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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20145448 | 審決 | 商標 |
不服201415573 | 審決 | 商標 |
不服20148481 | 審決 | 商標 |
不服201515350 | 審決 | 商標 |
不服20153917 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W14 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W14 |
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管理番号 | 1317142 |
審判番号 | 不服2014-15575 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-07 |
確定日 | 2016-06-30 |
事件の表示 | 商願2013-21561拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は,別掲のとおり,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の文字を上下二段に書してなり,第14類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成25年3月26日に登録出願され,その後,指定商品については,審判請求と同時に提出した同26年8月7日受付の手続補正書により,第14類「腕時計」と補正された。 2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は,「本願商標は,『CASABLANCA』及び『カサブランカ』の文字を普通に用いられる方法をもって二段に書してなるところ,これは,『モロッコの大西洋に臨む港町。同国最大の都市』(ランダムハウス英和大辞典第2版)であり,同市は,映画『カサブランカ』の舞台としても知られ,観光客も訪れる地となっているから,本願商標をその指定商品に使用するときは,『モロッコ(カサブランカ)を産地,販売地とする商品』であることを表したものと理解させるにとどまり,単に商品の産地,販売地を表示するにすぎないものといわざるを得ない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,本願商標と使用商標は同一とは認められず,本願商標の指定商品には使用商品と一致しない商品も含まれるから,本願商標は,使用により識別力を有するに至った商標とは認められず,同条第2項の要件を具備しない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)商標法第3条第1項第3号の意義 商標法第3条第1項第3号所定の商標が登録要件を欠くとされているのは,商品の「産地,販売地,品質」等又は役務の「提供の場所,質,提供の用に供する物」等を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」商標は,商品又は役務の特性を表示記述する標章であることから,取引者,需要者によって,専ら当該商品又は役務の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり,自他商品又は役務の識別標識として認識されるとは考え難いこと,そのような標章は,多くの場合,当該商品又は役務に係る取引一般において,取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから,誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり,特定人の独占的使用を認めると,円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・集民126号507頁参照)。 上記の趣旨からすれば,商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号所定の「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである(最高裁昭和61年1月23日第一小法廷判決・裁判集民事147号7頁〔ジョージア事件〕参照)。 (2)商標法第3条第1項第3号該当性について 本願商標は,別掲のとおり,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の文字を上下二段に書してなり,その構成態様から,下段の「カサブランカ」の文字は,上段の「CASABLANCA」の文字の読みを特定していると認められるところ,「CASABLANCA」(カサブランカ)の文字は,「カサブランカ:モロッコの大西洋に臨む港市;同国最大の都市(中略)Casablanca『カサブランカ』H. Bogart, I. Bergman主演の米国映画(1942)。」(ランダムハウス英和大辞典第2版)の意味を有するものである。 また,当該文字の有する上記意味合いに加え,当審が職権で調査した下記アないしエも併せ考慮すれば,「CASABLANCA」(カサブランカ)は,農産品や工業品が輸出入されるほか,様々な工業が発達し,アフリカ最大のショッピングモールである「モロッコ・モール」も有するなど,モロッコ最大の国際的な商業・港湾都市であり,また,映画「カサブランカ」(1942年)の舞台となったことをきっかけに,我が国でもその名が広く知られ,長期にわたり,観光地として人気を維持していることがうかがえる。 ア コンサイス外国地名事典第3版(三省堂)183頁「カサブランカ2」の項に,「モロッコ中北部港湾都市。(中略)大西洋の重要な港。アフリカ・ヨーロッパ・南アメリカを結ぶ海・空路の要衝。港から穀物・果実・燐鉱石・羊・豚などを輸出,綿花・砂糖・機械・建材・セメントなどを輸入。港を中心に化学・ガラス・機械・繊維・食品工業が発達。(中略)映画『カサブランカ』の舞台。」との記載がある。 イ モロッコ王国大使館のウェブサイトにおいて,「空の玄関 カサブランカ」の見出しのもと,「モロッコの経済の中心地であるカサブランカは,日本人の間で同名の映画でよく知られています。スペイン語の『白い家』を意味するこの街の人口は約400万人。高層建築のホテルやオフィス,広い公園の多い国際商業都市です。1993年建立のハッサン2世モスクは内部の見学も可能です。アフリカ最大級のショッピングモール『モロッコ・モール』もカサブランカにあります。」との記載がある。 (http://www.morocco-emba.jp/aboutmorocco/city_casablanca.html#img/casablanca/casablanca12.jpg) ウ 1996年4月26日付け日刊スポーツ23頁「ランキング GWに出掛ける海外旅行 人気スポットのトップはニューヨーク」の見出しのもと,「(株)リクルート エイビーロード事業部調べ」として,「『行ってみたい旅行先』299の都市から,一人あたり五つを選ばせて集計した。回答は6179通。」の調査結果である「★海外人気スポットランキング」の表(項目は左から順位,旅行場所,支持人数,イメージを示す。)中,「(26)モロッコ 304 砂漠,カサブランカ,イスラム教」との記載がある。 エ 旅行比較サイト トラベルコちゃんのウェブサイトにおいて,「人気 海外旅行先ランキング」のページ中,「夏の旅編」の項において,「中近東・中南米・アフリカ」エリアの第5位に「カサブランカ/モロッコ」が掲載されている。 (http://www.tour.ne.jp/special/world/ranking/index_summer_area06.html) 以上よりすると,「CASABLANCA」(カサブランカ)は,モロッコ王国の最大都市で経済の中心地であり,かつ,モロッコ王国最大のモスク,ハッサン2世モスクなどを擁する観光地であるから,我が国において映画の題名の土地としてもその名が広く知られているということができ,本願商標は,これをその指定商品に使用しても,需要者又は取引者によって,当該商品が本願商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることが決して少なくないと判断するのが相当である。そして,本願商標は,別掲のとおりの構成からなり,その態様上顕著な特徴を有するものではない。 したがって,本願商標は,その指定商品の産地,販売地等を表すものと取引者,需要者に認識される可能性があり,これを特定人に独占使用させることは,公益上適当でない。よって,本願商標は,自他商品の識別標識とは認識し得ないものであり,商標法第3条第1項第3号に該当する。 (3)請求人の主張について ア 請求人は,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」はモロッコ王国中北部に位置する港湾都市の名称を表示するものであることが伺い知ることができるとしても,同時に米国映画作品の題名としても知られているほか,ユリ科の園芸植物の一品種名でもあり,必ずしも地名と結び付けて認識されるべき表示ではないこと,並びに,カサブランカ市が観光地として知られているとしても,商業地域や工業地域,特に時計の商業地域や工業地域として知られているというべき実情は存在しないことから,本願商標に接する取引者,需要者が,これを商品の産地や販売地を表すものとして認識することはなく,本願商標は,商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示するものということはできない旨主張する。 しかしながら,本願商標をその指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者をして,「カサブランカの地において製造,販売されたもの」であること,すなわち,商品の産地,販売地を表示したものと理解,認識させることが決して少なくないと判断するのが相当であることは,上記(2)で述べたとおりである。 イ 請求人は,我が国における過去の審決例,登録例及び諸外国での登録例を挙げ,本願商標も同様に登録されるべきである旨主張する(甲第8ないし10号証)。 しかしながら,本願商標が,商標法第3条第1項第3号の規定に該当するか否かは,本願商標自体の具体的な構成とその指定商品との関係から,審決時において,指定商品の取引の実情等を考慮して個別かつ具体的に判断されるべきものであって,他の商標登録の事例あるいは諸外国で登録されている事例の存在によって,本件の判断が左右されるものではない。 ウ したがって,請求人の上記の主張は,いずれも採用することができない。 (4)商標法第3条第2項該当性について 請求人は,本願商標は現在に至るまでの使用実績により,自他商品識別力を確立している旨主張し,証拠方法として,甲第1ないし7,11(枝番を含む)ないし13号証を提出しているので,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったものであるかについて,以下判断する。 ア 商標法第3条第2項について 出願商標が,商標法第3条第2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,実際に使用している商標及び商品,使用開始時期,使用期間,使用地域,当該商品の生産又は販売量,並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である査定時又は審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものである(知財高裁平成18年(行ケ)第10054号参照)。 イ 本願商標の商標法第3条第2項該当性について 上記アの観点を踏まえて,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて,請求人の提出した証拠及び主張を検討すると,以下の事実が認められる。 (ア)使用開始時期,使用期間 請求人は,腕時計メーカーであるフランク・ミュラー社の知的財産管理会社であるところ,フランク・ミュラー社は,1991年にスイスで設立され(甲第11-1号証),1994年に「CASABLANCA」の文字が付された腕時計(以下「カサブランカ腕時計」という。)を発表した。我が国においては,同社の製品は,1998年から日本専属のディストリビューターとして,ワールド通商株式会社(以下「WCC」という。)が販売しているが(甲第11号証),1994年11月頃に発売された雑誌「Tarzan」にカサブランカ腕時計が紹介されていることからすれば(甲第13号証),本願商標の使用開始時期は1994年11月頃であり,その使用期間は,本件審決時まで21年ほどであると認められる。 (イ)使用地域,販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等 a 使用地域について フランク・ミュラー社の製品は,現在,東京,大阪及び福岡の専門店「FRANK MULLER WATCHLAND」,百貨店の時計売場,時計専門店を通じて,全国各地で販売されていることが認められる(甲第11,11-9号証)。 b 本願商標を付した商品の売上の状況について カサブランカ腕時計は,1998年から2015年までに,11,479個販売され,その販売額は,約5,658百万円である(甲第11号証)。 c 広告宣伝の方法及び回数等について フランク・ミュラー社の製品のための1998年から2014年までの広告宣伝費は約67億円であるが,カサブランカ腕時計のための経費を抽出することはできない(甲第11号証)。 