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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X2425
管理番号 1315838 
審判番号 無効2015-890043 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-05-19 
確定日 2016-05-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5325329号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5325329号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5325329号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成20年11月18日に登録出願,第24類「手ぬぐい,ハンカチ,ふくさ,ふろしき,その他の布製身の回り品,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),布製ラベル」及び第25類「羽織,はんてん,その他の和服,靴下,足袋,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,帽子,げた,草履類,運動用特殊衣服」を指定商品として,同22年2月1日に登録査定,同年5月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同項第8号に違反して登録されたものであるから,その商標登録は,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。
2 具体的な理由
(1)請求人適格
請求人は,東京都墨田区両国2-21-5ダイカンプラザ301に所在する日本相撲甚句会会長である。本件商標は,後述のとおり,日本相撲甚句会の承諾書が提出されたことにより登録に至ったものであるが,当該承諾書は,日本相撲甚句会とは無関係な者(池田正則)が作成したものであり,無効な承諾書である。
本件商標は,上記無効な承諾書に基づいて登録されたものであり,日本相撲甚句会会長である請求人は,当然に請求人適格を有する。
(2)無効原因
ア 本件商標は,以下のとおり,日本相撲甚句会の承諾を得ずに登録がなされたものである。
イ 平成21年6月11日,本件商標について,特許庁審査官から拒絶理由通知が提出された。その理由として,東京都墨田区両国2丁目21-5両国ダイカンプラザ3F305所在の「日本相撲甚句会」の名称を構成中に有しているものであり,かつ,当該団体の承諾を得たものとは認められないというものであった。それを受けて,被請求人は,同年11月2日,手続補正書及び意見書を提出し,同年11月11日及び同年12月1日,承諾書を提出した。
ウ しかし,被請求人の提出した上記承諾書に日本相撲甚句会代表者として記載のある「池田正則」という人物は,日本相撲甚句会の代表者であった事実はない。なお,承諾書中,日本相撲甚句会の住所として記載されている「千葉県千葉市花見川区宮野木台(以下省略)」ないし「千葉県千葉市花見川区宮原木大(以下省略)」は,日本相撲甚句会の住所であった事実はなく,池田正則の自宅住所を記載したものと思われる。
日本相撲甚句会は,請求人の父である福田永昌が日本相撲協会を定年退職後設立し,同人が死亡した平成24年4月14日まで,同人が代表者である会長を務め,その後は,現在まで請求人が会長を務めているが,過去に一度たりとも,池田正則が日本相撲甚句会会長になった事実はない。
エ 池田正則は,平成18年12月,日本相撲甚句会から除名され,日本相撲甚句会を退会している。
オ また,池田正則は,平成22年4月3日に開催された平成22年相撲甚句発表大会では,「新日本相撲甚句会会長」を名乗っていた。この事実からも,池田正則は,自分が「日本相撲甚句会」の代表者でないことを認識していたといえ,同人名義で提出された承諾書が無効であることは明らかである。
(3)結論
以上のことから,被請求人が提出した承諾書は,当時,日本相撲甚句会を代表する福田永昌が提出したものではなく,日本相撲甚句会とは無関係の池田正則が提出したものであり無効な承諾書である。
したがって,本件商標は,商標法第4条1項7号及び同項第8号に該当するから,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求に対し何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 事実認定
証拠及び請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標の登録経緯について
ア 被請求人は,平成20年11月18日,本件商標につき,前記第1のとおりの商品を指定商品として,商標登録出願をした。
イ 被請求人は,本件商標について,平成21年6月11日付けで拒絶理由通知(甲3)を受けた。その拒絶理由は,「この商標登録出願に係る商標は,東京都墨田区両国2丁目21-5両国ダイカンプラザ3F305所在の『日本相撲甚句会』の名称を構成中に有しているものであり,かつ,当該団体の承諾を得たものとは認められません。したがって,この商標登録出願に係る商標は,商標法第4条第1項第8号に該当します。」というものであった。(なお,同日付の拒絶理由通知書には,商標法第6条第1項及び同条第2項に係る拒絶理由も記載されているが,これに関する部分は,本件審理に影響を及ぼさないため省略する。)
ウ 前記拒絶理由に対し,被請求人は,平成21年11月2日に意見書(甲5)を提出し,日本相撲甚句会の承諾書を提出する旨述べるとともに,同年11月11日付け及び同年12月1日差出の手続補足書にて,以下の承諾書(甲6,7)を提出した。
(ア)承諾書(甲6)
