプはフランスの数学者Rene Moineau(2字目の「e」の文字にアクサン記号が付されている。以下同じ。)が発明した。この種ポンプに使用されるMOHNO(モーノ)という名称はRene Moineauの姓名に由来している。」(甲163、乙194、乙195)、昭和56年から平成元年頃使用されていたとされる総合カタログにおいて、「モーノポンプは約50年前、フランスの数学者R.モーノ博士(Rene Moineau)によって発明され、姓名にちなんで「モーノポンプ」と名付けられました。(登録商標)」、「モーノポンプの由来」として「これが博士の名前にちなんでモーノポンプと名づけられました。」(乙196、乙197)、平成元年以降使用されたとする総合カタログ等では、「モーノポンプは,フランスのモーノ博士によってその原理が発明された、回転容積型の一軸偏心ネジポンプです。」などと説明していることから(乙184、乙184、乙198?乙200)、請求人は、「モーノポンプ」が、モーノ博士に由来するものであることを需要者等に説明してきたものと認められる。その他、請求人に係る雑誌等の記事においても「モーノポンプ」は「モーノ博士」の発明に基づくものとして紹介されている(甲68、甲77、甲85、甲92、甲104、甲107)。 (3)その他の新聞記事、雑誌等の記載における「モーノポンプ」の表示についてみると、「モーノポンプ専業でシェア90%」(甲68)、「一軸偏心ネジポンプで国内シェア90%を占める」(甲74)、「産業用特殊ポンプであるモーノポンプの国内唯一の専業メーカー。モーノポンプとは、フランスのモーノ博士によってその原理が発明された一軸偏心ネジポンプのこと」(甲97)、「1980年代後半には、モーノポンプとサーボモーターを組み合わせ、・・・活用した応用製品」(甲107)、「モーノポンプの国内唯一の専業メーカー」等(甲70、甲71、甲11、甲33、甲69、甲79、甲81、甲83、甲92、甲93、甲96、甲97、甲106、甲107)のように、請求人は一軸偏心ネジポンプ専業のメーカーであって、その国内シェア90%を占める企業であることが記載されている。 さらに、例えば、「ディスペンサーとモーノポンプを組み合わせたプログラマブルなヘイシンモーノFAフィリングシステム」(甲33)のように、液体定量吐出装置を一般的に表す「ディスペンサー」と並列に記載されている。 (4)「油空圧便覧」(昭和50年4月20日発行、オーム社)及び「新版油空圧便覧」(平成元年、オーム社)において、「1軸ねじポンプの代表的なものにモーノ式ポンプがある」ことが説明されている(乙1、乙2)。また、特許公報等には「モーノポンプ」(乙17?乙81)の文字が使用されている。 (5)2014年(平成26年)12月の「業務用機器の認知度に関する調査」(株式会社日経BP社)による製造業勤務者を対象とするアンケートにおいて、「MOHNO PUMP/モーノポンプ」の企業はどこかの問いに対して回答者数368名中、218名が請求人と回答している(甲153)。 (6)小括 以上からすると、請求人は、昭和48年頃から「一軸偏心ねじポンプ」の製造販売を継続して行ってきたものであり、そのカタログ、広告及び請求人に関する雑誌記事等において、引用商標が使用されていることが認められ、、最も多数使用されているのは、「枠付き文字」に「モーノポンプ」を組合せた表示であり、「枠付き文字」内の「ヘイシン」の文字は、請求人を表す商品の出所識別標識といえる。 そして、「MOHNO」又は「モーノ」のみの使用は確認できない。 次に、請求人は、そのカタログにおいて、モーノポンプはフランスの数学者が発明したものであり、この種ポンプに使用される「MOHNO(モーノ)」ないし「モーノポンプ」はその学者の名前に由来していることを説明していることが認められるものであって、その他、請求人を紹介する雑誌等においても「モーノポンプ」は「モーノ博士」に関連するものと紹介されていること、及び雑誌等において「モーノポンプ」の文字が、商品や技術の説明文中に一般的な機器と同列に記載されているものも見受けられる。 そうすると、これらに接する一軸偏心ねじポンプの業界における取引者、需要者は、引用商標中の「モーノ」及び「MOHNO」の文字は上記学者の名前「MOHNO(モーノ)」に由来するものであり、かつ、「モーノポンプ」は「モーノ博士」の発明に関連する「ポンプ」であると認識するといえる。 他方、請求人の「モーノポンプ」は、一軸偏心ねじポンプの国内シェアが90%であり、請求人がモーノポンプの国内唯一の専業メーカーであると新聞、雑誌等において多数報道されていること及び製造業勤務者を対象とするアンケートの結果からすると、「モーノポンプ」の表示は、一軸偏心ねじポンプの取引者、需要者においては、請求人の製造、販売する商品を表示するものとして広く認識されていたものみるのが相当である。 