カサブランカ腕時計の広告宣伝は,1994年から2015年まで,新聞,雑誌,日本語のカタログ,テレビ等を通じて行っていることは認められるが(甲第1ないし7,11,11-2,11-3,11-6ないし11-10,13号証),テレビ及び店舗イベントにおいて,カサブランカ腕時計が紹介等されている事実は確認できない。また,雑誌の中には,特定クレジットカードの上級会員向け会誌である「DEPERTURES」及び「IMPESSIONS GOLD」や一般書店ではなく時計専門店でしか取り扱われないフリーペーパー「WATCH FILE」なども含まれているほか,各誌の発行部数も明らかでない。 d 本願商標の使用態様等について 上記カタログや雑誌等においては,請求人も自認するとおり,「CASABLANCA」の文字を付した腕時計の盤面上には,常に「FRANK MULLER」の文字が刻印されている。 また,紹介記事や商品説明においても,「FRANK MULLER」又は「フランク・ミュラー」の文字が「CASABLANCA」又は「カサブランカ」の文字と近接するように表示されており,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の文字が独立した態様で用いられている例は多いとはいえない。 さらに,例えば,2008年発行の雑誌「世界の腕時計」では,「STORY 時計に込められた物語」の見出しのもと,「『カサブランカ』はハンフリー・ボガード主演の映画のタイトルでもあるが,1940年代のモロッコの都市風景を描写する。ヨーロッパの人々の憧れであったカサブランカには・・・」(甲第11-8号証)との記載があるなど,「CASABLANCA」(カサブランカ)の文字は,モロッコの都市名と関連付けられていることが認められる(同旨の記載は,例えば,2009年発行の雑誌「世界の腕時計」や,2011年発行の雑誌「Regina」にもある(甲第13号証162頁,同188頁参照)。)。 ウ 小活 以上から,フランク・ミュラー社は,我が国において,1994年頃から約21年間,本願商標を構成する「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の文字をその指定商品「腕時計」について使用し,その間,新聞,雑誌,日本語のカタログ等を通じて広告宣伝し,「FRANK MULLER WATCHLAND」その他の時計売場等を通じて,カサブランカ腕時計を全国で販売しており,その販売個数は1998年から2015年までに11,479個,その販売額は約5,658百万円であることが認められる。 しかしながら,「FRANK MULLER」全体の1998年から2014年までの広告宣伝費は約67億円であるが,カサブランカ腕時計に係る広告宣伝費は明らかでなく,また,広告宣伝の媒体に,特定クレジットカード会員向け会誌や時計専門店限定フリーペーパーが含まれていたり,各誌の発行部数が明らかでない。 そして,一般社団法人日本時計協会がまとめた「日本の時計市場規模(推定)」によれば(出典下記URL参照),2012年から2014年までのウオッチ(どんな姿勢でも作動し、かつ携帯することを目的とした時計)の輸入品の個数は,それぞれ48.6百万個,42.6百万個,29.1百万個,輸入品の金額は,それぞれ4,050億円,4,970億円,5,940億円であるのに対し,同カサブランカ腕時計の個数は,それぞれわずか560個,552個,311個にすぎず,金額は,それぞれ約3.2億円,約2.9億円,約2.1億円であるから(甲第11号証),そのシェアは,各年0.1%にも満たない状況である。 (2012年:http://www.jcwa.or.jp/pdf/2012wagakoku1-12.pdf) (2013年:http://www.jcwa.or.jp/pdf/2013wagakoku1-12.pdf) (2014年:http://www.jcwa.or.jp/data/market-scale.html) また,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の文字は,請求人(フランク・ミュラー社)の代表的出所標識である「FRANK MULLER」(フランク・ミュラー)と常に一緒に表示され,紹介記事等においては,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の文字はモロッコの都市名と関連づけて説明されている。 そうすると,フランク・ミュラー社が,我が国において,約21年間,カサブランカ腕時計を販売等した事実があるとしても,同腕時計のシェアの低さ,広告宣伝の状況,並びに,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の文字の使用態様等を総合考慮すると,請求人(フランク・ミュラー社)が本願商標を使用した結果,「CASABLANCA」及び「カサブランカ」の表示によって,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえないというべきである。 したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。 なお,請求人は,カサブランカ腕時計は高額商品であるがゆえに販売個数及び額は伸びない旨主張するが,上記のとおり,2012年から2014年までの各年で,カサブランカ腕時計の販売個数は,わずか560個,552個,311個であり,輸入品の金額においても各年0.1%にも満たないものであって,カサブランカ腕時計が一般に広く知られているということはできないから,その主張は,採用できない。 (4)まとめ 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,同条第2項の要件を具備しないから,登録することはできない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本願商標) |
審理終結日 | 2016-01-29 |
結審通知日 | 2016-02-03 |
審決日 | 2016-02-16 |
出願番号 | 商願2013-21561(T2013-21561) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(W14)
T 1 8・ 17- Z (W14) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩崎 安子、齋藤 貴博 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
冨澤 武志 前山 るり子 |
商標の称呼 | カサブランカ |
代理人 | 中嶋 伸介 |
代理人 | 塚田 美佳子 |
代理人 | 橋本 千賀子 |
代理人 | 長谷 玲子 |