本件承諾書の作成日は,平成21年9月2日であり,承諾者については,「名称 日本相撲甚句会」,「住所 千葉県千葉市花見川区宮野木台(以下省略)」及び「代表 池田 正則」の順で3行にわたって記載され,押印欄には,篆書体と思われる文字で「日本相撲甚句会長印」と表示された印影がある。名宛人は,被請求人であり,本文には「日本相撲甚句会は,貴殿が手続きした商標登録願,商願2008-097273につき商標登録出願し,登録を受けることを承諾します。」と記載されている。
(イ)承諾書(甲7)
本件承諾書の作成日は,平成21年9月2日であり,承諾者については,「住所 千葉県千葉市花見川区宮野木大(以下省略)」,「名称 日本相撲甚句会」及び「代表 池田 正則」の順で3行にわたって記載され,押印欄には,篆書体と思われる文字で「日本相撲甚句会長印」と表示された印影がある。名宛人は,被請求人であり,本文には「日本相撲甚句会は,貴殿がなした商標登録願,商願2008-097273につき,商標登録出願し,登録を受けることを承諾します。」と記載されている。
エ その後,本件商標に係る商標登録出願は,前記第1のとおり,平成22年2月1日に登録査定を受け,同年5月28日に設定登録された。
(2)日本相撲甚句会について
ア 日本相撲甚句会は,日本相撲協会を定年退職した故・福田永昌が,江戸時代(享保年間)から唄い継がれた伝統芸能である相撲甚句の継承・普及等を目的として,平成7年に設立した団体であり,その本部を東京都墨田区両国に置き,同人を初代会長(代表)とする,いわゆる権利能力なき社団である(甲2)。
イ 日本相撲甚句会は,平成7年の設立以来,全国の会員の普及に務める一方,大相撲の伝統文化の継承とともに,老人ホームの慰問やボランティア,被災地の支援など,福祉を中心とした活動をし,社団として独自の社会活動を営んできていること,また,遅くとも,本件審判の請求時には,全国43団体,400人の会員を有するに至っていることが認められる(甲2)。
ウ 本件商標の登録出願時(平成20年11月18日)及び登録査定時(同22年2月1日)における日本相撲甚句会の会長(代表)は,初代会長である故・福田永昌であり,同人が平成24年4月14日に死亡した以降は,同人の長女である飯田三千代(請求人)が現在まで会長(代表)を務めている(甲2)。
エ 平成7年の設立以後,日本相撲甚句会がその本部所在地を千葉県千葉市花見川区に置いたことや,池田正則が同会会長(代表)の地位にあったことを認めるに足りる証拠はない。
なお,本件商標の登録査定時頃には,池田正則は,新日本相撲甚句会会長を名のっていたことが認められる(甲12)。
2 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性
(1)本件商標は,別掲のとおり,その構成中に「日本相撲甚句会」の漢字を有してなるものである。
(2)前記1認定の事実によれば,東京都墨田区両国に本部を置く日本相撲甚句会は,江戸時代(享保年間)から唄い継がれた伝統芸能である相撲甚句の継承・普及等を目的として,平成7年に設立された団体であって,日本相撲協会を定年退職した故・福田永昌が本件商標の登録出願時(平成20年11月18日)及び登録査定時(同22年2月1日)の同会会長(代表)であった,いわゆる権利能力なき社団であり,その設立以来,全国の会員の普及に務める一方,大相撲の伝統文化の継承とともに,老人ホームの慰問やボランティア,被災地の支援など,福祉を中心とした活動をし,社団として独自の社会活動を営んできていること,また,遅くとも,本件審判の請求時には,全国43団体,400人の会員を有するに至っていることが認められ,これらのことを併せ考慮すれば,日本相撲甚句会の名称は,本件商標の登録出願時には既に,全国の相撲甚句の愛好家の間で,よく知られていたものと認めることができる(甲2)。
そして,日本相撲甚句会は,平成7年の設立以後,一時的にも,その本部所在地を千葉県千葉市花見川区に置き,その間,池田正則が同会会長(代表)の地位にあったものとは認めらないところ,平成21年6月11日付けの拒絶理由通知(甲3)において,本件商標は,東京都墨田区両国所在の日本相撲甚句会の承諾を得たものとは認められないから,商標法第4条第1項第8号に該当する,という通知を受けたのに対し,被請求人が提出した承諾書(甲6,7)は,いずれも,承諾者の名称が日本相撲甚句会ではあるものの,その住所は千葉県千葉市花見川区であり,代表者も池田正則とされている承諾書によって,本件商標の登録査定を受けたものであって,東京都墨田区両国所在の日本相撲甚句会(当時の同会会長(代表)は,故・福田永昌である。)の承諾を得たものではなかったことが認められる。
(3)これに対して,被請求人は,前記第3のとおり,本件審判の請求に対し何ら答弁していない。
(4)そうすると,本件商標は,東京都墨田区両国所在の「日本相撲甚句会」という他人の名称を含む商標であって,その他人の承諾を得ずに,商標登録されたものと認められる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
3 まとめ
以上によれば,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであるから,請求人の主張するその余の無効理由について判断するまでもなく,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標




審理終結日 2016-03-31 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-18 
出願番号 商願2008-97273(T2008-97273) 
審決分類 T 1 11・ 23- Z (X2425)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 和雄林 圭輔 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
冨澤 武志
登録日 2010-05-28 
登録番号 商標登録第5325329号(T5325329) 
商標の称呼 ニッポンスモージンクカイ、ニッポンスモージンク、スモージンク、スモージンクカイ 
代理人 大熊 裕司 

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