したがって、請求人が、我が国において、本件商標の登録出願前より請求人の業務に係る商品に広く使用され、請求人の商標として我が国の需要者等の間で極めて広く知られている旨主張する「MOHNO PUMP」(引用商標4)、「モーノポンプ」(引用商標3)、「MOHNO」及び「モーノ」の中、「モーノポンプ」(引用商標3)の表示は、本件商標の登録出願前から請求人の業務に係る一軸偏心ねじポンプを表すものとして、我が国の需要者等の間において、広く知られていたものと認められる。そして、その他の「MOHNO PUMP」(引用商標4)、「MOHNO」及び「モーノ」については、本件商標の登録出願前から請求人の業務に係る商品を表すものとして、我が国の需要者等の間において、広く知られていたものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標は、「MOHNO MASTER」の文字を標準文字で表してなるものであって、その構成が「MOHNO」と「MASTER」の文字からなるものと看取されるものであるとしても、各文字の大きさ及び書体は同一であり、いずれかの文字のみが独立して看者の注意をひくように構成されているとはいえない。そして、その構成前半の「MOHNO」の文字は、上記1によれば、本件商標の指定商品中「ポンプ」との関係においては、その取引者、需要者に、モーノポンプの由来となったとされるモーノ博士に係る「MOHNO」を理解させる場合が少なくないから、本件商標中の「MOHNO」の文字が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない。また、その構成後半の「MASTER」の文字部分は、「優れた、最上」等の意味を有する英語であるとしても、本件商標の指定商品との関係において、特定の商品の品質等を表示するものとして直ちに理解されるとはいい難いものである。 そうすると、本件商標は、その構成態様に照らし、構成全体をもって一体不可分のものとして認識されるとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「モーノマスター」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものというべきである。 (2)引用商標1は、「ヘイシンモーノ」の片仮名からなり、その構成中「ヘイシン」の文字は、上記1の事実からすれば、請求人を表示する標章であり、「モーノ」の文字は、その指定商品中「ポンプ」との関係において、前述のモーノ博士を想起させる場合があることから、引用商標1は、その構成文字全体に相応して生じる「ヘイシンモーノ」の称呼のほかに「ヘイシン」の称呼を生じ、いずれの称呼を生ずる場合も特定の観念を生じないものである。 次に、引用商標2は、「ヘイシンモーノポンプ」の片仮名からなり、その構成中「ヘイシン」の文字は、引用商標1と同様に請求人を表示する標章である。そして、「モーノポンプ」の文字は、上記1のとおり、ポンプとの関係において、その構成全体としてモーノ博士に係るポンプを理解させることにより自他商品の識別標識としての機能は必ずしも強いものとはいい難いから、その構成文字全体に相応して生じる「ヘイシンモーノポンプ」の称呼のほかに「ヘイシン」の称呼を生じ、いずれの称呼を生じる場合も特定の観念を生じないものというのが相当である。 (3)そこで、本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否について検討すると、両商標は、それぞれ、上記のとおりの構成に照らし、視覚上、十分区別することができるものであるから、外観において相紛れるおそれはない。 次に、本件商標から生ずる「モーノマスター」の称呼と引用商標1及び引用商標2から生ずる「ヘイシン」、「ヘイシンモーノ」及び「ヘイシンモーノポンプ」の称呼とは、その構成音又は構成音数において、いずれも明らかな差異を有するものであるから、称呼において、互いに聞き誤るおそれはないものであり、また、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することはできない。 そうとすれば、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、観念においては比較し得ないものであるが、外観及び称呼において相紛れるおそれはないものであるから、両商標は、非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について 請求人は、本件商標は、その構成中に、請求人の業務に係る商品を表示するものとして周知性を有する「MOHNO」の文字を有するから、本件商標と引用商標とは「モーノ」の称呼を同一にする類似の商標である旨主張する。 そこで、本件商標と引用商標3についてみると、引用商標3は、一軸偏心ねじポンプの業界において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、その取引者、需要者に広く認識されていたものと認められるものである。しかしながら、本件商標は、上記2(1)のとおり、その構成全体として一体不可分のものとして認識されるとみるのが相当であり、「モーノマスター」の一連の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものである。 一方、引用商標3は、その構成文字に相応して、「モーノポンプ」の称呼を生じ、一軸偏心ねじポンプとの関係においては、「モーノ博士に由来するポンプ」程の観念が生じるものということができる。 そうすると、本件商標と引用商標3とは、上記のとおり、本件商標から特定の観念を生じないから、観念において比較することはできず、両商標の構成文字及び構成音が明らかに相違し、外観及び称呼において相紛れるおそれはないものであるから、両商標は、非類似の商標と認められる。 そして、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、上記2のとおり、非類似の商標であり、また、本件商標と引用商標4は、上記1のとおり、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記1のとおり、請求人が、周知著名であると主張する「MOHNO PUMP」(引用商標4)、「MOHNO」及び「モーノ」の中、「MOHNO PUMP」(引用商標4)、「MOHNO」及び「モーノ」の表示は、需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものである。 そして、「モーノポンプ」(引用商標3)の表示は、請求人の業務に係る一軸偏心ねじポンプを表すものとして、我が国の需要者等の間において、広く知られているものと認められるとしても、本件商標と引用商標3とは、上記3のとおり、非類似の商標であるから、別異の出所を表示するものとして認識されるというべきである。 そうとすれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者に請求人の使用商品を連想又は想起させるとはいえないものであって、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1のとおり、請求人が、周知著名であると主張する「MOHNO PUMP」(引用商標4)、「モーノポンプ」(引用商標3)、「MOHNO」、「モーノ」の中、「モーノポンプ」(引用商標3)の表示のみが、請求人の業務に係る一軸偏心ねじポンプを表すものとして、我が国の需要者等の間において、広く知られているものと認められるものであるが、本件商標と引用商標3とは、上記3のとおり、非類似の商標である。 また、被請求人が請求人と同じ展示会に出展していること及び一軸偏心ねじポンプを利用した製品を製造販売していることのみをもって、商標権者が 引用商標の有する周知著名性へのフリーライドの意図、出所表示機能の稀釈化の意図等の不正の意図があったものとは認められないものであり、その他、本件商標が不正の利益を得る目的、請求人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証左はない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。 なお、請求人は、別件、平成26年(ワ)第8869号(平成27年(ネ)第3118号)の判決が確定するまで本件の審理を留保されたいと述べているが、上記事件は、不正競争防止法第2条第1項第1号又は同第2号に係るものであるところ、商標法第46条の所定の無効理由にこれらは規定されていないものであり、又、不正競争防止法と本件審判とは目的が異なることから、上記事件の確定を待たずに、本件審理の審理を進めるものと判断した。 6 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-13 |
結審通知日 | 2016-05-18 |
審決日 | 2016-06-03 |
出願番号 | 商願2013-39244(T2013-39244) |
審決分類 |
T
1
11・
222-
Y
(W0709)
T 1 11・ 25- Y (W0709) T 1 11・ 263- Y (W0709) T 1 11・ 261- Y (W0709) T 1 11・ 271- Y (W0709) T 1 11・ 262- Y (W0709) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩本 和雄 |
特許庁審判長 |
酒井 福造 |
特許庁審判官 |
堀内 仁子 田村 正明 |
登録日 | 2013-09-13 |
登録番号 | 商標登録第5615224号(T5615224) |
商標の称呼 | モーノマスター、モーノ、マスター |
代理人 | 勝見 元博 |
代理人 | 特許業務法人銀座マロニエ特許事務所 |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 佐々木 美紀 |
代理人 | 川田 篤 |